女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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SOS団は狙われてるんだからね!!G(キョン君視点)

SOS団は狙われてるんだからね!!


・粗筋:キョン君も何だかんだで乗り気になってます!!


*****


「続きを読む」からは ……

 やっぱりハルキョン雑用編G:【攻撃は最大の防御って言うだろ?】

……になりまーす(^▽^)/




*****

 答案用紙返却時に発生した鬱々気分が抜け切らないまま、俺は団活に参加していた。
 今回の試験、個人的には精一杯努力した心算だし、現に前回より10点近く平均得点は上がっている。
 それでも、何やら不満げなハルヒをどうにか言いくるめ、次回も独学での挑戦を許可して貰ったのは、ついさっきの事だ。

どうして、そんなに俺の試験結果が気になるのか、今一理解に苦しむんだが、まぁ多分、三年になっての進学別クラス分けってイベントもあるしな、それが原因だろうと俺は軽く考えていた。

*****

 パチリ……。
 乾いた小さな音を立て俺の龍王が古泉の歩越しの金将を奪い取った。
 古泉は無言で竜王を見詰めている。
 然も有りなん、歩で竜王を取る事は可能だが、その後は連続王手での五手詰みが見えているんだからな。
 それを悟ったからだろう、古泉は「投了です」と微笑みつつ頭を下げた。
 男に微笑まれても嬉しくもなんとも無いんだが、これは古泉の癖の様なもんだと認識している俺は、特に文句も言う事無くそれを受け入れた。
 勝利の感慨に耽る事も無く、俺は愛用のパイプ椅子に凭れ掛かり部室の中を見回した。
 そこには見慣れた風景が広がっている。
 お茶の準備に余念が無い朝比奈さんは何時もの通りのメイド服。長門は指定席で読書に勤しみ、古泉の奴は俺と長机を挟んで将棋を指してと、青春真っ盛りの貴重な時間を浪費し、部室に閉じ篭って何を遣っているのやら……と自分の事を棚に上げ俺は小さく溜息を吐いた。
 此処に皆が集合するってのは、まぁ、義務と言うか規定事項みたいなものだった。
 何せ団員が此処に集まらないと、一気に不機嫌になっちまう我儘女神様がいらっしゃってだな、将にソイツのご機嫌取りのため、全ての団員が不断の努力を重ねている事は知る人ぞ知る哀しい事実である。
 そして、女子高生に身を窶したその我儘女神様はと言うと、団長席に座りパソコンと睨めっこをしつつ何やら難しい顔をしていた。
 何やら今にも肉食獣じみた唸り声が聞こえてきそうな雰囲気が……教室で俺の成績に苦言を呈していた時のそれそっくりで、何やら嫌な予感がするんだが、「何時もの如く、要らん事でも思い付いたんじゃなかろうか?」と心配しつつも、何で年がら年中ハルヒの言動を気に掛けなきゃいかんのかと、ホトホト呆れていると、
「どうでしょう? もう一局お付き合い頂けますか?」
と惨敗した将棋をリセットし再度の対局を求めてくる古泉何だが、そう言えばこの男は、俺の様に成績的な悩みとは無縁そうで正直羨ましい限りだぜ。
「それは構わんがな……」
 そう言いながらも俺は古泉に助言をする心算になっていた。
 何せ現時点でン連勝しているんだ。流石にもう少しばかり歯応えを欲したとしても罰は当たらないだろ? 
 俺は「ちょっと、いいか、古泉?」と声を掛けつつ駒を適当に並べて、「何時も気になっているんだがな……」とアドバイスを開始した。

「だからな、古泉。お前は防御に偏り過ぎなんだよ。毎回毎回穴熊にするのはいいんだがな、その半面攻撃を疎かにし過ぎだ」
「しかしですね、守りを固めておかないとどうも不安でして……」

 ここをこうすればいいんじゃね?的な適当極まりない助言をする心算だったんだが、気が付けば、本格的な将棋研究に発展していた。
 パチリパチリと駒を動かし、その度にあーでもないこーでもないと意見を交わす俺たちだった。
 ……こういう事は将棋部辺りで遣る事であって、この学校未公認アングラ弱小クラブには、全く似つかわしくないってのは理解しているんだが、俺も古泉も興が乗ってきたのか豪くマジな会話を交わしていた。

「確かにお前の言いたい事も判るがな、守り一辺倒じゃ迫力が無いんだよ……特に将棋は相手の王将を詰まして何ぼじゃないか?」
「成る程、確かに言われるとそうですね」

と古泉は深く頷き顎に手を当てシミジミと呟く。
 それに勢いを得た俺は、対局中に感じていた心理状態を吐露していた。

「お前が守りを優先するから、俺は攻められる心配をせずに悠々と陣形を組み上げられるんだぜ」
「むっ、そうでしたか。それは的確な助言を有難うございます」

 コイツと色んなレトロゲームで遊んだ結果の考察なんだが、古泉の性格はどちらかと言うと保守的防御的だ。
 例えば、ポーカーでもブラフは殆ど仕掛けて来る事は無いし、将棋や囲碁でも捨て身で切り込んでくる事は稀だ。
 「そんな事じゃ勝負事には勝ちきれないぜ?」と言う警告の意味を込めて、俺は使い古された格言を口にした。

「攻撃は最大の防御っていうだろ?」

*****

 しかし、その格言に反応したのは俺の予想外の人物だった。
 何故か、語り掛けた筈の目の前にいたニヤケ副団長ではなく、顰め面をしてパソコン相手に熟考して珍しく静かだった団長様が、
「それよっ、キョン!!」
と絶叫しつつ団長席から立ち上がった。
 ググッと握り拳を作っているのが、何時にも増して勇ましいんだがな……それよりもだ。
 完全に意表を突かれた俺がハルヒを振り返りつつ、
「……は? それって何だ?」
と尋ねたのも無理は無いと思わんか?
 会話はキャッチボールだからな、突然投げ付けられたにせよ、受け取ったからには投げ返してやらねばなるまいと言う俺の気遣いを、しかし、ハルヒは完全に無視して満面の笑顔で自分の意見だけを口にする。

 何時もの事だが勘弁してくれ……。

「あんたにしては珍しくイイ事言ったわ。そうよ、守り難いんなら攻めればいいのよ!!」
「…………」

 ……さっぱり訳が判らん。

と呆れつつ静かになった部室の中をゆっくりと見回すと、異能者達は三者三様の反応を見せていて、しかし、誰もがハルヒの発言の真意を理解していないってのが丸判りだった。
 にも係わらず、誰も率先して口を開こうとしない何時もの風景が部室に出現し、「早く確認して下さい」と言いたげな無言の圧力をニュータイプ宜しくピキピキーンと感じ取り、俺は嘆息しながらハルヒに問い掛けていた。
「……済まん、何だって?」
「相変わらず、理解力が欠如しているわね、キョンは……」
「今ので判るのは、エスパーぐらいなもんだ」
と反射的に返事を返した瞬間、その単語が当て嵌まる人物に思い当たり、俺は思わず古泉を見てしまった。
 その自称限定的超能力者は———俺の視線の意味を完全に理解したのだろう———苦笑しつつ肩をヒョイッと竦める。
 忌々しい事に、そのボディーランゲージの意味する所を「僕には、そのような能力はありませんよ」とあっさり解読してしまう俺の脳。
 こんな事に精通しても人生の足しにもならないんだがな……と自分の立場に哀れみを感じていると、これまたハルヒは、そんな一般人の嘆きを気持ちいい位無視してくれ、そして一般人では無い団長様は、身軽にヒョイッと団長机へと飛び乗り、勢い良く拳を突き上げて元気に宣言してくれた。

「これから第1回SOS団暴漢撃退訓練を行います!!」

*****

 ……頭痛がしてきた。

 ハルヒが何を考えて、そんな事を言い出したのか、知りたい様な知りたくない様な微妙な心理のまま俺が頭を振っていると、日本の治安が悪化していくだの、自分の身は自分で守りましょうだのとハルヒの奴は言い始めた。
 「成る程、避難訓練みたいなもんを考えて居やがるな」と納得しかけたんだが、何時の間にやら、俺達が超巨大秘密結社に狙われているだの何だのと話が飛躍していく。
 ……日本の治安悪化って話題から、何でヒーロー戦隊モノみたいな話に成ってるんだ?
と顔を顰めていると、何時もの如く朝比奈さんが怯えだした。
 そんな朝比奈さんを満足げに眺めていたハルヒは、偉そうな事を目茶苦茶な論理で説明し、更に朝比奈さんを追い詰めていくんだが、お前、態と朝比奈さんを怯えさせてないか?
 とまぁ、そんな感じで俺は朝比奈さんに御同情申し上げていた次第なんだが、色んな騒動のお陰で鍛えられた第六感が警報を鳴らした。

 これは大事に為りかねないぞ……と。

 それに背中を押された俺はチラリと古泉へ視線を移動し、何時もの様にアイコンタクトを試みる。

「おい、どうする? 何やら面倒な事になりそうな予感が、ヒシヒシとするんだが……」
「と言いましても、何か手を打つにしてもですね、現状では情報が足りません。もう少し探りを入れては頂けませんか?」
「あぁ、そうだな……って待て!! それは、俺にこの話題でハルヒと会話しろと言っているのか?」
「お判りとは思いますが、僕では涼宮さんを褒め称えて終わりですが?」
「……くっ、この太鼓持ち野郎が!!」
「褒め言葉として受け取りましょう」

 太鼓持ちと言われて平然としているどころか、褒められたと受け取るヤツがいるか、普通……と気疲れした心に鞭を打ち、渋々ハルヒに声を掛ける。
「あー、まぁ、何だ。俺達が何時から正義の味方になったかって言うのは脇に置いといてだな……何をするって? 撃退訓練だと?」
「だから、さっきからそー言ってるじゃないの、バカキョン!! ホントにあんたは人の話しを聞いてたの?」
「いや、聞いてはいたがな、理解したくなかったと言うか、まぁ、そんな感じなんだが……」
 「お前の話を一発で理解出来るヤツがいたら、此処に連れて来い」と言い放ってやりたい所だが、そうすると、一般人でない可能性がメチャ高いってのがなぁ……と顔を顰めつつ、仕方が無いので渋々会話を再開する俺であった。
 んで、ハルヒの判り辛い説明を辛抱強く聞いてやり、どうにか咀嚼し消化出来たと判断し俺は最終確認。

「詰まり俺達が狙われた場合、防御に回るんじゃなく、反対に攻撃して撃退しようと……そう言う訳なんだな?」
「だーかーらー、さっきから何回もそー説明してるでしょうが!!」

とがなりたててハルヒは、団長机の上でエッヘンと踏ん反り返った。
 「さぁ、あたしを褒め称えなさい!!」と言う雰囲気が纏わり付いたハルヒを見ていると、一言言って遣りたくなるのは俺の性みたいなもんだ。
 だから、小首を振りつつ俺は息を吸い込んだんだが———長い付き合いってのも考え物だ———それを察したんだろう、ハルヒのヤツは俺から視線を外しイエスマンに話を振りやがる。
「どう? 古泉君っ、このあたしのアイデアは!?」
「流石は涼宮さん、大変素晴らしい考えかと」
 太鼓持ち古泉も何時もの様にヨイショしやがり、おいおい、その返事だと話が終わっちまうぞ?……と俺は古泉を睨み付けた。
 そんな俺の内心を斟酌する事無くハルヒは元気一杯。
「でしょ!! だからね、皆でそーゆー感じの訓練しましょう」
「了解しました」
「了解するな、古泉!! ……あー、ちょっといいか、ハルヒ? そう言う感じって幾らなんでもアバウト過ぎだ……俺は今一どころか今十程イメージ出来んぞ?」
 「古泉? こんな曖昧な情報で対策立案する心算なのか、お前は?」と呆れつつ、しかしまぁ、最終的に齷齪するのは俺なんだろうがな……と侘しさを感じる今日この頃の俺であった。
 その後も、「何であたしの言いたい事が判らないの訳!?」だの「どーして、文句ばかり付けるのよ!?」だのと絡まれ、それに一々反論していると、何やら考え込んでいた古泉が語り掛けてきた。
「涼宮さんが仰りたい訓練とは……それ程肩肘張った物では無くですね、例えばゲーム形式や競技形式で出来る物だと僕は想像したのですが?」
「ゲームだと? 撃退訓練とやらに使えそうなのつったら……サバゲー程度しか思い付かんが」
「成る程、慧眼です……涼宮さん? サバイバルゲームなら助力を仰がずに自力でやる事も可能ではないでしょうか?」
 古泉が自主的に意見を言い出すと言う珍事に対し、ハルヒは「……サバイバルゲームねぇ?」と呟く。
 気のせいだか、呆気に取られてやしないか、お前? 
 そして、暫し腕組みをして、ウーンウーンと唸っていたハルヒは、ニパッと笑顔になって「流石は古泉君!! あたしが言いたかったのもそれなのよっ」と絶叫し勢い込んで尋ねた。
「で、具体的にどーすればいいのかしら、古泉君?」

 ……こいつ、実際は何も考えてなかったな。
と俺は嘆息しながら、しかし、ハルヒの嬉しそうな笑顔の前に言葉を飲み込んだ。

 まぁ、何時もの事さ……。

*****

 そして、団長様に指名された古泉は勢い込んでサバイバルゲームの説明を始めるんだが、その判り易い説明は将に解説役の面目躍如ってところだ。
 その説明の最中、ハルヒは思い付くまま色んなルールや作戦を発表しやがり、俺は健気にも1回1回問題点を指摘して、どうにか、そのハルヒ特製ルールの採用を阻止していた。
 ……落とし穴を沢山掘りましょうとか、マジで勘弁して欲しいと思うのは普通だろ? 

 あぁ、本当に普通ってイイよな……。

 いい加減その役目にも飽き飽きしだした頃、しかし、その思いはハルヒも同じだったらしく、何時ものアヒル口になりつつ呆れた様に呟いた。
「あんた、ホントに細かい事に拘るわねぇ……そんなに器が小さいと将来困るわよ?」 
「ほっとけ。これは俺の性分だし、更に言えば今のままでも一向に困らん」
「折角、団長が哀れな雑用を気にして“小さいと困るわよ?”って忠告してあげてるのに、バカキョン!!」
 
 何で俺の将来をお前に心配されねばならんのだ? 俺は反対にお前の将来の方が心配だぜ?
 
と内心反論していると、今の遣り取りで何故か真っ赤になったマイエンジェルがトテトテと近付いて来て俺にそっと耳打ち。その重大な相談です……って雰囲気に俺は聴覚神経を最大限活性化させた。

「えっとぉ、キョン君?」
「はい? ……どうしました、朝比奈さん?」
「えっと、そ、その、キョン君……ち、小さいんですか?」
「……へ?」
「あのー、わたし、ち、小さいとどう困るかは、ぐ、具体的に詳しく知らないんですけど……」
「……あのー、朝比奈さん?」
「若し良かったら、上に頼んで、その、ソレに効く特効薬を送って貰う事も出来ますよ? す、涼宮さんも困るって言ってますし……どうでしょう? 確実に大きくなりますよ?」
「えっとですね、朝比奈さん? 仰ってる意味がさっぱり理解出来ないんですが?」
「隠したい気持ちも判りますけど、男女の間では、ソ、ソレって重要な事なんですよね? 若しそんな理由で、お2人が別れちゃうなんて事態になったら……わたし、時空駐在員失格だって言われちゃいます」
「??? あのー、朝比奈さん? ……別れるって何がです?」
「??? ……あれ? キョン君、涼宮さんと恋人関係になったんですよね? それで、その、肌を、えっと、合わせて……それで、小さいって」

 その疑問系だらけの呟きのお陰で、一連の流れを完全に理解した俺は、真っ赤に茹で上がって上目遣いの天使様を思わず凝視した。

 ……ちょぉぉっと、待って下さい、朝比奈さん!? 貴方、何を妄想されてるんですか!? 

と目茶苦茶動揺し無意識にパイプ椅子を蹴り飛ばし立ち上がる俺。
 更に意識せずに不可侵たる我が天使の麗しい肩を掴み、その妄想を打ち消すべく弁明を試みる。
「ま、待ってくださいっ、朝比奈さん!? あー、あのですね、えーとその、い、言い難いんですが、ハルヒの奴が言った小さいってのは人間性の事で……」
「え? に、人間性? ……あ、やだ、嘘ぉ」
 朝比奈さんはそう小さく呟いて絶句する。
 いや、俺もマジ困ってるんですが?
と視線で訴えていると、その視線に答える様に朝比奈さんは、
「えっと、キョン君? 涼宮さんと男女のお付き合い……してるんですよね?」
と無言で最終確認。
 俺も静かに、
「何ですか、それ? 冗談にしても笑えませんよ、朝比奈さん」
と視線で返答する。
 何をどう勘違いしたら、そんなルルイ●の如き異世界に突入するのか、さっぱり理解の範疇外過ぎるんだが……。
と本気で困惑していると、何やらハッと息を呑み朝比奈さんは慌てて部室を飛び出した。
「ご、御免なさい!! わたし顔を洗ってきます!!」
 乱暴に扉を開け放ち脱兎の如く廊下へと消えていった朝比奈さんを見送り、俺は「やれやれ……」と呟きパイプ椅子にへたり込む。
 と、今の遣り取りが理解出来なかったのだろう、ハルヒが唖然とした表情のまま俺を問い詰めようとするんだが……何でお前はそんなに喧嘩腰なんだ?
「ちょ、ちょっとキョン? 何?今の? みくるちゃん、どーしたの? ……あんた、若しかして厭らしい事したんじゃないでしょうね!?」
 説明何ざ出来るかい!!
と内心吼えつつ俺はボソボソと適当な事を口走っていた。視線を有らぬ方に向けて。
 頼むから本当にこれ以上は突っ込まないでくれ……と心の底から祈っていると、そんな俺をチラリと見遣った古泉が苦笑しつつ、ハルヒが口を開く前に爽やかに提案。
「涼宮さん? 先程のお話しですが、僕の親戚筋の人にその手の趣味をお持ちの方がおりますので、一式貸して頂くと言うのはどうでしょうか?」
「え?あ? そ、そうなの? ……流石は古泉君、ホントに色んな人を知ってるのね」
「お褒めに預かり光栄です。どうしますか? ゲーム専用フィールドもお借りしますか? 早めに予約しておけば問題ないかと思いますが」
「フィールド?って場所の事かしら? それはいいわよ、だって、此処で遣るんだから」
 ハルヒはエッヘンと腰に両手を当てて当然とばかりに言い放った。
 しかし、俺はハルヒの発言内容を理解しようと四苦八苦。

 こいつ、今何って言った? 此処で遣るだと? サバゲーをか? おいおい、勘弁してくれ。どうしてコイツは、常識の範疇内で行動してくれないんだ?

 俺はこめかみを揉みつつ苦々しい声で問い掛ける。
「あー、済まんが、ハルヒ? ……俺にはサバゲーを此処で、学校で遣ると聞こえたんだが、気のせいだよな?」
「あら、まだ耳は正常なのね? SOS団の防衛訓練なんだもん。ここで遣らないでどーする心算よ、あんた?」
「……ちょっと待て。お前、又々、生徒相談室に呼ばれて、ン時間教師達から説教を喰らいたいのか? 俺はだな……」

 俺はこれ以上学校関係者の心象を悪くしたくは無いんだが? 
と心底呆れ返りつつ、どうにか翻意させるべく優しく語り掛ける。
 しかし、駄々っ子ハルヒは俺のそんな心情を無視して元気一杯に言い放った。
「ホントに馬鹿ね、キョンは……そんなん、バレなきゃいいのよ!! ねっ、そう思うでしょ、古泉君?」
「流石は涼宮さん、素晴らしい考えかと」

 頭痛が酷くなった。

 ハルヒ1人でも手に負えないのに、イエスマンまで援軍に加わるってのは勘弁して欲しい……。って言うか、古泉? お前、ハルヒの言う事をハイハイ聞いていると、自分の首を絞める事になるんじゃないのか?
と抗議の意味を込め、「おいっ、古泉、お前いい加減にしやがれ」と言い放とうとした瞬間、ハルヒは窓際で静かに読書をしている長門をも巻き込みやがる。

「有希もいいよね?」
「いい」
「…………」

 そりゃあ、長門にとって読書以上に重要な事何ざ存在しないからな、そう言う答えになるのは至極当然なんだが、しかし、それをされると俺の気力が萎えるって言うか、ぶっちゃけ、ハルヒ、卑怯だぞ、それは……。
 そして、俺の抗議を呵呵大笑しつつ、あっさりと無視するハルヒに対し、俺は嘆息する事でしか遺憾の意を表明出来なかった。
 
 これまた、何時もの事だったりするんだが、マジ勘弁して下さい。

*****

 相も変わらず団長様により行事決行が決定されてからが、副団長の真骨頂だった。
 嬉しそうにあちらこちらと走り回り準備に余念がない。
 そんな古泉の努力の甲斐もあって訓練日とやらは今度の日曜日に決定された。
 その日は表向き、業者による校内集中清掃実施日になっていたんだが、古泉からちょろんと聞かされた話では、実は機関による校内各種器具点検だったらしく、可哀想にハルヒの思い付きのお陰で残業が確定しちまったそうだ。
 機関の関係者も我侭女神様には振り回されっ放しで、人事ながら同情の念を禁じ得ない。

「相変わらず、ハルヒのご機嫌取りは大変そうだな?」

 俺は部室に向かう途中でばったり出くわした古泉に、嫌味を嫌味な口調と雰囲気と表情で投げ掛けてやったんだが、
「いえ、閉鎖空間で苦闘するよりは遥かにマシですよ。何よりもコレなら、死傷者も出ませんしね」
と晴れやかに切り返された。
 その本心の極一部だけをニコヤカに開帳した発言が、頼んでもいないのに俺の中の暗黒面を刺激。
 その結果、そんな気も無いのに口が勝手に稼動する。
「まぁ、何にせよだ……最近、ハルヒと結構仲がいいんじゃないか、古泉?」
 目茶苦茶素っ気無い口調だが、それが最近の俺の心境を如実に表していやがる。
 その事実に気が付いた俺は自己嫌悪を感じ、思わず顔を顰めちまった。
 ここ数日、本気でニコニコしている古泉の幸せそうな笑顔が何故か俺を苛立たせていた。
 特に訓練とやらの相談をハルヒとしている時の笑顔がだ。

 笑顔のハルヒと笑顔の古泉。

 傍から見れば将に美男美女だ。
 誰もがお似合いの2人だと思うだろう。
 それ位古泉だけじゃなくハルヒもいい笑顔だったのさ。

 判っている。
 決して古泉が悪い訳じゃない。ハルヒが悪い訳じゃない。
 この前のハルヒの台詞じゃないが、俺の人間性が小さいからだと理解している。
 しかし古泉の“本心”を、何故だか知ってしまっている俺には看過出来る事じゃなかった。
 
 あぁ、何を看過出来ないんだかは察してくれ。
 俺の口からは言えん。

 そんな言い逃れを誰かにしている間に古泉は苦しげに呟いた。

「そうですか? 貴方の気のせいではないでしょうか?」
「そうかい」

 俺も一言い返すのが精一杯だった。
 男2人の間に重い沈黙が蟠り、その気まずい雰囲気の中、俺は自分を罵った。

 ……くそっ、何でこんな事を言っちまったんだ?

*****

 その次の日の事だ。
 午前中の授業が終わるや否や、背後のハルヒからツンツン攻撃を受け、「暴漢撃退訓練内容決定委員に選出してあげたわ」と俺は告げられた。
 真っ赤になってソッポを向いたハルヒ曰く、

「古泉君が、どーしてもキョンと相談してくれって言うから、嫌々仕方なくアンタを相談相手にしてあげる」
「…………」

 昨日の今日だからな、古泉が何を考えてやがるのかが丸判りで、それが、俺の中の何かをギリギリと締め上げてくれたんだが、怒った風に目を吊り上げている癖に何故か上機嫌なハルヒを見ていると、そんな事もどうでもいいかと思ってしまう俺は結構単純なのかもしれん。
 んでだ、行き成り、「訓練内容を決めましょう」と言われてもなぁ、本気で困惑するしかないんだが? 
と戸惑う俺を放ったままで、ハルヒはあーしましょうこーしましょうと嬉しげに会議を開始した。
 そして、昼飯を食いながらの決定委員会が終了した時、俺が残した成果と言えば、訓練と称してはいるが実情はサバゲーでしかないこの傍迷惑なお遊びから部外者固定メンバー——鶴屋さんや谷口国木田の事だ——の貴重な休日を死守した事だけだった。

 そして、そこだけは納得してくれた団長様は、自ら皆を指導すると称して、「あたしが不審者役を遣るわね」と鼻息荒く宣言する。
 いや、実際問題、俺としては校内で遣る事自体反対なんだが、そこは不変的決定事項だそうで、メンバー以外の項目に関しては俺の提案は殆ど却下されていた。

「……ふう」
 何時の間にやら空になっていた弁当箱を仕舞いつつ、済まん、折角の弁当、殆ど味わう暇も無かったよ……とお袋に謝罪する俺。
 しかも、これから午後の授業だってのに何でこんなに疲れているのやら。
 自らの境遇を哀れんでいると機嫌を回復させた団長様が満面の笑顔で仰った。
「さぁ、キョン? 午後の授業もしっかりと受けなさい。あの程度の成績で、あたしを納得させようたって、そーは問屋が卸さないんだから!!」

*****

 それ以外にも色々あったんだが、それを一々書き残していくと、広辞苑並の分量になりそうなんでな、端折らせて貰おうと思う。

 ……と言い訳をしている間に、訓練当日の日曜日を迎えたんだが、俺は何やら蟠りを心の内に秘めたまま部室へと足を運んでいた。

 昨日から続く妹のニヤニヤ笑いと、今にも赤飯でも炊きそうなお袋の浮かれっぷり。
 全く身に覚えが無いんだが、しかし、どうやら俺に関連する事項である事は明白にも係わらず、問い質しても「秘密だよー、きょん君♪」としか返ってこないのが不気味極まりなく、俺はそれを忘れようと古泉相手のバックギャモンに集中していた。

 因みに何でバックギャモンかと言うと、コレなら賽の目次第で有利不利が入れ替わるからな。
 実力がモロ反映される囲碁将棋よりも白熱した勝負になるってぇ寸法だ。
 まぁ、失くしていたと思っていたペーパーナイフも紆余曲折ありはしたが、無事持ち主に返せた事だしな、手加減はせんぞ、古泉?

 そして、古泉が右手でダイスをコロコロリンと2個転がしつつ、さり気無く問い掛けてくる。
 左手でさっき俺が返したペーパーナイフを手遊びしつつ。
「隠したのは涼宮さんだとしてですね、その理由は何でしょう?」
「さぁな。あいつの考える事が判った例がないんでな、さっぱりだと言っておくさ」
 古泉が停止したダイスと盤上を交互に見詰め、次の手を考えているのをボンヤリと眺めながら、俺は何となくレベルでハルヒの思考をトレースしていた。

 それは、ズバリ!! 「皆をビックリドッキリさせちゃうんだから」って事に尽きると思うが……どうだろう?

 多分、ハルヒの事だ、そんな考えに突き動かされ後先考えず行動したに違いなく、最終的には部室に準備してあったエアガンを廃棄してモップや箒で戦いなさいとでも言いかねん……。

「不意を突かれた時でも、冷静に対処しなきゃいけないの!!」
とか偉そうに言い放つ想像上のハルヒが、俺の頭の中でエッヘンと踏ん反り返ってやがる。
 その脳内ハルヒに何かしらの突っ込みを入れてやろうと考え、何故に空想上の団長様にまで突っ込みを入れんといかんのか?
と顔を顰めた瞬間、扉がドカンと大きな音を立て勢い良く開かれた。
「遅れてごめーん、皆、おっ待たせ!!」
と元気一杯に挨拶を叫んで、機嫌よくスキップしつつ本物ハルヒは団長席へと腰掛けた。
 豪く機嫌がイイらしく、ニコニコしながら部室を見渡し、満足げに大きく頷こうとしたらしいが、朝比奈さんを視界に治めた瞬間、大きな目を更に大きく見開く。
 そして、「何でメイド服なの?」と格好を気にしたらしいんだが、朝比奈さんと少しだけ会話をしたかと思うと、「うん、その格好で問題ないわ!!」とあっさり納得。
 大体、普段通りと言われれば、朝比奈さんならメイド服に着替えるだろ。と言うか、じゃなければ俺が納得せんがな。
 朝比奈さんは、「又、涼宮さんから駄目出しでもされるのかなぁ?」……と心配していたのだろう、問題無いと言われた瞬間、天使の微笑と形容したくなる笑顔でニッコリ。
 それに釣られたのか、ハルヒもニパッと笑顔を浮かべて、「じゃあ、訓練を開始するわよ!!」と元気に宣言しやがり、俺は本気で慌てた。

「……ちょっと待て、ハルヒ? 実はだな、昨日準備していたエアガンが1つも見当たらないんだ。お前、何か知ってるか?」 

 実は機関の官給品だとは言っても曲りなりにも借り物だ、「失くしました。御免なさい」では一般常識的に不味かろう。
 ……多分、機関側からすれば、必要経費とやらで片が付くんだろうがな。
 今一実態が明らかでは無い謎組織のために、何で俺は骨を折ってるのやらと苦笑しつつ、ハルヒの表情を伺うとこれまた目茶苦茶いい笑顔だった。
 但し、餓鬼大将が自分の思い通りに事が運んだと確信している類のヤツだがな。

「……その悪戯っ子じみた笑顔、やはりお前か? やれやれ……で、エアガンをどうしたんだ?」
「部室から開始だと面白くないかなと思ってさ、皆の教室に隠してきたの」
「……何?」

 俺は一瞬、ハルヒの言っている事が理解出来なかったんだが、それを気にする事無く団長様は自慢げに話を進める。

「だって不審者なんて何時来るか判らないのよ? それを部室から皆で拳銃片手にさぁ退治しましょ、じゃあ訓練にならないじゃない? それに……」
「それに、何だ?」
「きっとキョンと古泉君の事だもん、きっと作戦っぽい事考えてたんでしょ?」

 思わずハルヒの極上笑顔から目を逸らすと、同じ思いだったんだろう、古泉と視線が交わる。と同時に男2人は苦笑を浮かべた。
 まぁ、詳細は省くが、校内でのサバゲー開催ってのは、どう考えても宜しくないだろ? って思いは俺の中で強まる事は有っても決して弱くなる事は無かった訳で、今回のゲームを早急に終了させるために難色を示す古泉をどうにか説得したのは、昼の話し合いでゲーム形式が決まった日の帰宅時だった。
 ハルヒの機嫌を考えて、渋る古泉の気持ちも判らんでもないんだが、しかし、俺は根気良く話し続けた。
 決してハルヒに意地悪したい訳じゃない事、サバゲーをしたいなら、専用遊技場で遣るのが常識だと教えて然るべきだって事等々。
 ハルヒの機嫌が悪くならない様に気を配るって事を条件に古泉は承諾してくれた。
 そして、ハルヒには悪いが、男2人で連携して不審者様を早急に撃退しようと綿密な作戦を立てていたんだが、悪戯っ子ハルヒの思い付きで、それも全てオジャンかよ……。
 古泉が苦笑しながら「流石は涼宮さん、全てお見通しですか」と呟くと、ハルヒは満面の笑顔でエッヘンと踏ん反り返る。

「そりゃあ、あたしは団長だもん。団員の事なんて全てお見通しなんだからね!!」

 嘘吐け……殆ど偶然じゃないかと思いながらも、まぁ、ハルヒの機嫌がいいならそれでもいいかと自らを納得させていると、ハルヒは笑みを浮かべたまま腰に手を当てエッヘン状態を持続させる。

「もう1度状況を説明するわね。オッホン……北高に不審者が侵入したわ。ソイツの目的はSOS団のメンバーをやっつける事。だから、皆は反対にソイツをやっつけちゃいなさい」

 ここ数日、耳にタコが出来る程度には、聞かされ続けている話だ。
 その位説明せんでも判るわいと俺は簡潔明瞭に要約する。
「判ってるさ。不審者……詰まりはハルヒを撃てばいいんだろ?」
 俺の台詞をどう受け取ったのか、ハルヒは挑戦的な微笑を浮かべると元気一杯に言い放った。

「それじゃ、今から訓練準備開始―!!」
「お、おいっ、エアガンはどうするんだ?」
「各自で回収するに決まってるでしょ? ……そうね、だったら順々に出発して頂戴。うーん、30秒程度の間隔でいいかしらね? んで、最後の人が出て行ってから、あたしも自分のエアガン取りに行くから」

   ちょ、ちょっと待て。直前でルールを変更しておきながら何も詳しい説明無しか? 

 あっさりとハルヒに部室を追い出された俺は、そんな思いを「順々にだと?」と言う台詞と渋い顔で表現するしか方法が無かった。
 勿論、浮かれちまったハルヒを説得出来る自信が有る筈も無く、俺は目の前で閉ざされた扉を睨み付け、しかし、首を振り振り歩行を開始した。

 人間、諦めが肝心なのさ。

*****

 エアガンとシューティンググラスは俺の机の中に隠してあった。
 ハルヒの事だから目茶苦茶判り辛い場所にでもあるのかと危惧していたが、よく考えると今日はサバゲーをするために集まったんであって、宝探しがメインではないからな。
 その辺はハルヒも考慮してくれたと思いたいところだった。
 俺のエアガンはデザートイーグル。
 本物ではないとしても、このズッシリとした重量が闘争本能を刺激してくれ、暫し、握り直したり銃を構えたりと、何気に俺も浮かれているんだなと苦笑する。
 他の連中、特に古泉はどうしたんだろう?
と携帯で連絡してみたんだが、あの野郎、電源切っちまってやがり、相談も出来ないじゃないか。
「ハルヒのヤツに、電源切りなさいとでも言われたな、こりゃあ……」
と状況を推測し、とりあえず廊下に出てから、事後の行動を決めるとしようか。

*****

「……それぞれが単独行動を行うべき。それが涼宮ハルヒの望み」
と長門に指摘され、それもそうかと納得したのは今し方の事だ。
 その長門は俺の返事を聞く事も無く、トットと何処かに行っちまっていた。
 珍しく長門が積極的に動こうとしている事に違和感を覚えつつ、でもまぁ、長門が能動的になるのはイイ事だよなと己を納得させ、俺は文芸部部長が走り去った廊下を一瞥し、その反対方面へと歩き出す。

 長門に格好付けて「俺に任せろ」と言ってみたものの、勝算が有る訳では無いってのが物悲しい。
 何せハルヒとは、色々と根本のスペックが違うからなぁ……それをハルヒのヤツも理解してくれれば、俺の成績にあれ程五月蝿くはないんじゃなかろうか?
 脳裏で成績の二文字が瞬き、折角忘れていた事柄を思い出して、俺は無意識に嘆息する。
 
 しっかし、お袋のヤツ、何で予備校のパンフレットを、全部捨てちまったんだ? 
 あれ程「一日でも早く予備校入学しろ」と、陰に陽にプレッシャー掛けていた癖に……。

*****

 ハルヒが各自の教室に隠したと言ってた事を思い出した俺は、用心しいしい校舎の中を進んでいく。
 目的地は古泉達の特進クラス2-9。
 特に目算がある訳じゃないんだが、古泉と合流出来れば、例の作戦を実行する事も可能だろうと俺は考えていた。
 しかし、予想していた以上にこの状況は緊張を強いてくれる。
 人の気配が無く静かな校舎ってのは昼間だってのに結構不気味で、今にも柱の影からハルヒが飛び出して来るんじゃなかろうかと戦々恐々。
 お陰で想定以上に時間が掛かってしまっているんだが、俺は小学生時分のケイドロや缶蹴り何ざを思い返し、何気に懐かしい気分に浸ってもいた。
 しかし、訓練開始の正午の鐘が鳴ってから、結構な時間が経っているにも係わらず、全く悲鳴や何やらが聞こえないのは何故なんだろう?
 俺は1つ1つの教室を確認しつつ用心しながら前進していた。
 普通のサバゲーならフラッグ目指してとか作戦を立て、それに邁進するんだろうが、俺達の場合、最終目標人物が自由気儘に校内を闊歩しているって事に、大きな問題が有るんじゃなかろうか?

「ったく、ハルヒのヤツは何処に居やがるんだ?」
 俺は緊張を持続出来ずに「やれやれ」と嘆息し、休憩がてら顔でも洗おうかと男子トイレに入った。
 流石にハルヒと雖も此処には侵入出来まい……と言うかだ、頼むから入ってくるなよ。

 手をハンカチで拭きながら廊下に出ると同時に、俺は教室探索を再開した。しかし、一旦切れた緊張感を取り戻すのは、並大抵の事ではなかった。
 若しかすると、この持続しない集中力ってのが、成績に直結してるんじゃなかろうな? と疑いつつ、古泉辺りにその辺のコツでも聞いてみるかと場違いな事を考え、俺はボンヤリとしたまま曲がり角を曲がった。

*****

 次の瞬間、俺は誰かと正面衝突。
 「きゃん!!」「うおっ!?」と静かな廊下に響く男女の悲鳴。
 腹や胸への衝撃では、然したるダメージを受ける事は無かったんだが、ソイツが抱えていた長物が激突した額は目茶苦茶痛かった。
 その痛みに耐えつつ、蹌踉めく身体のバランスを取り相手の確認をする俺。
 長門ならこんな無様な事にはならないだろうし、ドジと言えば朝比奈さんだが、涙が滲んだ視界に飛び込んできたのは、マイエンジェルの純情可憐な笑顔ではなく、鼻を押さえて涙目状態の団長様だった。

「何だハルヒか」

と何も気にする事無く一言呟いた俺は、漸くハルヒの格好が何時もと違う事に気が付いた。
 トレードマークのカチューシャではなくミリタリーバンダナを巻き付け、肩からガンベルトを袈裟懸けにしている姿は、セーラー服と相俟って、何とも言えない迫力を醸し出している。
 それに抱え込んでる馬鹿でっかいエアガン……将に不審者そのものと言った風情だった。

「こりゃあ、感心する位に立派な不審者っぷりだな……」
「な、何ですって!? あんた、ぶつかっといて“何だハルヒか”ってどーゆー意味!? それに立派な不審者って、それ褒めてないでしょ!?」

 俺の一言でハルヒは一気に激昂。
 モノの見事に般若顔だ。
 思わず腰が引けるのを自覚しつつ、俺は愛想笑いを浮かべちまった。

「あー、そのだな、まぁなんだ、ぶつかったのが朝比奈さんじゃなくて良かったなって……」
 ブチッ……と何かが切れる音が聞こえたような錯覚を覚え、俺は最後まで言い切らずに口篭った。
 俺の目の前でハルヒが俯いたまま静かに呟く。

「へぇ……みくるちゃんじゃなくて良かった? ……詰まり、あたしならいいって言うのね?」
「い、いや、ちょ、ちょっと待て。あー、決して、そんな意味で言ったんじゃないぞ?」
「……ふっふっふ、人が可哀相だと思って、すっごく悩んでたのに。人の気も知らないで……キョンの馬鹿!!」

 ハルヒは涙目のまま、銃と言うよりも機関砲と呼んだ方が良さそうなエアガンを腰溜めに構えた。

「ちょ、ちょっと、待てっ。落ち着け、ハルヒ!?」
と叫ぶのと同時に俺は脚を縺れさせ背後の廊下へと転がり倒れた。
 その瞬間、俺の目前を凄まじい量の何かが雲霞の如く通過していく。
 周囲で響くドガガッバキベキッガチャンッパリンッと言う破壊音。
 俺は廊下に転がったまま咄嗟に頭を抱えていたんだが、鼻腔を擽るイオン臭と埃っぽい匂いに、恐る恐る周囲を見回し、そして絶句した。
「…………」
 其処は俺が通い慣れた極普通の高校の廊下だった筈だ。
 決して、銃の乱射事件や自爆テロが、起きる事筈の無い平和な場所だった筈だ。
 それが、まるで暴風雨が荒れ狂った直後……と言っても過言ではない程の惨状を晒していた。
 幾つもの窓ガラスが砕け散り、壁や天井は至る所で穴だらけ……ってな感じで、無事なのは俺が倒れ込んでいた廊下位だ。

 おいおい、窓際のコンクリ何ざ、無数の弾痕が付いているぞ?……何で、単なるBB弾がこんなに威力があるんだ!? まさかと思うが、古泉のヤツ、こっそりと実弾でも準備したんじゃなかろうな!? 

と俺は目茶苦茶動揺。
 そして、マジで生命の危機を感じ、泡喰って立ち上がりながらハルヒの表情を伺うと、何故かハルヒは俺の顔を見ると同時に、ホッと安堵の溜息を漏らした。
「な、何だ、そのエアガンは!? 普通じゃ考えられん威力だぞ!? お前は俺を殺す気なのか!?」
と俺はハルヒに文句を叩き付けつつ、何時でも逃げれる様に後退る。
「ふ、ふんだっ。キョ、キョンがあたしの気も知らないで、みくるちゃんの心配なんかするからじゃない!!」
と団長様は俺へと責任転嫁をしやがり……何で俺が悪い事になってるんだ?
「いい事? 団長に対する不敬罪で、今からあんたを蜂の巣にしてあげるんだから!!」
「じょ、冗談じゃない!!」
 今までのハルヒは何時でも大マジだった。今回だけ冗談って事は……まぁ、ないよなぁ。
って事に気が付いた俺は、恥も外聞も無くハルヒに背を向け脱兎の如く駆け出した。
 背後からハルヒの嬉しそうな叫び声が聞こえる。
「甘いわねっ、キョンッ。有希特製エアガンから、逃げ出せると思ってるのかしら!?」
「長門特製だと!?」
と鸚鵡返しに返事をしつつ、「道理で目茶苦茶な威力に弾数だった訳だ、流石は長門だぜ……」と妙に感心しちまう俺なんだが、しかし、それって本気で不味いんじゃなかろうかと全身からドッと冷や汗が噴出。
 そして、長門特製と言う単語に追い立てられる様に俺の速度は上がって行った。
 まだ、死にたくは無いしな……。


  【そうさ、半端は無しだぜ、ハルヒ?】 …… に続きます。
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  1. 2000/01/01(土) 00:00:00|
  2.  SOS団は狙われてるんだからね!!
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<SOS団は狙われてるんだからね!!H(キョン君視点) | ホーム | SOS団は狙われてるんだからね!!⑥(ハルハル視点)>>

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