女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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SOS団は狙われてるんだからね!!D(みくるちゃん視点)

SOS団は狙われてるんだからね!!


・粗筋:みくるちゃんは異邦人だって自覚しているんです……。


*****


「続きを読む」からは ……

 仄かにホンワカ副々団長編 D:【わたしは何時か還らないといけないから】

……になりまーす(^▽^)/




*****

 そんな感じで団活は始まったんですけど、皆も何時も通りに、それぞれ好きな事をしています。
 文字通り何時も通りの団活です。
 わたしもイソイソとお茶を準備に取り掛かりました。
「遅れてごめーん、皆、おっ待たせ!!」
 そこにタイミングよく涼宮さんが入室してきます。
 すっごく機嫌が良さそうです。
 多分、今から始める訓練が楽しみで仕方が無いんだろうなぁって、ちょっぴり微笑ましくなっちゃいます。
 飛び跳ねる様な足取りで団長席に向かう涼宮さんは本当にいい笑顔でした。着席してそんな笑顔のままグルリと部室を見渡します。
 そして、わたしの姿を目に留めた瞬間、何故かギョッとなって一声。

「ちょ、ちょっとみくるちゃん? 何でメイド服なのよ?」
「え? へ、変ですか? ふ、普段通りってお話だったんで着替えたんですけど……」

 わたしは何処か変かなぁって自分の姿をキョロキョロと見直しました。
 うーん、特に可笑しな箇所はなさそうなんですけど?

「そんな格好でサバゲー……」
って涼宮さんは言い掛けてたんですけど、何かを閃かせたのか大きく頷き言い直します。
「そーよね、みくるちゃんと言えばメイド服。メイド服と言えばみくるちゃんだもんね。うん、その格好で問題無いわ!!」
「よ、よかったぁ……また、ドジをしちゃったのかと思いましたぁ」
 涼宮さんからお墨付きを貰い、わたしはホッと安堵の溜息を吐きました。
 暫くドジッ娘モードは封印したいですからね……。

*****

 そして、涼宮さんの「じゃあ、訓練を開始するわよ!!」って元気一杯の宣言が訓練開始の合図でした。
 皆が順々に部室を後にしていきます。
 何時の間にか、先ずは自分の教室に行きなさいって話になっているみたいでした。
「部室から開始だと面白くないかなと思ってさ、皆の教室に隠してきたの」
と涼宮さんが告げたからです。
 どうやらエアガンを隠したって話みたいですね。
 その悪戯が成功したわ!!
って得意満面の笑顔が眩しく、あたしは思わず微笑んじゃいました。
 涼宮さんが明るいとわたしの気分も沸き立ちます。
 キョン君、古泉君に続いて私の番です。
 いざ始まっちゃうと研修時代を思い返しちゃいます。
 皆の足を引っ張らない様頑張らなきゃって思うと酷く緊張してきちゃいました。
 身体が震えてきます。
「それじゃあ、みくるちゃんの番ね!!」
 涼宮さんがそんなあたしの緊張を吹き飛ばす感じで、元気一杯に声を掛けてくれました。
「が、頑張りますぅぅ……」
「ほらほら、そんな泣きそうな顔をしないの。萌えマスコットキャラはいっつも笑顔じゃなきゃ!! ……でも、無理しちゃダメよ? 本当に怪我だけには気を付けてね、みくるちゃん?」
「は、はい……」
「本当はみくるちゃんにこんな事させたくは無いんだけど、でも、あたしはみくるちゃんのために鬼になってるんだからね?」
とわたしに言い含めながら、「実は本気で心配なだけどなぁ、大丈夫かなぁ」と言いた気な表情の涼宮さんに見送られて、北側校舎の自分の教室を目指します。

*****

「ふ、ふぇぇ……メイド服って走り辛いですぅぅ」
 部室棟から校舎へと向かう途中、スカートとエプロンが足に纏わり付いて、幾度も蹌踉めいちゃいます。
 ……どうしてメイドさんが走る時にスカート摘むのか、その理由がはっきりしました。
 わたし、メイドさん特有の萌えポーズなのかなぁって思ってましたけど、こうでもしないと走れないんですね。
 幸い今日の校内にはSOS団以外の人はいません。
 わたしは覚悟を決めました。
 チョコンチョコンと両手でスカートの左右を摘み上げトテトテと早足状態。言われた通り自分の教室を目指しました。
 部室以外の場所をメイド服で移動するのって、実は凄く恥ずかしいんです。学校内に誰も居ないと判っていても、それが薄れる事は有りません。
 脳裏に4月の新入生勧誘会の記憶が……。
 あの時の新入生さん達の「なんだありゃあ?」って呆気に取られた表情が今でも羞恥心を刺激します。
「ふにゅぅぅ……」
 思い出し赤面をしちゃったので走る事を止め、廊下をゆっくりと歩いて行く事にしちゃいます。
 窓の外はこの季節特有の入道雲がモコモコしてて、自分が地球に居るんだなぁって実感しちゃうんです。

 月では絶対に見る事が出来ない風景ですからね……。

 ちょっと立ち止まって窓を開け放ちました。
 日本の夏特有のムワァッとした湿気混じりの風が通り過ぎていきます。
 自然の風って気持ちいいですよね? 
 わたしはこの感触が大好きなんです。
 暫く目を閉じその風の感触を愉しむ事にします。

 そんな時でした。思いも因らない警報音が一瞬頭の中で響いたんです。

「えっ!?」
 それはTPDDからの短い警報。
 この警報音は……次元震動!? 
 一瞬だけでしたけど、確かにこの警報音は次元振動です。
 嘘!? この時空で次元震動を伴う能動的行動を取れるのは、わたしと長門さん達だけな筈です(涼宮さんはこの際除外しちゃいますね) 
 わたしは勿論使用してませんし、長門さん達だって環境に影響を及ぼすため滅多に使用しません。現に今年に入ってからは使用された痕跡はありませんし。
 わたしは慌てて探査範囲を絞り込もうとしたんですけど、既にその痕跡すら完璧に消去されてしまいました。
 ……近所で起こったのか、もっと離れてるのかそれすら判明しません。
「……若しかするとTPDDの誤作動かなぁ? わたし設定間違ってる事あるしなぁ」
 色々とTPDDを弄ってみましたけど、うーん、良く判りません。
 ……念のため上層部にお伺いを立てようかとも思ったんですけど、それは諦める事にしちゃいました。
 この前も些細な事で指示を仰いじゃったら、「もっと自分で考えなさい」って怒られたなぁって……思い出しちゃったからなんです。
 新たな次元震動の発生に備え、センサー類を調整してそちら方面に特化します。
 目を閉じ暫くその場に留まってみました。
 時間にして1分少々。
 でも残念ながら、特に異常は感知出来ませんでした。
 「……うーん、やっぱりわたしの設定ミスですね」と結論付け移動を再開します。
 良く考えると未だにエアガンを回収していません。涼宮さんに見付かったら、きっと大目玉です……。

*****

 通い慣れた教室に着きました。
 恐る恐る覗き込み、一言断ってから中に入ります。
 やっぱりメイド服での入室には抵抗があるんです。
 教室にイソイソと入って、言われた通りエアガンを捜す事にしました。
 教壇に置いてあるって言ってましたけど……。
 しゃがんで捜してみると、ちっちゃいエアガンとプラスティック製の眼鏡が中の棚に置いてありました。
 よかった、直ぐに見付かりましたぁ。
 それを回収してホッと一息吐きながら、「よいしょ」と立ち上がった時です。
 スカートが何かに引っ掛かったのか、後ろに引っ張られる感覚が伝わり、カクンと膝から力が抜けました。
「え?」
 わたしはモノの見事に体勢を崩してしまい、盛大に尻餅をついちゃいました。
 人気の無い教室に、わたしの「きゃんっ」と言う悲鳴と、デデンって尻餅の音が響きます。
「痛いですぅぅ……」
 ジンジンと鈍痛がお尻から伝わってきて涙がでちゃいそうになりました。思わずお尻を撫でてしまいます。ソレ位痛かったんです。
 
 ふにゃー、ドジッ娘モードは封印した心算だったのに……。
 
 ふと気が付くと———尻餅の時に手から落ちちゃったんだと思います———エアガンと眼鏡が教壇前の生徒机下に飛んでいっちゃってました。
 若しかすると衝撃で壊れちゃったかも……そんな恐ろしい考えが脳裏を過ぎり、わたしは慌ててエアガンに四つん這いでにじり寄ろうとしました。
 その時です。
 一瞬スカートがピンと張る感覚、そしてビリリッ……って布が裂ける嫌な音が足元のスカートから聞こえました。
 わたしはギクリと動きを止めます。
 その格好のまま恐る恐る音のした方向へと視線を向けると、教壇台から飛び出ていた釘に引っ掛かってスカートが30cm程縦に裂けています。
 多分ですが、さっきの尻餅もこの釘のせいでしょう。
「…………」
 一気に血の気が引きました。何時だったか、涼宮さんに聞かされたメイド服の値段が記憶に蘇っちゃいます。
 
 ……す、涼宮さん、素直に謝ったら許してくれるかなぁ? 

 今までの経験から言えば、許してくれないって事はないと思いますが、でも……その後の展開も予想が付いちゃいました。

*****

「うーん、破れちゃったモンは仕方が無いわね。でも新品を買うにしてもさ、みくるちゃんには当然協力して貰わないと!!」
「えぇ!? ……えっと、す、涼宮さん? きょ、協力って何をすれば?」
「えっとねぇ……うんっ、安心してみくるちゃん!! いいアイデアが浮かんだわ!! ……じゃーんっ、デジカメにビデオカメラ♪ これでみくるちゃんのコスプレ写真を撮りまくって、写真集&DVDを作るの。そしてネットでバンバン売り捌くのよっ。あたし達、絶対に一晩で大金持ちになっちゃうわ!!」
「えぇぇぇ!?」
「ふっふっふ、みくるちゃーん? どうして怖がるの? ……ヨイではないか……ヨイではないか」
「す、涼宮さん? な、何で手をワキワキさせてるんですかぁ!? それに、め、目付きが怖いですぅ。く、口元も厭らしいですぅ」
「安心して!! すっごくエッチィのを撮ってあげるから……フフッ、大人しくいい子にしてくれればぁ、直ぐに終わるからね? みっくるちゃん!!」
「きゃぁぁぁ!!」

*****

 ……何故でしょう? 
 すっごくリアルです。
 殆ど現実です。
 ま、まさか、これって規定事項なんでしょうか? 
 わたしは一気に涙目状態です。

 それでも、脳裏にあるアイテムの存在が閃きます。
 ソーイングセット!!
 ……若しかすると、このために持っていなさいって事だったのかしら!?
 わたしは冷や汗を掻きつつ、これ以上裂けない様気を付けてゆっくりと立ち上がりました。
 そして、ヨロヨロと自分の席へと向かいながらエプロンのポッケを探ります。

 ……ソーイングセット。

 某アニメならスポットライトが当たりながら、チャラララーンとでもBGMが入りそうな感じです。
 使い慣れたアイテムがこれ程頼もしく感じられるなんて!!
 席に座るや否や、わたしは針子さんに大変身です。

 こ、これで目立たない様に修復しなければ、わたしの恥ずかしい姿が、全世界に未来永劫広まっていっちゃうんです!!

「ふみぃぃ……」
 そんな恐ろしい考えが、わたしを針仕事へと没頭させてくれました。
 文字通り一心不乱にです。
 気のせいか、長門さんが教室から早く立ち去って欲しいって考えてる気がしたんですが、御免なさい!! それでもわたしは保身を優先しちゃいます。

 物凄く時間が過ぎ去った気がしたんですが、実際は5分少々の事です。
 正午の鐘が鳴った事すら気が付きませんでした。
 スカートを捲くり上げ、修復部分を色んな角度から眺め出来を確認します。冷静に考えると年頃の女の子がするには、端ない格好なんですが……これも一時の恥。
 気にしていられません!!

 でも、どうやら神様がわたしの願いを聞き届けてくれたみたいです。
 生涯最高と言っても過言では無い位完璧な仕上がりでした。
 この前の様に、エプロンとスカートを縫い合わせても居ません。
 人間切羽詰ると何でも出来ちゃうんだなぁって、シミジミ感心しちゃいます。
 
 これなら涼宮さんに、エッチな物を撮られなくて済みそう……。
 
 安堵の余り涙が出そうになりました。
 地震なのか微かな震動を幾度か感じたんですが、気のせいです!!と自分に言い聞かせた甲斐があったというものです。

「よ、良かったですぅ……」

 わたしはパタパタとスカートを整え、気分を入れ替えました。
 大きく深呼吸。
 はい、この件はこれで終了です。
 もう終わりなんです。
 以後この件については禁則事項にしちゃいます!! 

*****

 そう結論付けて、ソーイングセットを丁寧に仕舞ってから、エアガンを恐る恐る手にとって教室を後にする事にします。
 えっと、その時です。再びTPDDが警報音を奏でました。
 今度の警報も次元震動関係。
 先程近距離モードにしたままだったのが幸いしたのでしょうか? 
 今度は明確に発生場所が判明しました。

「え? 嘘、この近く?」
 そうなんです、わたしのいる場所の上の階。
 詳しく言えば4階の東側階段踊り場辺りです。
 此処からホンの10m程度の距離。
 本当に直ぐ其処です。
 但し、転送先が判明しません。
 相当遠くなのでしょうか? 
 時空移動ではなく空間移動だと思うんですけど……。
 えっと、まさか異常事態なのかなぁ? 
 行った方がイイのか、知らんぷりしている方がイイのか……ちょっと迷っちゃいました。
 そして、わたしが廊下でオロオロしている間に3回目の次元震動。
 発生源は同じ地点ですけど、今度のは近距離間の接続。
 其処から次元を貫通し部室に直接繋がっている感じです。
 どうやら移動に使用するみたいですね。

「……あれ? 長門さん、ですよね?」
 多分、使用者は長門さんだと思うんですけど、何をするにも慎重で完璧な長門さんにしては、乱暴で粗雑な移動設定だなぁって思いました。
 わたしが気が付く位ですからね、痕跡をこんなに残すなんて、長門さんのイメージから程遠いんです。
 若しかすると、何か問題が起こったのかもしれません。
 心配です。
 わたしはそう考えて、一旦発生地点へと向かいました。
 ……わたしが居ても役には立たないでしょうけど。

*****

 トテトテ小走りに廊下を駆けて東側階段へと移動、恐る恐る4階に登って行きます。
「な、長門さぁん? ……居ますかぁ?」
 聞き耳を立てても特に物音は聞こえませんし、わたしの呼びかけにも返事は有りません。
 ゆっくりゆっくり慎重に……。
 
 

 4階の廊下に到着。
 周囲を見渡しても、気のせいかもしれないんですけど、少々埃っぽい位で特に変わったモノは発見出来ませんでした。
 次元移動の痕跡すら残っていません。
 流石は長門さんです。
 やっぱり、さっきわたしが気が付いたのは偶然なんですね? 

「……でも、長門さんが次元移動を使ってまでして、此処に来た理由って何なのかなぁ?」
 そんな素朴な疑問を感じたんですけど、長門さんの事です、話す必要が有るなら話してくれますよね?
と考えて……念のために部室に行ってみようかなぁって思い付きました。
 若し何か問題があったなら、わたしにも出来る事が有るかも知れませんしね。

*****

 部室に向かう途中、教室に忘れていた眼鏡を取りに戻ったりしちゃったんで、無駄な時間を消費しちゃいましたけど、それは誰にも言わなければ判らない事なので、心の奥底に仕舞い込んじゃう事にします。
 階段を下りながらその眼鏡を弄ります。
でも、頭の中では長門さんの事を考えていました。
 去年と比較すると、ホントに親しくなったと思います。
 さっきみたいに嫌な顔1つ見せずお手伝いをしてくる事もあります。
 それに、長門さんのマンションで女の子だけのパジャマパーティを何回もしてますし、お洒落に関するアドバイスを求められる事も屡々なんです。
 以前ほど一緒に居ても緊張しませんし、凄くイイ関係になったなぁってわたしは思っています。
 ……長門さんもそんな風に考えてくれてると嬉しいんですけど。
 先週の団活でわたしが作ってきたシュークリームを、「美味しい」と褒めてくれた長門さんの柔らかい雰囲気を思い返し、自然と口元が綻んじゃいました。
 そんな事を考えていたせいでしょうか? 足元が疎かになっちゃったみたいです。
 踊り場に着地する直前、足首にスカートが絡まり前方につんのめっちゃいました。

「きゃあ!?」
 わたしの口から悲鳴が上がり、手からエアガンが勢い良く離れていきます。ガンゴンと耳障りな音を立てて壁にぶつかりながら、それは1階へと落ちていきました。
 でも、それを気にする余裕はわたしには有りません。
 踊り場にビタンと倒れちゃったからです。
 両手を付く事が出来たのは、奇跡と言ってもイイかもしれません。
 顔を打たなくて幸いなんですけど、その代わりに膝と掌が酷く痛いです……。
 わたしは踊り場にペタンと女の子座りをしたまま、呆然としちゃいました。
「ふみゅー」
 ビックリしたのと痛みのお陰で変な言葉が口から飛び出てきます。痛みと情けなさで徐々に涙が込み上げてきました。

 どうしてわたしはこんなにドジなんだろう……?

 そんな自己嫌悪を感じていると、突然、階下から声を掛けられました。
「……みくるちゃん?」
「はい?」
 その声に反応して階段下へと顔を向けると、そこには何時の間にか涼宮さんが立っていて、キョトンとした表情でわたしを見上げていました。
 何故か何時ものカチューシャじゃなく、バンダナをワイルドに巻いています。
 そして、物干し竿かしらと思っちゃう位長いエアガンを両手で持っているんです。
 そして、任務で持ち込んだあのガンベルトを袈裟懸けにしている中々迫力あるお姿でした。
 その迫力ある格好のまま涼宮さんは無言で階段を登ってきます。
 その言い知れぬ気迫にわたしはビクビクです。

 ……あのー、無言で無表情だと怖いんですけど、涼宮さん?

*****

「はい。これで応急手当は終わり!! ……他に痛いとこない? みくるちゃん?」
「あ、はい……大丈夫です」
 涼宮さんはあたしの膝の擦り傷をハンカチで拭ってから、そのまま止血のためって巻き付けてくれました。
 わたしはハンカチが汚れちゃうって断ったんですけど、
「あたしが考えたイベントで怪我させちゃったんだし、コレ位当然なのっ、だからみくるちゃんは気にしなくていいんだからね!!」
って物凄い顔して言われちゃって、わたしはコクコクと頷く事しか出来ませんでした。
 正直なところ、本気で心配してくれてるのが判るから、すっごく嬉しかったんですけど。
「……それじゃ、部室に行くわよ、みくるちゃん。しっかりと処置しなきゃ黴菌が入っちゃってるかもしれないしね」
と涼宮さんはわたしの手を取って立たせてくれながら、そう声をかけてくれました。
「え? 大丈夫ですよぉ。ちょっと膝を擦っただけですから1人で……」
「ダメッ!! そーやって擦り傷を甘く見て年間何千人の人が亡くなってると思ってるの、みくるちゃん!? あたしは大切な団員をそんな目に合わす心算は全く無いんだからね!!」

 そ、そうなんですか!? ……擦り傷でそんなに沢山の人が他界されているなんてビックリです。これは涼宮さんの言う事を聞いておいたほうが安心ですね。

 わたしは手を引かれて、部室へと向かいました。
 ゆっくりとわたしを誘導してくれる涼宮さんは、気のせいだか少し落ち込んでいるみたいです。
 どうしたんでしょうか? 
 わたしは気になって尋ねてみる事にしました。
「す、涼宮さん? どうかしました?」
「守ってあげるって言っておきながら、みくるちゃんにこんな怪我をさせた自分が許せなくて……」
 キリキリと奥歯を噛み締めてるっぽい涼宮さんに、わたしは大慌てです。
 だって何時もは元気一杯の涼宮さんですけど、落ち込んじゃうと立ち直ってくれるまでが大変なんですから。
 その間はわたし達もドンヨリとした気分になっちゃいますし……。
 このままじゃ、またキョン君に迷惑が掛かっちゃう!! 
 そんな思いが脳裏を過ぎりました。
 一生懸命、わたしのドジのせいだから気にしないで下さいって伝えます。伝えたんですけど、涼宮さんの気分は一向に晴れてくれません。
 
 あーん、わたしじゃやっぱりダメみたいです、誰か助けてください……。
 
 内心泣き言を言っていた時です、そういえば長門さんが部室に居る筈ですと気が付きました。
 わたしに出来ない事でも長門さんなら……とその静謐な横顔を思い浮かべた瞬間です、わたしの脳裏に閃きが訪れてくれました。

「あっ、じゃあ、涼宮さん? 女の子だけで、取って置きのアップルパイ食べちゃいましょうか?」
「えっ? アップルパイって……一昨日、キョンと古泉君が食べ残したヤツ?」
「はい。実はあの後、お2人がですね、残りは女性陣でどうぞって言ってくれたんですよー」

 そうなんです。一昨日わたしが作ってきた林檎たっぷりのアップルパイ。
 団活の時に皆で食べたんですけど、やっぱり男の子には甘すぎたんだと思います、キョン君と古泉君は1個程度で満足げな表情になってました。
 そして話は先程の「残りはどうぞ」って台詞に繋がるんです。
 だから、少し小さめに切り分ければ、女の子で1個づつは食べれる筈です。そんな事を一生懸命説明すると、涼宮さんはニコリと微笑んでくれました。

「御免ね、みくるちゃん……何だか気を遣わせちゃって」
「い、いいんですっ……わたしも涼宮さんから一杯色んな物貰ってるんですから」

 ホントに涼宮さんには沢山お世話になってるし、この位は軽いモノです。
 そんな気持ちを込めてわたしもニコリ。
 でも、わたしが笑顔を浮かべると、涼宮さんはわたしの顔をマジマジと見つめてきました。
 そして、何やら我慢出来ませんって表情を浮かべ、「もう、何でみくるちゃんはこんなに可愛いの!?」って真正面から抱き付いてくるんです。
 力一杯抱きすくめられ、わたしは目を白黒させちゃいます。

「むぎゅ……す、涼宮さぁん……く、苦しいですぅ」
「安心して、みくるちゃん!! あたし、誓っちゃうんだからっ、みくるちゃんがお月様に帰るまでシッカリキッカリ守ってあげるって……ううん、何処に居ても守ってあげるわ!!」
「あ、有難う……ござ……い、ま……す!?」

 一瞬、時間が止まりました。
 世界中から音と言う音が消え去ります。
 序に身体中の血液が、サァァっと引いていきました。

 ……えっと? 今、涼宮さん、何て言いました? 
 わたしの聞き間違いでなければ……月に帰るまで守るって。
 …………。

 ちょっっっと、待って下さい!! 
 どうして、わたしが月に帰るって事、知ってるんですかっ!? わたし、若しかして、何処かで話しちゃいました!?

 ホントにビックリです。
 一気にパニックです。
 将に驚天動地です。

 わたし達の時代、地球上に住んでる人は居ません。
 全部の人が月かコロニーで暮らしています。
 地球は環境保護のため、厳重に管理されているんです。
 
 そんな事をこの時代の人に知られちゃうなんて、法規違反もいいところです。
 一体幾つの法を犯しているのか、数える気にすらなりません。
 ……軽くて長期間の冷凍刑、重ければ極刑も有り得る最高級の犯罪。
 その事実がわたしを打ちのめしました。

 お父さん・お母さん……先立つ不幸を御許し下さい。みくるは犯罪者になっちゃいました。

 そうなんです、鬼の時空情報管理局がこんな重犯罪を見逃す筈がありません。
 きっと明日にでもわたしは拘束されて、即決裁判の後……刑務所送りです。

 一気に涙が出てきちゃいました。全身から力が抜けていきます。
「ふみぃぃ……」
 へたり込んで泣き出したわたしを、涼宮さんがビックリしながらも慰めてくれてます。
 幼子をあやす様にわたしの顔をそっと覗きこんで。
「ちょ、ちょっと、みくるちゃん? 行き成りどうしたの? 若しかして何処か痛い?」
 よしよしと頭を撫でて慰めてくれる涼宮さん。
 やっぱり優しいなぁ……わたしはこれが最後になるのかもと思い、せめて原因だけでも探っておこうと決心しました。
 しゃくり上げながら涼宮さんに問い掛けます。
「しゅ、涼宮しゃん……グス、い、一体……ふぇ……どうじて、月の事を?」
「え、月?」
「はい、月……クスン……わだし何で……グス……月に」
 呆気に取られた口調で、「えっと……何処か痛いわけじゃないのね?」と幾度も確認する涼宮さんに、わたしは同じ回数だけコクコクと頷きました。
 若しもどこかが痛かったとしても、構ってられなかったに違いありません。  
 わたしは涙を流しながら、涼宮さんの整った顔を見つめました。
 涼宮さんは明らかに安心したみたいです。
 大きく安堵の溜息を吐きニパッと笑顔になりました。
 思わずわたしも微笑み返しちゃった位素晴らしい笑顔。
「もうビックリしたわ。んとさ、みくるちゃんが何を気にして泣き出したか知らないけど……」
とそこで言葉を切って、涼宮さんはヨッコイショと立ち上がり、わたしに手を差し伸べます。
「みくるちゃんだって知ってるでしょ?」
「な、何をでしょう?」
 わたしはその手を取りながら聞き返しました。
 知っているでしょ?と言われてもですね……色々涼宮さんに知られるとイケナイ事ばかりが脳裏を駆け巡ちゃって、「知ってます」何て迂闊に口には出来ません。

「かぐや姫はね、お月様から来たのよ?」
「……ほへ?」

 ニコニコ笑いの涼宮さんの口から、予想しなかった単語が飛び出しました。

 ……かぐや姫ですか? 

 思いっ切り虚を突かれちゃったわたしは、奇妙な返事を返してしまいます。

「そう、かぐや姫!! あたしね、以前からみくるちゃんってかぐや姫なんだって思ってるの」
「……はぁ」
「こんなに可愛い女の子が只の人間である筈無いもんね!! だから、あたしにはピピンと来ちゃったの、きっとみくるちゃんは妖精か若しくはそれに準ずる何かだって。そして辿り着いた結論が……」

 涼宮さんはズビシと指を窓の外に突き付けました。
 わたしもその指先の空を見つめます。
 薄らと月が浮かんでいるのが、視界に入ってきました。

「……何時かお月様に帰っちゃうかぐや姫!!」

 わたしは呆気に取られて、涼宮さんの解説を聞いていました。
 数学に例えると途中の式は全然違うのに、答えだけが完璧に合ってるって感じです。
 流石は涼宮さん……としか表現出来ません。
 と、兎に角、良くは判らないんですが、わたしが情報漏洩した訳ではなさそうです。
 ……それ以前に冷静に考えると、禁則事項中の禁則事項を、わたしが独自に解除できる筈ないですよね?
 本気でホッと一安心です。
 思わず安堵の笑みが浮かびました。

「よ、よかったですぅぅ……」
「あはっ。うん、やっぱり、みくるちゃんは笑顔じゃないと」
「え、えっと……すいません、何だか心配掛けちゃって」

 ペコペコと頭を下げるわたしに、にこやかな笑みを向け、涼宮さんは元気に宣言します。
「それよりも、早く部室に行って手当てしちゃいましょ」
「は、はい!!」
 そして、わたしは復活した元気一杯の涼宮さんに、手を引かれて部室まで連行されちゃいました。

 ……そう言えば、訓練はどうなったんでしょうか?
と涼宮さんに聞けずじまいのままですけど。

*****

 そして、連行された部室では……読書をしていた長門さんを交えて、軽めのティータイムを楽しんだり、涼宮さんが「不審者役頑張ってくるわねっ」と出て行った後に、その長門さんから、「美味しい紅茶の淹れ方を教えて欲しい」と頼まれたり色々ありました。

 涼宮さんと居ると、本当に波乱万丈な人生を送れちゃいますね。
 この時代に派遣されて本気でよかったなって思います。

 そして、皆が帰ってくる前に、お茶とお菓子の用意を済ませなきゃと頑張っていた時です。
 コンコンと静かにドアがノックされました。 
 ん? 涼宮さんはノックしませんし、キョン君も帰ってくるなら涼宮さんと一緒の筈。
と言う事は……。
 わたしはノックした人物を想像して「どうぞ」と返事をしました。
 その返事を聞いて男の子が、「失礼します」と頭を下げて部室へと入ってきます。
 わたしの予想通り、やっぱり古泉君でした。
 入室するや否やフッと優しげな笑みを浮かべる古泉君、わたしも微笑みを浮かべてお出迎えです。

「古泉君、お帰りなさい。……古泉君もやっつけられちゃったんですかぁ?」
 声を掛けながらお疲れ様の意味を込め、紅茶ではなく緑茶を入れてあげちゃいます。
 紅茶に関しては長門さんにお任せしちゃいますね。
 緑茶を手早く準備し専用の湯飲みに注いで手渡すと、そのお礼と共に古泉君は報告をしてくれました。

「えぇ、流石は涼宮さん。あっさりと見付かって撃たれてしまいました」
「やっぱり古泉君……」

 わたしは思わず感想を言い掛けて、慌てて自分の湯飲みに口を付けて残りの言葉を飲み込みました。
 言ってイイのかどうか見極めないでそれを口にしようとした自分を内心叱っちゃいます。
 お茶を1口。
 ゴクン……ちょっぴり苦い味。
 そして、古泉君、どんな風に捉えたのかなぁって心配になってその顔を覗き込んだ瞬間です。
「???」
 何故だか、違和感を覚えました。
 何処がと言われると困るんですけど……でも何時もの古泉君じゃないんです。
 理由、聞いた方がいいのかなぁ? でも、黙っているって事は言いたくないって事だろうし……。
 古泉君は微かに苦笑しながら、柔らかな口調で質問をしてきました。

「……済みません、朝比奈さん。何が、やっぱりなのでしょう?」
 その苦笑が思いっ切り戸惑ってる風に感じられ、わたしは慌てて感じていた疑念を放り投げて弁解しちゃいます。
 決して悪い意味じゃないんですと伝えたくて。
「あ!! あの、御免なさい!! 悪い意味じゃないの……えっと、古泉君はきっと涼宮さんに銃口を向けられないだろうなぁって」
「…………」
 古泉君はお茶が入っている湯飲みへと視線を落とします。
 そして、無言で考え込んじゃいました。
 何を考えているのかは正直判りません。
 でも、誰の事を考えているのかは判ります。
 そして、それを口に出来ないと言う事も。
 
 ……古泉君は優しくて強いから、想いを心の奥底に仕舞いこむ事が出来るんですね? 
 ホントに凄いなぁ。でも、それって辛いですよね……。

 だから、ここは話題を変えちゃいましょう。
 古泉君を困らせる心算は毛頭ありませんからね。

「えっと……皆やっつけられちゃったから、後はキョン君だけですねぇ」
「涼宮さん、彼との直接対決だって喜び勇んでましたよ」
 わたしの話に古泉君も乗ってきてくれました。
 古泉君がその時の様子を語ってくれます。
 まるで我が事の様に嬉しそうに……。
 その時の涼宮さんのはしゃぎっぷりが容易に想像出来ました。

「何だか、その時の涼宮さんの嬉しそうな表情が目に浮かびます」
「……朝比奈さんが思い描いている通りの笑顔だったと断言してもいいですよ?」

 自然と古泉君へと視線が移動、古泉君のそれと絡み合います。
 どうやら涼宮さんらしいって思いは同じみたい。
 何時しか2人はクスクスと笑い合っていました。
 気が付けばこんなに気持ちが落ち着く関係になってます。
 わたしは凄く嬉しい事だと思ってるんですけど、古泉君はどうなのかしら?
 そんな疑問を感じた瞬間、古泉君は思い出したと言った風情でわたしに質問をしてきました。

「あぁ、朝比奈さん? そう言えばですね、怪我の具合は?」
「あ、涼宮さんから聞きました? 恥ずかしいなぁ……でも、ホンの掠り傷。涼宮さんに手当てもして貰ったし」

 階段での自分のドジッ娘っぷりを思い出し、1人赤面。
 そんなわたしの表情を何時もの微笑を浮かべて眺めていた古泉君は、

「そうですか、それなら安心ですね」
「本当に気を付けて下さいね」

と優しい気遣いを見せてくれました。
 キョン君といい古泉君といい、ホント優しい男の子ばかりです。
 古泉君は指定席になってるパイプ椅子に腰掛け、わたしに目礼をしてから一気に緑茶を飲み干しました。
 満足げな表情から察するに相当喉が渇いていたんだと思います。
 それならお代わりは如何が?とばかりに、わたしは2杯目の緑茶を注いで上げました。
 古泉君はわたしへのお礼もそこそこに長門さんへと話し掛けます。
「あぁ、長門さん? 読書中に申し訳ないのですが……少々宜しいでしょうか?」
 長門さんは古泉君の呼び掛けに本から顔を上げて「何?」って返事をしています。
 何時も通りの冷静で落ち着いている長門さんでした。
 
 実はさっき2人っきりの時に、「長門さん? ……若しかして何か異変でもありました?」って、長門さんに思い切って聞いてみたんですけど……。
「そのような事象は無い。全然無い。全く無い。全て気のせい。その疑念は速やかに忘却するべき」
って長門さんに強く否定されたんです。
 あまりの迫力にチョッピリ涙目になっちゃったのは内緒です。

 その時の言葉と今の長門さんの何時もと同じ対応を見て、わたしは納得しました。
 さっきから何処と無く疲れてるみたいと感じていたのは、やっぱりわたしの気のせいなんですね。

 よかった……それなら一安心です。

 一方、古泉君は長門さんに対する質問を続けます。
 どうやら、涼宮さんが持っていた物干し竿みたいに長かったエアガンの事が話題のようです。
 古泉君の事細かな情景描写。
 ベニア板が粉々になったと聞かされた瞬間、わたしは自分の血液がサァァっと引いて行く音を聞いちゃいました。
「そ、それ、危ないんじゃ? キョ、キョン君……大丈夫かなぁ?」
「えぇ。僕もそう感じたので、長門さんの真意を伺いたくて」
 長門さんはわたしと古泉君の問い掛けに、「……私は涼宮ハルヒの要望に答えただけ」と返答を返してくれました。
 何時も通りの静かな口調で。
 ベニア板の話なんかを聞くと、それってどう考えても危ないなぁって思うんですけど、でも、どうしてだか長門さんはそうは考えてないみたいです。
 自然と問い掛けが口から漏れました。

「長門さんはどうして……心配してないんですか? キョン君、そんな凄いので撃たれたら大怪我しちゃいますよ?」
「私の能力が涼宮ハルヒの願望を凌駕する事はない」

 長門さんから淡々とした答えが返ってきました。
 でも、わたしにはまるで頓知みたいでチンプンカンプンです。
「???」
 小首を傾げ眉を顰めて考え込んでいたら、古泉君がポツリと呟きました。
 どうやら今の回答で理解出来たみたい。
 流石は古泉君ですね。
「成る程。涼宮さんが望む筈が無い、彼が危険な目に合う事を……と言う訳ですね?」
 「そう」って長門さんらしい返事と同時に、中庭からキョン君と涼宮さんの話し声が聞こえてきました。

「待ちなさいっ、キョン!!」
「待てと言われて待つ馬鹿が何処に居る!!」

 声だけ聞けば喧嘩していると言われても、否定出来ないんですけど……でも、部室の中が直ぐに温かい雰囲気に包まれました。
 だって、ここに居る人は皆知っているんですから。
 古泉君も笑顔を浮かべ窓際に歩み寄ります。
 わたしもその後を追って、中庭を見下ろしました。
 長門さんは読書を中断して、わたし達と同じように視線を中庭に投げ掛けてます。
 中庭では涼宮さんが逃げるキョン君を追い掛けてました。
 凄く嬉しそうな涼宮さん……。
 その涼宮さんがキョン君に向けて一言。

「待ちなさい!!」

 それと同時に、物干し竿みたいに長いエアガンをキョン君に向けました。
 ……それってさっき古泉君が話してた危ないエアガンですよね!? 
 わたしは思わず息を詰めて涼宮さんの行為を見詰めます。
 古泉君と長門さんが危険じゃないって太鼓判を押していたとしても、心配な事には変わりありません。
 でも、古泉君が話してくれたのと明らかに様子が違いました。
 全然玉が飛んでいきません。
 あれじゃベニア板を壊すなんて絶対に無理です。
 涼宮さんが苛立ちの声を張り上げました。
「あーんっ、何でさっきからきちんと飛んでいかないのよ!? キョンを蜂の巣に出来ないじゃない!!」
 その絶叫に対して、中庭の中央に聳え立つ大木の陰に隠れてキョン君が返事をしています。

「ゼェゼェ……蜂の巣? ゼェゼェ……こんな遊び如きで、そんな目に、フゥゥ……合わされて、たまるかっての!!」
「なっ!? 遊びって何よ!? この重要な第1回SOS団危機管理超演習を言うに事欠いて遊びですってぇ!? ……ちょっとそこに正座しなさい、キョン!! 団長自ら説教してあげるんだからっ」
「冗談じゃない」
「だから、逃げるなっこのバカキョン!!」

 涼宮さんに追い掛けられながらキョン君が視線を上げました。
 どうやら、わたし達が観戦しているのに気が付いたみたいです。
「こ、古泉っ!! お前、見てないで、た、助けろっての!! 仲間だろうがっ」
「助けちゃダメよ、古泉君!! 1度、キョンにはしっかりと身体に教えておかないといけないんだからっ。甘やかしちゃダメなんだからね!!」
 見慣れた光景ですけど、でもやっぱり心が落ち着くって言ったらキョン君に悪いかなぁ……。
 そんな事を考えていたわたしの隣で、古泉君がヒョイと肩を竦めつつ一言。
「申し訳ありません。お助けしたいのは山々なんですが……団長命令ですので」
「古泉ぃぃ!! 後で覚えてろぉぉぉ!!」
 キョン君の悲鳴を最後に、お2人は何事かを言い合いながら、校舎へと駆け込んでいきました。
 わたしは呆気に取られてそちらを見詰めます。

 ……えっと、何時の間にか鬼ごっこになってるんですけど、いいんでしょうか?

*****

 キョン君と涼宮さんがいなくなった途端にですね、わたし達の回りは静かになっちゃいます。
 だから、その笑い声は小さかったにも係わらず、はっきりとわたしの耳に届きました。
「ふふっ……」
 それを耳にしたわたしはそちらをチラリと伺います。
 発生源は古泉君でした。
 キョン君達が消えた校舎を見詰めるその視線は優しく、そして微かに悲しげ。
 わたしはその理由に思い当たります。
 そう、幾等、古泉君が隠そうとしても女の子には隠し通せないものがあるんです。
 当の涼宮さんは気が付いていないでしょうけど。
 でも、それも当然なんです。
 涼宮さんの意識の全てはキョン君に向けられているから。
 恋する乙女にとって、その愛しい人以外の事なんて瑣末事ですからね。

 ……その事実がわたしの胸を締め付けてきました。

 決して報われない想い。
 告白する事すら許されない恋心。
 それを阻むのは……わたし達の特殊な事情。

 それら全てにわたしは急き立てられました。
 衝動に駆られて口から感想が漏れてしまいます。

「ホントに、あの2人を見詰める古泉君の視線って優しいですよね?」
「……え?」
「それでいて、何処か悲しげ……」

 わたしの声も何処か悲しげで切ない感じ。
 それでも、古泉君は微笑んで返答してくれました。
 でも、その微笑みは何時もと違うんです。
 それを古泉君本人は気が付いていないんです。
 それが更にわたしを悲しくさせます。

「悲しげ……ですか? 失礼ですが、朝比奈さんの勘違いでは?」
 わたしは無言でその先を促します。
 今、口を開いたら心の中で渦巻いている切なさが溢れ出ちゃいそうです。

「僕は涼宮さんがアノ笑顔で過ごしてくれるなら、他には何も望みませんから」
 そう言って古泉君はわたしから視線を逸らしました。
 その儚げな横顔。
 そして、その悲しげな視線から感じていた圧力が消えた瞬間、わたしの中で何かが決壊しました。
「本当に、それでっ……」
 「……それでいいの、古泉君は?」と聞こうとしたわたしの機先を制して、古泉君はポツリと呟きます。
「彼と笑い合っている涼宮さん、本当に楽しげですよね?」

 えぇ、それは否定しませんよ。わたしもそう思いますけど……。でも、それを見てるだけって辛くないんですか、古泉君は? 

 わたしは無言のまま雰囲気で問い掛けます。
「そうです。朝比奈さんの仰る通り、僕は好きなんですよ……」
「え!?」
「……彼と一緒にいる時に、涼宮さんが浮かべる幸せそうな微笑を見るのが」

 古泉君がゆっくりと顔を動かし、わたしの顔に視線を合わせました。
 そして、微笑を浮かべます。
 思わず見蕩れちゃう程、何時も以上に淡く切なげな微笑みでした。
 色んな感情が渦巻いている視線がわたしを射抜きます。

 ドキリ……。

 わたしの心臓が大きく跳ねた瞬間、古泉君は殊更静かに問い掛けてきました。

「……朝比奈さんもそうでは有りませんか?」

 その視線と意味深な問い掛け。
 古泉君の云わんとしている事全てを悟って、わたしはソッと視線を外しました。

 お互い様って事ですか? でも、わたしと古泉君では立場が違い過ぎます。だって……わたしはこの時代の人間じゃないんですよ? 
 だから、諦める事だって出来る筈なんです。
 諦めなきゃいけないんです。
 時と言う絶対的な存在に切り裂かれる事が判ってるんですから。

「わたしは何時か還らないといけないから。で、でも…………」

とそれらの思いを込めて優等生的回答を返します。いえ、返そうとしました。思わず続いて飛び出る所だった質問を無理矢理押し留めます。
 「でも……」の後は絶対に口にしてはいけない事だからです。

 ……でも、古泉君は、この時代この場所で生き続けるんですよ? 
 すっと想いを殺し続ける事が出来ますか? 
 その苦しみに耐えられますか? 

 ……えぇ、判ってます。これを聞いた所でどうにも成らないと言う事は。
 わたしがこの時空に存在するのは規定事項達成のため。
 規定事項を破る事は出来ません。
 例えどんな犠牲を払ってもです。
 そう、あのペーパーナイフを盗んだ時、凄まじい罪悪感に包まれたわたしの様に……。
 
 でも、それでも、一言ぐらい……。

 そんな絶対権力者に対する儚く空しい抵抗を試みようとするわたしに、古泉君は静かに語り掛けてきます。

「朝比奈さん? 僕はですね、本当に……涼宮さんが彼に向ける笑顔、それこそが最高に好きなんですよ」
「古泉君……」

 ……それなら、どうして、そんなにも悲しそうな表情をするの? 

 わたしの心の奥底の疑問を知らずに古泉君は言葉を続けます。

「何時でも浮かべていて欲しいと心の底から願っていますよ。そのためでしたら、僕は鬼にも悪魔にもなる覚悟があります。勿論……」

 そこで古泉君は言葉を飲み込みます。
 わたしは聞きたい様な聞きたく無い様なそんな複雑な心境で、その先を暗に促しました。
 それに答える様に古泉君がニコリと微笑んだ瞬間、

「涼宮ハルヒが彼を捕獲した」
と今まで静かに読書をしていた長門さんが、唐突に語り掛けてきました。
 一瞬で重くドンヨリと漂っていた闇が消滅する感覚。
 一気に部室の空気が変わります。
 わたしと古泉君は同時に長門さんへと振り向きました。
「両者とも大きな怪我はしていない」
 わたし達の反応を待っていたのでしょうか? 
 長門さんは淡々と言葉を続けます。
 その何時も通りの対応がわたしの心を一気に落ち着かせてくれました。
 悲しみも切なさも洗い流されていきます。
 「……有難うございます長門さん」って思いと共に、わたしは朝比奈みくると言う1人の女の子から、SOS団専属メイドに戻るべく大きく深呼吸です。
「……と言う事は擦り傷位は創ってるかもしれませんね」
 古泉君と交わしていた重く切ない話題は終わりですって思いを込めて、救急箱の準備に取り掛かります。
 これを切っ掛けに何時ものSOS団に戻りましょう!!
 その思いが通じたのか、古泉君が両手を広げ大袈裟に嘆いています。
「残念ながら……この貴重極まりない静謐空間を堪能できるのも、あと僅かと言う事です」
 ちょっぴり悪い人っぽい言い方ですけど、わたしは自然と頷いちゃいました。
 気のせいか長門さんも同意してるみたいです。
「でも、キョン君と涼宮さんが居ないSOS団って、ちょっと静か過ぎますよね……」
 そうなんです、キョン君と涼宮さんが揃わないと、やっぱりSOS団とは言えません。
 こんな時だからこそ、いえ……あんな意味深な会話を交わしてしまった後だからこそ、強くそう感じちゃいました。
 わたしが長机に救急箱の中身を広げながら何気なく呟いた一言に、長門さんも古泉君も迷う事無く同意してくれました。

 思わず笑顔が浮かんじゃいます。

 何時からでしょう、そんな思いを一緒に感じるようになったのは……。
 でも、絶対に悪い事じゃないと思います。
 何時かは別れなければいけないにしても、それまでは仲良く楽しく過ごしていきたいなと思っちゃいました。

 そんな時です。
 涼宮さんの元気な声が脳裏に響きました。

「そんなの当たり前でしょ、みくるちゃん? あたし達は何時までもSOS団の仲間なんだから、どんな事があっても、一致団結して正面突破していくんだからねっ。それはみくるちゃんが月に帰っても、ずっとそーなんだから!!」

 わたしは人知れず1人頷きます。
 そして、気が付けば、扉の向こうから元気な話し声が聞こえてきました。
 明るく楽しそうな涼宮さんの声。
 きっと満面の笑顔なんでしょうね、涼宮さん。
 わたしはその笑顔を早く見たいなって、扉が何時もの様にバッターンと開け放たれるのを今か今かと待ち望んじゃいました。
 だって、涼宮さんの笑顔はSOS団団員にとってご褒美みたいなものですからね。
 ……今はわたし達にも受け取る権利があると思うんです。
 残念ですけど、独り占め出来るのはもっと先の事ですよ、キョン君?

 だからお願いです、涼宮さん。
 今だけは、せめて今だけは、わたしや長門さんだけじゃなく、古泉君にもその笑顔を分けてあげて下さいね……。


【Das Ende……】
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  1. 2000/01/01(土) 00:00:00|
  2.  SOS団は狙われてるんだからね!!
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