女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

みくるちゃん In らぶりーらびっと(キョン君視点①)

みくるちゃん In らぶりーらびっと!!


・粗筋:みくるちゃんって……可愛いですよねぇ……動物に成ったとしたら、何が似合うかなぁ?



「続きを読む」からは ……

 キョン君視点①:
【認めたくは無いものだな、己自身の、若さ故の過ちと言うものを
(朝比奈さんと兎を同格に語るな)】

……になりまーす(^▽^)/


*****

 秋が日々深まっていく中、文化祭をどうにか無事に終わらせ、ホッと一息吐けたと思ったのも束の間、何の因果か、俺は希代な騒動に巻き込まれちまう羽目になったのだが……それは学祭の余韻が収束に向かい、校内が落ち着きを取り戻していく最中に発生してくれた。

 そう、まるで何処かの誰かが、
「文化祭が終わっちゃって、ホント詰まらないわっ。世の中はもっと面白くないといけないんだからね!!」
とでも望んだかの様に。


 まぁ、少なくとも、俺じゃない事は確かな事実で有り、それでは誰が元凶かと言えば、それは勿論……。

*****


 一応説明しておくとだ、今回の文化祭は有り難い事に———前回の如く世界の物理法則が引っくり返りそうになる事も無く———至って普通の学祭であった。
 そんな当たり前の事で感涙に咽び泣く様になるとは……高校入学以前には想像すら出来かねる事態なんだが、まぁ、奇妙奇天烈な現象に頻発された暁には、俺の柔な精神が持たん訳で、その点を斟酌して頂いた上で、何処ぞの団長殿には少々の御寛恕を願いたい次第ではある。

 それはさて置き、文化祭が終了した後、俺が何時も通りの平穏無事な日常を満喫している傍らで、お祭り大好き&平々凡々嫌いな事に掛けては頑迷固陋極まりない我らが団長様は、これでもかと暇を持て余している風情だった。
 それを俺達にアピールする心算なのか、ハルヒは団活の最中に深々と溜息を吐きつつ、「あーん、ホンッットに、暇ねぇ……」と不満げに呟いてくれる。


 確かにここん所、大人しいと言うか、詰まらなそうにしていると言うか、休火山が噴火寸前と言うか、まぁ、経験則的には余りイイ兆候ではないな……。
 かと言って、下手な返しをすると藪蛇にもなりかねんし、何とまぁ、扱い辛いヤツなんだろう。


 俺がどの様に返事を返すべきかどうか検討していると、ハルヒは団長席で詰まらなそうに頬杖をつきながら、———アンニュイな雰囲気も何のその———「よいしょ」と言う元気な掛け声と共に胡坐を豪快に掻き直した。


 セーラー服の女子高生が校内で人目を気にせず胡坐を掻く……風聞によると女子高では良くある風景らしいが、いやいや、此処は曲がりなりにも共学でな、うむ、コイツには恥じらい的女の子的何かが欠落しているんじゃなかろうか? いや、きっとそうに違いない。

 スカートにも係わらず、公共の場で太古の豪傑の如く足を組むハルヒを横目で観察しながら、俺は内心で「恥らうハルヒ? そんなん有り得ないだろ?」と1人納得しつつ、口に出しては、
「文化祭も無事終わった事だし、いいじゃねぇか、“全て世は事も無し”で」
と髀肉之嘆を託つ団長様を慰めていた。
 発言の趣旨としては……5割が本音であり、残りの成分構成は、
「頼むから、変な事を思い付くなよ」
と言う戦々恐々的懇願で成り立っていたんだが、しかし、そんな一般人の心からの希求を、ハルヒさんはあっさりと一蹴。
「文化祭は文化祭、団活は団活でしょ? もぅ、どーしてこんな当たり前の事が理解出来ないのかしら」
「……しかしだな、普段の団活ってのは、大抵こんな感じだと思うんだが?」
 俺は反射的に反論しつつ、長机の上に作られている山札からカードを一枚引く。
 ドンピシャでカンチャンが埋まった。
「おっと、揃っちまったか」
 引いてきたカードを手札に入れるや否や、俺は捨て札を裏返しに捨て山に置いた。
 そして、コンボを決めるが如く次々とリズミカルに手札をオープン、対面に座る副団長殿に「悪いな、古泉、ジンだ」と告げる。
 この時、俺と古泉が興じていたのは“ジンラミー”であり、カード(日本的表現を借りればトランプだ)に於いて、これ程タイマン向けの熱いゲームがあろうか? 更にだ、古来からのSOS団の悪しき伝統に則り、罰ゲームとして敗者は勝者にコーヒーを奢る事になっている訳で、少ない財布の中身をこれ以上減らす事罷りならん……となりゃ、めがっさ気合が入ろうと言うものだ。
「流石ですね、そんな薄い所を引かれるとは」
 あっさりと手札を空にした俺に対し、古泉は笑顔のまま両手を上げ、降参の意思表示をしつつ、自らの手札を長机に晒して、3枚のカードを指でなぞった。
 確認すると、確かに俺が引いた1枚以外は古泉の手札の中に暗刻となって固まっていやがり、よくもまぁ、1発でカンチャンを引いたもんだな。
 何やらツキが廻ってきた的予感に包み込まれた俺は、それに促されたらしく、シャッフルを古泉に任せ、憮然としているハルヒへと顔を向けつつ話題を蒸し返す。
「まぁ、何だ……」
「何よ?」
「俺と古泉が、こうやってゲームに熱中していて……」
 俺がまったりとした口調で語り掛けると、ハルヒは「してて……?」と鸚鵡返しに呟き、その先を促した。
 俺は微かに頷きつつ、「窓際では長門が読書に没頭……」と言いながら、指定席で膝の上に広げている分厚い洋書を貪る様に読み耽っている文芸部部長様を指し示す。
 それに釣られてハルヒが同じ方向を見たのを確認してから、俺はゆっくり振り返った。
 視線の先には、ガスコンロの前で真剣な表情を浮かべ、薬缶から吹き出る湯気を凝視しているメイド服を身に纏った朝比奈さん。
 そのラブリーメイド姿にウットリしつつ、「んで、朝比奈さんが給仕に集中してて……」と俺は言葉を紡いでいく。
 そして、実際に見た訳ではないが、ハルヒも朝比奈さんに視線を投げ掛けていると確信しながら、正面に向き直り言葉を続けた。
「お前が団長席に鎮座しつつ、何か良からぬ事を企画し……」
「…………」
「……って言うのが、普遍的SOS団的団活スタイルだろ?」
 強ち間違った事を言った訳でもない筈なんだが、どうやら、それは団長様のお気に召さなかったらしい、何故かプン剥れたハルヒは可愛らしく頬を膨らませソッポを向いた。
「普遍的とか、何時も通りとか、そーゆーのが詰まらないって言ってるの!!」


 お前が非日常に憧れているのは周知の事実だが……あのな? 年がら年中、騒動に巻き込まれてみろ、大変なんだぞ、精神的にも肉体的にもな。


と自らの実体験を振り返り重々しく頷いていると、ハルヒは何やら怪訝そうな表情で以って「何よ、大変な事って?」と聞き返し、しかし、俺がその回答を口にする直前、団長様は眉を顰めつつ更なる質問を投げ掛けてきた。
「それに……何だかその言い方だとさ、キョンはそーゆー事に四六時中巻き込まれてるみたいじゃない?」
 不審気な団長様にジト目で睨み付けられ、俺は即座に話題を暈しに掛かったんだが、まぁ、その理由に付いては、説明の必要はあるまい? 
「んな訳あるか。俺が言いたいのはな、物事にはメリハリが必要不可欠だって事だ。こんな風にノンビリした時間があるからこそ、イザ事件って時にはだ、そのインパクトが弥増すんだぜ?」
「…………」
「名探偵だって四六時中殺人事件に巻き込まれて無いだろ? それと同じさ」
「…………。ふんだ、バカキョンに、言われなくても、判ってるわよ」
 小さな声で呟いたハルヒではあるが、俺の言い分に納得出来る要素でもあったのか、文句も言わず大人しくパソコンの電源を入れた。
 「ピポッ」とパソコンが起動音を奏でる中、何か心境の変化でもあったのか、ハルヒはホッと溜息を吐きながら、静かに椅子に凭れ掛かる。
 どうやら、暇潰しにネットサーフィンでもする心算らしい……と状況分析をしながらハルヒの表情を窺い、それが穏やかなものであると認識した瞬間、騒動の種を完璧に消去したと確信し、俺は溜息と共に古泉へと向き直った。
 副団長は笑みを深くしながら、微かな声で「流石ですね」と賞賛したらしいが、俺はそれを無視して、何時の間にやら配られていたカードを拾い上げる。
 そして、カード内容を確認するや否や、グルッと部室内を静かに見渡しつつ俺は満足気に頷き、人知れず心の中で呟いた。 

 そうさ、俺は、団活を、普段と何等変わらない団活を満喫したいのさ。
 何せ……これこそが、この世界が平穏無事である事の証なんだからな。


*****


 しかし、無為に青春時代を浪費していると言っても過言ではない平和極まりない日常が変化を来したのは、それから暫く後の事であり、勿論、言うまでも無い事だが、事の発端は我らが団長様であった。

 その時俺と古泉は雑談を交わしつつジンラミーを続けていた。
 何だかんだ言いながらも、俺がコーヒー2杯分の権利をゲットした直後、ハルヒの感極まった様な「かっわいー!!」と言う絶叫が響き渡り、反射的に振り返った団員達が発見したのは、恍惚とした表情を浮かべる団長様だった。
 画面に視線を釘付けさせているハルヒの様子に興味を惹かれ、俺が質問を飛ばそうと口を開く直前、団長様は朝比奈さんを手招き。
「みくるちゃんみくるちゃん!! ちょっとコッチ来てっ」
「は、はーい」
と可愛らしい声で返事を返し、素直な朝比奈さんは怪訝そうな表情を浮かべながらも、トテトテと団長席に近付く。
 そして、「これ見て!!」と言いつつ、少しだけ身体をずらしたハルヒの横から、ヒョッコリとディスプレイを覗き込み、朝比奈さんも「うわぁ」と言う感嘆の声を上げた。
 2人の反応に困惑しながら、「ど、どうしたんです、朝比奈さん?」と尋ねる俺。
 朝比奈さんはウットリとした表情を浮かべたまま、ホワホワとした口調で以って返事を返してくれる。


「兎さんです、ふわぁ、モコモコしてて可愛いですぅ」


*****


 そして、ハルヒの楽しげな呼び掛けに応じた長門を始め、お呼ばれしていない俺や古泉すらも団長席の周りに群がり、結局、SOS団総出で画面を覗き込むと言う何やらシュールな図柄が展開される。
 そのディスプレイ上では動画が上映されていて、どうやら其処は、猫カフェならぬ兎カフェの店内を写したものらしい。
 店内の至る所を我が物顔で兎がピョンピョンチョコチョコ所狭しと動き回る様は、うむ、男である俺でも微笑ましいと感じちまう代物であり、況してや、可愛いモノ好きな女の子にとっては、より強烈な影響を与えるで有ろう事は想像に難くない。
 実際にハルヒや朝比奈さんは浮かれ騒いでキャピキャピと感想を言い合い、無表情魔人長門ですら微妙に笑みを浮かべているっぽい。
「ああんっ、この動画をもっと早く見付けてれば、文化祭の出し物、こーゆー感じのカフェにしたのに!!」
「あぁ、それ、いいですねぇ。兎さん、可愛いですもんねぇ……」
 ポワポワした雰囲気の2人を横目に、俺は古泉に話し掛ける。
「しかし、兎カフェなんつぅ店がこの世にはあるんだな……初めて聞いたぞ、俺は」
「そうですね、猫カフェは既に市民権を得たと言っても過言ではないですから、耳目を集める手段としては中々良い着眼点では?」
「やれやれ……全く、この手の事を始めさせたら日本人の発想力は無敵だな」
と些か呆れ返っていた俺を、行き成りハルヒがヒョイと振り返った。
「へぇ、キョンも“萌え”がやっとこ理解出来るようになったのね?」
「???……そうなのか? この感覚が“萌え”ってヤツなのか?」
と俺が困惑交じりに問い返すと、ハルヒはエッヘンと胸を張りつつ豪語する。
「そうよ、その感覚が“萌え”なの!! あんただって、みくるちゃんに“萌える”でしょ?」
「まぁ、何だ、“萌える”と言うか何と言うか、いやいやその前に……朝比奈さんと兎を同格に語るな」
 「朝比奈さんは畏れ多くも天使だからな」と言う厳然たる事実を言外に匂わせると、ハルヒさんは何をどう解釈したのか、突然腕組みをして「うーん」と唸り始めた。
 眉を寄せ目を閉じ、何かを悩み考え込んでいるらしい。
 胡坐を掻いたまま腕組みして唸る姿は、領国の行く末を憂いている戦国武将じみていてだ、豪く深刻なその様子に俺達が「何事だ?」と顔を見合わせていると、ハルヒは誰にと言う訳でもなく、ポツリと独り言ちた。


「ねぇ? ……みくるちゃんと兎ってば、どっちが“萌える”のかしら?」

*****

 団長様の独り言に対し、誰もが反応を返さない……いや、返せない中、しかし、ハルヒは何時もの如く空気を読まずに自らの世界に入り込む。
「これは……中々に難しい問題だわ」
等と1人頷きつつ、ブツブツと呟くハルヒに対し、俺は確認の意味を込め、一句一句をしっかりと区切りながら問い掛けた。
 「聞き間違いだよな?」と言う願いを込めて。


「……済まん、朝比奈さんが? 兎が? 何だって?」


 しかし、ハルヒさんは俺のささやかな願いを粉砕する勢いで返答を寄越す。
「だーかーら、みくるちゃんと兎は、どっちがより“萌える”のか……って聞いたの!!」
「…………」


聞き間違いじゃないのかよ……。


 先程の深刻な様子とその余りに下らない質問とのギャップに、俺が強烈な脱力感を覚えていると、———天啓を閃かせたアルキメデスの如く———ハルヒはキラキラと目を輝かせエンジン全開状態で鼻息が荒い。


 クリスマス直前、「プレゼントは何かしら!?」と浮かれている幼稚園児か? お前は。 いいから、ちょろんと落ち着いてくれ……。


「これはっ、人類にとっても、相当重要な真理じゃないかしら、ね? キョン!?」
「……いや、どっちでもいいだろ?」
とめがっさ投げ遣りな俺の返答を、ハイテンションハルヒは瞬時に粉砕する。
「良くは無いわよ!! これを解明したら、うん、ノーベル賞でも受賞出来ちゃうんじゃないかしら!? 少なくとも国民栄誉賞は確実ねっ」
 団長様は大袈裟な身振りを交えてそれらしく主張するんだが、俺の見立てでは“イイ暇潰しを考えた”的反応以上には見えない。


 僅かな時間すら大人しくしていられんのか、コイツは……。


 呆れ返った俺は無言を押し通し、その結果、その反応が弱いのを目敏く察知したハルヒは———何時もの如く同調者を増やす戦法に切り替えたらしい———即座に副団長へと話を振った。
「どうかしら、古泉君!? この考え!?」
「流石は涼宮さんです。大変素晴らしいかと」
「おい、古泉……」
 「深く考えずに即答するな」と、ハルヒ至上主義的無条件イエスマンに、苦情と文句を叩き付けるべく口を開き掛けた俺を余所に、笑顔の団長様は更なる仲間を収集する。
「有希?」
    「いい」
       「よね?」
 ……聞き覚えの有るハルヒと長門の短い遣り取りの直後、「ちょっと待て」と大慌ての俺を余所に、ハルヒのテンションは増していく。
「あはっ。皆が賛成してくれた事だし、それじゃ、うん、善は急げなんだからっ」
 古泉の同意に加え、長門の簡潔明瞭な囁きに力を得たハルヒは、———慌てる俺の心情を無視して———勢い良く立ち上がり、ググッと握り拳を胸の前で作りやがる。
 先程までのメランコリックな様子を強制リセット、一気に元気なっちまった団長様を前に、俺は溜息を吐きつつ、———このパターン化しつつある流れ、それが大抵は大騒動に直結していると言う経験を踏まえ———いともあっさりと同意しやがった古泉を睨み付けていると、その辺の雰囲気を無視してハルヒは、
「みくるちゃん? 早速実験するわよ?」
とニコニコと嬉しそうに、SOS団のメイドさんに告げる。
 話の流れに付いていけず、キョトンとしていた朝比奈さんは、突如ハルヒに声を掛けられ、ビクッと身体を痙攣させた。
「え? え? ……あ、あのー涼宮さん?」
「んん? 何? みくるちゃん?」
「えと、実験って、何をするんですかぁ?」
 可愛らしく小首を傾げるメイドさんに、ハルヒは当然と言った体で轟然と言い放つんだが、お前、朝比奈さんが上級生っての、忘れてるだろ?
「もう、みくるちゃん? 人の話はしっかりと聞いてなさい」
「す、済みません……でも、わたし、“萌え”って意味が、よく判らなくて」
 ハルヒの勢いに呑まれたらしく、メイド朝比奈さんは恐縮しつつ、許しを請う様に上目遣いで団長様を見上げた。
 その弱々しい視線を「えっへん」と胸を張って受け止めたハルヒさんは、
「それはこれから教えてあげるわ!! ……幸いな事にね、実験に必要な要素は全て部室に揃ってるし」
とか何とか意味不明な事を満面の笑顔を浮かべたまま言い出し、当然の事ながら、それを十全に理解出来た奴は皆無だと思われるんだが、しかし、その癖、誰もが疑問を提示しない中、何となく使命感に駆られた俺は嫌々ながら質問を口にした。
 理科だ化学だの授業で受けた各種実験シーンを脳裏に思い浮かべつつ。
「済まんがハルヒ? 意味が判らん。実験だと? 何をする心算だ……って言うか、この部屋にある備品で、そんなのに使えそうなのは、ガスコンロ位だぞ?」
 しかし、その至極当然の問い掛けは……何故だか団長様に多大なる困惑状態を引き起こしたらしい。
「??? ……ガスコンロ? そんなん何に使うのよ? みくるちゃんを煮ちゃう心算なの、キョンってば」
と言うハルヒの怪訝そうな呟きは、俺をも異次元世界へと引き込んでくれた。
「は? 煮る……だと? 朝比奈さんを?」
 質問に質問を返しつつ、どうやら己とハルヒが考えている前提条件の間に月と地球程度の距離が横たわっていそうだと悟った俺は、遅まきながら根本的な事を尋ねる事にした。
「済まんが、実験ってのは一体全体何を遣らかす心算なんだ、先ずはそこから教えてくれ」
「だーかーら、みくるちゃんと兎のどっちが“萌える”かしら……って話でしょ!?」
 1+1=2を理解出来ない小学生低学年に呆れ返る担任教師の如き雰囲気を纏わり付かせ、ハルヒは幼子の様にプン剥れたんだが、しかし、俺は憮然とした表情を浮かべる事しか出来なかった。


 はっはっはー、正直に言おう。
 “萌え”と“兎”と“朝比奈さん”と“実験”と言う単語から……何を連想しろと?
 さっぱり意味が判らん。  
 皆目判らんが、しかし、ここでしっかりきっかり把握しておかなければ、将来的に自分自身が確実に困る事になるってのは、畜生、絶対的真理的必然なので……屈辱を飲み込み、俺我慢。


「……ふぅ。あー、済まんな、物分りが悪い雑用で。出来れば噛み砕いて説明してくれると助かるんだが?」
 この世の何処にも存在しない己の非を認めつつ下手に出ると、途端にハルヒの機嫌は復活した。
「もう、仕方が無いわね♪ イイ事? もっと観察力を養いなさい……」
「観察力だと?」
「そう、観察力!! ちょっと注意して見ればさ、直ぐに判るわよ?」
 胸を張るハルヒの言葉に従い、俺が部室を見回していると、しかし、待ち切れなくなったらしく、団長様はあっさりと答えを口にする。
 「オッホン……イイ事、キョン? 部室の中で実験に使うと言えば、アレしかないじゃない!!」と嬉しそうに声を発しながら、ハルヒさんは右手を勢い良く振り上げ、部室の片隅をズビシッと指差した。
 朝比奈さんは勿論、俺達全員が釣られてその指先を目で追い、そして、そこにSOS団専属マスコット御用達コスプレ衣装群を見出したんだが……。
「???」
 俺たちがその数多の衣装を黙然と眺める中、ハルヒさんは得々と説明を続けるんだが、お前、偶には空気を読んだ方がイイと思うぞ?
「みくるちゃんを実際に兎さんにしちゃいたい所だけど、まぁ、それは次回までの課題として、ゴホン、兎と言えば、うん、バニーに決まってるでしょ!?」
「は?」

 決まってるって言われてもなぁ……兎と言われて、即座にバニースタイルを思い浮かべるヤツが何処に居る?
 って言うか、お前は一応生物的分類では女性に属するんじゃないのか?
 何故にあんな扇情的スタイルに拘るんだ?
 理解出来ん……。
 
 余りの理論の飛躍に意識が付いていけず、思わず口がパカッと開いてしまう俺なんだが、———どうやら、それを感動の余り言葉を失ったと解釈したらしい———躁状態の団長様の口は素晴らしい速さで動き続けた。
「ふふん……詰まりね、今みくるちゃんはメイド服で、デフォルト状態な訳でしょ?」
 「……え? わたし、メイド服がデフォルトなんですか?」とビックリしている朝比奈さんを余所に、エッヘンハルヒは己の考えている実験とやらを説明していく。
「そんな訳で、先ずはメイド服のまま校内を1周して群衆の反応を見るの」
「え?」
「で、その次はバニースタイルに着替えて歩き回ってさ、皆の様子を観察する訳」
「…………」
「その結果、どっちの方がどれ位盛況だったのかを分析すれば、うん、兎とみくるちゃんのどっちが“萌える存在”か判るって寸法よ……ふふん、どーかしら、キョン?」
「…………」


 いやいや、「ふふん」とか「どーかしら?」とか得意気に聞かれてもなぁ……。
 「あはは、お前は馬鹿か?」としか言いようが無いんだが?


 声を発する事すら出来かねる茫然自失状態で、どうにか心の中で返答していると、その反応をハルヒは何時もの如く自分に都合の良い様に解釈しやがった。
「ふふっ、団長の凄さを再認識したみたいね……さぁ、みくるちゃん? キョンも納得した事だし、早速実験に行くわよ?」
「ぴっ!?」
と可愛らしい悲鳴を上げた朝比奈さんの腕をグワシと掴み、ハルヒ、廊下目掛けてスッタカスッタカ。
 相変わらずの即断即決疾風怒濤ぶりに、ハッと我に返った俺は、正気を取り戻すと同時に声を張り上げた。
「こらこら待て待てちょっと待て!!」
「何よ、うっさいわね」
「あのな……俺は納得もしてないし、その前に理解すらしてないっての」
 決然と宣言しながら俺はハルヒと扉の前に割り込んだ。
 そして、団長に腕を掴まれ涙目状態の朝比奈さんに微笑を向ける。


 安心して下さい、朝比奈さん。
 俺は貴方の盾としてっ、我が侭ハルヒの暴虐をっ、見事防いで見せましょう!!
 
 我ながら男気溢れる笑顔だったと思う、朝比奈さんも潤んだ瞳で嬉しそうに見詰めてくれ、うむ、傾国的美少女の熱い眼差しに俺のヤル気も急上昇。
 しかし、ハルヒはそんな俺の心情なぞに、これっぽっちも注意を払わず顔を顰めた。
「折角、イイ暇潰……ゴホン、素晴らしい実験を思い付いたのに、邪魔する心算なの?」
「……お前、今、暇潰しとか言い掛けなかったか?」
「そ、そんな訳無いでしょ!? い、言い掛かりだわ。冤罪よっ。変な事言うと謝罪と賠償を未来永劫要求しちゃうんだからね!!」
 慌て気味に喚く団長様を呆れ顔で見詰め、「そうか? 俺は確かに……」と言い掛けた俺を遮り、ハルヒは「オッホン!!」と偉そうな咳を1回。
「いい事、キョン? あたしは純粋に“萌え”を追及すべく……」
「嘘を吐け。どうせ、朝比奈さんにコスプレさせる格好の口実を思い付いたとか、そんな不純な動機なんだろ?」
 珍しく俺が正面切ってズバリと切り込むと、団長様は「グッ」と言葉に詰まり……しかし、その直後、“負けてなるモンですか”的キツイ視線で俺を射抜きつつ、大技でカウンターを喰らわせてくれた。


「じゃ、じゃあ、キョンはみくるちゃんのバニー姿……見たくは無いの!? 見たいでしょ? 見たい筈よ? いいえ、絶対に見たいに決まってるわ!!」


と言葉鋭く絶叫すると、人の鼻面にズビシと指を突き付けやがり、畜生、今度は俺が言葉に詰まる番だった。
 何せ、「朝比奈さん」と言う単語と「バニー」と言う単語が組み合わさった瞬間、あの魅惑的バニー姿が脳裏で再生されたからだ。
 あの時の……「あぁ、俺は今現在思春期真っ最中なんだな」と痛感させてくれた若き情熱が、再び俺の身体を焼き尽くそうとしやがる。
 何やら色々と持て余した当時の記憶が鮮明に蘇るのと同時に、口内が干上がり、無意識の内に喉が「ゴクリ……」と物欲し気に鳴った。
 その余りに品の無い音を聞き付け己自身の理性が警告を発すると同時に、その反応を敏感に察知したらしいハルヒの口許に……ニヤリと邪悪な笑みが浮かぶ。
 将に悪代官が如き笑み。
 色んな意味で清廉潔白ではない人間を何やら不安にさせる笑みだった。


 そして、現時点での俺は、人様には言えない妄想に、一瞬とは言え、心奪われた年相応の男の子で、あー、強烈な後ろめたさを感じていた事は否めない訳で……。


 故に、俺は盛大に動揺してしまったのだが、更に言えば、そんなハルヒの笑みに見覚えがあったってのも大きな要因であった。
 咄嗟に記憶を引っ繰り返す俺。


 あれは……確か……コンピ研から……パソコンを……強奪した時……。
 
 そこまで過去を思い返した瞬間、誇らしげにカメラを掲げる団長様のイメージが俺の脳裏を直撃した。


 アノ後……コンピ研部長はどうなったっけ……?
 有り得ない程の無理が通って真っ当な道理が引っ込んじまい……ショックの余り廃人寸前状態だったよな?
 って事はだ……この状態でハルヒに主導権を握らせると、あれの二の舞って事じゃないのか!?
 絶対に不味いっ。


 そんな強迫観念に背中を押されつつ、チラリと朝比奈さんの様子を伺うと、「信じられません……」「うそ……キョン君が?」と言いた気な感じの呆然状態で、ヤバイッ、このままだと俺は朝比奈さんを厭らしい目で見た軽薄男として軽蔑対象になっちまう!!
 直後、何かが体内を奔り抜けた。
 
 このまま放置するのは色々と危険だ!!
 朝比奈さんから蛇蝎の如く嫌われちまうっ。
 
 朝比奈さんに拒絶される……それはどれだけ楽観的に考えても、今後のSOS団的活動に支障をきたす事請け合いでだ、俺はマイエンジェルに向き直るや否や、弁明を開始していた。
「ちっ、違うんですよ!! 朝比奈さんっ、俺は決して……」
「……キョ、キョン君」
と怯えた様に口許を片手で隠しながら、俺の視線から逃れるためか、朝比奈さんはスッと顔を背け、その仕草が俺の必死さを爆上げさせてくれる。
「っ!? ほっ本当です、朝比奈さん!! 俺は決してコスプレマニアじゃないですしっ……朝比奈さんは俺にとって天使ですし、そんな厭らしい目で見た事は1度も!!」
 俺の真摯な訴えに心動かされたのか、朝比奈さんは上目遣いに「キョ、キョン君……」と呟く。
 その瞳は、将に「わたし、信じていいの?」と縋る様な光に満ち溢れていた。
 それを察知した俺が勢い込んで「勿論です!!」と頷く直前、


「みくるちゃんっ、キョンの言う事、信じちゃ駄目よ!!」


とその状況を快く思わない人物の横槍が入りやがる。
 その人物とは、説明の必要も有るまい、涼宮ハルヒその人であった。
「え?」
「ちょっ、ハルヒ、おま……何を……」
 俺と朝比奈さんの驚愕した声が重なる中、


「以前バニーになったみくるちゃんをキョンが止めなかったのは何故?」
「昔、みくるちゃんのコスプレについてキョンに相談した事があるの。くふふ、そりゃあ嬉しそうだったわよ?」


等々、俺が封印&無視しておきたい事実を得々とばらすハルヒさん何だが、お前、俺の信用を消滅させたいのか、おいこら。


「ホ、ホント……なの? キョン君?」
「はは、そ、そんな訳が……」
「みくるちゃんっ。団長であるあたしを信じなさい!!」


 俺の言葉を遮り自信満々に言い放つハルヒに何を感じたのか、はたまた、そこは異性と同性の差なのか、朝比奈さんは何故か団長様を信用する事にしたらしく、その美貌が嫌悪感に歪むんだが……。


 いやいや、朝比奈さん? 
 あー、そのですね、ハルヒを信用するって事は、防波堤が決壊するのと同義で、えっと、メイド服のまま校内パレードになるんですよ?    
 更に言えば、ぶっちゃけバニー確定ですけど、いいんですか?


 何やら警察官よりも誘拐犯を信用しようとする小学生低学年を説得する不条理な気分を味わいつつも、しかし、ここで引く事は俺の培ってきたイメージの失墜とイコールであり———当然、看過出来る事では無く———俺はハルヒに朝比奈さん拉致を諦めさせるべく奮闘する事にした。  
 とまぁ、上記の理由により俺が意地になるのは当然なんだが、完全無欠に俺が朝比奈さんの味方になったと悟った瞬間、ハルヒさんも意地になったらしい。
 やれやれ、ならなくてもいいのに……。


「ホンッッット、み・く・る・ちゃんがっ、絡むと意固地になるわね、あんたは!!」
「当たり前だ、朝比奈さんは俺にとって天使であり、敬愛する対象にして至高の存在なんだからな」
「むっ。……ふぅぅぅん、あっそう」
「……何だ、そのアヒル口は?」
「別にそんな変な口になってないわよ!? ふんだっ、いいわよぉ? そこまで言うなら、あたしもっ絶対にっ引かないんだから!!」
「やれやれ。だからな、何故に、お前までそこで意固地になるんだ?」
「討論無用……いいから、其処を退きなさい!!」
「断固として拒否するっ」


 何が何でも“メイドさん校内引き廻し”を実行すると言う傍迷惑な決意を固めた団長様と、それを意地になって阻止しようとする雑用の不毛な争い。 

 渦中の朝比奈さんは俺とハルヒに挟まれ、オロオロするばかりで———いや、それはそれで可愛いんだが———何の役にも立たず、副団長は副団長で「夫婦漫才を独占鑑賞……恵まれてますね、僕は」と言いた気な柔らかい笑みを浮かべ、ゆったりとパイプ椅子に座ってるだけだし、古泉、お前、後で校舎裏に来い、この野郎……。


 と言う訳で、この騒動を仲裁する第三者機関は存在せず、ん? 長門は……だと? 
 はっはっは、多分、お前らの想像通りだと思うが……、俺とハルヒが言い争いを始めるや否や、文芸部部長様は我関せずと読書を再開されてて、“本に集中する宇宙人っ娘”と題される彫像の如く、身動ぎ1つしないんでな、当てにする方がお門違いだろ?


 だが、そんな俺の失礼な感想を聞き付けた訳でもないとは思うんだが、俺と団長様のメイドさんを巡る実り無い綱引きを終了させる切っ掛けを与えてくれたのは、何を隠そう、文芸部部長が本を閉じる「パタン」と言う音であり、それが本日の団活終了の合図だと理解しているハルヒは朝比奈さんを放置して、ぶっすりとしたアヒル口を保持したまま、
「……あたしっ、帰る!!」
と言い捨てて部室を後にしてくれた訳で、俺は大きく安堵の溜息を吐きつつ長門に声を掛けた。
「済まんな、長門……助かったぜ」
「いい」
「いや、まぁ、何だ……今度一緒に行こうな? 図書館」
「……了解した」
等と平穏な会話をする余裕が俺にも有ったのだ、この時までは。


 だが、結論から先に記せばだ、これでこの騒動は終わった訳ではなかった。


 そう……SOS団団長殿が———雑用の儚い抗議抵抗程度で———己が遣ると決めた事を諦める筈も無く、はっはっは、実は去年の様に、朝比奈さんが拉致られるのを座視していた方がだ、遥かにダメージが少なかったと言う事実に直面し、俺は涙する事になるんだが……未来人でもないんだ、それに気が付けってのも無理な注文だとは思わないか?

関連記事
スポンサーサイト
  1. 2000/01/01(土) 00:00:00|
  2.  みくるちゃん In らぶりーらびっと!!
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<“好き”って魔法の言葉だと思わない???①(キョン君視点) | ホーム | もてる男は、ふっ、辛いぜ……(ノ_-。)(キョン君視点①)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://megamisanamoehonbako.blog.fc2.com/tb.php/179-18fddd76
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

プロフィール

宇奈月悠里

Author:宇奈月悠里
ハルキョン&キョンハル大好き人間です!!

アイコンは敬愛するだんちさんから拝借させて頂いておりますっ。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

★★★SSリスト★★★ (2)
★★★独り言★★★ (43)
★★★短編SS(連載中)★★★ (5)
 サンタを応援すると、イイ事があるんだからねっ。 (3)
 とある副団長の平凡な一日??? (2)
★★★長編SS(連載中)★★★ (72)
 死が二人を別つまで……。 (9)
 ねこねこふぁんたじあ (14)
 It’s A “わんderful” World (8)
 もてる男は、ふっ、辛いぜ……(ノ_-。) (8)
 女神様と卓上遊戯 (4)
 “好き”って魔法の言葉だと思わない??? (8)
 みくるちゃん In らぶりーらびっと!! (8)
 そして、夢見る少女は大人の階段を昇る……。 (13)
★★★短編SS(完結)★★★ (19)
 嬉し恥ずかし初デート!? (5)
 探し物は何ですか? 見付け難いモノですか? (5)
 ラブコメって美味しいの??? (5)
 素直なのは良い事です!! (2)
 地球人類危機一髪!? (1)
★★★長編SS(完結)★★★ (35)
 SOS団は狙われてるんだからね!! (17)
 うんうん、笑顔って重要だよね!! (18)
★★★エッチィSS★★★ (1)

FC2拍手ランキング

かうんたー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。