女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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It’s A  “わんderful” World①(ハルハル視点)

It’s A “わんderful”  World


粗筋:あら、何この子、迷子かしら……あたしが保護してあげるわね!!


「続きを読む」からは ……

 ハルハル視点①:
【忠犬ハチ公を見習いなさいっ(あんたは今日から豆キョンよ!!)】


……になりまーす(^▽^)/


*****

 今日は土曜日。
 大型連休が終わって、少しすれば梅雨って呼ばれる気の滅入っちゃう季節に突入するって……そんな時期だった。

 
 
あたしは目を細め手を翳しながら、空を見上げた。
 ちらほらと雲が浮かんでいるのがマイナス要素だけど、強いて言えば、初夏って言えなくも無い心地良い天候とも表現出来る空だったわ。

 
 
それにも増して、待ちに待ったSOS団恒例不思議探索の日でもあるって事実が、あたしをこれでもかと浮き立たせるの。
 だからって訳じゃないけど、あたしは朝早くにも係わらず、「行って来まーす」と元気良く玄関を飛び出していた。

 
 
こんなに早く出ちゃったら、若しかすると、待ち合わせの場所に一番乗りかも!! 

 
 
そー思うと、更に足取りが軽くなったわ。

 
 
一晩寝たら苛々も何処かに吹き飛んじゃったし、うん、こんな気分だったら、キョンと会っても喧嘩しなくて済みそう……アイツが遅刻して来なければね。って事は喧嘩になっちゃうの確定って事じゃない!!

と1人漫才をしながら、でも、あたしは鼻歌交じりで呟くの。

「いい事、キョン? 今日位はあたしを怒らせないでよ?」

 
 
そんなあたしの気分に比例してか、お天道様も機嫌良さそうだった。鼻歌交じりに莫大な熱量を地球に送り込んでいる筈なんだけど、それでいて過ごし易い気温だって言うんだから、もう完璧不思議探索日和だわ!!

 
 
なんだか、今日こそ不思議な体験が出来そうね!!

 
 
あたしはご機嫌な天気に合わせて、何と無く元気一杯に動き回りそうな予感を感じ取り、青を基調とした活動的な服装を選択していた。
 
 ネイビーブルーのシンプルTシャツの上に、ちょっと大き目のホワイトパーカーを羽織り、ダークブルーのデニムミニに黒のニーソックス。靴はスポーティなブルーのスニーカー。

 
 
うん、これなら大抵の事には、問題なく対応出来るもんね!!

 

と自分のコーディネートを自画自賛し、初夏めいた穏やかな日差しの下、あたしは跳ねる様な足取りで最寄り駅に向かうの。

 

「ふんふふーん♪ やっ♪ おー♪」

と鼻歌を歌っていると、何故か昨日のキョンの顰め面を思い出し、何だかイラッときちゃったあたしは、やっぱり文句の1つでも言ってやろうと考え直した。
 自然と足取りも重くなる。

「ホントに、キョンってば……」

と独り言を呟いて、足元の石を1つ蹴飛ばす。
 コロコロリンと転がっていく小石を目で追い、ちょっぴり昨日の遣り取りを思い返すあたし。

 
 キョンってば、折角、人が面白いプランを考え付いたのに、その計画は無茶無謀だとか何とかイチャモンばかり付けるんだもん。

 
 「恐竜探し」の何処がいけないって言うのかしらね? 
 ホントにもう、古泉君を見習って団長を敬いなさい!! って言うか雑用の癖にっ……って感じよねぇ?

 

とそんな事を思い返していると、何時の間にやら近所の公園の傍を通り過ぎるところだった。
 何とはなしに歩を緩めながら、初夏らしく新緑に包まれた木々を眺めていると、

「ワオォォーン」

って公園の中からワンちゃんの遠吠えが聞こえてきたわ。

 ……こんな微妙な時間に遠吠え? 変なの。


とあたしは小首を捻る。
 気のせいだか、人生の不条理を訴える様な悲哀を感じさせる鳴き声だった。

「???」
 あたしが少なからず興味を引かれ、歩む方向を最寄り駅から公園へと変更した瞬間、

「ワワンッ、キャッウゥゥーン!!」

って同じワンちゃんの遠吠えが響き渡った。
 さっきと同じ様に悲憤塗れの鳴き声なんだけど、今回のモノは先程のヤツとは内容が違っているってあたしは直感した。
 したんだけど……どーしてだか、悪口を言われた様な気がしたあたしは、一瞬で気分を害したわ。

 

「ハルヒのっ、馬っ鹿野郎!!」

 
 
……何故か、その遠吠えがそう訴えてる気がして、あたしはムッとしながら歩みを速める。

 
 
このあたしを誹謗するとは、ワンコロのくせにイイ度胸じゃない!?

 
 
本当にそーゆー意味だったのかどーか判らないにも係わらず、あたしはプンプンしつつ公園へと入ったの。
 そのワンコロに一言文句を言ってやろうと決心しながら。

 

*****

 
 
不敬罪確定のワンコロはどこかしら?

 
 
あたしはそんな事を考えながら周囲をキョロキョロと見渡した。
 土曜日の朝早くだからか、公園内には誰も居ない。
 件のワンちゃんも姿が見えなかった。

「あれ? 確かに遠吠えは此処から聞こえたんだけどなぁ?」

って小首を傾げたあたしを、サラサラとした微風に戦ぐ葉擦れの音だけが優しく包み込む。
 そんな心地良い微風に頬を撫でられていると、不思議と気分が落ち着いていくのが判った。

「あら、いい風ね!!」

と独り言を呟きながら、そんな気分に促がされあたしは伸びを1つ。

 
 
良く考えたら、文句を言われる様なワンちゃんに知り合いは居ないし……ま、ワンコロの一匹や二匹、気にする事でもないわね? うん、見逃してあげましょう!!

 

って寛大な気持ちになったあたしは、でも、折角だからと公園に入った。
 反対側の出口を目指して、元気良くテッテケテッテケと歩を進める。

 
 
最寄り駅に行くには少し遠回りだけど、偶にはいいわよね? あ、でも、皆を待たせちゃかな?

 

とワンちゃんの事を綺麗さっぱり忘れ、「急いで駅へと向かうべきよねっ」……と力強く頷いた時、公園の垣根として群生してる椿の茂みから、ガサゴソと怪しげな音が聞こえたの。
 まるで「やれやれ。俺を放って置く心算なのか、お前は?」って感じで、将にあたしを引き止める様なタイミングだった。

「ん?」
 あたしは足を止め、カサコソ揺れる椿の茂みを繁々と観察する。
 何かが茂みの中で動き回っているみたいだった。
 それは茂みを突っ切り奥から手前へ———詰まりはあたし目指して———移動しているみたいなの。
 茂みの揺れ方から「どーやら小さい生き物みたいね」と推測しつつ、

 
 
むっ、何奴!? 

 

と内心誰何するあたし。
 好奇心をちょっぴりどころか、滅茶苦茶刺激された。
 何と無く面白い事が起こりそうな予感も、ドドンとあたしの背中を押す。
 その感覚に素直に従い、不思議探索の事を一旦棚に上げて、ヒョイッと方向転換し茂みへと向かってみた。


 抜き足差し足忍び足……。

「…………」
 鳩かしら? 猫かしら? それとも……ってドキドキしながら、手で茂みを掻き分けソッと覗き込もうとした瞬間、茶色い何かが茂みを勢い良く飛び出し、あたしの右足にぶつかってきたわ。
 迂闊にも避ける事が出来ず、ドシンって衝撃があたしを蹌踉めかす。

「きゃ!?」

「きゃうん!?」
 大小2つの異なる悲鳴が上がる中、あたしは崩れかけた体勢をどーにか保持しながら、自分の足元を眺めた。
 其処には、茶色い体毛の小犬が一匹フニャっと蹲っていたわ。
 体長は40cm程度。
 本当に子犬だった。

 
 
若しかすると、さっきの遠吠えもこの子かも!!

 

と興味を覚えて繁々と眺めていると、その子犬、どうやらお鼻をぶつけたのか、「痛てて……」と言わんばかりにクーンクーン鳴いているの。
 蹲った体勢のまま、目を細めて頻りと前足で鼻を摩っているその仕草が妙に人間臭くて、あたしは思わず微笑んじゃった。

「あら、可愛いわね!!」

とあたしが膝に両手を当てたまま勢い良くしゃがむと、その子は初めてあたしに気が付きましたって感じで、ヒョイっと顔を上げた。
 間近で視線が交わる。
 クリクリとした円らな瞳が愛くるしい。
 何やら人間のもつ愛護精神を豪く刺激する存在だった。
 あたしは思わずニッコリと微笑んじゃう。
 
 その子は特に変哲も無い一般的な柴犬っぽい。
 若しかすると、豆柴って言われる種類かもしれないわね、って言うか、そっちの方が可愛いし豆柴君と呼んじゃおっと。
 
 その豆柴君、殆どの体毛は茶色一色なのに、右目の周りだけが真っ白なのが目立つの。チョッピリ垂れた目のせいか、何処と無く愛嬌の有る顔立ちだった。

 
 
多分、この子はのんびり屋さんでお人好しだわ!!

 

と理由も無く決め付けていると、あたしの顔をポケっと見上げていた豆柴君はヒョイって視線を下げたかと思うと、ギクッと暫し行動を止めた。
 パチクリと数回瞬きしてから、一点を凝視する。
 そして———何を思い付いたのか———激しく首を振った後に、行き成り大慌てし出したの。 
 オロオロと上下左右を眺め回し、何かから視線を外し彷徨わせる風情だった。
 あたしが全く理解出来ずに「???」って見詰める中、何やら決心したのかコックリ大きく頷き、

「キャン!? ワンワン!?」

と悲壮感溢れる声で鳴きながら、あたしと茂みに背を向け、公園の中目掛けて一目散に逃げようとするの。
 その姿がヌイグルミがコロコロ走っているみたいで、目茶苦茶可愛らしい。
 でも、その必死で逃亡する後姿は、あたしの中の狩猟本能をビンビンに刺激した。

「あっ、こら、待ちなさい!!」

と反射的に一言叫んで、あたしは本能に促されるまま、豆柴君に倍する速度でダッシュした。

 
 
何だか判らないけど、絶対に逃がさないんだからね!!

 

*****

 
 
公園内を所狭しと走り回る豆柴君。
 その小さい身体で一生懸命走り回る様は本気で微笑ましい。
 豆柴君は右に走ってはキャンキャンと吠え、左に駆け出してはアンアンと鳴くの。

「こらー、待ちなさぁぁぁい」
 あたしは負けじと走りその後姿を追う。
 気分は将にガゼルを追い駆けるチーターだった。
 豆柴君は幾度も振り返りあたしを確認するんだけど、この子は何であたしから逃げようとしているのかしらね? って疑問を感じながら、でも、あたしは手を抜かず全力で豆柴君を追い駆けた。

「ふっふっふ、このあたしから逃げ出そう何て10年早いわよ!?」

「キャウーン」
 そして、20秒程鬼ごっこが継続され、伸ばせば豆柴君に手が届きそうだと思った瞬間、子犬はあたしの眼前で突如としてクイックターンを試み、でも、足を縺れさせて派手にコロコロコロンと転がった。
 公園中央でモワっと砂埃が舞い上がる。
 身体の回転が収まり、砂埃が落ち着いてみると、地面に四肢を投げ出しペタンと蹲る豆柴君の姿が、あたしの視界に飛び込んできたの。

 ホントにヌイグルミみたいだった。


 その姿にポワワンとしながら、あたしは「大丈夫? 怪我してない?」って心配して、その傍にテッテッテと駆け寄る。
 豆柴君は「燃え尽きたぜ……」って真っ白な灰になっちゃったみたいな雰囲気を身に纏い、激しい呼吸の合間に、身動きもせず「クゥゥン」とあたしを見上げた。


 その様子を見る限り怪我はしてないみたいね……。


とあたしは安心しつつ、舌を出しハァハァゼェゼェと苦しげな呼吸を繰り返す豆柴君をあっさりと捕獲し、高々と抱き上げた。

「ふっふっふ、このあたしから逃げようだなんて、そうは問屋が卸さないんだからね!!」

と意味も無く勝利宣言をしていると、あたしの手の中で諦め悪くジタバタしていた豆柴君は、

「キャウウン……クーンクーン」

と哀しげな声を上げ大人しくなった。

 
 
うん、宜しい!! 別に採って喰おうって訳じゃないんだから安心しなさいっ。

 

と内心大きく頷き、あたしはそのワンちゃんをしっかり胸に抱き締め、この子との接触をもっと楽しむためベンチを目指して歩き出した。

 

*****

 
 
勝利の快感に酔い、

「ふんふーん♪」

と鼻歌交じりにスキップするあたし。
 その腕の中に抱かれた豆柴君は、何気にスンスンとあたしの身体を嗅ぎ、何やら満足げにキャンキャンと小さく鳴くの。

「あら、機嫌が良さそうね!?」

と至近距離から豆柴君を観察していると、何故か大慌てで視線を外された。
 人間だったら真っ赤になってそうな雰囲気だった。

「ふふ、あんた、照れ屋さんなのね?」

って呟きつつ、その最中も最高級のヌイグルミちっくな手触りが心地良く、あたしの手は自然と豆柴君の背中を撫でていたわ。
 何だか、柔軟剤を使って天日干ししたフカフカの新品タオルケットみたいで、癖になりそうな柔らかい手触りだった。
 豆柴君も諦観気味に大人しくしている割には、その尻尾が大きく揺れてて、実際は喜んでいるっぽいのが微笑ましい。

 
 
その素直じゃない捻くれた反応がキョンっぽいわね!!

 

って考えつつ、あたしは静かにベンチへ腰掛けた。
 その背中を優しく撫でてあげながら、ふと気になって豆柴君を再度観察する。全身を隈なく隅々まで。

 
 
首輪は着けていない。でも、毛並みはイイ感じだし、ブラッシングもしっかりとされているっぽい。

 

 ……と言う事は? 

 

って思いながら、

「ねぇ? あんた、誰かに飼われてるの?」

と抱きかかえている豆柴君に問い掛けると、瞬時に反応が返ってきて、

「ワワン!?」

って至近距離から元気に返事をされた。
 何と無く「んな訳あるか!?」って突っ込まれた様な気がして、あたしは微苦笑を浮かべる。

 
 
ホント、キョンみたいな反応をするワンちゃんね……。

 

「じゃあ、あんたは、誰かに飼われてる訳じゃないのね? 野良犬って事?」

って尋ねると、豆柴君は小首を傾げ「クゥゥゥン」と鳴いた。
 何でだか、「まぁ、何だ、説明の仕様が無いんだがなぁ」って感じで、豆柴君が困り果ててる気がしたんだけど、あたしは気にもせず、でもちょっぴり考え込む。

 
 
若し野良犬だとすると、この子、こんなに小さいし可愛いし、このまま放っておくのは可哀想よね? だったら、飼ってあげちゃおうかしら!?
 問題は家の両親だけど……うーん、父さんや母さんも犬っころは大好きだし、まぁ、何とかなるでしょ?

 

とあっさり自己完結したあたしは元気に宣言する。

 
 
すっかり子のこの面倒を見る気満々で。

 

「判ったわ!! 行き掛かりとは言え、あんたを助けちゃった責任があたしにはあるからね、うん、しっかりきっかり最後まで面倒を見てあげるわっ」

「……キャン?」

「うーん、今日から家族になるんだし、あんたとか豆柴君って呼ぶのも他人行儀よね? 何かイイ名前を付けてあげましょう」

「…………」
 話の流れに付いていけないのか、豆柴君の呆気に取られているっぽい表情を見ていると、突然、昨日のキョンとの遣り取りを思い出した。

 

「あんた、いい加減にしなさいよ?」

「そっくり、その言葉をお前に返すぜ?」

「ホンットに可愛くないんだから!! いい事? あんたに足りないのは団長に対する忠誠心なのっ。だから、しっかりきっかりばっちりと、忠犬ハチ公を見習わないといけないんだからねっ。判ったわね、キョン!?」

「断る」

「即答するな、バカキョン!! ……もう、あんたはホントにっ、忠犬ハチ公を見習いなさいっ。これ、団長命令なんだからね!!」

 
 
何が「断る」……よ、バカキョン!? ホントに団長の心遣いが理解出来ないんだから。

 

って内心再びキョンへと文句を叩き付けていると、あたしの腕の中で、モジモジと身体を動かし「クゥゥン?」って困った感じの鳴き声をあげてる豆柴君の存在を思い出した。
 その愛くるしい瞳と行動を見ていると、行き成り、あたしの脳裏に天からの啓示が示されたの。

「!?」
 
 あたしはそれに激しく大きく同意する。

 
 
……うん、そーよね!! だったら、この子をしっかりと躾けて、キョンのお手本にしちゃおう!! 
 間近に史上最高の超忠犬が存在すれば、如何なキョンとて、心を入れ替え立派な雑用に変身するに違いないわ!!

 

とあたしは心の中で大きく頷き、そして、豆柴君を高々と抱え上げ、元気に名前を付けてあげる事にするの。

 
 
豆柴君とバカキョンを足してみると……あら、イイ感じじゃない!?

 

「あはっ、うん、あんたは今日から豆キョンよ!!」

「キャウン!?」

 

って豆柴君のビックリした様な甲高い鳴き声が、人気の無い公園に木霊した。

 

*****

 
 
でも、「豆キョン」って名前はお気に召さなかったのか、豆柴君は容易に返事をしてくれなかった。

 
 
あたしは幾度「豆キョン?」って呼び掛けた事か……。

 
 
その度に恨めしげにあたしを見詰め、豆柴君は溜息を吐き弱々しく首を振るの。
 まるで誰かさんの「やれやれ」って呆れ果てた仕草にそっくりだった。

 
 
……そんなに嫌なのかしら?

 

って疑問に思いながら、背中やお腹を優しくソッと撫でてあげると、豆柴君は気持ち良さそうにフニャと弛緩し、幾度もファァァ……と大欠伸。

「クゥゥン……」

って今にも微睡みそうな蕩け切った鳴き声を聞くに、あたしが嫌いって訳でもなさそうだから、だとするとやっぱり原因は名前よねぇ?

「若しかすると、キョンって言う名前は動物界でも不評なの?」

って誰とも無しに呟くと、

「お前、失礼にも程があるぞ!? ……いや、その前にだ、名前じゃなくてだな、単なる渾名だぞ、それ?」

って感じで、豆キョンはガウガウと不機嫌に鳴くんだけど、華麗に無視してあげるあたし。

「そんなに“キョン”って呼ばれるの……嫌なの?」

「クゥゥン」

と小さく鳴く豆柴君は、困った様な何とも言えない雰囲気を纏っているの。
 そんな豆柴君を見ていると、あたしの中の負けん気がムクムクと首を擡げた。
 人間の意地と言ってもいいかもしれないわね。
 勿論、SOS団団長としての矜持もあるわよ?

 
 
あんたは、今日から豆キョン!!
 あたしがそう決めたの!!
 あんたはね、聞き分けの無い雑用に対する反面教師みたいな存在だから、意地でも名前は代え無いわよ? 
 何が何でも豆キョンって名前で、納得させちゃうんだから!!

 

って考えながら、ゆっくり豆柴君を撫でていると、これまた行き成りピピンと名案が産まれ出たわ。

「あ!! 閃いたっ」

「キャウン!?」

って腕の中で驚愕する豆柴君に、あたしは満面の笑顔でその名案を告げるの。ギュギュって抱き締めながら。

「実際にさ、実物の雑用に会わせてあげるわ」

「……ワン?」

「ソイツが、どれだけヤル気が無くて反抗的なのかを目の当たりにすれば、あんただって……代わりに僕が団長を護ってあげます!!ってなるに違いないんだからっ」

と握り拳を作りながら元気に宣言し、スクッと立ち上がり、徐にポッケから携帯を取り出すと、何故か豆柴君は大慌て。
 ジタバタワタワタしながら、ワンワンキャンキャンと本気で姦しい。
 何やら冷や汗を掻いているっぽい気がしなくも無いんだけど……。
 何故だか「ハルヒ!? ちょ、ちょっと待て!! そ、それは困るっ」って言われた様な錯覚も感じた。

 
 
あたしは豆キョンの反応が理解出来ずに、至近距離からその顔を覗き込み尋ねた。

「??? どーしたのよ、豆キョン?」

「ワ、ワン……」

「あら、初めてきちんと返事をしたわね……んー、豆キョン?」

って小首を傾げ再度呼び掛けると、これまた渋々だけど豆キョンは「クゥゥン」って返事を返した。
 あたしは本気で嬉しくなった。
 心の底から何かがフツフツと沸き上がってくる。
 だから、ニッコリ微笑んでもう1度名前を呼んであげるの。
 至近距離でその瞳を覗き込みながら。

「ふふっ、いい子ね!! まーめ……キョン♪」

「ア、アン……」
 どーしてだか、これまた、悔しげに返事をする豆キョンだったんだけど、あたしは「やっとこの子も、豆キョンって名前に納得したのね!!」って嬉しくなっちゃうの。
 瞬時にキョンの事を忘却の彼方へと追い遣り、再度ベンチに腰掛け、鼻歌交じりで豆キョンを撫でてあげていると、フトある事に気が付いた。

「あ、良く考えたら、携帯とかで呼び出さなくても、これから駅前で会えるわね!!」

「…………」

「良かったわね、豆キョン?」

って笑顔で尋ねたあたしの腕の中で、豆キョンは小さく首を振りながら微かにキャンキャンって鳴いた。
 まるで「やれやれ」って感じの諦観気味な鳴き声だった。

 

*****

 
 
スッタカスッタカ。
 最寄り駅に向かって元気一杯に歩きながら、あたしは抱き締めている豆キョンに、SOS団の説明をしてあげたわ。

 
 
だって、この子は今日からSOS団の番犬なんだもん!! 所属する組織の事を把握させるのは当たり前よね?

 
 
豆キョンの背中を静かに摩りつつ、あたしは色んな事を優しく教えてあげる。
 説明する事5分程、既にSOS団団員の心構えを身に付けたのか、豆キョンも熱心に聞き入り、逐次即座に返事をする姿が微笑ましい。

 

「……って言う訳で、豆キョン。あんたが護らないといけないのは、先ずはあたしでしょ?」

「……まぁ、この際、選択の余地が無いって事でだ、涙を呑んで了承しよう」

「そして、副団長の古泉君に……」

「断る」

「??? ……何で嫌そうに顰め面して唸るのよ、豆キョン?」

「あー、まぁ、何だ、一身上の都合だからな、気にするな」

「まったくもう、有り難い団長の言葉なんだから、笑顔で聞いてなさい。……えっと、それに、みくるちゃんでしょ?」

「朝比奈さん!? そりゃ、当然過ぎてだな、ハルヒに言われるまでも無いぞ?」

「……あんた、何でそんなに嬉しそうなの? まぁ、いいわ……でね、最後になっちゃったけど有希ね。有希を含めて合計4人が護衛対象よ?」

ってあたしが言い終わる前に、豆キョンってば、有希の名前に猛烈に反応したわ。
 尻尾を大きく振り振り、ワンワンキャンキャンと大興奮。
 今にもあたしの腕の中から飛び出しちゃうんじゃないかしら?って位大暴れするの。
 それはまるで、

「そうか、長門が居たじゃないか!! アイツならこの状況を打破してくれるに違いないっ」

とでも言いたそうな、心底嬉しそうな鳴き声だった。
 その大興奮した鳴き声を聞き、大きく揺れる尻尾を目の当たりにしていると、何故かあたしは本物のキョンを思い出した。

 
 
……あいつも有希やみくるちゃんの事となると、こんな感じの反応を返すわよね?

 
 
イラッ……。

 
 
何か心の奥底でドス黒い物が発生した事を悟ったあたしは、そんな感じで浮かれている豆キョンに、その気分のままブッスリと釘を刺して措く事にした。

 
 
何事も初めが肝心だもんね!!

 
 
だから、態と低い声を出し、無表情に呟くあたし。

「……イイ事、豆キョン?」

「ワン?」

「確かにみくるちゃんは可愛いわ。だからと言って、厭らしい事したら、如何なあんたでも……即刻私刑よ?」

「クゥゥン」

「んで、有希……あの子も可愛いし大人しいし。でも、あんた、変に纏わり付いて馴れ馴れしい態度を取ったら、これまた即決私刑なんだからね!!」

「キャ、キャン」

と怯える豆キョンを至近距離から睨み付け、淡々とあたしは脅迫を続行する。

「それとも、SOS団専属番犬ってのは白紙にしてさ、此処でUターンして、あたしん家に行く?」

「…………」

「うん、そーゆーのも有りよね!! 早速あたし専属の番犬として、家で飼っちゃおうっかなぁ?」

と豆キョンに尋ねていると、代わりに、あたしの中のあたしが大きく頷いた。

 
 
あら、それナイスなアイデアじゃないかしら? それなら、トイレの躾とか色々あるし、不思議探索……中止しちゃうべきじゃないの? 

 
 
それに半ば同意して、

「そーすると、今日の不思議探索は中止……」

って意識せずに呟くと、豆キョンってば、その小さい身体を伸ばし、泡喰ってあたしの頬をペロペロと舐めながらキャンキャンと鳴くの。

 
 
まるで「判ってますよ!! 僕は団長専属護衛犬ですもんねっ」と言ってる……うーん、一寸違うわね。

 

「わ、判ってるって……何時もの様に、俺は団長様を優先すりゃいいんだろ? だから、頼むから不思議探索を中止しないでくれ。長門に会えんのはチト不味い」

 
 
うん、少し納得いかない言い方だけどさ、何だか、こっちの方が豆キョンっぽい気がするわ!!

 

「判れば宜しい……まぁ、あたしだって不思議探索は楽しみだしさ」

「現時点では、大いに賛同させて貰おう」

「うん、さぁ行くわよ、豆キョン!! しっかり付いて来なさいっ」

「いや、まぁ、何だ……付いて来いと言われてもだ、俺はお前にガッチリと羽交い絞めにされていてだな、行動の自由が全く無いんだが?」

って感じで、豆キョンはこの世の儚さを訴える様にクゥゥンって鳴いたの。

 
 
……何だか、「もっと困らせちゃおうかしら!?」って誘惑に駆られちゃう鳴き声だった。

 

 もぅ、可愛いわねっ、豆キョンってば!!

 
 だから、あたしは豆キョンをギュギュっと力を込めて抱き締めて、でも、ふと素に戻り、実はさっきから頻々に感じていた疑問を口にした。

 

「ねぇ、豆キョン?」

「あん、何だ?」

「気のせいかしら? あたしさ、あんたと何故か会話が……これ以上無い位“シッカリキッパリハッキリキチン”と成立している気がするんだけど?」

って態と眉を顰め、深刻な振りをして小さく呟くあたし。
 そして、止めとばかりに一言ポツリ。


「……まさかさ、ホントにあんた、あたしの言葉を、全ぇ部……理解しちゃってるとか?」


 何やらギクッと身体を震わせた豆キョンの反応は、本気の本気で光速を超えていた。

 

「き、気のせいだ!! お前は人間で、俺は……お、俺は、畜生っ……い、犬だぞ? 会話が成立する筈が無いだろ!?」

 
 
あたしが口にした冗談に対し、何故かキャンキャンと大慌てな豆キョンだったけど、そんな豆キョンを見ていると、一気に「為て遣ったり!!」って感情が湧き出てきた。
 あたしはあっさりと笑顔を浮かべる。

「……ふふっ、何を焦ってるのかしら、豆キョンってば!!」

「何?」

「そーだったら、面白いけど、まぁ、常識で考えたらそーゆー事は有り得ないもんね!!」

「…………」

 
 
あたしのその宣言を聞き、何故か豆キョンはグッタリ脱力した。
 「何事?」ってその顔を覗き込むと、首を振り振り小さく悲しげにワン……と一鳴きする豆キョン。

 
 
何故か「好きにしろよ、もう、俺は知らん……」って言われた気がした。

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