女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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SOS団は狙われてるんだからね!!⑤(ハルハル視点)

SOS団は狙われてるんだからね!!


・粗筋:有希ちゃんのちょっとした変化に気付く団長様……。


*****


「続きを読む」からは ……

 ほんのり過激な文芸部部長編 ⑤:【あたしは貴方の味方よ? どんな時でも何があっても】

……になりまーす(^▽^)/



*****

「あっれー? 有希? ……何やってるのよ?」

 あたしは扉を勢い良く開け放ち、部室へ入室しようと一歩足を踏み出した格好で固まっちゃったわ。だって誰も居ないと思っていた部室の中に有希が居るんだもん。しかも、みくるちゃん愛用のお茶セットの前で、黙然と立ち尽くして。

「…………」
 ゆっくりと顔を動かし、そのまま微かに小首を傾げながら、有希はあたしを凝視する。
 何だか「何故、貴方が此処に居るの?」って疑念を覚えているみたいな感じね。
 ……でも、その言葉はそっくり有希にお返ししちゃうわよ?

「どしたの? 有希? 訓練は始まったばかり……」

と言い掛けてあたしは口篭った。
 立ち尽くす有希をジッと見詰める。
 何処と無く有希の様子が変だった。
 何処が? と問い掛けられるとちょっち説明に困るんだけどさ。……うーん、雰囲気かしら?
 何時もの、静謐で超然神秘的な雰囲気と打って変わり、今日に限って、弱々しく儚げなイメージを感じちゃったあたし。

 例えるなら、普段は天界に住む穏やかで平和的な幻獣が、仲間を護るため孤軍奮闘し、傷つき疲れ切って現世に落っこちて来ちゃった……そんなイメージだった。

 そして全く脈絡も理由も無く、今の有希は本当にそーゆー状況なんじゃないかしら? って気がしたの。だから、有希は疲れた顔をしているんだと。
 若しそうだとすると、団員管理は団長の責務じゃない!!
と心の中で使命感がムクリと頭を擡げた。
 ソレとは別に罪悪感も感じながら、あたしは恐る恐る部室に入る。
 有希はその様子を身動ぎもせず見詰め続けていたわ。
 そして、扉を潜ったその瞬間、あたしは奇妙な違和感に包まれる。

「???」
 なんだろう? 何時もの部室と違うこの感じ。何かが足らないと云うか密度や温度が低いと云うか……どうにも表現し辛い感覚だった。
 でも、その違和感を無視して、有希の様子を気に掛けるあたし。

「……若しかして、有希ってば、訓練に飽きちゃった? それとも疲れちゃったのかしら?」
「違う。喉が渇いただけ」

と有希はティーセットに視線を落として短く返答。
 何時もとは確実に違うその様子に、あたしは物凄い焦燥感に苛まれた。今まで感じた事の無い類の焦りだった。
 あたしはそれに背を押され、握り締めていたエアガンを長机にそっと置き有希へと近付く。
 有希の身体が何時も以上に小さく儚く感じた。
 思わず唾を飲み込むあたし。
 そんな気配を感じ取ったのか、有希がゆっくりと振り向く中、どうしてか、あたしは有希を滅茶苦茶慰めてあげたくなったの。
 だから、静かに背後から抱き締めるあたし。
 鼻腔を擽る有希の仄かな体臭。
 それに一瞬混じった極微量の血の匂い、それがあたしを悲しくさせた。

「…………」
 あたしの腕の中で、有希が身体を固くするのを感じ取りながら、何故かあたしは「お疲れ様」と心の中で呟く。
 そして、委細構わず、その小さな御でこに右手を触れさせようとして、それを有希に阻止された。
 気が付けば右手首を有希に掴まれている。
 あたしを振り返る有希と視線が交差した。有希もジッとあたしを見詰める。

「有希? ちょっと熱を計らして頂戴」

とあたしは優しく懇願し右手に力を入れた。
 にも係わらず、有希は手を離してくれない。
 ジッとあたしを見詰めるその視線からは、「何故?」って素朴な疑問を読み取れた。
 どーやら、その疑問を払拭しないと手を離してくれなさそうだ。
 あたしは内心感じた不安を言葉に変換した。
「有希が調子悪そうだから、熱でも有るんじゃないかなぁって思ったんだけど?」
 去年の雪山合宿を思い出しつつあたしは正直に告げる。

 有希ってば結構病弱なのに、気を使って無理しちゃうタイプだもんね。あの時だって、雪の中にバッタリ倒れちゃったし……。

 現に抱き締めている有希の身体はポカポカポワポワ。まるで眠気と戦っている赤ちゃんを抱き締めているみたいな感じだ。その癖、何時も以上に顔色は青白く血の気が少ない気がする。
 有希は調子が悪いに違いないって疑念が更に強まっていった。
 でも、そんなあたしの疑念を知ってか知らずか、有希は訥々と意見を口にする。

「特に熱がある訳ではない。平熱。活動に関しても、何ら不具合が生じている訳でもない。問題は皆無」
「…………」

 でもね……あたしの記憶が正しければ、有希は普段から水分を摂る方じゃないわよね? 
 あたしと張り合う位の大食漢なのに、この子が食事中に水分を摂ったのを見た事が無いわ。況してや、団活中に自分で淹れようとした事なんか無いじゃない? ずっと本に集中してって言うのが、一年以上続いた有希の普遍的スタイルでしょ? それがどーして今日に限って……。
 そんな思いに急かされて、あたしは疑問点を素直にぶつけた。

「普段の有希は全然水分を取らないタイプよね? それが、どーして今日に限ってさ……」
「……読書をする際、手元に飲料が存在する事は非常に重要な要素」

と言いつつ、有希は手品師の様にスルリとあたしの腕の中から抜け出した。序にあたしの腕も自由にしてくれる。
 そして、距離を取ってあたしをジッと凝視する有希の顔を見詰め返しながら、聞き分けの無い幼児に言い聞かせる母親の立場を味わいつつ、あたしは再度問い掛けた。

「……正直に言って頂戴。貴女、無理してるでしょ?」
「…………」

 あたしの質問を無言で聞いていた有希は、小さく小首を傾げ暫し考え込む。

「有希? 無理しなくてイイのよ? 貴女は身体強くないんだから、恥ずかしい事でも何でもないんだからね?」
「…………」

 そして考えが纏まったのか、有希は真っ直ぐあたしの瞳を見詰め、「確認したい」と静かな声で問い掛ける。
 あたしも無言でその先を促した。

「仮定の話になるが、万が一、私に不具合が生じていた場合……」
「何だ、そんな事? ……決まってるじゃない、訓練を即中止して、貴女を病院に連れて行くわ。きっと皆だって、全面的に賛同してくれるわよ? あの雪山合宿だってそーだったでしょ?」
「…………」

 あたしの返答を聞き、有希は再び考え込んだ。そして、暫くしてからポツリポツリと口を開く。

「私は団長から命令されている。自分の身は自分で守るようにと。それには危険管理のみならず、体調管理等も含まれると解釈すべき」
「……うーん、確かにそんな事を言った気がするけどさぁ」

 あたしは少々呆れながら有希を見詰めた。
 確かにあたしには訓練開始の時に、有希とそんな会話をした記憶があるわよ。

 あれはキョン・古泉君・みくるちゃんと出発し、最後に残った有希が扉に向かってトテトテ歩き出した時の事、こんな感じで会話を交わしたのよね。

「いい、有希? ホントはあたしが守ってあげたいところなんだけど、今回は自分で自分を守るのよ?」
「了解した」
「でもね? 若しかすると、この訓練を聞きつけて、超巨大極悪秘密結社が怪人を送り込んでるかもしれないわ……その時は遠慮せずにあたしを呼びなさい。怪人なんか返り討ちにしちゃうんだから!!」
「…………」
「か弱い有希に、ホントはこんな事させたくないんだけど……でも、これも有希のためだからね?」
「(コクリと頷き)では出発する」

 そんな会話内容を思い返しつつ、「有希ってば、外見からは想像出来ない程頑固なのよねぇ」と内心苦笑する。

 あたしみたいに素直じゃないと、色々と苦労しちゃうわよ? 
 ……それよりも、どうしよう? この子は絶対に何か隠しているって、あたしの勘が告げているんだけど、この様子では簡単に認めそうに無いわね。
 うーん、前回みたいに有無を言わさず、病院に連れて行くとかベッドに寝かし付けるとかすべきよね? でも、今回はそーするのって、何故か気が引けるのよねぇ……。

とあたしが腕組みしつつ内心善後策を協議している最中も、有希はあたしをじっと凝視していた。
 何気なくあたしはポツリと呟く。
「あのね、有希?」
「何?」
「人間ってさ、何かを隠そうとしている時って……何時もと違う言動を取っちゃうの」
 その遠回しの指摘をどう聞いたのか、有希は沈思黙考し、あたしは委細構わず言葉を続けた。
「それから判断するとね、辿り着く結論は只1つ……いいかしら有希? 団長に隠し事するのは……極刑も有り得る重大な規則違反よ?」
 あたしは余り強い口調にならないよう気を付けつつ、でも、有希を問い詰める。
 有希は無反応。
 その沈黙に支配された重い雰囲気は耐え難いものがあった。そして、あたしが我慢出来ずに再度口を開こうとした時……。
 有希は小さく頷き、何事も無かったかの様に無表情なままトテトテと指定席に歩み寄った。そして、淑女らしくスカートを整えながら静かに腰掛けて、サイドテーブルに置いてあった古書に手を伸ばすの。
「???」
 あたしは呆気に取られて有希を見詰めた。
 今の話の流れと、有希のその行動が上手く結び付かない。
 
 一体有希は何を考えてそんな行動を? 
 
 そんな疑念を知らずに有希は膝の上で分厚い古書を開く。
 そして、そんなあたしの疑問に答える様に、小さく、でもハッキリと頷いた。
「……まさかと思うけどさ、有希? 読書をしていれば、何時もと変わらないって、言いたい訳じゃないでしょうね?」
と内心問い掛けていると、案の定だった。
「この様に私は平常通り。全く問題は無い」
と有希は常に無くドキッパリと言い切るの。
「…………」
 何やら頭痛を感じ、どーして今日に限って、この子はこんなに頑固なのかしら? と呆れちゃうあたし。
 その反面、こんなにヘンテコリンな行動を取っちゃう有希は絶対に可笑しい。だから、病院、せめて保健室に連れて行こうと決心しながら、でも、無理矢理って言うのは気が引けちゃうあたしだった。

*****

「……ふぅ、参ったわね」
 その気分を誤魔化し、何か妙案が思い浮かばないかなぁ……って、あたしはみくるちゃん愛用お茶セットに歩み寄る。
 有希の台詞じゃないけど、あたしもお茶が飲みたくなった……いえ、お茶でも飲んで気分転換しましょうと言う感じだわ。
 あたしは見様見真似でお茶の準備をしながら有希に確認。
「有希も飲む? みくるちゃんほど美味しく淹れられないけどさ」
 無言であたしを見詰める有希の視線の中に、「紅茶を淹れられるの?」って疑念を感じ取ったあたしは、
「何、心配そうに見てるのよ、有希ってば。紅茶を淹れる位、お茶の子さいさいなんだから」
と豪語し、適当な量のお茶葉をバサバサと急須に入れて、お湯を豪快にドバドバ注いだ。

*****

「はい」
と有希の湯飲みに紅茶と愛情を注ぎ、サイドテーブルに置いてあげる。
 湯飲みとあたしの顔を交互に眺め、有希は静かにそれへと手を伸ばした。

「涼宮ハルヒ特製紅茶なんだから、効果抜群よ?」

と偉そうな事を言いながら、あたしは自分の紅茶を一気に飲み干した。
 ……流石にみくるちゃん程美味しいとは言わないけど、うん、まぁまぁだと思うけどな。
と相当甘い点数を付けつつ、有希の反応を見るとは無しに見る。
 有希はそれを一口飲んでから、何やらジッと湯飲みの中身を観察。
 何となく驚いている風にも、味を吟味している風にも感じられるんだけど……あれ? そんなに変な味だったかしら? とあたしはチョッピリ慌てる。

「あ、あれ? 美味しくなかった? それとも何か変?」
「……不思議な感覚」

と有希は呟いて、更にもう1口。
 その細い喉がコクリと鳴った。
 それを見届けてから、あたしは自分の湯飲みにお代わりを注ごうと急須に手を伸ばす。

 んー? 良く考えると、不思議な感覚って面白い感想よね……褒められているのか微妙なところだけどさ、うん、でも有希らしいかも。

と思わず微笑んじゃうあたし。
 何となくだけど、有希らしくなったような気がするし……うん、体調不良の件は忘れちゃおうかなと思い、その代わりにあたしがある事を思い出した。
 そして、湯飲みに紅茶を注ぎつつ、何とはなしに有希に尋ねてみる。

「あっ、そー言えばさ、有希は見なかった?」
「何?」
「うんとね、多分、此処ら辺だと思うんだけど……少し前に何かピカって光ったでしょ?」
「…………」

 あたしの質問を耳にして、湯飲みを両手で持ったまま固まっちゃった有希に、あたしは此処に来た理由を説明する。

*****

 ホンの少し前の事なんだけど、皆は何処かしら? って鼻息荒く廊下を歩いててね、ふと窓の外を見たら、部室棟の方から見た事も無い白っぽい光が見えたの。
 全然激しくも眩しくも無くて、すっごく柔らかくて微かな光。
 でも、絶対に体験した事も無いって断言出来る感じの光なの……。

*****

「で、これはきっとUFOとか霊魂とか、何かしら不思議な事が起こってるわ!!って確信して、全速力で部室に来たんだけど。有希は……」
「見てない知らない判らない」
 「……見なかったかしら?」ってあたしの台詞が終わる前に、有希は湯飲みを凝視したまま即答し、そして、首を左右に振った。
 ギギッと音の聞こえそうな感じの、油の切れた首振り人形チックなその振り方に、目茶苦茶違和感を覚えたあたしはじっと有希の横顔を見詰める。
 そして、理由も無く、この子はあの光の事を知ってるんだわ!! と確信しちゃったの。
 だから、あたしは優しく有希に問い掛ける。

「ね? 有希? 悪いようにはしないから、知ってる事を教えて頂戴」
「知らない……何も。全く。少しも全然」

 有希は湯飲みから目を離さずポツリと呟いた。
 その苦しげな呟きが、あたしの想像を嫌な方向へと導くの。

 ……まさか、有希ってばソレに何かされたんじゃないのかしら!? 
 例えば、宇宙人に検査されたとか、幽霊に脅かされたとか。
 だから、今日の有希はちょっち可笑しいのかも? 
 むむっ、何だか真実に近付いている気がチラホラと……。
 これは、SOS団団長としては見過ごせないわ!!

と興奮するあたし。
 ……も、勿論、大切な有希の為なんだからねっと言い訳する事も忘れない。
 あたしは有希にニッコリと微笑んだ。
「ねぇ、有希? あたしは貴方の味方よ? どんな時でも何があっても」
「…………」
 有希は未だに湯飲みを手にしたままだった。そのまま顔をゆっくりとあたしへと向け、微かに小首を傾げるの。
 多分、発言の意図が判らないんだと思うんだけど、でも、あたしはニコニコ微笑みつつ有希を促した。
「だから、さっき何があったのか教えて欲しいの……若しかすると、それこそが、有希に変な影響を与えてるかもしれないでしょ?」
「……特に変わった事象は発生していない。私は平常」
と湯飲みをサイドテーブルに乗せながら有希は小さく呟く。
 でも、あたしは「それは嘘ね」と、それをドキッパリと否定した。

 だって、今日の有希は明らかに可笑しいもの……。
 こんな言い方を有希にしたのは初めてだと思うけど、でも、有希の変な言動はさっきの光——詰まりは宇宙人か幽霊、若しくはソレに準ずる何か——のせいだと、あたしの中で確定されていたんだもん……。

って待って!! 待ちなさいっ。ソレに準ずる何か、ですって!? 

 その直後から、あたしの中で1つの仮説がドンドン組み立てられていく。
 そして、それが組み上がった瞬間、あたしは勢い込んで、「判ったわ!! そうなのねっ有希!?」

と有希に声を掛けていたわ。

*****

 有希が何か喋ろうとするのを手で制して、右に歩いて左に進み、右手人差し指を立ててぐるぐる回しながら、あたしは自説を滔々と開示する。

「真実は1つ!! 謎は全て解けたわ!! そう、あの光は巨大秘密結社の秘密基地から発射された怪光線。有希の様子から想像するに、人格変更効果とかそーゆー感じのヤツに違いないわ」
「…………」

 何やら有希が呆気に取られてる気がしなくも無いんだけど、あたしの仮説はこんな物じゃないんだからね!! 
 その後もあたしは自説を力説。
 余りに興が乗り過ぎ、有希が何か言いたそうにしている事にも気が付かないあたし。
 だって、仮説を話す度にどんどん新たな仮説が浮んでくるんだもん。ううん、既に仮説ではなく限りなく真実に近い、いえ、真実そのものと言っても過言では無いわね!! 
 そんな思いに背中を押され、あたしは思い付くままに、話をミックスしていったんだけど、ふと我に返ると、巨大秘密結社は宇宙人が作り上げたもので、その宇宙人は宇宙の半分を支配下に納め、でも、その飽くなき征服欲は留まる事を知らず、とうとう地球にもその魔の手を伸ばしてきた……何て壮大な話になっていたの。

「それでね、地球侵攻の際、奴らはあたし達SOS団が最大の障害になると認定したの。そこで、例の怪光線の出番な訳」
「…………」
「奴らは卑怯にも人格変更&洗脳怪光線を使って、あたし達の友情を破壊しようと企んだのよ!! それでね、1番素直な有希が最初の標的にされたの……だから、貴方の言動はさっきから可笑しかったのよ。これで全て辻褄が合うわ!!……くっ、ホントにもう、何て卑怯で極悪な作戦なのかしら!?」
「宇宙人は、其れ程卑怯ではない」
「え!?」

 思わずあたしが気圧されちゃう程、はっきりと言い切る有希はジッとあたしを見詰めたまま。
 あたしはその視線にも気圧されたんだけど、団長のプライドに掛けても引く訳にはいかないわ!! と覚悟を決める。

「そ、そー思っちゃうのが、既に連中に篭絡されてる証拠なのよ、有希?」

*****

 その後、暫く押し問答が続いた。
 有希は全くあたしの言う事を聞いてくれない。
 どれだけ連中の性格が悪いかって事を敢て大袈裟に聞かせてあげるんだけど、でも、それが益々有希を意固地にさせてるみたいなの。
 宇宙人の悪口を言えば言うだけ、何故だか、有希が不機嫌になっていくような……。

「え、えっとね? ゆ、有希? 今、有希は悪者に操られているの。だから可笑しな事言っちゃったりするし、宇宙人をフォローしちゃうし、何処となく何時もと違うのよ。……ね? 病院に行って検査するとか、何某かの対策を考えましょう」

 この部室に入ってから、あたしはこの台詞を何回言ったのかしら? 
 それでも有希は首を縦に振らないの。
 ホントに今日は飛びっ切り意固地だ。
 でも、有希が相手と雖も、流石にここまで堂々巡りだと、あたしも不機嫌になっちゃうわね。
 あたしが溜息を吐くと同時に——多分、有希もそんな思いに囚われて居たんだと思う——俯き加減に何やら熟考していたかと思うと、ゆっくりと顔を上げ、はっきりあたしへと視線を固定させる。

「???」

 あたしはその視線にたじろぎ戸惑っていると、有希が口をゆっくりと開く。
 あたしが初めて見た決意を感じさせるその硬い表情のまま。
 幾度か躊躇った後で。

「……あたしはべつにおかしくないんだからね、あんたにしんぱいしてもらうひつようなんてないんだから」
「は?」

 あたしはパカっと口を開いて有希を凝視した。
 何やら大根役者が台詞を棒読みする口調で、有希らしくない発言を聞いた様な気がするんだけど……ふふっ、あたし、そんなに疲れてるのかなぁ?
 あたしの疑念塗れの視線がブッスリ突き刺さる中、有希は「あれ?」って感じで微かに小首を傾げた。
 そして、何かを思い返して、「迂闊、失念していた」と言いた気に又々微かに頷くと、ゆっくりと左手を上げて、その人差し指であたしをズビシ(?)と指差し、再度同じ口調で同じ言葉を繰り返した。

「……あたしはべつにおかしくないんだからね、あんたにしんぱいしてもらうひつようなんてないんだから」
「…………」

 あっはっはー。
 何処の誰の真似だか、さっぱり判らないけどさ、うん、指差しとかの問題じゃないからね、有希? 
 そもそも、それをする時は、えっとね、もっとこう元気良く腰に手を当てながら、でも、ソッポを向いて……って何であたしが指導しなきゃいけないの!?
 ……ま、まぁ、それでも、有希が本気の本気で変だって事だけは理解したわ。
 手遅れにならないうちに、強権発動してでも、元通りにしてあげるからね、有希!!

*****

 そして、そこからが又々一騒動だった。
 あたしは有希を説得する事を諦め、無理矢理にでも病院へ連れて行こうと悪戦苦闘。
 半ば取っ組み合いみたいな感じで、有希と押し合い圧し合いしちゃうの。
 でもね、事此処に至っても有希は頑固だった。
 「古泉君の紹介で、病院に行って検査しましょ?」って言うと、それは紳士協定違反に繋がるだとか、宇宙規模の紛争を誘発する恐れが有るとか何とか……意味不明な事を口にして、あたしを煙に巻こうとするし、ホントに今日の有希はどーしちゃったのかしら?
 そして、廊下に引っ張り出そうとするあたしと、それに抵抗する有希って構図が崩れたのは、思いも掛けない事が原因だったの。
 ホント、全てが一瞬の出来事だったわ。

「有希っ、いい加減素直に言う事を聞きなさい!!」
「貴方こそ冷静になるべき」

って何度目かの不毛な遣り取りをした直後、引っ張り合いをしていたあたしと有希は、どーしてだかバランスを崩しちゃったの。
 そして、そのまま派手な音を立てて長机に激突。
「痛っ……え!?」
 そのショックでゴトッと何かが長机から落ち、その正体をエアガンだと確認する間も無く、それを踏ん付けたあたしがスッテーンと転ぶ。
 そして、あたしに蹴飛ばされた格好になったエアガンは勢いよく飛んでいき、その反動で絡み合ったまま床に倒れるあたし達。
 部室に響くあたしの悲鳴と、物が破壊されるドンガラガッシャーンって不協和音。
 あたしは有希を床に激突させまいと、咄嗟に抱きかかえていたらしい。
 腰を打ち付けた痛みに呻きながら、あたしは抱き締めた有希に「大丈夫?」って確認を取った。
 有希は小さく頷き、ゆっくりと反対側の壁へと顔を向ける。
 あたしも釣られてそっちを見て、瞬時に絶句した。

 そこは……混沌と化していた。

 どーして空中を飛んじゃったエアガン1つの衝撃で、ここまで酷い事に?と素直に思っちゃう位の大惨事。
 コスプレ用ハンガーラックにローキャスト・書類棚が盛大に倒れ、周囲に色んな物が飛び散ってるの。
 コスプレ衣装は言うに及ばず、それ以外にもポットやお盆に、みくるちゃん愛用のお茶セット……って、「えええ!!」と内心絶叫しながらあたしは跳ね起きた。
 急須や湯飲みの残骸を凝視する。

 ……うん、何処から見てもみくるちゃんのお茶セット、5個の湯飲みと急須とが一式揃ったみくるちゃん自慢の一品だった。
 ホンの数分前までは。

「…………」
 このお茶セットを持ってきたみくるちゃんは、「いい物、見付けましたぁ」ってとってもイイ笑顔だった。
 事有る毎にみくるちゃんが愛しげに急須を磨いていた姿を思い出す。
 愛情込めて湯飲みを洗っていたみくるちゃんの表情も。
 将に慈母の如き雰囲気だった。
 室内は静寂に支配された。
 あたしだけじゃなく、有希すらもそれを凝視しているの。
 この残骸を見て、みくるちゃんがメソメソ泣いちゃう姿が想像出来た。
 脳内で「涼宮さんなんて、大嫌いですぅ」ってみくるちゃんの叫び声が木霊する。
 自分の顔から血の気が引くのを実感しちゃいながら、これは秘密結社によるSOS団友情破壊作戦の一環だとあたしは決め付けた。

 な、何て卑怯なの、宇宙人ってば!! 
 有希の対応だけで手一杯だって言うのに、みくるちゃんまで巻き込むなんてっ。

 怒りに身体を震わせていたあたしを他所に、有希は別の場所をじっと見詰めていた。
 そこには湯飲みや急須の破片に混じって、この惨事の原因となったと思われるエアガンが転がっている。
 それを見た瞬間、あたしは再び絶句。
 だってエアガンってば、銃身が曲がっていたり、部品がひび割れていたり無くなっていたり、正常な姿を保っていなかったの。
「……ちょっ、ちょっとぉ!?」

 何で飛んでってぶつかった位で、そんなに目茶苦茶になってるの!? ……って言うか、借り物を壊しちゃうなんて!! しかも、これ、古泉君の知り合いのご厚意で貸して貰ってるのよ!?
 
 古泉君にまで、「いやはや、此処まで壊されると、持ち主にどのように謝罪すればいいのか、見当も付きませんね……」って、冷たい蔑みの視線を投げ掛けられる未来図を予想し、あたしは「ひっどーい!! 古泉君まで標的にするなんてっ」と怒りを新たにしつつ泣き言を漏らす。

「な、何でこんなにピンポイントで、大切な物だけが壊れているのよ!?」
 あたしは有希に縋り付いたまま、余りの理不尽さに泣きそうになり、でも歯を食いしばってソレに耐えた。
 もう、あの2人には思いっきり頭を下げて、平謝りするしか手段が思い付かないわ。
 ……それで許してくれるかしら? 

 ……おのれ宇宙人め!! 絶対に許さないんだから!!

*****

 でも、その時の事だった。
 有希が「私に任せて」と耳元で囁いたの。
 あたしは潤んだ目で助けを求める様に有希を見詰めた。
 その視線に答える心算か、有希はコクンと頷き静かに立ち上がる。

「任せて、全て現状復帰させる。情報操作は得意」
「ゆ、有希? 貴方、悪い宇宙人に洗脳されてるんじゃ……」
「それは誤解。私は平常。正常。何ら不具合は発生していない」

 有希は何時も通りの冷静な口調で断言し、それはあたしの心を揺さぶった。
 確かに何時もの有希なら何とかしてくれるけど、でも今の有希は変なままだし……と揺れ動く心情に突き動かされ、あたしは小さく弱々しく呟くの。

「た、確かに何時もの有希なら、この位チャッチャっと片付けちゃうんだけどさ、でも今は……普通じゃ無いでしょ?」
「そうでは無い。貴方の気のせい。今の私にも可能。簡単。楽勝。瞬殺。もーまんたい」
「……ホ、ホントに? 本当かしら? じゃあ、お願いしちゃおうかな。でも、若し出来なかったら、素直に病院で検査受けてくれる?」
「了解した。正常である事を証明する」
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  1. 2000/01/01(土) 00:00:00|
  2.  SOS団は狙われてるんだからね!!
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