女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

うんうん、笑顔って重要だよね!!⑧(導入部)

うんうん、笑顔って重要だよね!!


粗筋:そして、絶望に抱擁されるキョン君の心境や如何に!?

*****

「続きを読む」からは ……

 導入部⑧: 【Page:8】

……になりまーす(^▽^)/

*****


 復讐やら何やらと言った不吉な単語よりも、朝比奈さんが浮かべる邪悪な笑みに俺の身体は反応していた。「生命の危機であるっ、対応せよ!!」と生存本能が警鐘を鳴らす。ゾワワと背筋を何かが昇っていった。それらに促される様に、右手に握ったままだった箒の柄を両手で握り直しつつ、反射的にその先を未来人へと向ける。

 言うまでも無いが、こんな棒っ切れ一本でこの状況をどうにか出来るって訳でもないのは十分理解した上でだ。

「ふぅぅぅ……」
 姿勢を変える事無く俺は二度三度と大きく深呼吸、冷静さを保つべく新鮮な酸素を体内に取り込む。意識が澄み渡った。直後、水を得た魚の様に俺の脳は即座に状況分析を開始する。

 当然だが朝比奈さんから突き付けられた告発……その内容には納得出来かねる。縦しんば、それが正しいとしても、彼女の独り善がりな復讐劇に付き合ってやる必然性何ざ皆無だ。
 
……いいか? 「ならばどうする?」等と聞くなよ?
 
身の危険が迫っているのにボンヤリしている人間が何処に居る? 寧ろ我武者羅に抵抗し防衛行動を取るのが当然ってもんだろ? 


 体内に淀んでいた何かを呼気と共に吐き出しつつ、状況分析を進めていた俺の防衛行為に反応したのは———只でさえ複雑怪奇な状況なので勘弁して欲しいと言うのが正直な感想である———当の朝比奈さんではなく別の人物だった。
 
 未来人と超能力者が意味深な暴露話に花を咲かしている最中は、欠伸を噛み殺しつつ暇そうにしていた長門が、何故か自分の出番が来たと解釈したらしい、行き成り挙手しながら嬉しそうな声を上げたのだ。
「はいはーい!! そーゆー事ならユキリンも手伝うよっ、朝比奈みくる!!」

 場違いな程明るい声に呆れながらも、邪悪な笑みを絶やさない未来人から視線を逸らす事無く反射的に呼び掛ける俺であった。

「……おい、長門?」

「んん? 何、キョン君?」

「あのな、まぁ、何だ……ご覧の通り、今は取り込んでるんでな、それが終わるまで、お前には其処で静かに待っててくれると助かるんだが?」
 八割以上の本気度で宇宙人娘に頼み込み、だが、長門は俺の思惑をこれっぽっちも斟酌する事無く幼子の様にプゥゥっと頬を膨らませる。

「ぷぅ……だって、ユキリン的にさ、さっきから詰まらないんだよ? さっさと始末してさ、ゆっっっくりと読書したいんだよねー」

「…………」

 長門の言う「始末」ってのが何かを理解しつつ———現時点でさえ死神の鎌が首筋に当てられていてな、マジでくたばる五秒前って状況なのだ———ここで未来人と宇宙人とが手を結ぶ事態だけは何としても避けたい俺にしてみれば、長門の発言をすんなりと受け入れる訳にはいかなかった。
 ならば、どう対処すべきか?

 朝比奈さんへの警戒態勢を維持しながら、事態打開のために頭をフル回転させていると、これまた長門の言動に促されでもしたのか、この場に存在するもう1人の異能者がさり気無く介入してきたのである。


 もう1人の異能者が誰であると説明するまでも無いだろう……そう、先程も長門の目的に対し、公然と異を唱えていた超能力者古泉一樹その人であった。
 周囲の視線を己に集めんがためだろう、古泉は舞台俳優が如く優雅に両手を広げつつスッと軽やかに一歩踏み出し、そして、穏やかな笑みを湛えたままゆっくりと囁く。

「ふむ、彼を殺されては僕達が困ると先程から申し上げていた筈ですが? 困ったものです……所詮はお人形、もう一度説明致した方が宜しいですかね?」

 心底呆れ返ったと言わんばかりにヒョイっと肩を竦めながら、流れる様な所作で長門へと向き直る古泉。そして、その小馬鹿にした口調に刺激されたのかどうか、長門は長門で目を細めつつ表情を打ち消し迎撃態勢を取る。
 戦闘モードになった異能者2人の間に満ちる緊張感が伝播したらしい、辺りは一気に緊迫した空気に包まれた。呼吸する事すら憚られるピリピリとした息苦しい沈黙がその場を支配する。

「…………」

 無言のまま俺を挟んで対峙する長門と古泉と言う構図は、文字通り先程の再現であり、事此処に至り互いに引く心算が皆無とくれば、漫画やドラマの演出の如く僅かな切っ掛けがあるだけで、この場は異能力が交差する非現実的戦場となるのは必然だと誰しもが思った瞬間だった……事態が急変したのは。

*****

 極限まで凝縮された敵意が古泉と長門の間を幾度も往復した様に思われた。
 と同時に、古泉の身体が赤い光を纏い、それに呼応する様に長門の周囲には複数の小さな白光球が現れる。

 張り詰めた糸が千切れるが如く緊迫した空気が破裂した様な錯覚を覚え、「遂に始まる!?」と反射的に身構えた俺だったのだが、幸か不幸か団員同士の異能戦闘が再開される事はなかったのだ。

 何故なら、心底楽しそうに状況を注視観察していた朝比奈さんが、何とも絶妙なタイミングで2人の間に割って入ったからである。


「パンパンッ」

 一触即発的緊迫したこの場に全くそぐわない乾いた音が辺りに響き、全員が「一体何事?」と言った風情で以って発生源へと反射的に振り返った。
 そして、俺達の物問いた気な視線を平然と受け止めたのは……両手を打ち合わせた姿勢のまま微笑んでいる朝比奈さんだったのだ。その笑みは殺気立ったこの状況に相応しくない程朗らかなで、それを目にした途端、俺だけではなく他の2人も気を殺がれたらしい、ピリピリとした雰囲気は雲散霧消し、代わりに表現し辛い間の抜けた空気が中庭に満ちる。

「…………」
 それを感じているのかどうか、朝比奈さんは笑みを絶やす事無く、ゆっくりと一人一人の顔を視線で撫でていった。そして、団員全員の注意を集めたのを確認したからだろう、豪く満足気な表情で頷いたのだが、その様子は、そうだな……ホームルーム中に浮かれ騒ぐ中学生達の注意を集める事に成功した担任教師の様であった。

「やれやれ、どうしてこの時代の人類はこうも好戦的なのかねぇ」

とやや呆れ気味に苦笑する朝比奈さんに長門が即反応した。

「えー、意味分かんない!! だって、朝比奈みくるがキョン君に復讐したいって言い出したんじゃない?」
 そして、不満気な宇宙人に同調でもしたのか、古泉も微かに眉を顰める。

「……僕も仰る意味が判りませんね、朝比奈さん? 先程の貴女の表明があるからこその、この状況なのではないでしょうか?」

と尋ねる副団長の声も些か困惑気味であり、ぶっちゃけ、当事者的立場の俺も諸手を挙げて賛同したいのだが、未来人は朗らかに微笑んだまま妙に淡々とした口調でそれらの問い掛けに答えた。

「ふふふ……復讐ってさ、何も本人に直接危害を加えるだけが復讐じゃないんだよぉ」

「…………」

「それにさ、思い出して欲しいんだけどね……くくく、わたしは言った筈だよ、この3人のためになる事を提案すると」

 そう呟きながら朝比奈さんは自分⇒古泉⇒長門と順繰りに指差し、だが、その行為は関係者の疑念を払拭するには至らなかったらしく、長門も古泉も不審げな雰囲気を身に纏ったまま無言で、しかし、その反応を面白そうに眺めつつ未来人は言葉を続ける。

「言うまでも無いけどさ、わたし達3人はこの事件に巻き込まれた被害者なんだよ?」

「ほう、被害者……ですか?」

「そうさ。考えても御覧よ、わたしは規定事項遵守のため廃棄前提の簡易クローンとして培養され、古泉君は無理矢理超能力を付与された上に閉鎖空間での戦闘を強いられ、長門さんは見ず知らずの辺境惑星での孤独な観察任務を強要される始末……」

「…………」

「くくっ、どうだい? 誰もが望んでいない事を強制されてるだろ? だからだよ、わたしがそれらの忌まわしい柵を断ち切る提案をしようってのさ……純粋無垢なる厚意によってね」

*****

 何と言うか……身に覚えの無い非難を浴びている俺からすると、違法行為を見咎められた詐欺師が白々しく「自分は詐欺師では無い、無実だ」と強弁するが如き胡散臭さなんだが、それらの発言の何処かが琴線に触れたらしい、
「ふーん、面白そうな話だねっ。ユキリンだって観測業務やるよりは静かに読書してたいし!!」

と長門さんはキラキラと目を輝かせやがり、古泉は古泉で何時の間にやら前髪を指先で弾きつつ思索モードに移行していやがる。

「確かに僕は望んで超能力者になった訳では有りませんが、ですが、いや、しかし……」

と無意識的に漏らしたらしい独り言が奴の素直な心情を如実に物語っている様にも感じられ、(先程の朝比奈さんの暴露話のせいか?)俺は強烈な罪悪感に身を苛まれると同時に、何とも居た堪れない気分に陥った。
 そんな奇妙な雰囲気の中、朝比奈さんの演説は途切れる事無く続き、「もう一度確認するよ?」と念押しした上で、長門と古泉に向けた視線は、紛うかたなく真の仲間に向ける親愛の情の篭った温かなモノだった。

「若し違っていたら指摘しておくれよ、2人とも」

「…………」

「叶うならば……わたしは仲間の仇を討ちたい、古泉君は世界平和を守るのは当然だとしても、閉鎖空間での不毛な戦闘から解放されたい。そして、長門さんは、そうだね、平穏な環境で読書を満喫したいって所じゃないかい?」

 尋ねられた2人は特に目立った反応を返す訳でも無く、だが、半ば同意した様な面持ちのまま、未来人がどの様に話しを展開していくのか興味津々と言った風情で朝比奈さんによる会話の主導権維持を黙認し、それらを悟ったのかどうか、上級生女子はニヤリと唇を歪めつつ、皆の興味を煽る様に小さな声で囁くのだった。

「くくく、それらを一挙に叶えちまう手段が有るとしたら? それもこれ以上無い位手軽にねぇ」

 その辺りを憚る様な囁き声は、しかし、この場に居る全団員の鼓膜をコレでもかと振動させた。
「だから、キョン君を殺しちゃえば……良いんじゃ……ないの? ……違うの、朝比奈みくる?」

 長門は反射的に返事をしながらも、その語尾は自信無さ気に小さくなっていったのだが、それを微笑ましそうに眺めていた朝比奈さんは直接返答する事無く、突如として妙な例えを口にしたのだ。まるで家庭教師が生徒自ら答えを見付け出す様にヒントを与えるが如く……。

「そうだねぇ、例えばさ、んんー……テレビが無ければ」

「ほえ? テレビ?」

「そう、テレビさね。テレビ……と言うか受信機が無ければさ、幾ら放送局が電波を飛ばしても番組を見る人間は居ないよねぇ? そう、それと同じさ。出力元がどれだけ必死に発信しようが、くくく、受け手がいなきゃねぇ」

「!?」
 その例えを耳にした古泉と長門は、何故か同時に身体を強張らせる。先程とは別の意味で場が緊張した。古泉の奴何ざ見た事も無い程に顔を強張らせて居やがるんだが、畜生、急変する場に翻弄されていたせいだと思う、俺はその例えが何を指しているのか理解出来ず、奴らが抱いたであろう驚愕に同調出来なかったのだった。故にパブロフの犬的条件反射で解説好き副団長に声を掛ける俺。

「おい、古泉……今の例えは何だ? お前は……何に驚いてやがる?」

「……ま、まさか、いえ、確かに貴女の話が全て真実だとすると……話は繋がりますが、まさか!?」

と超能力者は未来人に視線を固定したまま茫然自失の体で独り言を漏らしたのだが、それはどう見ても俺の質問に対する答えでは無く、そして、その古泉らしからぬ間の抜けた表情が何故か俺をイラつかせてくれた。
 その悍ましい感覚を振り払うが如く再度問い詰め様とした矢先、それを妨害する様な絶妙なるタイミングで、何の前触れも無く長門さんが何とも楽しげな笑い声を上げやがり、口を開く暇も有らばこそ、不意を衝かれた俺は言葉を失う。それは殺伐としたこの雰囲気を一顧だにしない心底楽しげな笑い声で、「長門でも朗らかな笑い声を出すんだな」等と場違いな事を頭の片隅でボンヤリと考えつつ其方を窺うと、一体全体何がツボったのか、宇宙人娘は目に涙を浮かべながら腹を抱えて笑っているではないか。

「…………」
 傍から見れば、友人と語らいながら楽しげに笑い転げている女子高生にしか見えず、だが、前後の流れを知っているせいだろうな、宇宙人娘が爆笑する姿は俺の背筋を凍らせてくれるに十分な恐怖感と、そして、狂おしいまでに強烈な焦燥感を与えてくれたのだ。
 「この状況を変えなければマジでヤバイ」と言う第六感的確信が拡大の一途を辿っているにも係わらず、何をどうすればいいのか、その手段や方法や対抗策が全く思い付かないってのは、将に己自身の無能さの証明の様であり、そして、その認識が更なる焦りを産み出す要因となってしまうとなると、これは文字通り悪循環以外の何者でもない。

 んでもって、お前らも幾度か体験した事があるだろ? 焦りって奴をさ。
 あれは普段ですら思考が空回りして結論を導けないもんだが、何となれば、このデッドオアアライブ的状況では更にそれが顕著でな、悔しいが俺個人では打開策を講じる事が不可能らしく、こん畜生、誰でもいいから某かの回答を寄越しやがれ!!

 ……その切羽詰った要望が聞こえた訳でもないだろうが、俺のモノローグが終わるや否や、長門は笑いを鎮めたかと思うと、さっきまでの狂った様な爆笑は何だったのか?と疑問に思っちまう程に、往年の文芸部部長を髣髴とさせる淡々とした口調で以って、あっさりと答えを口にしたのだが、まぁ、何だ……それを記する前に言っておきたい。

 それは俺にとって到底看過出来る内容ではなかったと。

 聞けば、お前らもきっと大いに賛同してくれる事だろうさ。

 何故ならば、長門は確かにこう答えたからである、俺の耳が可笑しくなったのでなければな……。


「涼宮ハルヒの殺害……それが朝比奈みくるの言う手軽な手段、でしょ?」

*****

 長門の平坦な声が中庭を漂い消え去ってからも、暫くの間、口を開く奴は居なかった。
 設問者の朝比奈さんはニヤニヤと笑っているだけだし、何時もなら頼んでも居ないのに解説を始める古泉は「成る程……」と呟きつつ前髪を弾きながらの沈思黙考状態で、爆弾発言を投下した長門さんはと言うと何故か誇らしげなドヤ顔で周囲の反応を確認中、そして、話題の中心人物である筈の俺が衝撃の余り絶句しちまってるとなると、まぁ、この場を無音が支配するのも無理は無いだろう。

 だが、その重苦しい静寂をどうこうしようとする余裕が俺には無かった。


 そりゃあ、当然だろ? 
 
今までの話からすると、朝比奈さんが目の敵にしていたのはどうやら俺のようだし、だったら俺に危害を加えるなり何なりするってのか筋ってもんだろう?

 それが何で又、殆ど部外者であるハルヒの名前が此処で出てくるのか皆目見当が付かん……。


 頭の中で舞い踊っていた疑問符が、余りの理不尽さのためであろう、徐々に変質し強烈な憤怒へと変わっていくのを実感しつつ———如何な温厚なる俺でも、事此処に至って理性的に行動する必要があるとは到底思えん———俺はその激情に身を任せる事にした。

 
もうどうにでもなれだ……。


「ちょっと待て……」

「くくく。どうしたんだい、キョン君? そんなに怖い顔をしてさ?」

「朝比奈さん……百歩譲って貴女が俺を恨んでいるのは理解しましょう。だが、その矛先を俺ではなく何故ハルヒに向ける? あいつが何を遣ったってんだ?」
 隠そうにも隠し切れない怒りが言葉の端々に滲み出ているのを無視して、俺は未来人に言い募った。

「貴女の告白が正しいなら……全ての原因は俺に有る筈でしょう? そして、ハルヒはそれに巻き込まれただけじゃないか? だったら……だったら、この場で俺をどうにかすればいい。何故にハルヒを標的にする?」
 だが、哀しいかな、この全うなる意見を俺は最後まで言い切る事が出来なかったのだ。何となれば、朝比奈さんの頬に浮かんでいた侮蔑的笑みが、俺の発言と時を同じくして、より深みを増したのを察したからである。それは俺の話を耳に入れる心算は無いと言う決意表明にも等しい嘲笑であった。その上、状況が状況だからか、何時も以上に感性が鋭敏に反応する。

 本気でカチンときた。

 一気に頭に血が昇る。

 と同時に発声機能に不具合が生じたらしい、俺は本気の本気で言葉を失い、そして、怒り心頭絶句状態の俺への追撃の心算なのだろう、未来人が侮蔑的な表情と口調を維持したままで挑発しやがるんだが、これが昔懐かしの藤原のあの態度を上回る程に神経を逆撫でしてくれ、若しかすると、未来人ってのはこの癇に障る言動の方がデフォなんじゃなかろうな?


「くくっ、それじゃ面白くないだろ? あはは……その程度の事でわたし達の気が晴れるとでも?」

「済まん……何だって? 面白くない? 気が晴れないだと?」

「そうさ。くくく、キョン君の大切な物を破壊し尽くし、キョン君の関係者を痛めつけて苦しめて……あんたのために、そう、あんたに係わったせいで、無実の人間の人生が壊されていくのを、くくっ、あんたは何も出来ずに見てるだけなのさ、あはは、素敵だろ?」


 物騒な事を嫌に粘っこい口調で呟く朝比奈さんは暗い愉悦に打ち震えていた訳なんだが、何と言うか、美人が精神的別世界に逝ってしまっている姿ってのは、余り御近付きになりたいものでもなく、ぶっちゃけ回れ右をしてこの場から逃げたい欲求に駆られる。
 そんな逃走本能に支配されつつあった俺がどうにかこの場に留まれたのは、今まで無言を貫きつつ思索に耽っていた古泉が口を開いたからであった。

「宴も酣な所申し訳ありませんが、朝比奈さん?」

「んん? 何だい、古泉君?」

「1つだけお尋ねして宜しいでしょうか?」

 あくまで慇懃無礼な態度を崩さない副団長殿は、瞳の奥に見た事も無い色彩を浮かべつつ、表面上は物静かに未来人へ問い掛ける。

「その提案に従い、我々が涼宮さんに危害を加えた場合、それに対するリアクションとして、所謂願望実現能力が行使され……この世界、そう、将に僕らが住まうこの世界に、重篤な改変が加えられる可能性は如何程ありますか?」
 「へぇ、流石は古泉君……いいとこ突くねぇ」とマジで感心する未来人の賛辞に全く反応せず、古泉は真面目な顔付きで言葉を続けたのだが、流石は世界平和を最優先とする機関関係者、恐らく先程からその事に付いて考察を加えていたに違いない。

「先刻以来齎された幾つかの情報が全て正しいと仮定しましょう」

「ふふふ、それで?」

「だとすると、この際、老衰や事故等々、その原因は問いません、涼宮さんが他界すると言う“彼”にとって受け入れがたい事態が発生したとしても……」

と嫌な仮定を口にしつつ、副団長はゆっくりとその視線を俺へと向けたのだが、それが突き刺さると同時に、俺は精神的に気圧され我知らず一歩後退っていた。何故ならそれに含まれた冷酷さと言ったら表現する言葉も無い程で、将にマッドサイエンティスト……そう、未知の薬品を投与され檻の中で苦しみもがいているモルモットを無言で観察する狂った科学者を髣髴させたからであり、まぁ、誰がモルモットで誰が逝かれた科学者か説明の必要はあるまい。

 そして、微かな反応すら見逃すまいとでもする様に、ジッと俺を凝視したまま古泉は朝比奈さんに問い掛け続けた。

「……その事実を否定を拒絶し、事象そのものをなかった事にしようにも———そうですね、例えば時を巻き戻す等と言った某かの改変行為を行おうにも———実行する事が出来ないのでは?」

「くくく、何故だい、古泉君?」

「何故ならば、理由は只1つ。涼宮さんと言う必須サポート役が不在であるが故に彼の保持する願望実現能力は確実に機能不全に陥る……との認識で宜しいのですね?」
と断定口調で言い放つ古泉の表情、それは迷いを断ち切った人間特有の晴れ晴れとした物だった。


Page:8

関連記事
スポンサーサイト
  1. 2015/07/20(月) 23:05:34|
  2.  うんうん、笑顔って重要だよね!!
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<独り言(2015/07/20) | ホーム | 独り言(2015/04/26)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://megamisanamoehonbako.blog.fc2.com/tb.php/165-75ded697
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

プロフィール

宇奈月悠里

Author:宇奈月悠里
ハルキョン&キョンハル大好き人間です!!

アイコンは敬愛するだんちさんから拝借させて頂いておりますっ。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

★★★SSリスト★★★ (2)
★★★独り言★★★ (43)
★★★短編SS(連載中)★★★ (5)
 サンタを応援すると、イイ事があるんだからねっ。 (3)
 とある副団長の平凡な一日??? (2)
★★★長編SS(連載中)★★★ (72)
 死が二人を別つまで……。 (9)
 ねこねこふぁんたじあ (14)
 It’s A “わんderful” World (8)
 もてる男は、ふっ、辛いぜ……(ノ_-。) (8)
 女神様と卓上遊戯 (4)
 “好き”って魔法の言葉だと思わない??? (8)
 みくるちゃん In らぶりーらびっと!! (8)
 そして、夢見る少女は大人の階段を昇る……。 (13)
★★★短編SS(完結)★★★ (19)
 嬉し恥ずかし初デート!? (5)
 探し物は何ですか? 見付け難いモノですか? (5)
 ラブコメって美味しいの??? (5)
 素直なのは良い事です!! (2)
 地球人類危機一髪!? (1)
★★★長編SS(完結)★★★ (35)
 SOS団は狙われてるんだからね!! (17)
 うんうん、笑顔って重要だよね!! (18)
★★★エッチィSS★★★ (1)

FC2拍手ランキング

かうんたー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。