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女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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“好き”って魔法の言葉だと思わない???③(キョン君視点)

“好き”って魔法の言葉だと思わない???


・粗筋:さぁ、キョン君の番ですよー。え? 何がかって? くふふ、それは読んでからのお楽しみ!!


*****


「続きを読む」からは ……

 キョン君視点③:
【これが“今がその時”ってヤツなんだろうさ(次はお前の番だって判ってるっての)】

……になりまーす(^▽^)/



*****

「さぁ、キョン? あんたの番なんだからねっ」


 上機嫌で言い放つハルヒは極上笑顔を浮かべていた。将に大平原で力一杯咲き誇っている極大ヒマワリを髣髴とさせるそれから目を逸らし、如何にも仕方が無いとばかりに溜息を吐き吐き、

「言われんでも判ってる」

と答えを返しながら、しかし、無意識の内に期待しつつグルリと部室内を一瞥し、それとなく人選してしまうのは男の性であろうか? 如何な疑似体験だとは言え、曲がりなりにも産まれて初めて異性に告白するんだ、それ位は神様も許してくれるに違いない。……と言うかその位の我が侭は許容範囲だと思わないか? 
 ぶっちゃけ自分自身でも一体全体誰に対して言い訳しているのか判らないのだが、あー、まぁ、兎に角、部室を見渡していた俺の視線とイの一番に絡まったのは麗しの未来人先輩のそれであった。途端に頬を染め俯く朝比奈さんの可愛い事!! だが、思わずその仕草に見蕩れちまった俺を糾弾するが如く、即座に団長様から刺々しい声が飛んできた。

「……ふーん、先ずはみくるちゃんが相手なのね。……まぁ、いいわ、しっかり気持ちを込めて告げなさいよ」

「言われんでも判ってるっての」

「でもね……イイ事、キョン? これはあくまで……あ、く、ま、で、ロールプレイっ、あたし達の団結力を高めるのが目的なのよ? 変な下心を抱いたらその場で処刑なんだからね!!」

「やれやれ」

 正直に言えば「変な下心」とやらの正体がさっぱり理解出来ないのだが、何でか不機嫌になった団長様はそれを隠そうともせず妙に低い声を出し、そしてこれまた何故か、それは俺よりも朝比奈さんを怯えさせた。

「ぴっ……あ、あの……その、キョン君……」

「大丈夫ですよ、朝比奈さん。俺だってバカじゃない、仲間内の遊びだって理解してますから」
 森の中で狼と出くわした小動物の様に怯えてしまった上級生を安心させようとニコヤカに対応しつつ、だが、俺はさっさとこの馬鹿げた状況から朝比奈さんを解放すべく演技を開始する事にした。
 正直に言えば、恥ずかしくない訳では無い。だが、団長命令の元、既にここまで事態が進んでいるイベントを雑用の立場でどうこう出来る筈も無く、どうにか羞恥心を克己心で捻じ伏せながら周囲から突き刺さる視線を全て無視、ゆっくりと吸い込んだ息を吐き出す序に言葉をそれに乗せる俺。

 

「ふぅぅ……好きです。朝比奈さん」
「……ふわぁ、は、はい」

 

 簡潔明瞭&少々やけっぱちな俺の擬似告白を受けた朝比奈さんは、より一層顔を赤く染めながらそっと自らの両手で頬を挟み込みつつ目を潤ませ、いやぁ、その可憐で可愛い事と言ったら、若し今現在の状況を俺と朝比奈さんの2人っきりだと仮定した場合、情動に促されるまま麗しの上級生を34%の確立で抱き締めていたに違いない。そして、その愛くるしい仕草は「これはあくまでもロールプレイだ」と言い聞かせていた俺をも気恥ずかしくさせてくれた。


 畜生、可愛いなぁ……。

 周知の事実を内心で再度確認しながら、魅惑的赤面朝比奈さんの雰囲気に触発されたのか俺自身も体温が上昇するのを自覚した直後、無意識に口を吐いたのは「いやぁ、済みませんね、朝比奈さん」と言う謝罪であった。
「う、ううん……わたしこそ御免なさい、キョン君……その、うん、ありがとう」

「……あ、はい」

と芸も無く返すしかない俺を余所に朝比奈さんは満足気な溜息1つ、目を閉じウットリとしたまま静かにパイプ椅子に腰掛けた。その様子を横目にドキドキの初体験を無事に終えた俺が一息吐き出していると、腕組みをしたまま口をへの字に曲げ一部始終を凝視していたハルヒさんが「プイッ」っとソッポを向いてボソリ。

「ふーん、キョンにしては上出来じゃない……」

「……何で不機嫌になってるんだ、お前は?」

「!? べ、別にそんなんじゃないわよ!! ほらっ、次は……有希、うん、有希が相手っ」
 何を誤魔化したいのか皆目判らんのだが、何やら慌て気味に長門をズビシと指差したかと思うとハルヒは声を大にして叫びやがり、団長様による毎度毎度の近所迷惑行為に対し雑用として言うべき台詞は最早1つしかないだろう。

 

「やれやれ」

*****

 何処と無く納得しがたい気分のまま首を振り振りその命令を実行しようと長門に向き直ろうとする直前、指定席に座って事の成り行きを見守っていた古泉の奴がその人畜無害的笑顔を絶やす事無く、微かに首を傾げながら———まるで少々お時間を頂けますか?と訴えるが如く———ゆっくりと携帯をブレザーから取り出し「コトン」と長机に置きやがる。と同時に意味深な視線で俺をチラリと一瞥。
「…………」

 畜生……認めたくは無いのだが何だかんだと言って長い付き合いである、俺の中の何かがその仕草の意図を敏感に感じ取った。過去に何度も遭遇しているその感覚は濃厚なる既視感へと化学変化しやがり自然と眉を顰めさせてくれる。仕方が無いので「念のために」とアイコンタクトで意思疎通。

 

*****

「何だ、その意味有り気な行動は……言っておくが、俺は団長命令に従ってるだけだぞ? それ以外に他意は無い」 
「えぇ、勿論、僕は理解してますよ。僕はね……」

「なら……何故これ見よがしに携帯を置いた? 困った事態になるとそれが鳴るとでも言いたいのか?」

「御明察です。出来ましたら僕がバイトに行かなくても済む様御留意頂ければ幸いです」

「……待て。このお遊びの言い出しっぺはハルヒだぞ? それに唯々諾々と従ってるのに何であいつが不機嫌になって妙な空間を生み出すってんだ? 意味が判らん」

「そこは我々男性には理解し難い乙女心としか説明する術はありません。ですが、どうやら涼宮さん自身も御自分の感情の変化に戸惑っていらっしゃるようでして」

「やれやれ。それで俺にどうしろと?」

 

*****

……と問い掛けた瞬間、微苦笑を浮かべたまま副団長殿はヒョイっと肩を竦めてくれた。それは「貴方に全てお任せします」と言う見慣れたボディランゲージで、くそ、それを十全に理解しちまう俺もどうかしている。しているんだが……この状況下で古泉に席を外される事態だけは避けたいってのも事実であった。ぶっちゃけ、こんな妙な空気に包まれている部室で女性陣の中に男1人残されるのは勘弁願いたい。
 「では……ならば、どうする?」と言う自問に対して、俺は「さっさと終わらせて団長に引き継ごう」と心の中で即答、そして、それを実践すべく長門に声を掛ける。

「あー、長門? 済まんが団長命令だ、少しだけ付き合ってくれ」

「了解した」

 打てば響くとはこの事だろう、間髪入れず長門さんは頷き本を静かに閉じてから俺を凝視する。意を決して俺も長門を見返した。そして、俺の視線の先には美しい黒水晶を髣髴とさせる見慣れた瞳が光を放ち、しかし、何時もと異なりその純粋無垢な眼差しに俺はたじろいじまった。何故なら、それに貫かれたまま———団長様の我が侭から始まったお遊びとは言え———「好き」と言う意味深な単語を告げるには、ゴホン、残念ながら色々と経験が足りないらしい、対朝比奈さん擬似告白タイムの影響が色濃く残っているこの浮ついた精神状態では更なる羞恥心に耐え切れそうもないので、俺懇願。

「……済まんが、長門? あー、目を閉じててくれないか。流石に恥ずかしい」

「そう」
 疑う事無く文芸部部長は素直に頷きあっさりと目を閉じてくれた。……のだが、身動ぎ1つせず腰掛け静かにその時を待つ長門さんの佇まいは、その透明な雰囲気と相まって、まるで著名な芸術家が丹精込めて彫り上げた彫像の様に素晴らしく芸術的で、自然と俺の目を惹き付けてくれる。

 

 こうして見ると……明らかに長門も美人の範疇に入るんだな。
 何と言うか、クールビューティって感じだし朝比奈さんじゃなく長門の方が好みだって奴も居るかも知れん、ぶっちゃけ、今まで歳の離れた妹みたいな認識しかしてなかったからな、俺。

 

等と長門を凝視しながら、かなりヤバげな感想を内心呟いていると、僅かに眉を顰めつつ古泉さんが「トン」と軽く指先で机をタップ。その微かな、だが、警告するが如き振動に俺はハッと我を取り戻した。慌てて横目で団長様を確認すると———いや、その目的は、あくまでも閉鎖空間絡みって、全く全然他意は無い———ははは、爆発寸前3秒前って感じのアヒル口だ。それを認識しつつ冷や汗を掻き掻き、この雰囲気を変えるべく俺は「ゴホン」と咳をかましてから、表面的には平然とした顔付きで、
「長門、あー、待たせて悪かったな」

と呼び掛ける。宇宙人っ子は目を閉じたままコクンと小さく頷き、俺はその反応を確認してから声を出した。ハルヒさんからドス黒い凶悪なオーラを浴び、そして、古泉さんからは妙な精神的プレッシャーを受けながらな。

「何時も済まんな、長門……その、何だ、好きだぞ」


 日頃の感謝の気持ちを込めて告げたにも係わらず、長門さんは一回身体をビクッと震わせただけで何ら反応を示してくれなかった。その想定外の無反応っぷりに俺は慌てる。
 何か気に入らなかったのか? それとも別の理由だろうか?
 何やら地雷を踏んだ的感覚に心を満たされたせいで、怖くて団長様の顔色を窺う事すら出来なかった。

 あ、あれ? 何か不味い事言ったか、俺? ……ヤバいっ、恙無く進行しないとハルヒの機嫌が!! 

*****

 今更説明するまでも無い事だが、過去の例を顧みるとだ……、

 所属部員が五名しか存在しない弱小アングラ組織にも係わらず、そこでの活動成果によっては傍若無人の権化たる団長様の機嫌が急降下、その結果、何故か世界規模の危機的状況が発生したかと思うと、何の因果か、その解決のために哀れな雑用が人知れず右往左往しなければならない羽目に陥る。


……って「王道的流れ」を十二分に理解しちまっている俺としてはマジで肝を冷やした瞬間だったのだが、それを判ってくれているのかどうか、極上丹波牛の中落ちをゆっくり噛み締めながらその芳醇な味わいを堪能している様な何とも言えない満足感を漂わせつつ長門さんは、

「先程の会話は詳細に記録、且つ完全保存した」

と小さく呟きながら目を開ける。その瞳が何時も以上に光り輝いているのを確認しちまった俺は眉を顰め宇宙人娘に尋ねた。

「……済まん、何だって? 記録、保存だと?」

「そう」

 珍しく1cm程頷いて感情を露にしながら言葉を続ける長門さんの頬が……あー、ゴホン、微かに赤く染まっている気がするのは俺の自意識過剰のせいなのだろうか?

「確かに朝比奈みくるの言は正鵠を射ていたと言わざるを得ない。貴方の発言を受信した直後、私と言う固体内部で未知なる感情の揺らぎを検知した。心地良い波動。暖かな感覚。それに伴い急激なる体温上昇を筆頭とする身体的変化をも観測済み」

「……そ、そうか」

「私の報告を受けた思念体も初の観測結果に大いに注目、全能力を注入し解析に取り掛かっているため現時点で接続は遮断されている。前代未聞の事態」

「…………」

 高々告白お遊びゴッコの結果を———俺達人間からすれば神に等しい存在である———宇宙規模的情報集合生命体が喜び勇んでこねくり回していると言う事実……その表現し辛い不条理さはズキズキとした頭痛を俺に与えてくれた。だが、そんな妙な雰囲気を物ともせず、先程から乙女の権化と化している朝比奈さんはウトッリポワワン状態のまま溜息吐きつつ、これまた珍しい事に率先して長門に声を掛ける。

「ほぅ……長門さんも判ってくれましたかぁ……それが好きと言う魔法の言葉の効果なんですよぉ……」

「非常に貴重な体験だと認めざるを得ない」

「えへへ……これが本物だったら、本当の告白だったら、もっともっと凄いですよぉ」

「!? (ゴクリ……)そ、そう」

 何やら朝比奈さんの発言に衝撃を受けたらしく、「言葉に詰まる長門さん」等と言うツチノコ発見に匹敵する歴史的瞬間に立会ったせいだと思う、軽い眩暈を覚えながら俺は密かに現状分析。

「好き」の意味が判らないって言ってた長門が何やら納得してるんだ……初期の目的は達成してるんだし、ここでこの希代なイベントを終わらせても罰は当たらないんじゃないか? っ言うか、このタイミングで終わらせないと、次は古泉相手だぜ? 幾らお遊びだとしても、それだけは勘弁して貰いたい!!

 その結論が導き出されるまでに必要であった時間は一秒にも満たなかっただろう。んでもって、その自明の理でもある理論的帰結を錦の御旗に掲げ、周囲から何か言われる前にそれとなく提案する俺。

「あー、言葉の意味が判らないって言ってた長門が理解したって言ってるんだ。ゴホン、ここいら辺でお開きにしてもいいんじゃないかなぁ?」

 だが「あー、言葉の……」の辺りで、畜生、それを遮らんと団長様の有り難いお言葉が部室に響き渡った。

「あ、じゃあ次は古泉君が相手ね♪」
 「ちょっ!? だから、偶には人の話を聞けっ」と言う俺の即突っ込みをハルヒさんは満面の笑顔で優雅に流しつつイエスマンを巻き込む。

「え? だって此処で終わったらそれこそ画竜点睛を欠くってモンでしょ? ね、古泉君もそー思わない?」

「流石は涼宮さんです。素晴らしい考えかと」

「…………」

 何と言うか、長年連れ添った漫才コンビを見るが如き会話のキャッチボールであったのだが、いやいや待て待て、古泉? お前だって男から告白されたって悍ましいだけだろ? 何故に即答で肯定を返すんだ、お前は……?
 激しくなった頭痛に耐えつつ副団長に苦言を呈すべく息を吸い込んだ俺の機先を制する心算なのだろう、ハルヒは嬉々として女性陣にも質問を飛ばしやがり、マジで長い付き合いってのも考え物かも知れん。


「ね!? みくるちゃんだってそー思うでしょ? ……うふふ、勿論思うわよねぇ? 思わない筈は無いわよねぇ……ねぇ、みくるちゃん?」

「ぴっ!? え、あ、はい!!」


「有希……?」

「……いい」

「……よね?」


 ニッコリ笑顔のハルヒさんから何を感じ取ったのか、朝比奈さんは顔を青ざめさせながらコクコクと頷き、そして、何時の間にやら読書を再開していた長門は興味無さ気に最小限の返答を返しやがり、いやはや、雑用が割り込む暇さえ皆無でやんの。その定番的流れのまま———当事者たる雑用にコメントを求める事無く———団長様は勝ち誇りながら「お遊び」を続けるよう厳かに言い放った。

「さっ、キョン? 皆が初志貫徹する事を期待しているんだから続けなさいっ」

「……なぁ、お前、手段と目的をゴッチャにしてないか?」

 せめてもの抵抗とばかりに眉を顰めつつボソリと呟く俺を無視してハルヒは副団長殿に声を掛ける。

「古泉君も準備はイイかしら?」

「えぇ、僕は何時でも結構ですよ。喜んでSOS団発展の礎となりましょう」

「さっすが、古泉君っ。見なさい、キョン!! この団活に対する熱意と忠誠心……それが副団長と雑用の差なんだからね!?」

「…………」

 

SOS団結成以来の哀しき恒例行事だとは言え……、


「試みに問うが、自分以外の団員が団長様にあっさりと迎合した現状に於いて、一介の雑用に対抗手段が残されているだろうか?」
「いや、皆無だな」

 

……と意味も無く反語を用いつつ心の中で嘆息し———本日何度目になるのか数える気にすらならないが———俺は定番となる単語をそっと呟くのであった。


「やれやれ」

***** 

 んでもって、諦観的心情を抱きつつ行った古泉に対する屈辱的演技が終了し……ん? 何だって? その場面を何故詳細に書かないのかだと?

 …………。

 あー、試みに問いたい。

 読者諸氏も1つや2つはお持ちでは無いだろうか? 

 墓まで持って逝きたい悶絶モンの恥ずかしい経験って奴を。

 他人に知られる位なら喜んで死を選ぶであろう赤面物の体験を。

 ぶっちゃけ、将にこの件が俺にとってのそれに当たり、例えば、先程の遣り取りを自称親友の谷口さん何ざに知られてみろ、次の瞬間、

「そ、そうか……キョンは“ソッチ側の人間”になっちまったんだな」

とか愛想笑いで対応され、気が付けば、校内で知らない者が皆無ってな位に周知の事実としてそれが定着、結果、俺は有り難くも無いレッテルをベタベタ貼られた挙句、以降、同性で話してくれるのが当の古泉と噂話に左右されない国木田だけと言う寂しい高校生活を送る羽目になるだろうさ。
 ヤバイ……滅茶苦茶哀しくなってきた。
 畜生、許さんぞ、谷口!!
 明日の朝には一発頭を叩いてやるからなっ。
 覚悟しやがれ!!

 

……と全く関係が無い谷口に八つ当たりする事を誓ってしまう程、俺は精神的に疲労困憊していたのだが、しかし、受け手である古泉の奴は終始人畜無害な笑みを絶やさず、お前……ある意味凄ぇな、感心するぜ。
「いえ、何と申しますか……僕が犠牲になる事で世界が平穏無事ならば、それこそ本望と言うものです」

「……そうかい」

 一介の高校生とは思えない返答を受け更にゲンナリした俺なのだが、その辺の機微を寸毫も斟酌する事無く、何処と無く頬を赤らめたハルヒさんが少々慌て気味に俺達の不毛な会話に割り込んでくる。何やら身に纏う雰囲気がファミレスで注文したチョコパフェを今か今かと待ち侘びる愛くるしい幼子の様であった。

「オッホン!! えと、む、無駄話は、うん、其処までにしてっ……さぁ、キョン!! んと、は、早くしなさいっ。時間は有限なんだからね!!」

「……何をだ?」
 十二分に理解しつつも態と素っ気無く俺が問い質すと、ハルヒさんは何故か絶句し、しかし、次の瞬間、何が気に入らないのか怒号を上げやがる。

「ちょっ!? ……あんたっ、イイ度胸してるじゃない!!」

「……冗談だ、冗談。次はお前の番だって判ってるっての」

 これまた態と気の無い素振りで言い放ち溜息吐きつつハルヒへと顔を向ける俺を、親の敵の様な形相で睨み付ける団長様は先程の期待感溢れる夢見る少女的雰囲気を雲散霧消させていて、まぁ、普段通りと言うか何時も通りと言うか何と言うか……更に言及すれば、先程の朝比奈さんや長門への告白タイム以来室内を漂っていた妙に甘ったるい雰囲気の残滓までもが掻き消えているのは幸いだと言わせて頂きたい。何が幸いなのかはノーコメントだがな。

 

*****

 だが、冷静に考えてみてもだ、これ以上引っ張っても何ら益は無いだろうと思われるので、折角雰囲気が通常モードに戻ったんだ、さっさと自分のターンを終わらせてしまおうと俺が口を開き掛けた矢先、意図が皆目判らん、ハルヒさんは手を挙げてそれを制止しやがり、おいおい、早くしろって言い出したのはお前じゃないのか?
「い。いいから……す、少しだけ待ちなさいっ」

 ハルヒは喧嘩腰のまま舌鋒鋭く言い放ち、しかし、その後に取った行動がその口調を完全に裏切りっていてな、何故かそれを本人が自覚出来なかったようであった。内心の緊張を解そうとでも言うのか、目を閉じ胸に手を当て深呼吸を数回してから瞼を開く事無く「い、いいわよ?」とか何とか。

「…………」

 あのな? 超絶勝気な団長様らしくないか細い声で急かされてもなぁ……俺が良くないっての。ぶっちゃけ物の見事にタイミングをずらされた身にもなってくれ。固めた決意がどっかに行っちまったぜ。

「……ったく」

 義務感使命感に背中を押され、仕方が無いので、もう一度丹田に力を込め気合を入れ直していると、一体全体何を伝えたいのか、そんな俺をハルヒはチラチラと横目で伺い、その意味深な仕草は俺に「異性」を意識させてくれたのだが、いやぁ、疑似体験だとは言え三回連続で告白させられる等と言う苦行の真っ最中だ、頼むからこれ以上ハードルを上げないで頂きたい。

 と文句を口にしながら、実の所、俺自身が妙に緊張している事を自覚し動揺していたってのは内緒だ。例えるなら、それは全てを投げ打ちさっさと白旗を揚げたくなる程の未体験的プレッシャーであり、朝比奈さんや長門の際に感じたモノとは比較にならない強度の緊張感だった。

 だが、それを感じてしまう理由に関して俺は全然全く身に覚えが無い。あぁ、身に覚えが無いとも!! 

と心の中で絶叫していると、そんな雑用の態度や何やらを意に介さず団長様は俯き加減のまま、

「は、早く……しなさいよ……」

と妙に弱々しい口調で催促しやがり、仕方が無いとばかりに精神的モヤモヤを無視し条件反射的に頷きつつ、何の気に無しに次の告白対象者へと視線を移動させた瞬間、そう、俺は認識しちまったのだ。その明らかに何かを期待し瞳を潤ませホンノリ赤く頬を染めた———普段の猪突猛進的態度からは想像出来ない程しおらしい———ハルヒが醸し出す雰囲気やら何やらをな。直後、それを律儀に我が脳は即座に分析解析言語化を開始……そして、それは俺を更に動揺させるに足る結論を導き出してくれやがる。
 それを短く纏めると以下の様な文章へと変換されるんだが、恐らく疲れてるんだろうな、俺は……。


 普段の勝気なハルヒも駄々っ子を相手にしている様で微笑ましいんだが、こんな感じに大人しいハルヒも乙女チックで可愛いなぁ。全く黙って座って微笑を浮かべてりゃ、その万人が認める類稀なルックスだ、下手なアイドル以上にもてるだろうに……。

……っておい!! 誰だ、こんな赤面物の思考をする奴は!?

と自ら突っ込みを入れちまう程の豪く乙女チックな想いであった。にも係わらず「これは俺の物では無い!!」と満腔の自信を持って断言出来ないのが何とも言えないところであり、そして、止めとばかりに朝比奈さんや長門に古泉が真剣な眼差しを俺に突き刺してくれ、その余りの気恥ずかしさのせいだろう、頼んでも居ないのに体温が急激に上昇。自分でも顔が火照っているのが自覚出来た。そして、その生理的反応として脇やら背中やら至る所から汗が噴出しやがったのだが、それは真夏に激しい運動をしたが如くの———朝比奈さんや長門と対峙した時とは比較にならない———発汗量であり、額から流れ落ちる水滴を慌てて手の甲で額を拭う俺。そこには己の緊張感を表すが如くネットリとした汗が付着していた。
「…………」

 それは今まで経験した事も無い脂汗であった。それを呆然と見詰めつつ、「おいおい、高がお遊びだぜ? ……若しかして体調不良か、俺?」と俺の中の俺が戸惑っていると、ハルヒの「……キ、キョン、どーしたの?」と言うマジで不審げな声が聞こえ———更に俺を追い詰める心算か———行き成り、一年時に後ろの席の女生徒と交わした会話が脳裏で再生される。

 

 それはハルヒがSOS団団長に就任するよりも前の会話だった。

*****


「ちょいと小耳に挟んだんだけどな」
「どうせロクでもないことをでしょ」

「付き合う男全部振ったって本当か?」

「何であんたにそんなこと言わなくちゃいけないのよ。出どころは谷口? 高校に来てまであのアホと同じクラスなんて、ストーカーかしら、あいつ」

「それはない」

「何を聞いたか知らないけど、まぁいいわ、多分全部本当だから」

「一人ぐらいまともに付き合おうとか思う奴はいなかったのか」

「全然ダメ。どいつもこいつもアホらしいほどまともな奴だったわ。日曜日に駅前で待ち合わせ、行く場所は判で押したみたいに映画館か遊園地かスポーツ観戦、ファストフードでお昼ご飯食べて、うろうろしてお茶飲んで、じゃあまた明日ね、ってそれしかないの?」

「…………」

「あと告白がほとんど電話だったの何なの、あれ。そういう大事な事は面と向かって言いなさいよ!」

「まぁ、そうかな、俺ならどっかに呼び出して言うかな」

 

*****

「あぁ、そんな遣り取りをしたなぁ」
と懐かしく思う反面、

「いやいや、面と向かって言うって……今の状況が将にそれじゃないか!?」

と己自身で突っ込みを入れていると、何故かロールプレイである事も忘れ俺ドギマギ。そしてそれを自意識過剰だと切り捨てる事も出来ないまま、そのドキドキ感が最高潮に達した瞬間、朝比奈さんや長門相手に経験済みだってのに、悲しいかな、俺はそれ以上自発的な行動を取れなくなったのである。それはまるで……心や体が自分の意識下から離れ他人の手に渡ってしまったのかと勘繰りたくなる様な奇妙な感覚だった。

「…………」
 そうなってしまった原因は完全に闇の中だ。

 しかし、俺はお遊びとは言え、いや、違うな、お遊びだからこそ……そう、ハルヒに告げる事が出来なくなっていたのだ。

 

 「好き」と言う意味深な単語を……。
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  1. 2014/03/14(金) 23:57:53|
  2.  “好き”って魔法の言葉だと思わない???
  3. | トラックバック:0
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