女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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みくるちゃん In らぶりーらびっと!!②(キョン君視点)

みくるちゃん In らぶりーらびっと!!


「続きを読む」からは ……

 キョン君視点②:
【認めたくは無いものだな、己自身の、若さ故の過ちと言うものを
(兎よ? 全然怯える必要は無いからな……)】


……になりまーす(^▽^)/


*****

 さて、プンスカハルヒが1人勝手に帰ってしまった後の事である。

 不毛な騒動を治めてくれた長門も無言のまま———立ち去った団長様の後を追う心算なのかどうか———脇目も振らず挨拶も残さずひっそりと扉を潜り、ハルヒの魔の手から逃れ得た朝比奈さんは胸を撫で下ろしながら、
「涼宮さん、怒ってたみたいだけど……大丈夫かなぁ?」
等と被害者にも係わらず傍若無人的加害者を気遣うんだが、そんな優しい上級生に俺は為たり顔で返答する。
「大丈夫ですよ、明日になればすっかり忘れてますって……と言うか、偶には怒っても罰は当たらないと思いますよ、朝比奈さん?」
 それに対し直接的な回答をする代わりに、朝比奈さんは小さく手を振り振り、
「着替えるから先に帰ってて、キョン君、古泉君」
と満面の笑顔なのが……御褒美と言えば御褒美であった。

*****

「…………」
 しかし、それから数分もしない内にだ———折角、エンジェル朝比奈さんの笑顔を拝んだと言うのに———俺は不機嫌の極致に陥っていた。
 何せ……別段俺が頼んでも望んでも居ないのに、古泉と2人っきりで帰宅の徒に付くと言う有り難くない状況にいるんだぜ?
 
 身命を賭してマイエンジェルをお救いした筈なのに、何故に罰ゲームを受けねばいかんのか? 

……と神を小1時間程度問い詰めたい心境のまま、俺は古泉を伴って無言を維持しつつ学校を後にした。
 そして、俺達は暫く無会話状態を継続していたんだが、———俺の精神状態の成せる業なのか———その居心地が悪い事と言ったら……マジで筆舌に尽くし難い。
 そんな妙な雰囲気が続く事数分、その不快感に耐え切れなくなったのは、他でも無い俺の方だった。
「ゴホン……あー、何か言いたそうじゃないか、古泉?」
「おや、これは気を遣わせてしまいましたか?」
「御託はいいから、さっさと言いたい事を言え」
 長ったらしい坂道を下りつつ遥かなる街並みを眺めながら、俺は素っ気無く嘯く。

 ……見えざる針でチクチクと刺されるが如き状況ってのは、精神的に宜しくないんでな。

 古泉は柔らかな笑みを浮かべつつ、しかし、断固たる口調で会話を開始した。
「言わずともご理解頂いているとは思いますが……余り涼宮さんを刺激しないで頂きたいものです」
「…………」
「現時点で涼宮さんの精神状態は宜しくありません。閉鎖空間を生み出す一歩手前と言った状況でして……恐らく、ホンの僅かな刺激で爆発するでしょうね」
 古泉の淡々とした物言いの何処に刺激されたのか、何故だか俺は勢い良く反論する。
「それじゃ聞くがな……お前は、ハルヒの、御機嫌取りのために、朝比奈さんを、人身御供として、差し出せと言うのか?」
「いえ、あの場合でしたら、貴方の行動そのものは間違っていたとは言えません。朝比奈さんを晒し者にするのは、幾ら僕であっても賛同しかねます」
「……の割には、我関せずって態度だったじゃないか?」
とジト目で睨み付けながら、俺は容赦無く詰問を古泉に叩き付けた。
 しかし、副団長殿は寸毫も動揺せず、笑顔を保持したまま自論を展開する。

 曰く……、
「御二人の性格を考慮した結果の事です。あの状況で僕が介入した場合、より事態が拗れていたでしょうね」
「僕が涼宮さんに味方した場合、貴方はより意地になって朝比奈さんを護ろうとするでしょうし、それをご覧になった涼宮さんも又……意地でも朝比奈さんを連れ出そうとするでしょう」
「その反対のケースも同様であると推論せざるを得ない状況において、僕が取る事の出来る最良の選択、それは静観であると思いますが……如何でしょう?」

 「如何でしょう?」と語気鋭く問い掛けられてもなぁ……己自身でも理解している事となると、うむ、何と言うか返答し辛いじゃないか。
「…………」
 俺は口を開く事無く正面を向いたままで、古泉も俺と同じくこちらを見ようともしない。
 古泉がどの様な表情をしているのか皆目判らないが———いや、誤解が無い様に言っておくが、決して知りたい訳ではない———多分、正面に浮かんでいる雲でもぼんやりと眺めているんだろうさ……これまた、俺と同じくな。
 古泉の意味深な問い掛けを黙殺しつつ、「話題を変更しよう。それに破鏡不照とも言うだろ?」との思いを込めて、
「ゴホン、あー、お前が気を遣っていたのは判った。だが、まぁ、何だ……朝比奈さんを御守りする事が出来ただけでも良しとしようじゃないか?」
と可能な限り快活に言い放ったんだが、どうやらそれは副団長様のお気に召さなかったらしい、
「その代わり、と言っては語弊がありますが……ふぅぅ、涼宮さんの精神状態が非常に宜しくないのですが?」
等と盛大に溜息吐きつつ、又々、質問を投げ掛けて来るんだが……お前、弥に拘るじゃないか?
「大丈夫だろ、多分。飽きっぽいハルヒの事だ、明日になれば、兎の事は綺麗さっぱりと忘れているだろうし、何時もの様に他に面白い事でも見付けてて機嫌も元通りだろうさ」
 俺は至極楽観的な口調で古泉に訴え掛けたんだが、エスパー少年はそれを無視して、畜生、態とらしく当て付けがましく溜息を吐き吐き首を振りやがる。
「ふぅぅ、これが単に良く有る朝比奈さん救出劇でしたら、有り触れた団活の一齣だと割り切って、僕も笑顔で帰宅しますよ?」
「……何だ、その奥歯に物が挟まった様な言い草は? はっきりと言え」
「では、お言葉に甘えまして申し上げますが……貴方の不用意な一言が、事の根本的原因である事を自覚されていますか?」
「ん? ……俺の一言だと? 意味が判らん」
 俺が珍しく正直に呟いたにも係わらず、古泉は微苦笑を浮かべつつ此方を向いた。
 柔らかくもあり、そして、何処と無く非難めいた色を含む視線。
 俺はそれを横目で確認し、逃げる様にソッポを向く。
「やはり、気付かれては居ませんでしたか……故に僕は戦々恐々としているのですが?」
「……聞きたくは無いが言ってみろ。俺の発言が何だって?」
「以前、この世界が終末を迎えようとした些細な事件がありましたが、覚えていらっしゃいますか?」
 俺の微かな反応すら見逃さないとでも言いた気に、古泉は俺の横顔から鋭い視線を逸らさない。
「些細かどうかは知らんが、まぁ、有ったらしいな」
とチクチク突き刺さるそれを無視して、俺は嫌々ながら呟いた。
 
 閉鎖空間にハルヒと2人っきり、うむ、余り思い出したくない事件だ……。
 で、アレがなんだって?

「あれが起こり得たのも、元はと言えば……」
 古泉は意味深にそこで台詞を区切り、“ここまで申し上げれば、判りますよね?”的笑みを浮かべるんだが、ふん、済まんな、察しが悪い男で……。

「全く意味が判らん」

と俺は殊更力強く断言し、しかし、古泉さんはそれを予期してかの様に頷き、会話の流れを無視して自説を述べ始めた。
「アノ事件も元を糺せば、貴方が朝比奈さんと仲良くされている場面に、偶然……涼宮さんが遭遇したからですよね?」
「そうか? 単にこの世界が詰まらないから……とかだろ?」
 俺は己の不利を察しつつ、だが、意地になって返事を返したんだが、古泉の追撃は更に続きやがる。
「それでは、貴方はどの様にして、あちらの世界から、此方に戻られました? それこそが回答だと……」
「!? それを思い出させるなっ。……大体それとさっきの遣り取りに、どんな関連があるって言うんだ?」
「まぁ、いいでしょう。思い返して下さい、先程貴方は仰いました。“朝比奈さんは俺にとって天使なんだからな”と」
 俺は顔を顰めつつ、「確かに言ったが……それがどうした?」と小さな声を出した。
 古泉の云わんとしている事を薄々察しながら。
「どうでしょう? その一言を切っ掛けにして、涼宮さんはより意固地になられたとは思いませんか?」
 古泉の何気無い指摘に対し、俺は咄嗟に返答を返す事が出来なかった。

 忌々しい事にだ、確かにハルヒはあの前後から妙に意地を張り出した訳で……。

 過去を思い返しつつ押し黙った俺に、古泉は淡々と話し掛ける。
「そして、何故、涼宮さんは意固地になったのでしょう?」
「……自分の思い付きを否定されたからだろ?」
と自分でも信じていない事を、パブロフの犬の如き条件反射で口にする俺。
 しかし、古泉はそれを完璧に無視して己の主張だけを続ける。
 まるで俺の韜晦には興味が無いと言わんばかりの態度だった。
「縦しんば、朝比奈さんをお助けするにしても、あの一言は余計でした」
「…………」
「阻止するにしても、緊急職員会議や生徒指導室への呼び出し等々……効果的で、且つ、涼宮さんを刺激しない要素は幾らでもあった筈ですからね」
と指折り数えつつ、副団長は淡々と言葉を吐き出し、そして、俺はと言うと、反論する術を持たずに押し黙っている事しか出来なかった。
 そんな雰囲気の中、古泉だけが延々と喋り続け、そして、数分が経過し、
「以上の推論により、完全にとは申しませんが、アノ時の状況に酷似しているのではないか? ……と感じているのですが、如何です?」
と最終的に同意を求められる段になり、俺はやっとこさ声を出す。
「しかし、何故に、その、俺が……朝比奈さんの味方をしただけで、どうして、ハルヒの機嫌が悪くなる? 意味が判らんぞ?」
 漸う口にした反論なんだが、しかし、その直後———副団長殿が返事を返す直前———古泉の携帯が「ピリリ……」と甲高い呼び出し音を鳴らした。

 まるで、惚け続ける俺を糾弾するかの如きタイミングで……。

*****

 次の日は快晴だった。
 何時も通りの平穏で平和な日本の朝だった。

 前日は駅前で別れるまでの間、古泉さんからネチネチと小言を聞かされ続けていた俺なのだが、以前の様にだ、

“自宅で安眠していた筈なのに、何時の間にか瞬間移動したらしく、後ろの席に居座る女生徒に起こされた。しかも北高で、制服を身に着けて……”

何て摩訶不思議な事象が発現する事も無く、無事に何事も無く朝を迎えていた。
 実は内心ホッとしながら、
「ほら見ろ、古泉が心配し過ぎなだけじゃないか」
と嘯きつつ自宅を出た瞬間、しかし、その副団長からメールが届く。
 然も「事件は既に始まってますよ?」とでも言いた気なタイミングに、ギクリと心を痙攣させながら、メールを開封すると……。
「申し訳ありませんが、本日は登校する暇も無いようです。出来ましたら、涼宮さんの様子を気に掛けて頂きたく……」
 先程のお気楽極楽な考えを吹き飛ばすその文面を、俺は暫く無言で睨み付ける。
 折角の爽やかな朝の空気が、何とも憂鬱なものに変質した。

 …………。
 朝っぱらから、嫌なモンを見せられちまったなぁ。
 しかし、気に掛けるといってもなぁ……何をどうすりゃいいのやら?

等と途方に暮れていた俺を指南する心算なのか、再度古泉からメールが送られてきた。

「どうやら涼宮さんは、何に対して怒っているのか、御自分でもはっきりと理解されていないようですので、それを解消する方向でお願いします」

 二度三度とメールを読み返し、「気楽に言いやがるな、副団長殿は……」と苦笑しつつも、古泉達が例の空間に出張っているかも知れないかと思うと、微かな罪悪感が湧き上がった。
 
 昨日聞かされた古泉の説が正しければ、俺にも責任の一端が有るらしいし、仕方が無い、少しは手を貸してやるか……。
 まぁ、これも世界平和のためなんだろうさ。

*****

 そんな訳で、恒例となった長距離登攀行にヒイコラ言いながら、俺は頭の中で色々とシミュレート。
 その結果……俺は幾多のプライドを捨てて、機嫌の悪い妻のために馬鹿でかい花束を購入するお父さんの如く、ハルヒの歓心を買おうと決心していたんだが、しかし、その想定は———砂糖と蜂蜜に果糖&餡子を加え、シロップとクリームとチョコをたっぷり塗したが如く———余りにも甘いモノであった。

 何故ならば、我らが団長涼宮ハルヒさんの機嫌は、俺の想像を遥かに超え言葉に出来ない程滅茶苦茶悪かったのだ。

 教室に一歩入り、微動だにしないハルヒの姿を認めると同時に、俺の脳裏で警戒センサーがファンファーレ付きで鳴り響く。
 腕組みをした体勢で正面を睨みつつ、ブスッとした表情を浮かべて、周囲に表現し辛い威圧感を撒き散らしているその姿は、将に高校入学直後のハルヒそのもので、それは俺に懐かしさを感じさせ、そして、何とも言えない危機感をも覚えさせてくれた。
「……参ったな」
 どうやらハルヒさんの機嫌は、地球人類の生存可能域を忘却し、地底の奥底にでも潜り込んで冬眠しているらしい。
 それを呼び戻すのは、並大抵の努力では無理っぽい……と苦々しく思いつつ善後策を思案しながら、俺は自分の席に向かった。

*****

 んで、俺の善後策がどの様な結果になったかと言うと……はっはっは、言葉にするのも恥ずかしい程の完敗の惨敗だった。
 例えるならば、マリアナ沖海戦を戦った日本海軍の如き体たらくだった。
 まさか話すらまともに聞いて貰えんとは思わんかったぜ。

「あ、あのー、ちょっといいかな、ハルヒ?」
「…………」
「そのだな、まぁ、何と言うか……」
「ナニ?」
「ゴクッ。い、いやぁ、昨日の事について、その、あー、少しだけ話を聞いて貰えると有り難いんだが」
「昨日の事? ……あはは、あたしには何も話す事は無いし、ふふっ、“あ・ん・た・の・天・使・様”に聞いて貰いなさいよ、ふんっ」
 無表情ハルヒは珍しく嫌味を交えて冷酷無感動に言い捨て、その心情を表すかの様に勢い良くソッポを向いた。
 その表情と言い、その雰囲気と言い……その完全無欠なる拒絶的態度は、日本に対して「俺らさ、実は話し合い、したくないんだ♪」とばかりにハルノートを突きつけた某超大国を髣髴とさせ、うむ、当時の日本国首脳陣の絶望感が判ろうと言う物だ。
 だからと言って、大日本帝国の様に「宜しい、ならば戦争である」と誇りを胸に決然と対応出来ない俺は、我ながらヘタレだと思わなくもない。
 しかしだな、1つ言い訳をさせてくれるか?
 ゴホン。
 ……お前らも経験が有るだろ? 
 マジで機嫌を損ねた女の子と相対した時の、アノ極まりの悪さを。アノ居た堪れなさを。アノ居心地の悪さを。
 恐らく男の遺伝子には、女性と言う存在に対し平伏する様にだ、某かの情報操作が加えられているに違いない。
 うむ、今度、長門にでも尋ねてみるとするか?

*****

 とまぁ、意味不明な考察をしつつ現実逃避をしていると、何時の間にやらお昼になっていた。
 体感時間的には小一時間も経過していないんだが、人間ってヤツは焦燥感に苛まれていると、どうやら時間の感覚が可笑しくなるらしい……あぁ、俺にとってはアノ冬以来の貴重な体験で有る。
 そんな訳で、午前中の授業内容何ざ、毛程も記憶中枢に残っていない上に、ハルヒとは朝一で言葉を交わしただけで、少しも状況改善が進んでいないってのがなぁ……。
 しかもだ。
 ハルヒさんにあれだけ真っ向から交渉のテーブルに着く事を拒絶されると、コミュニケーションの取っ掛かりすら思い付かず、トホホ、何をどうしていいのやら。

 参ったなぁ、全然方策が思いつかん。
 大体だな、俺が朝比奈さんを崇拝していると、何故にハルヒが苛々するんだか、その理由がさっぱりだ。
 マジで、今一その思考形態が理解出来んぞ……。

*****

 そんな訳で。
「キョンよぉ、余所でやってくれよ、夫婦喧嘩や痴話喧嘩は」
と空気を読まずにからかいやがる谷口の顔面へ、渾身のグーパンを叩き込む程度に俺自身もご機嫌でな、「こりゃ不味いな」と呟きつつ———昼飯を掻き込むや否や———気分転換がてら校内散策に出る事にした。
「しかし、マジで参ったな……」
と思わず苦笑気味の独り言を漏らしながら、中庭にでもと歩を進める俺。

 この手の騒動に関して———認めたくない上に、非常に癪なんだが———最も頼れる相談相手の古泉さんは、例の空間にでも入り浸ってるのか連絡が取れない。
 未だ人間関係的機微に疎い長門は問題外であり、況してや、渦中の人である朝比奈さんに相談しようものなら、巡り巡ってこの世が終わりかねん……となると、うむ、相談すべき人物に心当たりが無く、俺は不得手な分野にも係わらず、独り苦悩する羽目に陥っていた。
 圧倒的勢力を誇る豊臣軍に周囲を囲まれ、援軍の望みも無くひたすらに篭城するしか手段が無い北条軍の様な心境のまま、「ふぅぅ」と大きく溜息を吐きつつ、中庭に設置されているテーブル1つを占拠し、俺は頬杖を付いて真っ青な空を眺めた。
 去年の映画撮影時の諍いと異なり、己の正当性を寸毫も信じられないってのが苦悩の根源的原因だとは理解していても、それが何の足しにもならないってのがマジで辛いところであったのだが、しかし、捨てる神が有れば拾う神も有るのが世の慣わし。
 悩める子羊を哀れに思ったのであろう、八百万の神々の誰かが救いの手を差し伸べてくれたのである。

 その救い主は、明るく元気で頼り甲斐のある先輩女子高生の姿で以って俺の眼前に現れた。

*****

 意味も無くぼんやりと空を眺めていた俺に、
「やぁやぁ!! キョン君っ」
と周囲を憚る事の無い明るく元気な挨拶が掛けられた。
 振り返った俺の視界に、校舎から出て来たばかりの先輩女子高生の姿が映し出される。
 俺は「鶴屋さん」とその人の名前を口にした。
 そう、テッテッテと軽やかに近付いて来るのは、SOS団名誉顧問で有らせられる鶴屋さんである。
 何時もと変わらぬ朗らかな笑顔を浮かべ、幼子の様にブンブンと手を大きく振り振り、軽快な足取りで此方にスタスタと歩いてくる鶴屋さん。
 何やら天衣無縫的雰囲気を感じ取っただけで、全ての不安が雲散霧消していく様な錯覚を覚える。
 そんな訳で俺はその天真爛漫な笑顔を眩しそうに見詰めていたのだが、鶴屋さんは「ここ、失礼するよっ」と明るく断りを入れ、颯爽と俺の対面に腰掛けた。
 反射的に俺は「どうも」と頭を下げつつ質問する。
「えっと、鶴屋さん? 今日は……朝比奈さんと一緒じゃないんですね?」
「みくるは今進路指導室にょろ。さっき直接送り届けてきたばっかりっさ。じゃないと何処に行っちゃうか判らないからねっ」
 鶴屋さんは快活にケラケラ笑いながら言い放ち、そして、俺の顔を視線で一撫でしたかと思うと、微かに柳眉を寄せ「ゴホン」と喉の調子を整え、
「どうしたいっ、キョン君!! ……んー? 気のせいじゃなく落ち込んでるご様子だねっ」
 気遣う様にさり気無く口調を変えた鶴屋さん的話術に引き込まれたらしい、些かなりともホッとしつつ、やんわりとした苦笑を浮かべ、俺は「判りますか? まぁ、少々心配事が……」と正直に口にする。
「わっはっは、丸判りっさ!! んー、そうにょろね、好きで好きで気になって仕方が無いクラスメートの女の子にどうやって声を掛けようか? 声掛けたとして拒絶されたり嫌われたりしないだろうか?……ってモンモンと悩んでいる思春期男子高校生っぽい感じだよ、キョン君っ」
「ははっ、面白い表現ですね、それ」
「見たまんまの感想にょろよ? まぁ、それはそれとしてっ。どんな悩みなんだい? 良ければお姉さんに話してみるっさ」
 思わず引き込まれそうなニパっとした純真な笑顔を浮かべ、鶴屋さんはドドンと豪快に自らの胸を叩き、その全然嫌味でも何でも無い泰然自若とした仕草が俺の心を落ち着かせていく。

 相変わらず周囲を明るくする朗らかなお人だ。流石はハルヒが名誉顧問に任命するだけの事はある。

と内心で呟きつつ、頼れる相談相手を求めていた俺は待ってましたとばかりに口を開いた。
「まぁ、大した事ではないんですが。実はですね……」

*****

 そして、時は放課後である。

 鶴屋さんに相談に乗って貰い色々とアドバイスを受けた俺は———頼れる名誉顧問の進言である———一も二も無くそれに従う事にした。

 鶴屋さん曰く……、

「少々冷却期間を置くっさ」
「誰もいないところで真剣に頭を下げて謝罪するにょろ。下手な言い訳は不要っさ」
「大丈夫。ハルにゃんがキョン君を本気で拒絶する筈ないよっ」
「何かあったら、うっとこが力になるから、ほら元気を出すにょろー」

……との事だったので、俺の不安はかなりの割合で薄くなっていた。
 悩みを誰かに吐き出すだけで、これ程気持ちがすっきりするものなのかと感心しつつ、んな訳で、午後の授業やら何やらでハルヒにアプローチする事を避け、団活時に謝罪を決行する事にする。
 ハルヒの奴も……授業中は大人しく、そして、休み時間は教室から居なくなるって行動パターンだったので、特にイザコザが発生する事も無く、俺は無事に団活活動帯を迎えた訳だ。
 そして、ハルヒよりも先に部室に辿り着くべく、終礼が終わるや否や、脱兎の如く教室を後にする俺。
 脳内で色々と想定問答を繰り返しながら、湧き上がる不安を打ち消すと同時に、逸る気持ちを抑えつつ黙々と足早に歩き、俺はそそくさと部室を目指す。
 しかし、階段を登っている最中、ふとある事に気付いた俺は、その場に自然と停止していた。

 ……待てよ? 
 鶴屋さんは「誰も居ないところで」と言っていよな?
 これまでの慣習通りなら、長門は既に読書を始めているだろうし、朝比奈さんも給仕の用意に勤しんでいるかも知れん。
 今のプンスカハルヒを別の場所に呼び出す手間を考えると、お二方に席を外して貰った方が精神的負担が少なそうだ。

「……予め断って於けば良かったな」
と己の計画性の無さを嘆きつつ、しかし、今更過去に戻れる訳でもないので、俺は部室に辿り着くべく止まっていた脚に再起動を命じた。
「急いで二人に事情を話した方がいいだろう」と思いながら。
 そして———自然と気が急いていたらしい———殆ど駆け足だと表現出来る脚運びで部室前に到達し、これまた条件反射で扉を静かにノックする。 
 待つ事暫し。
 内部から何も反応が無く、更に部室から漂う無人的雰囲気から察するに、朝比奈さんはおろか文芸部部長すらいらっしゃらないらしい……。
 
 ん? 何だ? 若しかすると長門もいないのか? 
 ……えっとだな、今日のハルヒ的機嫌やら古泉の件を考えると、おいおい、“俺の知らない何処かで”妙な事でも発生していてだ、それを処理するために長門が暗躍しているとか、そんなんじゃないだろうな!?

 ハルヒと2人っきりになるならソッチの方が好都合なんだが、しかし、俺の脳裏にはそんなお気楽な考えが終ぞ出て来る事は無く、フツフツと湧き上がる不安に眉を顰めながら、俺はオッカナビックリ扉を開けた。
 出来れば……俺の不吉な予感が外れてくれると有り難いんだがと願いつつ。
 だが、扉を開き切ったその瞬間、そんな部外者的思考を嘲笑うが如き厳しい現実に俺は直面する羽目になった。
 俺の予感通り、確かに妙な事件は発生してはいた。
 だが、それは“俺の知らない何処か”ではなかったのだ。
 扉を開けた瞬間、“俺の知らない何処かで起こっていた事件”は“俺が当事者である事件”へと変化し……望んでいないにも係わらず、俺は現実改変目撃者となったのである。

*****

 カチャ……。

 誰かが居る訳でもないんだが、意味も無く出来るだけ音を立てずに、俺はそっと扉を開いた。
 そして、眼前に広がる代わり映えしない部室内を、左側から順に一瞥しつつ、文芸部部長が居ないという事実に俺は落胆する。
「……マジで長門のヤツ、居ないのか? すっげぇ不安になるじゃねぇか」
と1人愚痴りつつ、長門の本棚から団長席を経て、冷蔵庫等が置いてある右側へと移動した視界の中に、奇妙なモノを見つけた俺は思わず我が目を疑った。
「……は?」
 自然、室内に踏み込もうとした足が止まる。
 口をポカンと開け絶句しつつ、“ソレ”を凝視する俺。

 事前の想定通り……確かに部室には“誰”も在室していない。
 事前の想定通り……確かに“無人”でもある。
 だが、「有機生命体が居ないのか?」と問われると、俺は無言ではっきりと首を横に振るだろう。

 何故なら、其処には、部室の床には、俺の眼前には、ゴホン、一羽の小さな“白兎さん”がチョコンと座っているんだからな……。

*****

 その白い兎さんは、上半身を持ち上げた状態で微かな身動ぎすらせず、まるで精巧なヌイグルミか剥製の様だった。
 耳の先だけが黒い毛に覆われていて、うむ、そこがポイントではあるな。
 何となく何だが、その兎からめがっさ戸惑った雰囲気が周囲に放たれていて、

「わたし、どうして、此処に居るのでしょう?」
「一体、どうなっちゃうの?」
「これも規定事項?」

とでも言いた気な感じの茫然自失状態であるらしいんだが……。

 いやいや、それは俺も同じでだな、何で兎がこんな所に居る? 
 誰が持ち込んだんだ? ……昨日の今日だしな、ハルヒのヤツか?

 俺は混乱する意識の下、しかし、冷静に状況整理を開始した。
 余りの冷静さに己自身を褒めたくなる一方で、俺は諦観的笑みを浮かべる。

 まぁ、色々と不可思議な事に巻き込まれてきたしな、ソレに比べれば、兎の一羽や二羽……ははっ、慣れって怖いです、母さん。

 そんな訳で、再度、部室内をぐるりと見渡し情報収集を試み、そして、そんな気負いが必要が無い程あっさりと俺は妙な物を発見する。
 思わず眉が寄った。
 妙な物……それは、一言で言えば、北高の制服であるセーラー服なんだが、しかし、見慣れたソレが床に散らばっているとなると穏やかではないだろ?
 更に言えば、呆然と佇む兎さんを中心に配置されているとなると、尋常ではないと断言してもイイ位だ……。

 故に、「何だありゃ?」と小さな声で呟く俺を誰が責められよう。
 そうなのだ、理由は判らないが、床の上にセーラー服一式が一纏めにされて置かれているのだ。
 ガスコンロが設置されているフリーボックス前の床に。
 いや、違うな……置かれていると言うより、セーラー服をその場で脱ぎ捨てた……若しくは、服を着ていた本人が一瞬で消え去り、ストンと服だけが落ちたとでも説明した方が正解に近そうだ。
 その中心に兎さんは鎮座されているんだが、何と言うか、セーラーやら何やらに囲まれ困惑しているその姿は、豪くシュールで、思わず憐憫の情を感じんでもない。
 
 多分だが、この兎、無理矢理連れて来られたと思ったら、置き去りにされて困ってるんだろうな……。
 んで、こんな希代な事を遣らかすヤツは、この世で1人しか思いつかないんだが、全く何を考えて居やがるんだ、ハルヒのヤツは?
 俺への当て付けか? 
 ……いや、アイツはそんな陰険な事をしないな。
 だとしたら目的は何だ?
 むぅ、さっぱり判らん。
 それにだ、この散らばっている制服……一体何の意味があるんだ? 
 これを遣らかしたのが、ハルヒだとすると……昨日の胡坐と言い、恥じらいと言うか、うむ、アイツには一回女性としての嗜みを、懇々と説いてやらねばならんな。
 脳内で雑多な思考が混ざり合う中、制服の影に下着らしいシルエットを確認した俺は、「ハルヒの所業に違いない」と確信しつつ、溜息を吐きながら、兎を保護するために部屋へと踏み込んだ。

*****

「全くハルヒのヤツ……何を考えてこんな事を仕出かしたのか知らんが、こんな所に独りポツンと放置されてちゃ兎だって困るだろうぜ」

 ブツブツと文句を言いながら近付く俺の足音で我に返ったらしい、兎はビクリと身体を痙攣させる。
 そして、カセットコンロを眺め続けるのを中断し、恐る恐ると言った体で俺へと振り返った。
「!?」
 そして、俺の姿を認識したらしいパチクリキョトンとした様子が、何故だが、ハルヒの頓珍漢な発言を聞かされ、「はぁ……」とでも呟き呆気に取られている朝比奈さんを髣髴とさせるんだが、何と言うか、それ位人間臭い所作でもあった。
 妙な微笑ましさを感じつつ、当然の事ながら、俺はそれを「兎が怯えたからだ」と解釈し、上半身を屈めて笑顔を作る。
 そして、その笑顔を保持しつつ、
「あぁ、怯えなくても良いぞ……済まんな、多分、ハルヒなんだろ、こんな所に連れて来たのは?」
と努めて優しい声で語り掛ける俺なんだが……ゴホン、言うまでもない事だが、勿論、兎と会話を成立させる心算何ざ毛頭無いと断言しておこう。
 若しも、俺の真意に異を唱えるヤツがいるならば、一言だけ忠告して遣る。
 お前は疲れているんだ、今直ぐ精神科なり心療内科なりを受診して来い……とな。

*****

 おっとりとした口調で語り掛けながら、白兎の瞳の中にはっきりと知性の揺らぎを感じ取り、内心小首を傾げる俺ではあったんだが、その疑念を意志の力で封印しつつ、ゆっくりと片膝を付いた。

「兎よ? 全然怯える必要はないからな……」
 
 怯えているであろう小さな兎さんを落ち着かせるべく、全ての動作を意識的に緩慢なモノへと移行しつつ、その背中をそっと撫でようとした俺の手は、しかし、中空で停止する事となった。

 何故ならば、件の兎さんが、俺を、潤んだ瞳で、見上げつつ、ポツリと、返事を、寄越してくれたからである。

 しかも、明瞭な日本語で。
 それも、めがっさ悲しげな口調で。
 そして、聞き慣れた朝比奈さんの声で。

「キョン君……わたし、兎さんになっちゃいました……ど、どうしましょう?」


  【その、自分自身の常識を納得させたいので】 …… に続きます。
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  1. 2000/01/01(土) 00:00:00|
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宇奈月悠里

Author:宇奈月悠里
ハルキョン&キョンハル大好き人間です!!

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