女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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“好き”って魔法の言葉だと思わない???⑤(キョン君視点)

“好き”って魔法の言葉だと思わない???


・粗筋:今回の古泉君はちょろんと「ハルヒちゃん的古泉君」なんです(笑)


*****


「続きを読む」からは ……

 キョン君視点⑤:
【これが“今がその時”ってヤツなんだろうさ
(団長命令だろうが団長代理だろうが関係無い……いいか? マジで暴れるぞ、俺は)】

……になりまーす(^▽^)/


*****
 
「は?」
 それが古泉発言を耳にした俺の素直な反応であった。入学初日に聞かされた某ぶっ飛び自己紹介の時と同じく、
「これ、笑うところ?」
と自らに尋ね、
「んな訳あるかいっ」
と即座に否定する俺。そして、衝撃から立ち直るべく大きく深呼吸一回、新鮮な酸素のお陰でどうにか思考能力を取り戻したにも係わらず俺の曇り切った顔色が晴れる事は無く、その理由は単純明快で、ぶっちゃけ古泉発言の真意を測りかねたからである。

 一体全体、何を言って……いやいや、考えてやがるんだ、古泉の奴は? そんなんとハルヒを遭遇させないために俺達は日夜努力してきたんだろうが?

 心の中で苦言を呈しながら周囲の様子をそっと窺った結果、理由は様々の様だが、団員の全員が全員困惑に包まれていると言う世にも珍しい情景を目にする事となった。

 ハルヒは茫然自失状態でパカッと口を大きく開きながら古泉に視線を固定し、朝比奈さんも「ほえ? 状況が掴めません」とでも言いた気に可愛らしくお目々をパチクリ、最強無関心魔神長門ですら本から顔を上げたままmm単位で小首を傾げ発言内容を吟味しているっぽいのだ。漫画的表現を借りれば部室内を「?」が無数に飛び交っているであろうこの状況下、平静なのは当の本人だけであり、その周囲の異例な反応をも無視して古泉は平然と口を動かし続けやがり、待て待て、こいつ、こんなに神経が図太かったっけ?
「涼宮さん? 1つだけ質問する事をお許し下さい」
「へ? あ、な、何かしら、古泉君?」
「仮のお話で恐縮ですが、涼宮さんが何処かのサークル乃至クラブに参加合流したいと思い、それに関して前向きに検討していると仮定します」
「う、うん」
 戸惑い気味に返事をしつつ、しかし、その意味深な語り口に好奇心を刺激されたようで、団長様は爛々と目を輝かせ始め、それを察したのか副団長はゆっくりと顔を上げるや否やハルヒへと顔を向けた。まるでその視線をより自分に惹き付けようとする様に。
「そして、あらゆる手段を駆使し情報収集を試みた結果、そのグループは非常に活発溌剌とした集団でして、きっと刺激的で明るく幸せな毎日を送れる……と涼宮さんは確信されたのです」
「うんうん、それでっ?」
「ですが、ただ1つだけ看過し得ない要素が有るのですよ、そこには……真に残念な事ですが」
 副団長殿は———檜舞台の上でスポットライトを一身に浴びる悲劇の主人公の如く———両手を広げつつ然も哀しげにゆっくりと首を振りやがり、その余りの胡散臭さに俺なんかは頭痛を感じちまうんだが、一体全体何がその琴線に触れたのか皆目判らんがハルヒはより一層この話題に喰い付き目を輝かせるのであった。
「その不安要素とは、そのグループの中心的メンバー、そうですね……そのグループの創設メンバーとした方が判り易いでしょう、表面的には問題無さそうで、その実、そのお二方の間には何かしらの確執が存在するらしく……」
「え!? そ、それって……」
 ハルヒは古泉の言わんとしている事を悟ったのか驚きの声を上げ、しかし、副団長はそれを華麗に黙殺しながら団長様に口を挟む暇を与える事無く次から次へと矢の様に質問を浴びせ続ける。そして、巧みに誘導尋問しつつ最終的に、
「う、うん、確かに、そーなると、ちょっと入るのを躊躇っちゃうかも……」
と言う言質をハルヒから強引に捥ぎ取りやがったのだが、先程古泉が提示した前提条件を鑑みるに副団長が良からぬ事を企んでいるのは明白であり、更にどうやら最高権力者がその手管の前に篭絡され一協力者と成り下がったらしいとなると、俺は精神的自衛軍の臨戦態勢をデフコンワンへと上昇させざるを得ない。
 だが、そんな俺の焦燥感を完璧に無視して、古泉は弁舌爽やかに最終仕上げへと取り掛かった。
「超能力者と雖も本質的には普通の人間と何ら変わりはありません」
「そ、そーなのかしら? ……ううん、古泉君が言うなら、うんっ、きっとそーよね?」
「えぇ、僕にははっきり判ります。そして、きっと彼達もその様に考えているのですよ……一緒に行動したいと希求しているにも係わらず、その集団内の人間関係を考慮し、一歩踏み出す事に躊躇いを覚えてしまっている事でしょう」
「そ、それは困るわっ、あたし、そーゆーのと早く会いたいのに!! 古泉君っ、何か良い方法は無いの?」
 今にも肉親が他界しそうな病態なのを理解した見舞い客が担当医師の足元に縋り付く様な悲壮感を感じさせるハルヒさんなんだが、古泉はそんな団長様に柔らかな笑みを向けつつサラリと重大発言第二弾をかまし、それを耳にした俺はこれまた大慌て。
「ご安心下さい、涼宮さん……実はこの件に関して僕に打開策がありますので、どうでしょうか、全面的にお任せ願いますか?」
「は!? 打開策だぁ!? ちょ、ちょっと待て、古泉!? お前、一体……」
「キョンは黙ってなさい!! ……古泉君? ほ、本当に対策があるの?」
「はい。畏れ多くも副団長を拝命し日夜努力を重ねてきたのは、えぇ、きっとこの日のためだったと断言させて頂きます。一身を賭しましても万難を排して成就させますので、涼宮さん、是非ともご命令を」
 まるで古代中国朝廷内で皇帝に対し先陣を賜りたいと懇願する新進気鋭の若武者の如く古泉は音も無く立ち上がるや否や恭しく頭を垂れ、そして、副団長のおべっかにめがっさ弱い団長様はと言うと、何やら浮かれた様にウキウキとそれを了承しやがる。
「うんっ、古泉君なら任せても問題無いわね!! ……ホントに不思議な体験が出来るなら、どんな手段を取ってもいいわよ、古泉君っ。あたしが許すわっ」
 極上笑顔を浮かべるハルヒに「畏まりました、閣下」と返答をしつつ古泉はさり気無く1つの要望を追加したのだが、
「畜生……コイツの本当の目的はこれだったんだな」
と俺が気が付くのは事態が取り返しの付かない段階にまで進展してからであった。
 この時点で副団長の策略を看破する事が出来なかったのは痛恨の極みであり、故にだ、何時かイケメン副団長に某かの仕返しをしてやろうと心密かに誓っていたりするのだが、それはさて於き、古泉の要望なんである。
 観衆の視線を一身に集めつつ古泉さんは喉の調子を整える様に咳をした後、人畜無害的爽やか笑顔をハルヒに向けながらこう宣ったのだ。
 
「あぁ、1つだけ確認させて下さい、涼宮さん? それは詰まり……“団長命令”と言う事で宜しいですよね?」
 
*****

 団長命令。

 天下無双の我が侭っ娘ハルヒさんが「あたし、決して妥協しないんだからねっ」と意思表明する際に使う、
「これはね、このあたし……神聖にして不可侵たる存在:SOS団団長が発する絶対的命令なんだからねっ。逆らったりしたら私刑なんだから!! ちょっと、キョン、聞いてるの!?」
っつぅ得手勝手的発言内容を簡潔明瞭に略した単語である。これに付いて今更説明する必要があるとは思えんが、そこはそれ、敢えて解説させて頂きたいと思う。暫しお時間を頂きたい。

 言うまでも無い事だが、こんな恥ずかしい単語を臆面も無く使う事が出来る人間はこの世で只1人、涼宮ハルヒその人だけである。そう、猪突猛進傍若無人な団長様が己の思い付きを押し通すために口にする呪文の如き言葉であり、初めて実際に使われてからこっち、悔しいかな、これを耳にしただけで、とある雑用は「やれやれ」と呟きつつ全てを諦観した事例が多数あり……いやいや、ハルヒの奴、マジで暗黒魔力でも込めてやがるんじゃなかろうな?

 とまぁ、何と言うかSOS団の本質、及び、団長様の権力の強大さを体現化しているこの単語について、何故このタイミングで古泉が言及したのか疑うべきだったのだが、只でさえ今の副団長が常ならぬ暴走状態だったお陰で俺はその深遠なる意図に気が付く事が出来なかった。
 「三歩下がってハルヒの影を踏まず」をこれまで実践し、団長に対し直接的能動的に行動する事自体が皆無だった普段の古泉の姿と今の言動には差が有り過ぎ、そこまで考える余裕が無かったとも言え、そして、そんな事で悩む必要すらないハルヒはあっけらかんと副団長の要望を首肯してくれる。
「勿論よ、古泉君っ、 これは“団長命令”!! あたしのSOS団のためだもん、この件に関しては古泉君に完全に一任しちゃうし、うんっ、そーね……それに臨時にだけど、団長特権も認めちゃう事にします!!」
「有難う御座います、涼宮さん。“団長命令”に応えるべく、そして、栄えあるSOS団団長職の名誉を汚さぬよう一命を賭して計画を推進する所存」
と爽やか好青年的微笑と共に古泉は最敬礼し、その胡散臭さに堪らず俺は声を上げる。
「おい、待て、古泉……お前、何を企んでやがる?」
「おやおや、これは心外なお言葉を。企むも何も、僕はSOS団……延いては涼宮さんのため全身全霊全力で職務に邁進するだけですが、ふふっ、何か問題でも?」
「何がハルヒのためだ、お前がそんな殊勝な玉か?」
 ジト目で副団長を睨み付けていると、非日常的裏事情を全く知らないハルヒさんは何でか躁状態に突入したらしい、ギロッと俺を睨みつけながら古泉を擁護し出す。
「イイ事、キョン? ……さっきも言ったと思うけど、今の古泉君は単なる副団長じゃないのよ? 団長代理……詰まりは、あ・た・し・の分身に等しいんだからね!!」
「いやぁ、あのな、あー、色々と此方にも事情があってだな……」
「??? 何よ、事情って?」
と幼子の様な表情を浮かべたハルヒに問い掛けられ俺は我知らず口篭る。って言うか「こいつ等の背後関係やら何やらを説明出来るかっての!!」と心の中で絶叫しつつ、ぶっちゃけSOS団結成以来増えまくった異能者関係的柵のお陰で雁字搦めになっている事を今更ながらに自覚、とほほ、マジで何も言えないでやんの。そして絶句した俺の表情をどう解釈したのか、ハルヒさんは「ふふん、あたしの勝ちね!!」とでも言いたいらしい得意気な表情を浮かべ雑用に通告する。
「……まぁ、いいわ。あんたに事情があるってんなら、それを書類に纏めて後で提出しなさい。暇があれば読んであげるから」
「…………」
 哀しいかな、今までに蓄積された経験則により、事此処に至っては抵抗しても無駄であると悟りながら、どうにか策を見出そうと頭を捻る俺を余所に団長様はその美声を響かせ嬉々としてイベント終了宣言を出した。
「皆、いいわね? 不思議存在遭遇対策委員長に古泉君を抜擢&全権委任するのは……、
“団・長・命・令・っ”
なのっ。特に、キョン? この件で古泉君に逆らったら私刑なんだからね!!」
「…………」
 「不思議存在遭遇対策委員とやらが何時出来たのか?」だとか何時もながら突っ込み所満載な事を自信満々に言い放つハルヒの顔に浮かんでいる真夏の太陽を髣髴させる陽性極上笑顔は、認めたくは無いのだが、何時もながらに雑用の抗弁能力をスポイルする能力に長け、仕方なく肩を竦めボディランゲージで「やれやれ」と表現すると同時に、
「判ったよ、私刑は嫌だからな」
と力無く呟きつつ周囲との和を優先するため己の主張を引っ込める心優しい俺を誰か褒めてくれないか?
 
*****

 だが、俺が涙を飲んで身を引いたにも係わらず、忌々しい事に古泉は無双状態をしれっと継続しやがり、ハルヒを篭絡したその勢いのまま朝比奈さんと長門に対しても言葉巧みに懐柔工作を敢行、気が付けばそれぞれから賛同を得やがったのだ。
 これだから能あるイケメンって奴は許し難い……。
 その結果、一般常識人たる俺サイドに立って一緒に抗議してくれる人物が皆無となり宇宙人に未来人に超能力者からの援護を期待出来ないこの状況、何と言うか何時もの如くと言うかお約束と言うか、一体全体俺はどんな星の下に産まれたのだろう……全く以って「やれやれ」である。

 因みに団長代理殿と麗しの未来人さんとの遣り取りを簡潔に纏めると以下の様な物になる。
 
「朝比奈さん?」
「ふぇ、あ、ひゃい!?」
「今の会話の流れから推察解釈致しますと、お二方は互いをどの様に思っているのか公表出来かねる様で、ふぅぅ、我々にとって余り芳しく無い事態に発展する恐れが……」
「はぁ……。ふ、ふえ!? うそ!? そ、そうなんですか!?」
「えぇ。人間関係とは様々な要因が絡み合った難解複雑怪奇なパズルの様な物ですので、一端拗れると取り返しの付かない事態に陥る事になりかねません。真に残念な事ですが……今までの歴史を顧みれば、それは明白な事だと言えるでしょう」
「こっ、困ります!! これ、禁則事項なんですけど、お2人にはもっと仲良くラブラブになって貰わないと、わたし、怒られちゃいます困ります……くすん」
「僕も同じ想いですよ。そこで……どうでしょう、朝比奈さん? 僕に状況打破のための妙案腹案がありますのでご協力頂けないでしょうか?」
「えっ、ほ、本当ですか!?」
「勿論です。僕のSOS団を愛する気持ちに嘘偽りは有りません」
「わ、判りましたっ。わたしに出来る事でしたらなんなりと!!」

 ははは……此処まで来たら毒皿である、序に万能文芸部部長さんとの遣り取りもダイジェストでお送りしようじゃないか、皆の衆。
 
「長門さん? ご覧の通り、我々を取り巻く状況は少々看過し難い方向に推移しつつあるようです」
「……そう」
「的確に対応せず、これを座視した場合、そうですね……SOS団の危機にも繋がりますし、最悪、鍵と扉の関係が破綻するやも知れません」
「!? ……SOS団は私と言う固体にとって掛け替えの無い至高の場所。又、自立進化の可能性が失われる事態は思念体も歓迎し得ないと推測される。何としても避けるべき」
「その点に於いては我々の間に差異を見出す必要は皆無と言えるでしょう。そこで提案ですが、どうでしょうか?……僕がこれから提示する案に賛同協力して頂けませんか?」
「…………」
「長門さんの立場なら疑念を抱かれるのも当然だと思いますが、決して貴方方の思惑を裏切らないと宣誓しましょう。機関の工作員古泉一樹ではなく……神聖なるSOS団副団長の名に掛けて」
「そう。ならば了承する。現時点に於いて思念体からも黙認する旨の通達が届いた。私と言う固体も古泉一樹に協力する事を是とする」
 
*****
 
「……やれやれ」
 俺はグッタリとパイプ椅子に身体を凭れ掛けつつ大きく溜息を吐く。
 文章にするとかなりの分量になるが、実際には10分に満たない時間しか経過していないのだ、古泉が意味深ポーズを取り女性陣の注目を集めてからな。
 
しかし、将に激動の10分であった。
 
その間に幾度か古泉の姦計を看破する機会が有った様にも感じるのだが、今更言っても詮無き事、ぶっちゃけアフターカーニバルって奴だ。
「…………」
 
何気無く部室内を見渡すと、ハルヒは既に古泉の計画が成功し妙ちくりんな出来事と遭遇すると確信しているらしく、麗しのメイドさん相手に、
「みくるちゃん? 実はね、あたし、未来人に会ったら聞いてみたい事があるのよ!!」
と前置きをしてから、
“衝撃の未来人インタビュー計画”
とやらを本物の未来人に得々と説明、愛くるしい童顔上級生を心底おろおろさせている。長門は長門で既に通常業務に復帰し何時もの如く分厚いラテン語原書を読み耽り、そして、最後の1人はと言うと俺が視線を向けるまでも無く……、
「おや? どうされました? 浮かない顔をされてますが?」
とにこやかに話し掛けてくる団長代理(副団長兼任)。
「お前な……」
 他人事の様に宣う副団長殿の態度に顔を顰めつつ再度女性陣を窺うと、誰一人としてこちらには注意を払っていない。それを確認した俺はこれ幸いと古泉に問い掛けた。
「古泉?」
「はい、何でしょう?」
「お前が何を企みどんな計画を立案したのか……俺には判らん」
 顔を顰めたまま淡々と語り掛けると、古泉は表情を変化させる事無く微かに肩を竦める仕草で以ってその先を促し、こいつ相手に駆け引きをする愚を犯す心算の無かったってのもあって俺はズバリと核心を突く事にする。
「だがな、1つだけ確認させろ」
「何をでしょう?」
と言う古泉の柔らかい応えを耳にするや否や、俺は腹腔に力を込めつつ、だが、姿勢を敢えて変える事もせず、詰まりは虚空を睨みながら口を動かした。我ながら声が固い様な気がするのだが、気のせいに違いない。
「お前の考えている計画とやらは……ハルヒやSOS団にとって———勿論、此処には朝比奈さんや長門、それに、実に忌々しい事だがお前自身も含めてやる———悪影響を及ぼすものじゃないんだな?」
「…………」
 俺の質問を受けても無言を貫き返答を寄越さない古泉に俺はゆっくりと顔を向ける。そして、背水の陣的精神状態のまま古泉の目を直視し、真正面から自分自身の不安と覚悟をぶつける事にした。
 
「万が一にでもそんな事を考えているならば……俺は金輪際お前を友人とは認めん。仲間とも思わん。団長命令だろうが団長代理だろうが関係無い……いいか? マジで暴れるぞ、俺は」

 平坦な癖に気合が篭ったその口調から何を感じ取ったのか、古泉は優しげな眼差しで俺を見詰めつつ小さく首を振った。その口元に浮かんだ笑みは俺が初めて見たであろう作り物では無い自然な微笑だったかも知れない。
「御安心を。貴方や涼宮さん、勿論、長門さんや朝比奈さんもですが、裏切る様な心算も勇気も行動力も僕は持ち合わせていませんよ」
「…………」
「以前も口にした事があるかと思います。僕がより大切に思っているのは機関ではなく、此処SOS団なんですよ。そう、僕はこの温かで居心地が良い空気空間が好きなんです。涼宮さんが中心に居て、その傍らに貴方がそっと寄り添い、僕達がそれを見守る……」
 古泉の飾らない素直な告白は背中をむず痒くしてくれ、反射的に副団長の冗長な台詞に割り込む俺。
「判った判った……ったく相変わらず恥ずかしい事を臆面も無く口にする奴だな」
「ふふっ、幸いな事に御理解頂けた様ですね」
「したくは無いが、まぁ、止むを得んだろ?」
と嘯きつつ、何故か俺の視線は朝比奈さん相手に「完全完璧未来人インタビュー計画」とやらをエッヘン鼻高々状態で語り続けるハルヒさんに引き寄せられた。

 その顔に浮かんでいたのは言うべき言葉も無い程滅茶苦茶イイ笑顔だった。
 
その見る者全てを幸せにしてしまう朗らか極上笑顔は俺達SOS団団員しか拝めないものだ。
 そう、天然記念物的に貴重な物なのである。
 それを曇らした挙句、哀しげなモノに染め上げる事は避けたいと考えるのは自然な事では無いだろうか?
 
……と自分自身の中で理由付けをしていると、さり気無く古泉も俺の視線を後追いしたかと思うと、同じ様に団長様を視界に収めたらしい、ふわっとその笑みを深くする。
「……貴方と同じですよ。僕も涼宮さんにはずっと笑っていて欲しいと思っているんです」
「ばっ!? そ、そんなんじゃねぇよ!!」
 
我知らず大きな声で古泉の赤面物の台詞をぶった切り、だが、その行為が更なる強敵を招きよせる事になると想定出来なかったのは俺の不徳の致す所とでも言うべきか?
 半分涙目状態の朝比奈さん相手に得々と計画を説明していたハルヒがそれを中断し、前触れも無く此方へと顔を向けるや否や興味津々に問い掛けてきやがったのだ。
「??? どしたの、キョン? 行き成り大きな声出しちゃってさ」
「!? き、気にするなっ。単なる妄言の類でなっ、全く他意は無い!!」
 
 話題の中心人物にその恥ずかしい遣り取りを説明出来る筈も無く、反射的に返事をしながら「何故にこのタイミングで割り込んでくるんだ、お前は!!」と動揺してしまった俺は、未だに納得していないらしいハルヒから追撃の質問が飛んでくる前に、その意識を反らすべく適当な事を口走っていたのだが、それにより自ら墓穴に飛び込む羽目になるとは……やれやれ、どうやら俺もまだまだ人間が練れてないらしいとだけ言っておこう。
 
*****
 
「いやなっ、その……まぁ、何だ……あっ、そ、そう!! 古泉の計画がだなっ」
「え? 古泉君の計画?」
「そうっそうなんだ!! 実は古泉の計画に興味があってさ、一刻も早く知りたくてな、聞き出そうと……」

 そこまで勢いで口走った瞬間、即座に俺は後悔した。何故ならハルヒの瞳の中で超新星じみた爛々と輝く何かが爆発するのを目の当たりにしてしまったからである。余りの眩しさに俺は目を反らした訳なんだが、この現象に関する説明の必要があろうか? 
 それは団活内で好奇心を刺激され躁状態に陥った団長様特有の反応であった。
 迂闊と言えば迂闊。そうなのだ、このネタもハルヒさんの大好物だと言う事を俺はすっかり失念していたのだ。


 はは……獅子から逃げ出した先には虎が居た。


 そんなシチュエーションに俺は平安貴族じみた厭世的気分に陥り、しかし、それとは反対に団長様は大量の石炭を焼べられた機関車の如く鼻息を荒くする。
「良く言ったわっ、キョン!! くっ、あたしとした事が……詳細を聞くの、すっかり忘れたなんて!!」
「……あ、いや、あー、待って下さい、ハルヒさん?」
「さぁ、有希もみくるちゃんも準備しなさい!! これから古泉君に計画を説明して貰うんだからねっ。時間は有限なんだから!!」
「…………」
 アクセルを踏み込み発進してしまった団長様を止める術なぞこの世には無い……って事を思い知らされている雑用としては頭を抱えるしかないこの状況、そこに副団長殿がニコヤカに語り掛けてくるのがまた癪に障る。
「いやぁ、助かりましたよ」
「……何がだ?」
「この計画はですね、貴方に参画して頂かないと文字通り計画倒れとなるは必定でして、実は先程から如何にして貴方をその気にさせようかと密かに頭を悩ませていた所だったのですよ」
「…………」
「ふふっ、まさかそちらから積極的に参加して頂けるとは……将に望外の喜びとはこの事ですね」
 古泉はそう告げつつ俺の肩をポンと軽く叩き、あれやこれやのお陰で一杯一杯だった俺にとって「そうかい……」と反応する事が限界であった訳なんだが、しかし、はは……結果的には、この程度で疲労を感じている場合ではなかったのである。そう、この直後に古泉の悪辣悪巧みが明らかになったからであった。

 因みにその時の俺の第一印象は「畜生、嵌められた!!」であったと予め記しておこうと思う。
 
*****
 
「じゃあ、古泉君っ、計画の説明を宜しくね!!」
「畏まりました、涼宮さん」
 そんな遣り取りが団長と団長代理の間で交わされるのを俺は苦虫を噛み潰した様な表情で見ていた。
 珍しい事に団長様は団員達と並んで長机に位置し、副団長は定位置から引っ張り出されたホワイトボードの脇に教師宜しく立っているのだが、ハルヒさん曰く、
「我がSOS団では重要な計画を発表する時はね、ホワイトボードを活用するのが伝統なんだからねっ」
だそうで、「結成されて一年未満の学校未公認弱小アングラ組織に伝統何ざあるのか?」と言う至極まともな俺の疑念を余所に状況だけは着々と進んでいく。
 
「それでは、僭越ながら僕の立案した計画を説明させて頂きます」
 古泉は朗々とした声で説明会開催を宣言しつつ、何気無い仕草で右腕に巻かれている腕章をたくし上げた。それはハルヒがホンの数分前に即興で作り上げた腕章で、その表面には「団長代理」と書かれた油性マジックの文字が元気に躍っているのだが、まぁ、これも団長様に言わせれば伝統になるんだろうさ……と言う雑用の諦観気味な呟きを吹き飛ばす勢いでハルヒは笑顔のまま拍手喝采し、それに釣られて朝比奈さんも控えめにパチパチ。無反応なのは長机に移動した直後から再び本の世界に舞い戻った長門だけってのも、まぁ、何時もの風景であるが、その辺を気にする古泉さんでは無い訳で、故に団長代理は手馴れた様子で司会業務をこなしていく。
 
 そして……。
 
「実は僕の遠い親戚の友人の知り合いにイベント企画会社を経営されている方がいまして……」

 …………。

 何やら聞いた事のある前振りを平然と口にしつつ古泉は己の立案した計画の説明を始めたんだが、いやいや待て待て、そのパターンは「孤島」や「雪山」やら何だかんだで大騒動に発展した悪しき前例しかないだろうが!!……と言う俺の指摘もなんのその。
 表情を変える事無く「はて? 何か問題でも?」と言い放つ古泉と、「何言ってるの、キョン?」っつぅ団長様の素朴な問い掛けのツープラトン攻撃を喰らい抵抗する気力を奪い去られた俺は呆気無く白旗を揚げる羽目になり、だからな、このネタにハルヒが絡むと何も出来んっつぅの。
「……いや、何でも無い。あー、俺の気のせいだった」
と渋々答えながら俺はせめてもの抵抗とばかりに副団長———あぁ、今は団長代理だったか———を睨み付けたのだが、こんな事で説明好き古泉さんが口を閉ざす筈も無く、表向きイベント企画会社(その実態は、言うまでも無い、秘密結社:機関である)を巻き込んだプランの流れを得々と説明し続け、それはハルヒさんが、
「うんうんっ、判ったわ、古泉君!! 何時もの不思議探索の最中に、そのビックリ体験イベントを組み込むって事なのよね?」
と簡潔明瞭なる結論を告げるまで終わる事はなかったのだ。
「流石は涼宮さんです。非常に判り易く纏めて頂き助かります」
「いや……単にお前の説明がクドイだけだ」
 
 我ながら的確な突っ込みだと自画自賛したくなる指摘を、「これは手厳しい」と苦笑を浮かべさらりと流しやがった古泉に、然も我慢出来ませんと言いた気な表情で団長様は追撃をかます。
「ねっねっ、古泉君? そのイベントってどんな事するとか、ちょっとは教えて貰えるのかしら?」
「ふふっ、期待して頂き非常に光栄な事です、涼宮さん。……ただ、大変恐縮なのですが、以前のサプライズパーティと同様、内容を知らない方が楽しめるかと」
 そんな応えを半ば予想していたのか、「ちぇ、やっぱりそーよね」と呟くハルヒはそれ程失望している訳では無さそうだ。しかし、何故か問い掛けられた古泉の方が黙り込み何やら熟考している風であった。
「??? 何だ、どうした、古泉? 何か問題でもあったのか?」
「あ、いえ……確かに涼宮さんの御指摘通りです。詳細は伏せておくにしても概要は公表しておくべきだと思い直しまして」
「概要? あー、何やら機関……イベント企画会社がどうのこうのって言ってなかったか、お前?」
「はい。ですが、それとは別に御両人に覚悟と言うか心積もりをして頂くべきでしょう」
 古泉の何気無い呟きの中に看過し得ない単語を聞き付けた俺は、今までの流れを脳内で反芻考察しながら即座に反応する。
「済まん、何だって? 御両人だと? ……ちょっと待て、古泉」
「おや、如何されましたか?」
「如何されましたか?……じゃない!! お前の言うそれは、あー、何処の、御両人を、指してやがる? まさかと思うが……」
 嫌な予感に苛まれたながら放ったその鋭い指摘を笑顔で受け止めつつ、

「その慧眼、流石と言わざるを得ませんね。勿論、ふふっ、貴方と涼宮さんの事です」

と無意識に口篭った俺の後をにこやかに受け継ぎ、古泉はさらりと会話を継続した。
 
「え? あたしとキョン?」
「おいこら古泉、ちょっと待てっ」

 それが古泉発言を受けた当の本人達の反応で、「後ろから抱き締めて“I Love You”」等々に代表される策略の数々を体験している俺は即座にその狙いを看過したのだが、イベント成功後に遭遇する不思議体験そのものに気を取られていたらしいハルヒはお目々パチクリ的な応えを返すに留まった。だが、そんな当人達の当惑反応を完璧に無視して団長代理は更なる爆弾を投下する。
「えぇ、お察しの通りです。この計画は、御二方の仲が悪いと誤解している異能者達にアピールして頂く事が肝になります。実はこんなに仲が良いのですよ? とね」
 「……おい、こら、古泉?」
「それには、ゴホン、御二人だけで不思議探索をして頂くのが最良だと判断しました」
 「……えと、あの、古泉君?」
「勿論、単なる不思議探索ではアピール不足なのは明白でしょう。そこで僕は考えました。傍から誰が見ても仲良しだとの感想を抱かせる事が重要だと」
と爽やか笑顔で続けていた古泉さんはそこで一端口を噤み周囲を意味深に見回した。誰一人言葉を発する事無く沈黙の帳が下りている部室内、自分の発言がどの様な影響を及ぼしているのかを確認納得でもしたのか、一回微かに頷きつつ俺に視線を固定しニッコリ笑顔で一言。それは、まるで「明日の天気は晴れのようですよ?」と井戸端会議で告げるおばさんの様に気軽なものであった。
 
「もうお解かりかと思いますが……貴方と涼宮さんには所謂デートをして頂きます」

 ピシッ……。
 その瞬間、確実に世界は時を止めた。
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  1. 2014/06/22(日) 14:00:54|
  2.  “好き”って魔法の言葉だと思わない???
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宇奈月悠里

Author:宇奈月悠里
ハルキョン&キョンハル大好き人間です!!

アイコンは敬愛するだんちさんから拝借させて頂いておりますっ。

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