女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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うんうん、笑顔って重要だよね!!(キョン君視点F)

うんうん、笑顔って重要だよね!!


粗筋:相も変わらず宇奈月キョン君は腰が重い(笑) そして、古泉君マジイケメン!! あ、これにてラストです本当ですっ。 

*****

「続きを読む」からは ……

 キョン君視点F: 【俺はハルヒの笑顔が、笑顔だけが見たい(完結編3)】

……になりまーす(^▽^)/

*****



「いやはや、改めて申し上げますが……今回もお疲れ様でした」
と爽やか笑顔で慰労の言葉を放ちつつ、古泉は俺の目の前に紙コップを静かに置いた。並々と注がれたコーヒーから立ち上る香りが鼻腔を擽る。俺は無言でそれを受け取り一口啜った。それを見て古泉は俺の正面へ腰掛け、自身も手にした紙コップに口を付ける。それを無言で見詰めつつコーヒーを嗜みながら俺は何となく周囲を見渡した。
「…………」
 今居るのは何時もの文芸部部室ではなく、中庭に設えてある団欒スペースの一角である。木製のテーブルを挟んで男二人が向き合うってのも絵柄としては美しくないのだが、まぁ、何だ、件の事件の総括的話し合いとなると、ハルヒに聞かせる訳にはいかず、適当な理由を付けて団活活動から抜け出して来たって次第である。
「全くだ。何せお前らが物の役にも立たなかったばかりか、敵になりかけたんだからな……」
 俺は古泉に視線を戻すと同時に、コーヒーを啜ると同時に嫌味を一つ口にし、副団長殿は苦笑を浮かべつつ弁明する。
「それを指摘されると返す言葉もないのですが、しかし、涼宮さんの能力に掛かっては如何ともし難く……」
「気にするな、言ってみただけだ」
「それを聞いて安心しました。貴方と対敵する等といった事態は、例え映画のシナリオの中の話だと言えども、二度と体験したいとは思いませんので」
 微笑みを絶やさずそんな事を宣う古泉の胡散臭さと言ったら表現する単語も無い程だったのだが、ハルヒから「用事が済んだら直ぐに帰ってくるのよ?」と釘を刺されている手前、突っ込みを入れて時間を浪費するのも不味かろう、さっさと用件を終わらせて部室へと戻る事にしようか。
 ……と立派な事を考えたのも束の間、実際に俺の口から飛び出したのは、眼前の爽やか好青年へ発言を促すモノであった。
「で? 一体全体、何がグッドタイミングなんだ? 何を尋ねたいって?」
「おや? 今日は珍しく貴方からお誘い頂いた訳ですが、そちらの御用件は宜しいのですか?」
「……まぁ、何だ、その、気にするな。俺の事は後回しでもいいから、あー、そっちの用件を先に言え」
 視線を逸らしつつ再度促すと、その態度から何を感じ取ったのか、古泉は微苦笑を浮かべ「今回の事件に関して一つ質問をしたい」旨を伝えて来る。
「ん? 質問? ……今回の改変に関する経緯は大体説明した筈だし、今更他に何を知りたいんだ?」
「えぇ、確かに貴方の証言を元に報告書を作成し機関へは提出済みなのですが、実は一点だけ、個人的にお聞きしたい事がありまして」
「……聞きたくはないんだが、言ってみろ」
 コーヒを飲む手を止めて嫌々ながらも許可を出すと、古泉は遠慮する気配すら見せずに即座に口を開いた。
「ではお言葉に甘えて。……実はですね、一体全体どんな魔術的言霊を用いて、あれだけ映画作成に乗り気だった涼宮さんを説得されたのか大変好奇心を刺激されまして、差し支えなければご教授賜りたく」
「…………」
 古泉らしからぬ直球勝負であった。
 俺は咄嗟に空を仰ぎ見て表情を隠し、あぁ、良い天気だな、こん畜生……と思いながら、自分自身の顔が赤らんでいくのを実感する。

*****

 そうなのだ。
 あの日のハルヒとの遣り取りがどこでどう誤解されたのか全く分からんのだが、どうやら俺はハルヒに告白した事になっているらしく、学校中で滅茶苦茶話題になってやがるんだな、これが……。
 まぁ、何だ、そのお陰と言って良いのかどうか、例の彗星は即時に消滅するわ、朝比奈さんや長門古泉は即座に元通りになるわで、一体あの緊迫した状況は何だったんだ?ってな感じな上に、一番変わったのは涼宮ハルヒさんその人である事を否定する人物は北高にはいないだろう……と言う位に団長様は終始ニコニコ幸せそうな笑顔を浮かべており、まぁ、“それ”を何時も見たいと宣ってしまった俺としては結果オーライ的事例なのかも知れん訳だし、今更それを誤解だ間違いだ冤罪だと言うのも、何と言うか、その、滅茶苦茶バツが悪いとは思わんか、お前らもさ?

 とは言え、正直に告白すれば、何ともモヤモヤとした精神的案件を抱えスッキリしないってのも、否定し難い事実なんだが。

*****


「……そんな小っ恥ずかしい事、言えるか」
 あの時の情景を思い浮かべながら、そう小さく抗議するのが精一杯の抵抗だったのだが、
「成程、やはり貴方が告白されたと言う校内の噂は本当のようですね」
と為たり顔で華麗に切り返され、俺絶句。
「いえ、決して揶揄している訳ではありませんよ。御二人の友人として、これ程喜ばしい事はありません」
 古泉は何故か我が事の様に喜びやがり、そういや、長門や朝比奈さんも微笑ましそうな眼差しで俺とハルヒを見ていた様な……ってか、あの2人だとハルヒから事の詳細を聞いてる可能性が高いんじゃね?と今更ながらに気が付き、羞恥心の余り即座に頭を抱えたくなった。
「良いではありませんか。一年次当初、男性と恋愛でもすれば憂鬱じゃなくなると貴方が仰っていた通りになったのですから」
「……そんなんよく覚えているな、お前」
 そう小さく呟いてから俺は一気にコーヒーを飲み干した。だが、そのコーヒー独特の苦みが体内に広がるにつれて、前述した胸の中で揺蕩り続けているモヤモヤが、またぞろ顔を擡げるのを感じ、俺は眉を顰めつつ微かに溜息を吐く。それと同時に漏れそうになった何時もの口癖をどうにか吐き出さぬよう我慢していると、その反応を無言で見つめていた古泉が、手にしていた紙コップをそっとテーブルに置くや否や、静かに告げたのだ。
「それで、……実際問題として、何を悩まれているのでしょう、貴方は?」
「!?」
「恐らくですが、今日はそれに付いての相談役として僕を指名されたのではないですか?」
 その顔付きは常に無く真面目で、客観的に見ても俺の事を真摯に心配しているようであり、おいそれと韜晦出来る雰囲気ではなかった。
「…………」
 適当な事を口にし、お茶を濁そうかと思ったのも一瞬、古泉から真っ直ぐに射こまれる視線の力強さに俺は言葉を失う。それから逃げる様に空へと目を向ける俺、そして、微動だにせず無言を貫く古泉、男2人の間に重い沈黙が漂い、そのまま永遠の時を刻むのかと思われた矢先、その言い知れぬ重圧に根負けし、先に白旗を上げたのは俺の方であった。
「あー、まぁ、何だ……そのな」
 降参した事を表明する様に意味の無い言葉を羅列しつつ、顔を古泉へと向けてから、徐にここ数日感じている漠然とした精神的しこりを訥々と説明したのだが、それを続けるうちに、元々その心算で古泉を呼び出したにも係わらず、その内容の余りの恥ずかしさに悶死しそうになったのは内緒だ。


*****


「……成程」
 俺の赤面物の告白が終わると同時に、それまで殆ど言葉を発しなかった古泉の最初の一言がそれであった。
「つまり簡潔に纏めると、件の遣り取り、貴方の真の目的は改変阻止であって、特に意識して涼宮さんへ愛の告白した心算は無い……と言う事で合っていますか?」
「あー、まぁ、そう、なるか?」
「にも係わらず、何故か涼宮さんに告白した事になっている上に、それを彼女が喜んで受け入れたと……その様に事実と異なる形で周囲に認識されている事、それが悩んでいる原因であると言う解釈で宜しいですか?」
 古泉の淡々とした説明を聞きつつ、俺は苦虫を噛み潰した様な表情で微かに頷いた。……自分の抱いている悩みを改めて他人の口から解説されると、何と言うか、精神的打撃がめがっさ強烈なんだなと妙な事に感心していると、そんな俺を他所に古泉さんは腕組みしつつ前髪を指で弾く何時ものポーズを取り真顔で沈思黙考。
「…………」
 古泉の邪魔をする心算が毛頭無い俺も口を噤み、遠くグラウンドから聞こえてくる運動部の掛け声以外の音が2人の周囲から消失し、何となく身の置き場をなくした様な居心地の悪さを感じ小さく身動ぎしていると、それに反応した様に古泉が小さく息を吐き出し、そして、ゆっくりと口を開いた。
「僕の考えを忌憚無く述べさせて頂くと……」
「あぁ、聞かせてくれ」
「そうですね、真実を包み隠さず、全てを正直に告げる方が今後のためではないのかと思います。勿論、貴方だけではなく涼宮さんのためにも」
「…………」
 特に気負った風でもなく淡々と告げる古泉の発言内容に、俺は少なからず驚愕した。
 考えても見ろ、事此処に至って、今更アレは告白じゃなかった……等と口にした場合、ハルヒの機嫌がどうなるのか? その結果———俺が言うのも何なんだが———史上最大規模の閉鎖空間が生じるのは自明の理であり、そんな事をハルヒの精神的安定を至上命題に掲げている古泉(と言うか機関)が看過する筈も無い。と思い、恥を忍んで当の本人に直接相談した訳なのだが……。
 そんな困惑を隠せないまま、俺は頭に浮かんだ質問を無意識の内に恐る恐る述べていた。
「真実を? ……いや、だが、その、閉鎖空間はどうする? 確実に発生するだろ、アレ」
「??? 何故ですか? 僕はその危険は無いと思いますが?」
 俺の問い掛けを耳にした途端、古泉の顔にも困惑の色が広がり、互いが互いの意図を読み切れず、相手の表情を無言で伺う奇妙な状況が出現する。しかし、数秒の沈黙を経た後、それでは事態進展を望めないとばかりにヒョイっと肩を竦めたかと思うと、古泉さんは殊更爽やかに言い放った。
「正直に申しますと、今回のケースでは、機関云々は考慮して頂かなくても結構です」
「……済まん、何だって?」
「と申しますか、そうですね、寧ろ無視して頂いた方がお二方のためでしょうね。機関やら宇宙人やら未来人と言ったSF的要素を」
 古泉の真意を理解出来ず、更に混乱を来した俺は、落ち着くべく目を閉じコメカミを揉み解す。ぶっちゃければ、去年のあの冬の日にエンターキーを躊躇い無く押した時点で、その非日常的要素を無視出来る立場に無いと思うのだが……。
「…………」
 眉間に皺を寄せ難しい顔付きで黙り込んだ俺を慮ったのかどうか、古泉は朗らかさを維持しつつ言葉を続ける。
「今まで貴方を巻き込むだけ巻き込んだ僕が言う台詞ではないのですが、万が一にでも———あぁ、僕は全く心配しておりませんが———閉鎖空間が生じた場合、それをどうにかするために結成されたのが機関ですので、部外者である貴方がそれに関して忖度される必要は在りませんよ」
「いや、そうは言ってもだな……」
 そう言い掛けた俺の反論を遮る様に古泉は口を動かし続けた。常日頃から周囲への気遣いを忘れない副団長にしては珍しい事である。
「失礼ですが、僕としては、何故貴方がそれ程までに閉鎖空間が発生すると確信していらっしゃるのか、その根拠の方が判りかねるのですが?」
「済まん……何だって? 判りかねるだと?」
「えぇ。貴方は涼宮さんに“真実”を告げられるのでしょう? でしたら、順番が逆である点を除けば、何も問題が無いように思えるのですが?」
「…………」
 事此処に居たって俺は漸く男二人の間に横たわる齟齬を明確に感じ取った。一体全体古泉の奴が強調する“真実”ってのは何なんだ?とマジで困惑しつつ、
「いや、だから真実を告げるって事はだ、あれは告白じゃない誤解だって言う事だろ? それじゃ、ハルヒの機嫌がだなぁ……悪化するだろ、どう考えても?」
と正直に告げると、即座に副団長殿は腑に落ちたと言わんばかりの表情を浮かべ、だが、次の瞬間にそれは苦笑へと進化した。
「成程、そう言う訳ですか……漸く貴方が抱いている危惧の何たるかが理解出来ましたよ」
「やれやれ、やっとかよ? で、どうすればいいと思う? 何か解決策があるなら提示してくれ」
 明敏な古泉らしからぬ言動に些か困惑しつつも、俺は縋る様な気持ちでアドバイスを求めたのだが、眼前のイケメンさんは苦笑を消す事も無く、「解決策も何も……僕からの助言は変わりませんよ。どうぞ真実を告げて下さい」と宣い俺を絶句させてくれたのだが、そこに副団長様の追撃が飛んでくる。
「要は誤解では無いと言う形にすれば、貴方も心落ち着かれる訳ですよね?」
「…………」
「つまり、貴方が改めて涼宮さんに告白すれば……万事解決ハッピーエンドとなるのは自明の理ではないでしょうか?」
と軽やかに告げつつウィンクを投げ掛ける古泉に、俺は反応を返す事が出来なかった。


*****

 ハルヒの誤解を解く事ばかりに意識が行っていた俺にとって、古泉の指摘は将にガツンと頭を殴られたと言う表現に相応しい衝撃を与えてくれた。くれたのだが、いやぁ、そのな、確かにこの心のモヤモヤを解決する手段を問うてはいたのだが、まぁ、なんだ……その方策として、改めて告白しろとか真正面からズバリと言われると、あー、滅茶苦茶気恥ずかしいのだが……。
「いえいえ、恥ずかしいのは一瞬だけの事ですよ」
「……お前、他人事だと思って適当なアドバイスしてないか?」
「まさか。無い知恵を振り絞った結果ですので、このアドバイスをご笑納頂ければ幸いです」
 邪気を1mgも含まない天使の笑みを浮かべる古泉さんから目を逸らし、何と反論してやろうかと頭を捻っていると、空気を読まずに副団長は勢い込んで言葉を続ける。
「そうですね、善は急げと申しますし、早速涼宮さんの元へ向かわれては?」
「なっ!? いやいや待て待て。その急かし方、お前は見合いを斡旋する近所の小母さんか!?」
「……あぁ、長門さんと朝比奈さんの事ですね? 僕が理由を付けてお二方を呼び出しますのでご心配無く」
「…………」
 常に無く押しの強い古泉の言動に気圧されたらしい、俺は咄嗟に反論する事が出来なかった。
 だが、その沈黙を肯定と捉えたのだろう、副団長は一回頷くや否や「では」と流れる様な軽やかさで携帯を取り出して誰かを呼び出そうとしやがり、俺は反射的に立ち上がりつつ、それを奪い取る。
「だから、ちょっと待てや古泉!?」
「??? ……何をそれ程慌てていらっしゃるのですか、貴方は?」
「あ、いや、まぁ、その、心構えと言うか覚悟と言うか、文字通り、一身上の都合でな……」
 マジで心底理解不能的きょとん顔で問い掛けられた俺は、より強烈な動揺に身体を貫かれつつ力無く座り込みながら、しどろもどろに返事をしたのだが、何だ、この古泉の押しの強さは……?
「貴方らしくも無い、先程から何を仰っていらっしゃるのやら……一体全体何を躊躇されているのです?」
 そう仄かな詰問的意図を含む口調で問い掛ける古泉の姿は、例えるならば、多大なる期待を寄せていた部下がである、業務上の失態を犯しただけならいざ知らず、それについて無様に自己弁護を始めるのを目の当たりにした瞬間、湧き上がった失望に耐え切れず厳しく説教を開始する敏腕営業部統括部長と言った風情であり、やべぇ、気が付けば何時の間にやら精神的劣勢に追い込まれているってのはどういう事だ?
「いや、その、何と言うか、改めて告白何つぅ恥ずかしい手段を取らんでも、まぁ、何だ、あっ、そうそう!! 俺が一切合切を我慢すれば……」
 咄嗟に適当な事を口走っていた俺なのだが、副団長殿は言下に「それは駄目です。最悪な手段ですね」とバッサリそれを切り捨て、そして、即座にその理由を滔々と述べる。
「宜しいですか? 貴方がその様な後ろ暗い隠し事を抱えたままで接したとしましょう……ですが、あの勘の鋭い涼宮さんの事、即座にその態度や雰囲気から何かを感じ取り、そして、直ぐに直接貴方にそれらについて問い質す事でしょう」
「…………」
「其処で貴方がどう対応したとしても、あの涼宮さんを十全に納得させる事は不可能でしょう、何せ正直に事実を話していないのですから。そして、その遣り取りから何某かの齟齬が生まれるのは明白で、結果、先程貴方が心配された以上に巨大強大堅固な閉鎖空間が生じる事になると思います」
「…………」
「それ以前に、お二方の友人、そして、SOS団の仲間として、その様な不健全極まる後ろ暗い関係性を看過し得ません」
 そう力強く言い切る古泉に俺は反論する事が出来なかった。勿論、その発言内容が正論であったからである。色々な物を有耶無耶にすべく安易な方法を選択しそうになった己の性根の卑しさを指摘された様に感じ、
「済まん。確かにその通りだ」
と素直に俺が自分自身の非を認めると、副団長殿はふわっとした笑みを口元に浮かべた。途端に周囲の雰囲気が軽くなり、俺は小さく安堵の吐息を漏らす。だが、その微笑とは裏腹に古泉さんは追撃の手を緩める心算は無いらしく、口元を緩めたままで質問を投げ掛けて来た。
「改めてお聞きする事でもないのですが、確認の意味を込めて、最後に一つ宜しいですか?」
「何だ今更……」
と苦笑しつつ暗にその先を促すと、古泉は喉の調子を整える様に一回咳をしてから口を開く。


「貴方も涼宮さんの事を憎からず想っていらっしゃる……その僕らの認識は間違っていますか?」


*****


「きっと涼宮さん、一人ぼっちで寂しい思いをしていると思いますよ」
「あぁ、そうかもしれませんね。流石に年がら年中姦しいあいつでも一人じゃ騒げないでしょうし」
「ふふ……だから、早く行ってあげてね、キョン君」
と笑顔で提案してくれる優しく愛らしい上級生に、
「判りました、朝比奈さん」
と返しつつ、その傍らに佇む長門へと視線を動かすと、万能宇宙人娘は「全て了承済み」とばかりに微かにコクンと頷き、
「頑張って」
と一言激励の言葉をくれた。何に対しての励ましなのか改めて聞くまでも無く、俺は微苦笑交じりに「ありがとな、長門」と返したのだが、それが聞こえたのかどうか、明確に返事を寄こす前に長門は朝比奈さんと連れ立って階段を降りていく。
「…………」
 何となく2人の後ろ姿を無言で見詰めていると、階段を降り切った所で朝比奈さんが俺を振り返り、ニッコリ微笑つつ「また後で」とばかりに小さく手を振ってくれ、その愛くるしい仕草にホンワカしながら俺も静かに手を振り返した。そして、そのまま2人の後ろ姿が校舎を抜け中庭方面に消えるまで見送ってから、徐に踵を返し再び部室棟内部の階段を登り始めるのだった。
 行先は断るまでも無くSOS団団室、何となれば先の古泉との遣り取りを経て、俺は、あー、まぁ、何だ、改めて自分の気持ちをハルヒに伝える気になってしまった訳であり、畜生、思い返せば、何となく副団長に上手く乗せられた様な気がしなくも無いのだが、例えるならば、男女が永遠の愛とやらで結ばれる某儀式に於いて神父が新郎に問い掛けるが如く、
「涼宮さんの事を好きなんですよね?」
と真正面から念押しされては如何ともし難く、そして、対応に窮している俺の脳裏にいきなり再生されたハルヒのあの一言が止めとなったのは否定出来ない事実であった。


「あと告白が殆ど電話だったのは何なの、あれ。そう言う大事な事は面と向かって言いなさいよ!!」


 ……あれは一年初期での遣り取りだっただろうか、その時は、未来に於いて、まさかこんなイベントが待ち受けていようとは夢にも思っていなかったばかりに、
「まぁ、そうかな、俺なら何処かに呼び出して言うかな」
とか何とか第三者的返答を口にした記憶があり、何となれば、当時の俺をこの場に呼び出し、どれだけお前が世間知らずなのか年上として説教してやりたい気分にもなるのだが、しかし、……今なら告白する手段として電話と言う文明の利器を使用した奴らの気持ちが手に取る様に分かるのも事実で、ぶっちゃけ、告白しようと覚悟を決めただけでもこれだけ精神的負担が激重なのに、本人を目の前にして直接想いを告げるなんざ、滅茶苦茶テンパり物だぞ、これ。
 何と言うか、人間、経験しないと十全に理解出来ない事もあるんだと今更ながらに痛感しつつ、当時の俺、と言うよりも、今時点での俺ですら色んな意味で人生的経験値が如何に不足しているのかを我が身で以って実証している最中で、うむ、ドキドキの初体験を前に、緊張の余り鼓動が妙な具合になって来てるんだが、俺は生き延びる事が出来るのだろうか?……等と密かに危機的状況をアピールしている俺なのだが、別れ際の古泉の言葉を借りると、今イベントは「ヌルゲーオブヌルゲー」だそうで、


「勘違いにしろなんにしろ、涼宮さんの貴方に対するお気持ちは既に判明しているのです。最も重要な事柄が詳らかになっている、その一点だけでも貴方は恵まれていると言えましょう。……いいですか? 一般的な告白行為の殆どは相手の反応が未確定状態のままでなされるのですよ? 言わば全財産を掛け丁半博打を打っている様な物なのです。なのに、100%確実に凱歌を挙げられるこの状況に文句を言うなど、いやはや、縦しんば、それを知った片想いに日々悶々としている世の男性諸氏から逆恨みされ刺されたとしても、僕は全く同情しません」


とか何とか、激励しているのか脅迫しているのか判定し辛い台詞を投げ掛けつつ、副団長殿は尻込みする俺を文芸部部室へと送り出してくれたのである。
 その場では「ふむ、そんなもんか」と納得し覚悟を決めた筈なのだが、部室棟に入るや否や、古泉に呼び出されていた朝比奈さん長門とバッタリ出くわし軽く挨拶を交わした後、階段を一歩一歩登って行くに連れ、どう言う訳だかプレッシャーは弥増しに増していき、それに比例する様に俺の足取りは遅くなる一方で、その歩みはまるで亀の如しと言った風情であった。
「ふぅ……」
 俺は三階を目前にしたところで、その手前の踊り場にて一息吐く事にし、いや、決して臆病風に吹かれただとかそう言う事では無く、あー、だが、そこはそれ、理由に関しては深く追及しないでくれ……とまぁ、誰に対して言い訳しているのか、自分自身でも分からないまま、俺は手で額やら何やらの汗を拭ったのだが、どれだけ緊張しているのか、高々三階分の階段をゆっくりと登ったにしては相当量の汗であり、正直に言えば、水の一杯でも欲しいところではあるが、まぁ、それはハルヒとの会談終了後の楽しみにとっておこう。
 無意識の内にネクタイを緩めつつ、そう心に決めて改めて階段踏破を再開する俺なのだが、以前とは異なり、理由を付けて「この場から撤退」と言う後ろ向きな選択肢を選ばないだけでも精神的に成長していると言えるのではないだろうか?と自画自賛しながら、「その大部分の要因はハルヒにあるよな」と苦笑し、そして、ふと思ったのだ。
 
 若し、涼宮ハルヒと出会わなかったら……俺の高校生活はどうなっていたのだろうか?


「…………」
 何となくそんな状況に於かれている自分を想像しようとしてみたのだが、これが思いの外上手くいかず、だが、その理由は単純明快で、考えても見ろ、ハルヒを筆頭に古泉長門、そして、朝比奈さん鶴屋さんと言ったSOS団関係者の面々と日々交わらない高校生活? そんなん考えるまでも無く、面白みの欠片も無い無味乾燥で味気無いモノクロトーン的学校生活に違いないだろ?


「ったく、ハルヒと出会ってから人生やら何やらが変わっちまったなぁ、いやマジで」


 今思い返せば、一年次の自己紹介の時に背後を振り返り、初めて涼宮ハルヒを認識した瞬間、俺はハルヒの魅力の虜になっていたのだろう……って、それ何て一目惚れだ!?
 …………。
 い、いや、確かに美人だとは思ったし、「ドキッ」としたのも事実だが、いやいや、それじゃ、今の今までハルヒに良い様に振り回されて来たのが、実は初恋に浮かれる純真な小学生男子の様に「好きな女の子と一緒に居られる!!」って喜んでいたからみたいじゃないかっ。
 そんな恥ずかしい妄想は即座に撤回し、謝罪と賠償を!!


 ……とか何とか、そんな風に脳内で「違う違う」と必死に暴れ回る駄々っ子理性君だったのだが、その背後に大人びた風情の感情さんがスッと現れ有無を言わさず頭をガツンと殴り付け一言、「今からその子に告白しに行くってのに何言ってやがる」と正論を吐く段になり、俺は苦笑しつつ「まぁ、事此処に至って韜晦しても仕方が無いよな」とその言葉を素直に受け入れ、
「……やれやれ」
と区切りを付けるが如く口癖を漏らしてから、


「まぁ、何だ、ハルヒを、あー、好……惹かれているのは事実だしな」


 己自身を納得させる様に小さく独り言を口にしたのだが、事実を事実として認めたとは言え実際に口にしてみると、やはり恥ずかしいものは恥ずかしいらしく、一気に顔が熱くなる。と同時に目的地である三階に辿り着き、俺は意識を切り替えるべく静かに周囲を見渡した。
 何時も以上に人気が無い様に感じられるのは俺の精神状態のなせる業だろうか……。
 自然と一番手前の看板に張られた紙に書かれている「SOS団」の文字に目が引き寄せられ、瞬時に鼓動が早まる。途端に大きく身震いする俺の身体。これが所謂武者震いって奴かと頭の片隅で頷きつつ、俺はゴクッと唾を飲み込んでから、ゆっくりと一歩足を踏み出した。
「…………」
 そして、今更ながらどの様に会話を切り出して理想とするシチュエーションまで持って行くべきかのシミュレーションを開始したのだが、どう甘く見積もっても一分と掛からず目的地に到着しちまう訳で、畜生、階段を登ってる最中にやっておくべきだったと悔やんでみても、後悔先に立たず、この状況が好転する筈も無く、その上、何故か俺の両脚は持ち主の逡巡を意に介する事無く確実に歩を進めてくれ、気が付けば文芸部部室は眼前に在り、その内部と廊下を隔てているのは扉一枚だけって状況になっていた。


 時は来たれり……。


 俺は其処で静かに立ち止まり、目を閉じて大きく深呼吸を数回繰り返した。そして、脳内で繰り広げられていた各種シミュレーションを順次停止する。何故ならば、よくよく考えてみると、あのハルヒが俺の想定通りの言動を返して来る筈も無く、寧ろ自作想定問答集を当てにしていたが故にパニクって大失敗ってパターンも有り得るのだ、ならば、何時もの通り勢い任せの出たとこ勝負の方がまし……いやいや、体面的な問題もある事だし、一応、臨機応変な対応って言おうぜ、俺。
 とセルフ突っ込みをかました所で、俺は自分の頬を両手で挟み込む様にパチンと叩き、気合を入れ直した。
「よしっ」
と一言力強く己を鼓舞してから、ゆっくりとドアノブへと手を伸ばす。

 扉を開くと、其処にはハルヒが……。
 そのハルヒに俺は今から……。
 
 そう思った瞬間、鼓動は激しさを増し、口内が一気に乾いた。
 膝は頼り無く揺れ指先は細かく震える。
 呼吸も浅く早くなった。
 成功が確約されている(古泉談)にも係わらず凄まじい緊張感。
 それに身も心も打ち震える中、だが、歯を食い縛りそのプレッシャーを跳ね除けながら、俺はドアノブをしっかりと掴み取る。
 ヒンヤリとした金属特有の冷たさが火照った掌には心地良く、僅かながらに俺は冷静になる事が出来た。瞬間、俺の脳裏にピンと閃きが奔る。再び過去に交わしたハルヒとの会話が蘇った。


「あと告白が殆ど電話だったのは何なの、あれ。そう言う大事な事は面と向かって言いなさいよ!!」
「まぁ、そうかな、俺なら何処かに呼び出して言うかな」


 ……そうか、そうだな。
 二度と無いこの機会だ。部室で告白何て味気無いしな、有言実行、ハルヒを何処かに呼び出して……。
 そこで改めて……。


 いきなり心を占拠したその考えは豪く魅力的で、何となく悪戯を仕掛ける腕白小僧的冒険心に溢れている様に感じられた。
 女の子に告白すると言う重大事案の直前で、精神的にワンクッション置いたせいかどうか、緊張感が薄れた様な気がする。
 それを実感したからだろう、俺の頬に小さな笑みが不意に浮かび、そして、それに伴って現金な事に身体からこわばりが抜けた。
「まぁ、普通の告白じゃハルヒも拍子抜けするだろうしな」
 気が楽になったからか、勝手に団長様の心境を忖度しつつ、既にドアノブを握りしめているこの段階である、呼び出すよりも、このまま部室に突入しハルヒを二人っきりになれる場所まで連れ出した方が早いか……と先程までのヘタレぶりは何処に行ったのやら、積極的肉食系男子っぽい思考をし始める俺自身に、我ながら苦笑せざるを得ない。
「ってか、案ずるよりも生むが易しって言うしな。後は神のみぞ知るって奴だ」
と吐息と共に独り言を漏らし、そして、大きく息を吸い込み……覚悟を決める。
 ゆっくりとドアノブを捻った。
 そのままドアを押し室内へと進む俺。
 扉が開くに連れ見慣れた部室が徐々に視界を占拠していく。
「…………」
 目的地に突入しつつあるにも係わらず、未だに何と声を掛けるべきか全く決めていないのだが、何となく根拠無く舌が上手い具合に回転してくれそうな気がしたし、ぶっちゃけそうでなければ俺が困る事態になるじゃないか、だから頼むぜ、俺の発声器官達よ。

 もう一度ハルヒの極上笑顔を二人っきりで……。

 
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  1. 2017/06/11(日) 22:48:13|
  2.  うんうん、笑顔って重要だよね!!
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<独り言(2017/06/11) | ホーム | 独り言(2017/03/08)>>

コメント

よかったよかった
最初の猟奇的なままならどうしようかとおもいましたよ
(๑˃̵ᴗ˂̵)و !
  1. 2017/06/12(月) 21:14:57 |
  2. URL |
  3. (๑′ᴗ'๑) #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> よかったよかった
> 最初の猟奇的なままならどうしようかとおもいましたよ
> (๑˃̵ᴗ˂̵)و !


おおう……ご心配お掛け致しました(;^_^A
そして、何時もコメントありがとうございます!!

ま、まぁ、何というか、慣れない事はするものではない……と言う貴重な教訓を得たという事でご容赦くださいまし(笑)
  1. 2017/06/20(火) 23:49:18 |
  2. URL |
  3. 宇奈月悠里 #-
  4. [ 編集 ]

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宇奈月悠里

Author:宇奈月悠里
ハルキョン&キョンハル大好き人間です!!

アイコンは敬愛するだんちさんから拝借させて頂いておりますっ。

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