女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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うんうん、笑顔って重要だよね!!⑪(導入部ラスト)

うんうん、笑顔って重要だよね!!


粗筋:キョン君の企ては全てが……

*****

「続きを読む」からは ……

 導入部⑩: 【Page:11】

……になりまーす(^▽^)/



*****

 強烈な敗北感に打ちのめされ肩を落とす俺を気に掛ける事無く、異能者達はノンビリと会話を続ける。
「あはは、涼宮ハルヒらしいねっ、目標に向けて一直線って感じで廊下を爆走してるよ? これってば土足のまんまじゃないかなぁ?」
「これは……どうやら彼の行動が、ふふ、余程お気に召さなかった様ですね。文字通り怒り心頭状態ですよ、涼宮さん……以前なら間違い無く閉鎖空間が発生しているパターンです」

 何とも状況にそぐわない緊張感に欠けた遣り取りだった。
 だが、それも然も在り何と言ったところだろう、何せ獲物が自ら近づいてくるのだ、狩人の立場からすれば切り株の前で待っていればイイ訳だし、それを阻む可能性のあった俺の作戦も当のハルヒから拒絶された形となった現状、そりゃ余裕も生まれようと言うモノだろうが、いやいや待て待て、俺からすればそれでは困るのだ。
 ハルヒを見捨てると言う選択肢が論外であるのは論を待たないところであり、ならば、何らかの方法でこいつらの虚を突き隙を作らせ、そう、一瞬でいいのだ、奴らが異能を行使するよりも先に、あの切り札を告げる機会を再度産み出さねば……。

 何か良い方法は無いだろうか?
 奴らの想定を覆す方策は何だ?

 …………。

 ダメだ……気が急いてるせいか思考が袋小路に入った様にグルグルと周回し全く先へと進んでくれず、俺は自分自身の頭の回転の悪さに辟易しながら、「時は有限」と言う言葉の意味を十二分に痛感させられても居た。何せ現状で残された時間はハルヒが此処に到着するまでしかないのだ。そして、残念な事にそれは極めて短い時間でしかない。

「既に手遅れではないか?」
「全ては無駄では?」
と諦観的問い掛けを囁きやがる理性を強引に捻じ伏せつつ、必死で脳味噌を回転させ善後策を講じる俺を他所に、
「長門さん? 僕か貴方、何方が涼宮さんをその手に掛ける事になったとしても、せめてもの情けです、苦しまない様に一瞬で……」
「判ってるってば、古泉一樹。色々あったけどさ、ユキリンとしては恨んでいない……ってか寧ろ感謝してる位だしぃ」
「では、どうでしょう? 涼宮さんが我々を認識する前に……」
「古泉一樹ってばやっさしーっ。でも、きっと、その方が苦しむ事も無いよね!!」
 お前らは何処かのゲリラかテロリストか!? と突っ込みを入れそうになっちまう位に物騒な事を和気藹々と確認し合いながら、恐らく九分九厘ミッションの成功を確信しているのだろう、異能者達は特に緊張した雰囲気も俺に特段注意を払う様子も無い。
「…………」
 脳髄を捏ね繰り回し策を講じつつ、視界の片隅で古泉達の反応を伺っていると、奴らは中庭に面している出入り口を気に掛けているらしく———因みに、俺との距離は5mちょっとってところである———ふむ、成程……あのハルヒの事だ、無駄な事は一切せずゴールに向けて猪突猛進、一直線に校舎を突っ切りこの中庭に出現するのだろうと俺は類推した。
 そして、異能者が中庭から移動しないのは、団長様を観測する事によりその行動を完璧に把握し、それ故、ハルヒが其処から飛び出してくるのは必然であると連中が結論付けているからであると推定する俺。
 更に先程の会話を考慮すると、ハルヒが到達すると同時に、挨拶させる暇も与えず其処に問答無用&必殺の一撃を叩き込む心算だろうと推測もする。

 それらの要素を俺は無意識でハルヒ救出専用演算式に挿入していく。
 
 時間に地形……ハルヒの行動……古泉と長門の計画……俺の望み……各人の性格と能力に思考形態。

 それらを意識せずに入力&演算し、そこに先程から浮かんでは消えて逝った様々な思い付きやらアイデアやらをスパイスとして加えた結果、一つの素案がはっきりと形になってくれ、事此処に至って、完璧に満足出来る対抗策を産み出す時間もアイデアも枯渇しつつある状況である、プランというには余りにも単純極まりない物ではあるが、止むを得ん、それに俺は即座に跳び付いた。いや、違うな、縋らざるを得なかったと言う表現が正しいかもしれん。
 
 要は連中よりも先に団長様と邂逅出来れば良いのだ。
 そして、出来れば異能を使う暇を与えずに。
 更に付け加えれば、先程の轍を踏む事無く間髪入れず速攻で切り札を団長に叩き付けるのだ。
 その直後に鍵が扉を解放。
 それで奇天烈トンデモ能力が起動する。
 その結果、願望が現実を凌駕駆逐し全ては元通り。

 ……ってな寸法である。

 ハルヒ救出&現実補修計画最終案と言うには余りにも杜撰なそれを脳内で幾度か反芻しつつ、普段の俺なら到底看過し得ない楽観的思考に基づく明るい未来予想図に些か呆れながら、まぁ、何だ、過程はどうあれ結果が良ければ全て良し……って事で妥協してやるさ。

 んな感じで自分自身を欺瞞しながら、団長様を見習い俺は可能な限りポジティブシンキング、今更時間を巻き戻せる訳でも団長様の言動をコントロール出来る訳でも無いのだ、この思い付きに全てを託そうと決意した。
 すると、何となく覚悟が固まる。
 これが所謂「背水の陣の精神的効果」って奴なんだろうなと韓信軍将兵の気分を十二分に味わいながら、臍下に力を入れた。
 思いの外腹が据わる。
「…………」
 今更後戻りは出来ない。
 時は満ちたのだ。 
 恐らく、これがこの物語のラストを飾るであろう事を直感した上で、全力を傾注すべく頬を張り気合を入れる。

 お前らも祈ってくれ……ハッピーエンドになるようにな。

*****

 俺が不退転の決意を固めている最中も、連中は今次作戦に関するブリーフィングを継続していた。
「ふむ、では、僕と長門さんの意思の擦り合わせは完了したとして……朝比奈さん?」
「ん? 何だい、古泉君?」
「貴女は如何されますか?」
 何とも短い質問だったのだが、朝比奈さんは全てを承知していると言いた気に頷きながら、チラリと俺を見て苦笑を浮かべる。
「何時もの通りさ。御覧の通り殺傷兵器は携帯して来てないんだよぉ。まぁ、万が一持ってたとしてもさ、先代を見てれば判るだろ? 使い熟せやしないのさ……くくく、私達のタイプに共通の欠点さね、これは」
 その自嘲気味な笑みに促されたらしい、長門が未来人を上から下へと一瞥してから小首を傾げつつ、その発言を補足する様に口を開いた。
「ふーん、確かに持って無いみたいだね、高濃度金属反応やら高圧縮エネルギーオーラとか皆無って感じだもん」
「……何と言うか僕の様な潜入諜報工作員からすると信じられない話ですが、長門さんのお墨付きもある事ですし……では、涼宮さんの事は僕達に一任して頂けますか?」
「ふふっ、この時代の諺に……餅は桶屋が儲かるってあるしね、荒事は専門家に任せるよぉ。私じゃ足を引っ張るだけだしねぇ」
と自虐的な笑みを浮かべた朝比奈さんは、それを行動で示すかの如く肩を竦めつつ一歩身を引き、それに伴い古泉と長門が校舎へと向き直りながら能力の開放を開始、周囲の大気が蜃気楼の如くユラリと歪んでいくのだった。

*****

「…………」
 その遣り取りを耳にし、連中も準備万端らしいと悟った俺は更に覚悟を固める。
 そう、これで舞台は整ったのだ。
 所謂、ラストステージである。
 後はハルヒが此処に姿を見せれば、全ての役者が揃う事になるのだが、残念ながら俺の立案した策的にはそれでは困るのだ。
 ハルヒが此処に現れる前に決着を付けなければ、確実に団長様の生命活動は絶たれ、そして、それは俺の負けなのだ。

 そう、将にここが分水嶺。
 時間軸の分岐点。

 先ずは計画の第一弾だ。
 兎に角、異能者達の注意を俺に引き付けなければ話にならない……。

「すぅぅ……ふぅぅ……」
 人一人の生命が俺の行動の如何に掛かっていると言う事実、その重圧を跳ね返そうと俺は心を落ち着かせるべく息をゆっくりと吸い込み、そしてゆっくりと吐き出す。それを二度三度と繰り返した。
 先の遣り取りを見る限り、朝比奈さんに注意を払う必要はなさそうだと判断し、古泉と長門に神経を集中させる俺。何となれば、状況が状況である、戦闘行為的に危険度皆無な朝比奈さんとは言え、注視すべき対象が減ったと言う事実は大きな安心材料となる。
 それだけでも精神的余裕を生み出す助けとなった。
「ふぅぅぅ……」
 逡巡していても埒は明かない。
 一歩を踏み出さなければ。
 黙って座視して居ても、時は進み状況は悪化する一方なのだから。

 俺は清水の舞台から重石付きで飛び降りるが如き悲壮感で以って、連中の注意を引き付けるべく「おい、お前ら!?」と荒々しく声を掛けた。
 
 ここだ、この一瞬だけは演じ切れ、俺よ!! 
 そうさ、俺にはハルヒを救い出すプランがあるのだ。
 それは完璧なんだ、瑕疵何ざ全くないんだ、そう信じこめっ。

 古泉と長門の注意がこちらに向いた瞬間、俺は己自身に自己暗示を掛けつつ自信満々に携帯端末を掲げ、敢えて挑発気味にプラプラと振って見せる。
「残念ながらな、どれだけ綿密な計画を立てようが、俺がハルヒに一言告げれば全てはご破算なんだぜ?」
 連中が言葉を挟む前に余裕綽々に講釈を垂れる。そう、連中の意識の幾割かでも俺に割かせるために。
 そんな俺の耳が妙な音を捉えたのはそんな時であった。

 幻聴なのだろうか、リズミカルな駆け足の音が廊下の向こうに広がる闇から微かに聞こえてきたのだ。
 気のせいだろうか、それが徐々に大きくはっきりしていくのは。
 
 ははっ、まだ早過ぎる、気のせいだろ、気のせいに違いない。と言う俺の甘い願望は即座に打ち砕かれた。

「涼宮ハルヒが……」
「……来ましたね」

 俺から視線を外す事なく異能者二人が呟き、途端に物理的圧力を伴う緊張感が満ちていく。
 鼓動が激しさを増した。
 一刻の猶予も無い、連中が事を起こしちまう前にこちらのペースに巻き込み続けなければ。
 奴らに決断させてはならない。
 行動させてはこちらの負けだ。
 俺は異能者の呟きをスルーし、満腔の自信を込めて言葉を続ける。

「お前らも知っているだろ? 追い込まれた時の俺の集中力を? 今まで何度危機を乗り越えてきたと思ってる? その経験を、そして、俺とハルヒを甘く見るなよ?」
 
 自分で口にするのも何だがな、こんな戯言何ざ無視しとけばいいものを———俺が発した侮蔑を愚民からの挑発と取ってくれたらしい———周囲に淡い赤光を放ちつつ古泉が返事を寄こしてきたのだが、相も変わらず律儀な奴である、今だけは感謝しておこう。
「ふふ、確かにそれは認めざるを得ない主張ではありますが……ですが、残念な事に現状では説得力がありません」
「…………」
「現に先程通話は切られてしまいましたよね? そして、涼宮さんの性格は僕も把握している心算です。ふふ、再度電話に出るとは考えられません」
「…………」
「更に指摘すれば、貴方の呼び出しに答えるよりも此処に現れる事を優先するでしょう、涼宮さんならば……ふふ、違いますか?」
「…………」
 流石は冷静沈着な副団長古泉さんである。完璧な状況分析であり、普段の俺なら素直に兜を脱ぐところだが、済まんな、今の俺の辞書には正々堂々って単語は載ってないのさ。
 口を開かない俺の反応に気を良くしたのか、それを知らずに説明好きな古泉さんは口を滑らかに動かし続け、
「そうです。貴方もお解かりでしょう……先程からの努力も空しく、全ては手遅れなのですよ」
と憐憫の情も露にヒョイっと肩を竦めやがり、だが、俺は平然とそれに対応したのだった。今にも心臓が破裂しそうな程激しくビートを刻んでいるのを噯気にも出さず、俺はニヤリと笑って演技を続ける。
「それが、俺たちを甘く見てるって証左だぜ、古泉?」
 首をやれやれと振りつつ淡々と指摘し、「幾度、お前の予想がハルヒに覆されたか思い出してみろ? そして、それをどうにかしてきたのは、お前じゃない……」と小馬鹿にした様に鼻を鳴らしつつ、自慢げに己の胸を指した。
「そう、言うまでも無い、この俺だ」
「…………」
 その指摘は古泉のプライドをバッチリ直撃したらしい、超能力者の表情が硬く強張るのを確認した上で、俺は更なる追撃を放つのだった。
「この際だ、断言してやるよ。お前は俺に勝てないのさ、これまでもこれからもな」
「……残念ですよ、上から危害を加えるなと命じられていなければ、即座に光弾を叩き込んで差し上げるのですがね」
 古泉の憎しみに満ちた刺々しい言葉が自分自身に叩きつけられるのを他人事の様に受け止めながら、
「先に明言しておくぜ? 今のうちに俺の息を止めておかないと後悔するとな」
 ニヤリと頬を歪め勝ち誇ると同時に嘲笑しつつ二の矢を放ち、だが、俺の思惑とは異なり、それに反応したのは長門だった。
「ふふ、健気だね、キョン君!! でも、無駄なのっ。朝倉涼子の時と違って誰も助けは来ないんだからさ!!」
「…………」
 行き成り横から口を挟んできた文芸部部長に俺はゆっくりと向き直りつつ、これで古泉に続き長門の意識を引付ける事が出来たのだ、内心では「しめた!!」と喝采を上げていたのだった。それを表情に出さない様細心の注意を払いつつ、これ幸いと俺は哀れみの表情を浮かべながら幼子に教え諭す口調で持って指摘してやる。
「やれやれ、長門もまだまだ俺の事を、いや、人類の事を理解し切れてないんだな……」
「……ん? それってどーゆー事なのさ?」
「まぁ、焦るなよ……今から見せてやるさ、人間の底力って奴をな」
 堂々と言い放つ俺の自信の根源が理解出来ないからであろう、古泉も長門も俺の言動に引きずり込まれ、何処となく落ち着かない様子である。
 まさに「為て遣ったり」って所なんだが、ぶっちゃけ我ながらこれ程の演技力があるとは予想外だ、この件が無事に片付いたら演技部に仮入部でもしてみるか? と妙な事を頭の片隅で考えていたからだろう……俺が携帯を光の速さで耳に当てるのと、それに反応し連中が対ハルヒ迎撃用シフトを崩して俺へと向き直るのと、どちらが早かったか分からない。
 だが、策の仕上げである、連中の動揺を大きくするべく俺は侮蔑的&自信満々に言い放った。ニヤリと唇を歪めつつ。
「悪いな、2人とも……お前らの読みは大外れだ。既にハルヒを呼び出し終わってるのさ。だから、言っただろ? 甘く見るなって」
「!?」
 その瞬間、連中が確実に動揺したのを俺は見て取った。
 そりゃそうだろう、理不尽極まりないルールでは有るが、一言俺が切り札を告げちまえば全てはご破算なのだ。
 だからである、異能者達が攻撃標的を俺へと変更したのは至極当然な判断だと言えたのだが、それが俺の計画通りであるとは流石の古泉達も気が付くまい。
 珍しくも愕然とした表情のまま長門が例の高速言語を囀り始め、それに同調しつつ、先程の報復とばかりに明確なる殺意を俺に向けながら、古泉がその身を赤く染め上げる。
 恐らく二人の意識からは「涼宮ハルヒ」の名前は掻き消えている事だろう。

 そんな2人から明確な敵意を向けられながら、それ故に俺は計画の成就を確信し、そして……最後の行動に出るのだった。

*****

「だから、甘く見るなと言った!!」
 連中に語気鋭く言い放ちつつ、耳に当てていた携帯を古泉に向けて、俺は行き成り力一杯投げつけたのだ。
「!?」
 直後、まるで古泉の心境を表すかの如く、その周囲から赤光が掻き消える。超能力者は愕然とした表情のまま飛来した端末を慌てて右手で払い除け、宇宙人娘はと言うと、呪文詠唱を忘れたようで、呆気に取られた顔付きで俺と古泉とを交互に見遣っていた。
 恐らく俺が命綱でもある携帯を手放すとは予想だにしていなかったに違いない、連中が息を呑み戸惑う気配が明確に伝播し、内心俺は北叟笑む。
 古泉は兎も角、長門が想定外の事態に弱いってのは予想通りであった。まぁ、その辺りは長門の能力と言うよりは経験不足なんだが、済まんな、今回は其処を突かせて貰う。
 そんな偽悪的な事を考えるよりも早く俺は身を翻していたのだが、その目標は言うまでも無い、ハルヒが脇目も振らずに此方へと向かってるであろう廊下であった。
 そう、ここまでくればお解かりであろう、先程から単純明快と言い続けていた理由が。
 理外の行動を選択する事で、理知的な連中の虚を突き一時的にでも混乱させ、そして、連中が立ち直る前にハルヒと邂逅する事だけを目的にし、ぶっちゃけると、それ以外に策らしい策も無い訳で、正直に言えば作戦と銘打って良いのかどうか自信はなく、その上、その成否は如何に奴らがどれだけ冷静さを失ってくれるかに掛かっていると言う何とも他人任せな訳だったのだが、結果はご覧の通りである。まさか此処まで思惑通りに事が推移するとは、これぞ望外の喜びって奴だ。

 しかし、俺はそれに浸る事無く疾駆を開始した。
 連中が我を取り戻す前に突入しなきゃ元も子もないのだ。

 そして、先程も言及した通り、廊下の出入り口までの距離はおよそ5m。ホンの数秒で到達出来る距離だ。横目でチラリと窺うと連中は俺へのカウンターを試みる事も無く、どうやら未だ精神的に立ち直っていないようであった。
 ぶっちゃけ連中からの妨害工作さえなければ、何も怖いものは無い。
 「策は成った」と言う意識が俺の心を沸き立たせ、それに追随するが如く疾走速度も上がったような気もする。高揚感に包まれつつ、一歩、また一歩と俺は一心不乱に中庭を疾駆。そして、猛ダッシュのおかげでその距離を一気に踏破した俺は、沸き立つ心の赴くまま、意味も無く三段跳びとばかりに眼前に迫った廊下へと思いっ切りジャンプしていたのである。
 ふわり……と心地良い浮遊感が俺の身体を包み込む。
 思わず「よっと!!」と妙な声が漏れた。
 その弾む掛け声の現す通り、その時の俺の心は、異能者を出し抜いたと言う満足感とハルヒを救えたと言う安堵感で満たされていたのだ。

 だが……その至福の時が、呆気無く崩れ去る事になろうとは、この時の俺は知る由も無かったのである。

*****

 それが発生したのは、俺が中空を飛翔し、身体がその最頂点に達した時の事であった。

 俺の背後———詰まり、異能者達が居る方向である———で「パンッ」と言う奇妙な破裂音が響いたのである。それは、紙袋に空気を詰めて口を閉じ、そして、それを思いっ切り破裂させた時の音に似ていた。と想起する暇も無く俺の右背面に何か硬い物がぶつかった様な強烈な衝撃と鈍痛が奔る。
「!?」
 行き成りの事で、何が起こったのか理解出来ない。
 だが、事態は俺の混乱を他所に進行していく。
 慣性の法則と言う有難い物理的理由によりベクトルを捻じ曲げられた俺の身体は———空中に居ると言い不安定な状態だった事も有り———脆くも体勢を崩した。
 想定外の出来事で咄嗟に受身すら取る事も叶わない。
 俺は無様に頭から地面へと墜落し、地面を派手に転がる羽目になった。
 土煙が舞い天地が二転三転する。
 と同時に脳内で「???」が乱舞した。
 その混乱状態は、俺が轟音を立てて廊下入口の三方枠に激突するまで続いたのだ。

*****

「……つぅぅぅ」
 派手に肩口から三方枠に突っ込み、その速度やら何やらを其処に叩き付ける事で、漸く俺の身体は転がる事を停止する。枠に直接ぶち当たった左肩を筆頭に地球と格闘させられた全身が悲鳴を上げる中、痛む身体の節々を労わるより前に、うつ伏せ状態で頭を振り振り俺は反射的に背後を振り返っていた。
 一体全体何が起こったんだ!?
と言う当然の疑問への回答は即座に見出す事が出来たのだが……俺は一瞬己の目を疑った。
 そう、俺は見たのだ……未だ立ち尽くしていた古泉達の背後で、得意げな表情を浮かべる未来人の姿を。俺に向かって突き出された両手に握られていた銃の様な物体を。
「…………」
 俺の視線に気が付いたのだろう、朝比奈さんはワザとらしく手に持っているそれを口元に運び、西部劇に出てくるガンマンの如く微かに漂っている煙を「ふっ」と吹き消す。そして、ニヤリと笑って嘲笑交じりに解説してくれた。

 まぁ、それを簡単に纏めるとだ、今、朝比奈さんが使ったのは未来的アイテムの一つで、厚紙を銃の形に組み立てて特殊な薬剤を塗布した特殊工作員用一発こっきりの使い捨て護身銃なんだと。強度の関係で実弾は使えず、その代わりに空砲の放つ衝撃波を増幅させる事で当たり所が良ければ相手が気絶してくれるかも……と言う何とも運任せな上、色々と不具合があって現場の人間には不評だとか何とか。

「…………」
 成程、先の背中に喰らった打撃は衝撃波の様な物かと納得しつつ、得々と為たり顔で説明している未来人さんには悪いが、元々ミリタリーオタクでもない上に、目下の最大関心事はハルヒと如何に素早く接触するかであり、そんな未来兵器の解説何ざ、寸毫も心惹かれる事は無く、故に、俺は連中に気付かれないようゆっくりと身体を起こそうと試み、その直後に全身を貫いた激痛にのたうち回る事となった。
「グオ!?」
 突然襲来した想像を絶する痛みのため呼吸が止まった。
 一気に脂汗が噴き出す。
 鼓動と連動しこめかみがドクンドクンと脈打った。
 再度地面にへたり込みながら、反射的に激痛の震源地となっている左肩に右手がゆっくりと伸びる。
「…………」
 そして、震える手で触って初めて、自分の左手が肩を中心にして妙な方向に捻じ曲がっている事に気が付いた。人体の構造上有り得ない角度であり、ホンの僅かの振動でも其処を起点に脳天を貫く激痛が奔ると言う事実を総合すると、肩が外れているか、少なくとも折れているに違いない。
 まぁ、さっきの前転受け身失敗バージョンでこれでもかと校舎に特攻したしな……然も在り何って感じだ、と頭の片隅で思考しつつ、だが、現実には全身を冷や汗で濡らしながら身体を痙攣させて、その痛みに耐える俺であったのだが、以前朝倉に刺されたアレに匹敵する痛みの前には無駄な抵抗らしく、体力と気力とがゆっくりと、しかし確実に消滅していくのが自分でも分かった。
 意識が朦朧とする中、「これは不味い」と思うよりも前に———間が悪い時には悪い事が重なる物である———俺が目標としていた廊下の奥から誰かが走り来るリズミカルな足音が響き、その正体について今更言及する必要はあるまい、そう、涼宮ハルヒその人の登場であった。

 なんて最悪なタイミングで来やがるんだ、アイツは!?

 ハルヒの立場からすると相当理不尽な事を考えつつ、しかし、そのお陰で俺は全身を蝕む激痛を一瞬だけ忘れ去る事が出来た。勿論、肩が元通りになった訳ではない、寧ろ、それらを凌駕し精神を暗黒に染め上げる絶望的未来予測のせいである。

 考えてもみろ、俺が気が付いた事を長門や古泉が察知出来ない筈が無いのだ……それはつまり……ハルヒの身の危険———って言うか生命の危機———が現実のモノに……。

 その瞬間、激痛を顧みず俺は勢い良く顔を上げつつ廊下の奥へと絶叫していた。

「ハルヒッ!? 今直ぐ、逃げろ!!!!」

 だが、叫び終わると同時に、その無理が祟ったのかどうか、先に勝る激痛が全身を駆け巡り、俺は文字通り地面をのたうち回った。
 今にも心が折れそうになる。
 自らの呻き声と暴れ回る身体の起こす騒音に満たされながら、それでも、俺の耳は団長様の声を捉えていた。

「逃げろですって!? このバカキョ……ってあんた、まさか怪我して……?」

 どうやら廊下と中庭の狭間で倒れ伏し呻き転がる俺の姿から状況を瞬時に悟ったらしい、詰問口調が途中から俺を心配する物へと変化する。
 だが、俺の事はどうでもいいんだ、寧ろ、ヤバいのはお前であって……。
「た、頼むっ、ハルヒ!! お前は……狙われ、に、逃げて、くれっ」
 涙交じりの懇願であったのだが、言い切った瞬間、俺は即座に己自身の失敗に気が付いた。

 待てっ!?

 ……相手はあのハルヒだぞ? 
 行き成り逃げろと言われて、素直に逃げるか? 
 それも困難に遭遇しているであろう仲間を見捨てて……。
 有り得ない……。
 じゃあ、こんな時、仲間想いのハルヒはどんな選択をする?

 その自問自答に俺自身が答える前に、ハルヒはその回答を実際の行動で示してくれた。
「待ってなさい、キョン!! 良く分かんないけど、今直ぐ助けに行ってあげるからっ」
と元気良く声を出すと同時に走り出したらしく、途絶えていた足音が再び廊下に響き出す。
「!? ま……て、ハル、ヒッ」
 途切れ途切れの呼び掛けを無視し、リズミカルな靴音が此方へ近付くのに比例する様に、俺の内部で焦燥感は濃度を増していき、と同時に名称不詳な混沌とした負の感情が増大していった。
 それに呼応するかの如く俺の意識は、絶え間無く襲い来る耐え難き痛みから逃避しようと、刻一刻と希薄になっていく。
 そして、身体はと言うと、インフルエンザに罹患した様にカカッと熱いにも係わらず、凄まじい寒気に包まれ吐き気を覚えるほどであった。
 体内の水分を全て使い切る勢いで吹き出る冷汗と脂汗のお陰で全身はグッショリと濡れ、その上、地面を転げ回ったせいで服から何から砂塗れと言う酸々たる有様だ。
 身も心もズタボロで状況に適応出来そうにない俺なんだが、諦め悪くも朦朧とする意識を必死に繋ぎ留めつつ、打開策を模索しようとしていた。

 何かあった筈だ……。

と言う揺ぎ無い確信だけが唯一の拠り所であり、連続して発生した衝撃群のせいで何処かに吹き飛んだらしい、その「必殺技的決定打な何か」を思い出そうと喘ぎながら記憶を遡ろうとした矢先の事であった、俺の努力を嘲笑うかの如く状況が最悪な方向へと推移したのは。

*****

 それは駆け足と言う形で俺の聴覚から意識に伝えられた。
 いや、ハルヒが此方へ向かってくるヤツだけならば、まだどうにか対応策があるかも知れん。
 だが、そう、今俺の耳に届いたそれは、廊下とは反対側の中庭側から聞こえて来たのだ。
 それも2人分……。

「…………」
 考えるまでも無い。
 それが意味するものは明白だった。
 其方には連中しかいないのだから。
 それらが言葉を交わす事無く、しかし、明らかな殺意を漂わせて廊下目掛けて突進してくるのだ、古泉や長門が立ち直ったのは確認するまでも無い。
 そして、我を取り戻した奴らが次に目指すモノはと言うと……。

 そこまで考えてみれば、必死になって画策した一連の工作が失敗に終わったのを悟らざるを得ず、そのお陰で図らずも発生した濃密で巨大な絶望感が、微かに残っていた希望的観測を飲み込み蹂躙していく様は余りにも強烈で、残り少ない精神力と気力が壊死していくのを自覚する俺。
 そして、止めとなったのは、半死半生状態で地面に横たわったまま虚ろな視線を向ける俺に、古泉と長門が一瞥もくれないまま走り抜けた事であった。

 それは俺の存在意義が、今この瞬間に消え去った事を如実に示していたのだ。

 それを俺は理性ではなく本能で悟り、と同時に、心を繋ぎとめていた何かが「ブツリ……」と切れたようである、一気に俺の精神は虚無感に包まれた。

 何もかもが嫌になる。

 俺は心地良い絶望感に身を任せ……目を閉じた。

「…………」

 廊下の奥から何か悲鳴の様なものが聞こえてきた……。
 何処からか未来人の嘲笑も響いている様な気がする……。
 それらを覆い隠す様な派手な爆発音も発生したらしい……。

 だが、俺の魂はそれらを拒絶するかの如く、全き暗黒の中へと堕ちていくのだった。
 それであらゆる事象から開放されるのだと信じ込みつつ。

 それが神の恩寵なのか……悪魔の策謀なのか……俺には判らなかった、いや、違うな、判りたくも無かったのだ。

 だから、俺は……。

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 地球人類危機一髪!? (1)
★★★長編SS(完結)★★★ (35)
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 うんうん、笑顔って重要だよね!! (18)
★★★エッチィSS★★★ (1)

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