女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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もてる男は、ふっ、辛いぜ……(ノ_-。)(キョン君視点①)

持てる男は、ふっ、辛いぜ……(ノ_-。)


・粗筋:キョン君、モテ期到来!?


*****


「続きを読む」からは ……

 キョン君視点①:
【敢えて言わせて貰うぞ、冤罪だと(こんな出会いもあるんだろうさ……)】


……になりまーす(^▽^)/

*****



 現実逃避をしたところで、状況が好転する訳でもないと理解しつつ、俺は無言で晴れ渡る空を見上げた。

 はっはっはー。
 ホントにいい天気だなぁ……。


 ……あー、まぁ何だ。
 済まんが、一触即発&物情騒然的現実からの逃避序に……1つだけ質問する事を許して欲しい。 

 「子供は最凶」
 「女は最強」


 これを読んでいる男性陣で、これらの格言に異論がある奴はいるか? 


 …………。
 ………。
 ……。
 …。


 ゴホン。
 宜しい、居ないって事を前提に話を進めさせて頂こう。


 あぁ、万が一、上記“絶対真理”に反論する……そんな能天気な奴が居たとしてもだ、謹んで無視してやるし、それでも納得出来ないってんなら、
「敢て言おう、そんな奴はカスであると!!」
と某総帥の演説の如く握り拳を突き上げつつ、満腔の確信を持って断言する事に吝かではない俺であった。


 くっくっく……。


 此処数週間、諸悪の根源的発生源であるSOS団団長が変な事を寸毫も思い付かず、マジで平和そのものだった普遍的高校生活を、これでもかと引っ掻き回された今の俺は……確実にそんな心境だった。


 何時もは、古往今来感情を表に出さず、冷静沈着極まりないアノ長門がだ、「実は、お前、ドSの女王様だったのか?」と疑ってしまう程の極限まで軽蔑し切った冷酷な視線を、ブッスリグリグリ突き刺しまくりーの……。


 何時もは、天女の如く慈愛の権化で在らせられるアノ朝比奈さんがだ、引き攣った愛想笑いを顔に張り付かせて、汚らわしいとばかりに首を振り振り、恐る恐る後退りしちまいーの……。


 更に止めとして、我らが愛して已まない団長様がだ、何時にも増して周囲を顧みず怒髪衝冠、マジでスーパーサイ●人状態になっちまいーの……。


 ……んな状況———しかも、その中心に佇むのが、俺ときたもんだ———に遭遇してみろ、誰だってそうなる筈だと声を大に主張したい!!


 ホントに女性ってのは、恐ろしいんである。
 年齢に関係無くな……。
 いやマジで。


 ゴホン。


 んで、「子供は最凶」「女は最強」、この2つの格言を併せ持った強敵が現れた場合、男はどうなる? 
 どうすればいい? 
 さぁ、君は生き延びる事が出来るか!?


 まぁ、今回はそんな感じの話である。


 ……ホントに俺の平穏無事な生活ってのは、何処にいっちまったんだろうなぁ?
 全く「やれやれ」だ。


*****

「あなたの事が大好きになったのです。心から愛してるのです。是非とも夫婦になるのです!! えぇ、今直ぐにでもっ」

 小雨が降りしきる人気の無い公園に、幼く甲高い声が木霊する。
 突然、熱く激しい愛の告白を受けた俺は、しかし、完全無欠に絶句していた。
 無人だと思っていた公園の片隅、幾つかの備蓄倉庫が固まって居るこの場所で、たった今作ったばかりの墓の目の前でだ。
 その墓に対して、厳かな気持ちを抱きながら跪き、そっと手を合わせたままの姿で固まっちまった俺。
「…………」
 その青天霹靂な発言をした人物は、ウットリポワワンとした雰囲気のまま、歳相応であるピンクの可愛い傘の取っ手を両手で握り締め、俺の眼前で満面の笑顔だった。
 将に天真爛漫って表現が相応しい邪気を全く含まない笑顔が、この世の不条理を痛い程教え込まされた我が目には殊の外眩しいんだが、俺はその顔を呆気に取られたまま見詰め、答えを予想しつつ脳内で人物照会を試みた。


 一瞬で答えが出される。


 それは世界最高のスパコンで演算したとしても、同じ回答が導き出される筈であり、俺は顰め面のまま「だよな……」と1人頷く。
 詳細な人物照会を再試行するまでも無く、その回答は想定通りのもので、俺が生きてきたこの十数年の間……見た事も聞いた事も無い人物だった。


……誰ですか? 貴方は?

と言う俺の内心の疑問を全く斟酌する事無く、眼前の人物は、

「あなたは理想の男性なのです!!」
とか、
「こんなに心優しい人、見た事無いのですっ」
とか、
「あぁ、こんな運命的な出会いが2人を待っていたなんて!! もう、大感激なのですっ」
とか、
「わたし、あなたに会う為に産まれて来たんだって、直ぐに悟ったのです!!」
とか何とか……。


 マラリアかデング熱、若しくは未知の病原体にでも罹患したのかポワポワ浮ついたまま、ビックリマークを周囲に大量に散布しながら、豪く情熱的に語ってくれるんだが、衝撃から立ち直っていない俺はと言うと……殆どその内容を理解出来なかった。
 呼牛呼馬の諺を体現したが如く、右耳から左耳へとその熱い言葉は素通りしていく。
 そんな中、「好き」だの何だのって単語だけが脳裏に留まった。
 それを理性が冷静に分析。


 漸く、俺は、自分が、告白を、受けている。


……らしいと悟ったんだが、しかし、全てが夢幻の如く現実離れし過ぎ、そんな心境のまま俺は心の中で侘しく呟いた……。


 どうやら、今、俺は告白されているらしいんだが、産まれて初めて告白されたのに……何故、俺の心は1mmも時めかんのだろう?


 普通は、もっと、何と言うか……こう、嬉しくて沸き立つ様な震える様な感じ……なんじゃないのか? 色々と聞かされた体験談から判断するとさ。


 少なくとも想像していた告白タイムとは……大きく異なるってのは論を待たないところであり、頭上を覆う大木の枝葉から雫となって落ちてくる冷たい雨が、そんな俺を更に濡らしてくれていた。
 その冷たい感触すら、今の俺には他人事の様に感じられる。
 いや、マジで……。

「…………」
 済まん、こんな書き出しじゃ、お前らも俺以上に話が判らないよな?
 いや、俺も完全に理解している訳じゃないんだが……。


一応だ、順を追って説明を試みさせてくれ。
 俺も状況を整理したいしな。

*****


 冒頭の奇天烈な状況から、時間を巻き戻す事1時間程前の事である。


 俺は珍しく谷口と2人っきりで帰宅の途に付いていた。
 珍妙な事に、SOS団団活は団長様の一方的個人的都合により開催されず、HRが終了するや否や、脱兎の如く教室を後にし、さっさと帰っちまったハルヒの代わりに、谷口と下駄箱でバッタリ出会っちまったって訳だった。
「よぉ、珍しく夫婦揃ってないんだな? くくく、喧嘩でもしたのか? んんー? 実家に帰っちまったのか、涼宮は?」
「……夫婦ってなんのこった? 実家って皆目意味が判らん」
「今更照れるなよ、全宇宙公認の鴛鴦夫婦なんだからよ。んで、麗しの奥様は?」
「…………。やれやれ。何でも、ハルヒは男子禁制の重要な用事があるんだとさ」
 俺は谷口の軽口を聞き流し、投げ遣りな口調で返事を返しつつ靴を履き替えた。


 ここで反論してもこの馬鹿を喜ばせるだけだし、新たな“からかい”のネタを提供する心算もないしな。


と言う俺の悲壮な決意を気にする事無く、谷口は「ケケケ」と希代な笑い声を上げながら、更なる質問を飛ばしてきやがるんだが、ニタリとしたニヤケバカ面が殊の外ムカつく……。

 一発、殴ってやろうか、谷口?

と言う意味を込めて、ジロリと睨んだ俺の視線も何のその。谷口の口は滑らかに動き続けやがる。
「それよりも、イヒヒ、涼宮が愛しい旦那を放って置く用事ってのは、何なんだろうな? ゲヘヘ、男子禁制だって? ……グフフ、気にならないか? キョン?」
「何だ、その厭らしい笑い方は……? あのな、ハルヒだって年頃の女の子だぞ? 男には想像も付かない用事があるんだろうさ」
と答えつつ、
「はて? 言われてみるとそうだな……あいつがSOS団を放置しておく用事ってな、何だ?」
と俺は内心眉を顰めていた。


 と言う訳で、今日のハルヒの言動を思い返してみたんだが、特に変わった様子では無かった様に思える。
 強いて上げれば———何かを我慢するかの如く———ちょろんと大人しかった位だな。


とまぁ、沈思し黙り込んだ俺を———忌々しい事に、何時もの事だが———全く気にする事も無く谷口は嘯く。
「流石はキョンだな、旦那だな……あの暴力的男勝りの涼宮を女の子扱いするのかよ?」
「……お前、その発言をハルヒが聞いたら、マジで瞬殺されるぞ」
「大丈夫だって。チャイムが鳴り終わる前に、餌を発見したハイエナも真っ青な速度で、すっ飛んで行ったじゃねぇか」
とか何とか言い放つ谷口の為たり顔がマジうざい。
 俺は半ば本気で顔を顰めつつ、
「若し、お前がハルヒに殺されそうになっても、俺は助けてやらん……って、おぅ、ハルヒ!!」
と行き成り片手を上げ、谷口の背後に挨拶をしてやると、件の友人様は真っ青になりつつ両手で口元を覆い隠した。
 そして、慌てて自分の背後を振り返りながら、背面跳びで背後の何かから距離を取る。
 その様子は、肉食獣に今にも食い殺されるんじゃなかろうかと怯える小動物を彷彿とさせ、俺は溜飲を下げる事が出来たんだが、しかし、その恐れ戦きまくる様子は、忌々しい事に憐憫の情をも生み出してくれた。
「やれやれ。そんなにビビるなら悪口なんざ口にするなよ……ハルヒが、疾うの昔に学校を後にしてるの、お前だって見てるんだろ?」
「た、性質が悪いぞ、キョン!? マジで10cmは寿命が縮んだぜ……何せ、凶悪凶暴暴君涼宮が俺に気を遣うなんざ、未来永劫在り得ないからな」


 ……ホンットにお前、学習しないな。マジで一遍死んでみるか?

 「冗談じゃねぇよ!? 可愛くて美人で性格のイイ女の子とのキャッキャッウフフも堪能しない内に、この世を去ってたまるかっての!!」
と谷口は顔全面を口に変えて主張するんだが、少々仕返しをしてもいいんじゃね?的精神状態に促され、俺はあっさりと論破してやる事にする。


 まぁ、何だ。現実を教えてやるのが、親友の務めって奴だろ?

「堪能しないと死ねないって事か? ……ほぉぉ。それじゃ、お前、永遠に死ねんと違うか?」
「え?」
「ナンパも碌に成功しないお前が、キャッキャウフフ出来るのは……一体、何時の事になるんだろうな?」
「うっ」
「……良かったじゃないか。人類の夢である不死を体現する初の人物だ。ノーベル賞ものだな、お前」
「ま、真顔で、酷ぇ事言うなよ、キョン……」
とまぁ、そんな遣り取りを交わしつつ俺達は母校を後にした。

*****


 シトシト降る小雨が気分を滅入らせてくれる。
 俺達は各々傘を差し、長い下り坂を下りていくんだが、雨の日にこの坂を下るのは罰ゲームと言っても過言ではなかった。
「って言うかさ、キョン? ぶっちゃけ、マジ、罰ゲームだろ、これ?」
「だよなぁ……」
 小雨と雖も朝から途切れる事無く降り続いているお陰で、既にこの坂は単なる長く忌々しい坂から、急流仕様の小憎らしい小川へとクラスチェンジをしてやがり、流れ落ちる水流は避けようも無い俺達の靴を一気に濡らしてくれる。
 上流から途切れる事無く襲い掛かる水が靴を一気に侵食し、結果、靴下が濡れるジットリとした感触が気分を落ち込ませてくれ、俺と谷口のバカ話も一向に盛り上がらなかった。
「ホントに、雨の日のこの坂は憎たらしいな……」
「珍しく完全に同意させて貰うぞ、谷口」
 ドンヨリと低く黒い雲に支配されている天を見上げ、ブツブツと不平を言い合いながら、しかし、一介の人間如きでは如何ともし難い事象である事を今更ながらに悟りつつ、俺達は時間を掛けて坂の麓の三叉路に辿り着いた。


*****


 と同時に、俺の背筋を前触れも無くゾワリと何かが昇っていった。
 まるで、これから、豪く面倒な事象に出会うであろうと第六感に告げられた様に……。
 俺がその唐突な寒気に対し、
「??? な、何だぁ、今の悪寒は? ……風邪でも引いたか?」
と眉を顰めると同時に、遥か遠くの山地にピカリと稲光が一回光る。
 それを目にした途端、谷口は谷口で、
「おいおい、稲妻まで落っこちてるぞ? 何なんだ、この天気は……」
と不機嫌さを増していた。
 そんな俺達の元に、ゴロゴロ……と雷様が太鼓を叩く音が届けられる。
 俺と谷口は意味も無く互いに顔を見合わせ、しかし、溜息を同時に吐きつつ視線を逸らした。
 まぁ、別に深い意味がある訳じゃないけどな。


 そして、何時もなら、此処で「んじゃな、又、明日」とでも言って別れる所なんだが、この雨の中、自転車で来る程に俺は剛毅ではない。
 んなもんで———遠回りには違いないんだが———止むを得ず私鉄を利用していた俺は、谷口と同じ方向へと足を向けた。
「お? 今日はキョンも私鉄なのか?」
「流石に昨晩から雨が降り続けばな……」
と言い掛けた俺の言葉は、谷口の「うげっ!?」と言う奇怪な呻き声で中断した。
 その顰め面に促がされ、「何だ、どうした?」と声を掛ける直前、俺は谷口の視線を追い、その先の車道に蹲っている物体を目にした。
 片側一車線の粗中央。
 センターラインを遮る様な位置だ。
 俺達が立っている歩道から、直線距離にして、およそ5m程度。
 どうやら車に撥ねられたらしい、ピクリとも動かず四肢を投げ出し横たわっているのは———大きさから判断するに———大人に成り切っていないMIXの黒猫だった。
「…………」
 俺も思わず眉を顰め、谷口と同じ様な表情を浮かべた。
 シトシトと降る小雨に打たれた子猫の亡骸は……生命の儚さを感じさせてくれ、俺に強烈な同情心を呼び起こさせる。


 多分、何が自分の身に起こったのか理解する事も無く、旅立っちまったんだろうな……。
 それに、こんな冷たい雨に打たれ続けて可哀想に……。

 
と無意識下で憐憫の情に絆されつつ、俺はその場で立ち止まったままだった。
 しかし、同じ様な表情とは言え、俺のそれと谷口のものは別々の感情から発生したものらしいかった。
 谷口は顔を顰めたまま、
「……嫌なもん見ちまったなぁ。うげぇ、縁起が悪ぃし、気色悪ぃ」
と呟いた。
 そして、口の中を濯ぐ様に唾を吐き捨てたかと思うと、顔を背けたまま足早に通り過ぎようとしやがる。


 しかし、俺はそんな谷口を無視して、無言でその場に立ち尽くしていた。

 心の中で渦巻く言い知れぬ感情を上手く処理出来ずに……。

「おい……キョン、さっさと帰ろうぜ?」
と言う谷口のあっさりとした呼び掛けが、俺の中の何かを刺激したらしい、それを切っ掛けに俺の身体は行動の自由を取り戻した。


 さて、どうする、俺?

と自問自答し、答えを導き出す前に深呼吸を1回。
 吸い込んだ大量の空気を思いっ切り吐き出し、その序に、
「あぁ、済まんな、谷口……先に行っていてくれないか?」
 俺は我ながら淡々と谷口に返事をしていた。
 視線は子猫に向けたままで。
 そして、何やら絶句しているらしい谷口の返事を待たずに、俺はゆっくりとガードレールを乗り越え、左右を確認して車道へと踏み出した。
「お、おい!? キョ、キョン!?」と言う谷口の非難めいた叫び声を背中で受け止めつつ、俺は静かに子猫へと近付いた。
 首輪を着けていない所を見ると野良猫だろう。
 パッと見だが、特に外傷らしき物は見当たらない。
 どうやら打ち所が悪かったらしいな……とボンヤリと考えながら、その傍らにそっと跪く。
「…………」
 目を閉じ横たわるその子猫は、まるで昼寝をしている風にしか見えない。
 そんな感じの穏やかな表情だった。
 それが益々この子猫の境遇に対する痛ましさを増幅し、比例して同情心が膨れ上がる。


シャミセンのやつも、暇が有ると、こんな感じでベッドの上で微睡んでるな……。

 しかし、この子猫の場合、2度とその瞳は開かれず、その口がネコ好きを魅了する鳴き声を響かせる事も無いのか……。


 その事実と、その雨に打たれている孤独な姿が俺の心をキリキリと締め付ける。
 俺は何かを我慢しながら、口を真一文字に結び、無言で傘を畳んだ。
 待ってましたとばかりに襲い掛かる雨を無視して、傘を静かに脇に置き、大きく深呼吸をしてから、両手で殊更丁重に子猫を抱き上げる。
 雨に打たれ続けていたにしては、グッタリとした身体は微かに温かい。
 この世に生まれて僅か数ヶ月で他界してしまった小さな命。
 それに対し、無意識の内に俺は厳かな気持ちで接していた。
 自然と涙腺が緩みそうになるが、まぁ、泣いたとしてもだ、雨に濡れただけだと言い張れなくも無いのが救いだな。
 俺は一頻り鼻を啜り上げ、決然と立ち上がる。
「…………」
 この子猫を轢いた誰かに対して、「怒りが沸かなかったか?」と問われれば、「少しは沸いたさ」と俺は答えただろう。
 しかし、それを今更言ってもこの子が生き返る訳でもない。
 ならば、丁重に弔ってやるのが、万物の霊長を自称している人類としての勤めじゃないだろうか?
 そんな言い訳をし、俺は猫を両手で捧げ持ち、傘を脇に挟んで先程の歩道に戻った。
 途端、谷口の———コイツは阿呆か?と言いた気な———呆然とした視線に出くわす。


 こんな場面だって言うのに、想像していたよりも、動揺しないもんだな。


 とボンヤリ考えつつ、俺が何かを口にする前に、身を遠ざけながら谷口は冷たい口調で呟いた。
「……おい、キョン。お前、信じられん事をするな」
「ん? 何がだ?」
「何がだ?って……お前、ソレ、どうする心算なんだよ!?」
と谷口は震える指先で、俺が抱えている子猫を指し示す。
 その表情は嫌悪感で歪んでいたんだが、特にそれを酷い奴だとも思わずに、俺は至極あっさりと答えていた。
「埋めてやるに決まってるじゃないか」
「……そんなの、他の誰かにやらせろよ!? 市役所の担当者とか、色々と居るだろうが!?」
「確かにな……だがな、お前の言う担当者とやらが来るまで、この子猫は道路に置き去りにされて、この冷たい雨に打たれっ放しか?」
と心静かに答えながら、俺は周囲をゆっくりと見渡した。
 小学生やらなんやらが興味深げにこちらを見ているんだが、俺はそれを気に掛けもせず、反対車線側に小さな公園を見付ける。
「そ、そりゃあ、可哀相だとは思うが、何もお前が遣らなくても……」
「あー、まぁ何だ、実際に俺はこうして行動しちまったんだ、今、その議論をしても仕方が有るまい? それにだ、世の中、何故か不思議に満ち溢れてるんでな、こんな出会いもあるんだろうさ……んでだ、済まんが谷口?」
「な、何だよ?」
と警戒心も露わに問い返す谷口。
 ほんの僅かだが逃げ腰だ。
 俺は内心苦笑を浮かべつつ、自分の行動予定とそれ以外の希望を口にした。
「俺はこの子を埋めて来る……付き合わすのも悪いからな、先に帰っててくれ」

*****


 そんなこんなで何やら不満気な谷口と別れた俺は、再び左右を確認し足早に車道を横切ると、先程の小さな公園へと足を向けた。
 雨は相も変わらず、音も無く静かに降り続く。
 何時の間にやら全身濡れ鼠だった。
 身体は冷えているのに、何故か心は熱い。
 その原動力を単語にすると、使命感……って形を採るかもしれんが、まぁ、ソレは置いておいて、序に目頭が雨以外の何かに濡れて暖かいってのは内緒だ。
 その天の恵みを全身で受け止めながら、俺は公園に入り周囲を見渡した。
 ブランコとベンチがそれぞれ1つだけの小さな公園で、更にだ、有り難い事に無人だった。


 まぁ、こんな雨の日だしな、人っ子一人居ないってのは助かるぜ……。
 何せ、腕の中には子猫の亡骸を抱えているんだ、人目を憚ったほうが良かろう?
 さてと、出来れば……人目に付かない場所の方が良いんだが?


と墓を作ってやるに相応しい場所を選んでいると、右手奥が樹木に囲まれた上に倉庫が並んでいて、滅多に人が立ち入らなさそうな雰囲気だった。
 俺は1人頷きながら、そちらへと身体を向けるや否や、其処を目的地にして小走りに駆け出した。
 出来るだけ子猫を揺らさない様に気を遣いつつ、
「もう少しだけ待っててくれ……」
とその遺骸に語り掛け、その途中で手頃な板の切れっ端を拾い上げる。
 勿論、それで地面を掘り起こす心算だってのは、説明の必要もあるまい。


*****


「済まんが、此処なら雨にも濡れないからな」
 立派な銀杏の根元に子猫を優しく横たえ、俺は倉庫の裏手に回った。
 地面を見ると、枯れ木や何やらが散乱していて、目論見通り滅多な事では人の出入りも無さそうだ。
 雨も生い茂る木々に遮られ、殆ど地面に到達していないらしい。
 序に倉庫も非常時備蓄用のものらしく、頻々に担当者が訪れるって事もあるまい……と俺は判断した。


 此処なら子猫の眠りが妨げられる心配もなさそうだ。
 よし、ここにしよう。


 そう決断した俺は、枯れ木の束を脇へと押し退け、地面を露出させる。
 そして、手にしていた木切れでもって地面に穴を掘るべく、そっとしゃがみ込んだ。
 と同時に、俺は木切れを握り直し、無言のまま木切れを地面に突き立てる。

*****


 予想以上に地面が柔らかく、思いの外あっさりと地面に相応の穴を掘る事が出来た。


 この位の深さなら子猫も安らかに眠れるだろ?


と納得しつつ、木切れを脇に置いて、俺は子猫の元へと向かった。
 木々の合間から遠く入り口付近が展望出来、其処に数人の小学生が佇んでいたんだが、公園内に入ってくる気配は無さそうだ。
 子猫をソッと抱えあげた瞬間、俺はその事を脳裏から追い出し、先程の墓穴へと身を翻す。
 静かにお手製の墓穴の中に子猫を寝かせ、優しく土を被せていく。
 徐々に土に埋もれていく子猫。
 安らかにな……と念じながら俺は土を被せ続け、そして、その努力の甲斐もあり、それ程の時間を掛けず子猫の墓は完成した。


 まぁ、土の中に埋めて、墓石の代わりに木切れを挿しただけの簡潔明瞭な墓だしな。


とボンヤリ考えつつ、俺は出来上がったばかりの墓に対してソッと手を合わせ、
「今度はSOS団の面々でも誘って、献花しにくるからな」
と俺は呟いた。
 あの優しいハルヒの事だ、俺がこの子猫の事を報告するや否や、
「あんたにしちゃ上出来じゃないっ、キョン。その子がしっかり成仏出来るように、うん、皆でお花やお線香に最上級の猫缶を持っていくわよ!!」
とでも言い出すに決まってるさ。
 とその状況を想像しつつ、苦笑を浮かべていると、俺の耳がパシャパシャと水溜りを駆け抜ける雨の日特有の足音を捉える。
 それは公園の入り口からこちらへと高速移動し、俺が「何だ?」と顔を上げると同時に、その連続音は途切れた。
 ハァハァと苦しげな呼吸音が、更に俺の注意を喚起する。
 俺は墓に手を合わせた状態のまま、顔だけをそちらへ向けた。
 倉庫付近、3m程の距離を置いた場所で、1人の女の子が胸に手を当て激しい深呼吸を繰り返しつつ、俺を潤んだ瞳で見詰めていた。


 切れ長の目が印象的な女の子だった。
 将来的には美人になってそうだと予感させる女の子だった。
 髪の短い活発そうな女の子だった。
 クラスの中心となっているに違いない女の子だった。
 元気一杯に細身の身体で、校庭を飛び跳ねていそうな女の子だった。


 しかし、「女の子」の前に、「年頃」「妙齢」と言う枕詞を付ける事には、俺の常識が激しく抵抗する。


 何故だ? ……だと?
 それはな……ピンク色の可愛らしい傘を握り締めるその子が、これまたピンク色のアル物を背負っているからだ。
 それはある特定の年代の子供にしか、背負う事が許されていない代物だった。
 その様に世間一般では認識されている筈だった。


 そう……例えば、身近な所で言えば……俺の、妹とかな。


 結論としては、詰まり、その子は、小学生、だって事だ。


 それを認識した俺が、しかし、その子の用件を全く予想出来ないがため「何の用?」と尋ねようと口を開く前に、周囲の迷惑を顧みる事無く、その小学生は年相応の幼い声で絶叫した。


「あなたの事が大好きになったのです。心から愛してるのです。是非とも夫婦になるのです!! えぇ、今直ぐにでもっ」


「……は?」
と言う間抜けな返事を返す事が……俺に出来た精一杯の反応だった。

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