女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

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SOS団は狙われてるんだからね!!⑧(ハルハル視点)

SOS団は狙われてるんだからね!!


・粗筋:キョンハルの最後はこうでなくっちゃ!!


*****


「続きを読む」からは ……

 やっぱりハルキョン雑用編⑧:【キョンが傍に居なきゃ、絶対に……イヤ】

……になりまーす(^▽^)/



*****

 ハチャメチャに逃げ回るキョンを追い掛けて、あたしもあちらこちらを走り回った。
 皆が部室から眺めている中庭とか、そりゃあもう、色んなところをね。
 あたしは幾度も、キョンの背中に向けて引き金を引いたんだけど、その度にベニア板や廊下の惨状が脳裏に浮かび、あたしの中のあたしが「駄目!!」と全然許可をくれない。何の許可なんだか、さっぱり判らないんだけど……でも、そのお陰だと思う、BB弾は全然飛んでいかないの。
 でも、まぁ、それでもいいかと思いながらも、

「あーんっ、何でさっきからきちんと飛んでいかないのよ!? キョンを蜂の巣に出来ないじゃない!!」

と泣き言を言うあたしだった。
 そして、中庭から再度校舎に逃げ込んだキョンを、あたしは嬉々として追い掛ける。でも、キョンの後を追い掛けて階段を登りきった瞬間、肝心要の標的を見失っちゃった事に気が付いたの。
 あたしらしくないミスだわ……。

「あれ? 見失っちゃったかしら?」

と小さく呟いたあたしは、さっきキョンが背後に向かってエアガンを撃った瞬間を思い返す。それまで逃げ回るだけだったキョンからの初めての反撃。それは結構あたしをビックリさせたわ。
 思わず足を止めて、身近な柱の影に身を隠しちゃった位なんだもん。どう考えてもそれのせいで、キョンを見失ったんだわと思うと、自分が腹立たしくなった。
 チョッピリだけ、キョンもやるじゃないと思ったのは内緒。
 そして、あたしは壁に身体を寄せて、左右の廊下と序に階段上部を覗き込んだ。どちらにもキョンの姿は無い。って事は近くの教室よね……。でも、事此処に至って、キョンもヤル気になったらしいから注意し過ぎるって事はないわね。一応、対象者に警告を与えてみようかな?と閃いたあたしは、大きな声でキョンに呼びかけた。

「ちょっと、キョン!? アンタに逃げ道は無いわよ? だから、諦めてお縄に付きなさい!!」
 何時の間にやら、あたしの中で「キョン=犯罪者・あたし=刑事」みたいなイメージになっていた。と言うか、どー考えてもそっちの方がしっくり来るわよね?と変な事を考えて、キョンの反応を待ってみたんだけど、全然反応が無いの。
 でも、ここいらの近くに居るって事だけは何故か確信しているあたし。
 ちょっとの間、周囲に気を配りながら、キョンが動き出さないかと期待したんだけど、あのそそっかしいキョンにしては珍しい事に辛抱強く隠れ続ける心算みたい。
 
 キョンが何処に隠れているのか? 
 どーゆー作戦をしてくるのか? 
 
 そんな事を考えていると、あたしは自分が映画の主人公になったみたいな錯覚を感じ一気に浮かれ気分。
 でも、気を抜いた瞬間、キョンに撃たれちゃいそうな予感もしたの。
 
 ふふっ、この緊張感、堪らないわね!! ……良く考えたら、こうやってサバゲーっぽい事するのって初めてじゃないっ。キョンもヤル気になってるし、うん、今すっごく愉しいわ!! でも、最後に勝つのはあたしなんだから!!
 
 だから、あたしは宿敵キョンに、勝利宣言を聞かせてあげた。

「ふっふっふ、そうなの……出てくる心算は無いのね? 判ったわ!! この勝負、しっかりきっかり決着を付けてあげるんだからっ」
「…………」

 でも、キョンから返ってきたのは無言の返答だった。
 何時もなら、冗長な位突っ込んでくるのに……いいわ、アンタがそーゆー心算なら、動きを見せるまで、あたしも此処で待っててあげるんだからね。
 階段前でデデンと構えていれば、落ち着きのないキョンの事、きっと廊下を覗き見るとか変な行動をするに違いないわ。とあたしは楽観的に考え、悠然と待つ事にしたんだけど、相も変わらず、キョンは息を潜めたままだった。
 その静かで動きの無い空間と時間が少しずつあたしを苛立たせる。何もしないで、ジッとしているのって詰まらないわね……って思った瞬間、自然と言葉が漏れた。

「な、中々しぶといじゃない? ……アンタ、どーしてその粘りを勉強に活かせないのよ?」
「…………」

 それでも返事の無いキョンにムッとしちゃったあたしは、
「そんなんだから、小母様も滅茶苦茶心配して、予備校行きなさいってパンフレット集めちゃうんじゃないかしら?」
と深く考えずに更に一言付け加える。すると、右奥の教室から期待通りの反応が飛んできた。
「ちょっ……待てぃ!! 小母様だと? パンフレットって、何でお前が……」
「あら、其処の教室にいるのね!! 待ってなさい凶悪犯め、今、射殺しに行ってあげるからっ」
 やっぱり、キョンは突っ込みを我慢出来ない体質なのね!!
と我ながら嬉しそうな声を上げちゃうあたし。
 でも、キョンは何を考えたのか、かなり慌ててあたしに問い掛ける。
「待てっ、ハルヒ!? ……お前、まさかお袋に何か言ったのか!?」
 あたしは何を慌ててるのよ?と思い、平然と「??? えぇ、昨日お会いしてお話したわよ?」と返事を返してあげる。
 序に、何て気配りの出来る女の子なのかしら!!と自画自賛しながら、昨日の遣り取りをダイジェストで説明するあたし。

*****

 昨日、1人ウィンドウショッピングしていたあたしは、偶然、妹ちゃんとバッタリ出会ったの。妹ちゃんから声を掛けられ、あたしも「あら、妹ちゃん、こんにちは」と挨拶し、そして、妹ちゃんが一緒にいたお母様を紹介してくれたの。
 一度だけお会いした事があるけど、その時は皆一緒だったし、宿題でドタバタしてたし、碌に会話も交わしていない。
 だから、滅茶苦茶緊張しているあたしを、気遣って下さったんだと思う、キョンの事を話題にされたわ。
 妹ちゃんがチョイチョイと合いの手を入れてくれる中、気が付けばお母様はキョンの成績を酷く心配しているとおっしゃった。
 予備校のパンフレットをリビングに山積みにしているとか、そりゃもう色々と手を打ってるみたいなんだけど、最大の問題は「妙なクラブに熱を入れていて、成績が伸びないの」と思われている事だった。
 その“妙なクラブ”の総責任者としては、到底座視出来る事じゃないわ。それに、成績が心配なのはあたしも同じだし……だから、あたしは渡りに船とばかりに、

「キョン君の成績は、あたしが責任持って面倒見ますから!!」

と自信満々に言い切った。
 何やらお母様が微笑ましそうにあたしを見詰め、「それじゃあ、息子の事をお願いしますね」と頼りにされた時の嬉しさと言ったら!!

*****

 あの時の浮き立つ気分を思い返していると、
「前にも言ったと思うが、自分の事だ。俺は自力で如何にかする心算だぞ?」  
 キョンがやれやれって口調で言い切るんだけど、「何言ってるのかしら? 全然如何にかなってないじゃない?」とあたしは呆れ果て、バッサリと一刀両断。
「そんなん無理に決まってるでしょ? あたしは小母様に頭を下げられたのよ? これから毎日アンタの部屋で勉強会なんだからね!!」
 団長命令+お母様の要望とくれば、キョンだって無下には反抗しないだろうと思っていたんだけど、キョンはあっさりと一言だけ口にした。

「断る」

 その素っ気ない口調が、あたしの神経を逆撫でした。
 あたしがこれだけ心配してあげているってのにっ、このバカキョンは!!
 そんな思いを込めて、何時もの様にキョンを非難するあたし。
 それでも、キョンは頑なだった。さっきの有希並みに頑固だ。って言うか、この男が素直だった試しは無いんだけど……。延々と続く実りの無い話にあたしは物凄く苛立つ。

「……ちょっと、キョン? あんた、いい加減にしないと、幾ら温厚なあたしでも怒るわよ?」
「珍しく気が合ったな。俺も同じ事を言うところだったぜ……でだ、1つ提案があるんだが、どうだ? 聞いてみないか?」
 
 あたしは、若し詰まらない事だったら、死刑にしちゃうんだから!!と決心して、「何よ、勿体付けずに言いなさい」と雑用に命じるの。
 それじゃあ……とキョンが言い出した事は、何の事は無い、サバゲーの続行だった。
 あたしは「何だ、そんな事なの?」と拍子抜けしちゃったんだけど、キョンの説明を聞いている内に、どんどんと乗り気になっていたの。
 
 だって、一対一の決闘とか、正々堂々と勝負だとか、プライドを掛けた戦いとかって言われちゃったら、もう乗るしかないでしょ!?
 
 何やらキョンが、時間がどーだとか、場所がどーだとか、勝敗条件がどーだとか言ってるみたいだけど、そんなのどーでも良かったから、適当に返事をしておく。
 諄い位「それでいいか?」って確認されたけど、

「あたしは、別に構わないわよ? それよりも、キョン? 負けたら、しっかりとあたしの言う事を聞いて猛勉強するのよ? 文句は言わせないんだからね!!」

とあたしは勝った後の事に気を取られていたわ。
 だって、有希特製エアガンのお陰で全然負ける気がしないんだもん。

「最後に、もう1度だけ確認しておくが、結果が出てから怒るなよ? 例え、お前の意にそぐわない結果だとしてもだ」

とキョンは、浮かれているあたしにしつこく念を押す。
 まるで、負けた後に文句を言うなよとでも言いた気だった。

「ふっふっふ、何時に無く強気じゃない? いいわよ、そーなったら、素直に負けを認めてあげるわ。まぁ、キョンがあたしに勝てる要素が皆無だって事は、宇宙開闢以来の規定事項なんだけどねっ」

と挑発した瞬間に、行き成りキョンが教室を飛び出した。
 虚を突かれ身体を硬くしたあたしに向かって、キョンはエアガンを乱射する。
 どうやら当てる心算は無いみたいなんだけど……ちょっと、キョン!? 決闘とか言っておきながら、どーして逃げるのよ!?とあたしは大慌て。
 だって、キョンってば、あたしが隠れている場所と、反対側に向かって全速力で走り出したんだもん。
「???」
 キョンの考えている事が理解出来ないけど、でも、逃がす訳には行かないわ!!と、あたしもキョンを追い掛けるため、廊下へと身を躍らせるの。

*****

 キョンは、あっちに逃げてはエアガンを撃ちまくり、階段を駆け下りてはエアガンであたしを威嚇する。
 何でそこまで必死なのか全然判らないけど、あたしはキョンのヤル気に感化され、全力で追い掛けBB弾をばら撒く。
 そー言えば、エアガンってば何時の間にやら、大人しくて極普通のエアガンになってるの。なんでだろ?と思うけどさ、でも、正々堂々と勝負しろとか言われちゃったら、これも有りかなとも思うあたし。
 でも、そのせいなのかしら、BB弾がなくなっちゃったの。さっきまでは全然気にしなくても良かったのに……。
 
 それよりもよ!! 
 
 キョンってば何でこんなに逃げ回るの!? コレの何処が決闘だって言うのかしら? 決闘ってのは、もっとこう……向かい合ってさ、ピリピリした緊張感と共に「先に抜け」とか何とか言うもんじゃないの? 
って当たり前の疑問をぶつけようとした時、追いつきそうで追いつけなかったキョンが足を縺れさせバッタリと床に倒れちゃったの。
 「あんた、怪我してないでしょうね!?」と慌ててあたしはその傍まで近寄り、ゆっくりと振り返るキョンの表情から大事にはなっていないらしいと判断。
 ホッと一安心しながら、「やっぱりあたしの勝ちじゃない!?」とウキウキ気分で最後通牒を聞かせてあげる。

「ふっふっふ、とうとう追い詰めたわよ、キョン!! まぁ、あんたも頑張ったとは思うけど、でも、これで最後よっ」

 気のせいだかキョンは苦笑しながらゆっくりと立ち上がる。

 ……むっ? 何よ、その余裕ある態度は? どー考えてもあんたの負けは確定的に明らかなんだけど?

 弾切れしてて本来の役目を果たせないエアガンを、あたしは平然とキョンへと向けて、
「さぁ、キョン? 今直ぐ負けを認めるんなら、発砲する事は勘弁してあげるわよ?」
と自信満々に告げた。
 あたしはキョンが泣きながら「許してくれ、ハルヒ」って謝罪するだろうと考えたんだけど、キョンってば、平然と腕時計で時間を確認し、ノンビリとあたしに問い掛けるの。

「なぁ、ハルヒ? 勝利宣言には未だ早いと思うぞ? 後3分ちょっとで、この訓練時間も終わりなんだが、それまで俺が逃げ切れば……」
「あっきれた!! この状態で、どーやって逃げ切る心算よ? ……あんたってそんなに諦め悪かったっけ?」
 何時もの様に口先で言いくるめようとしてると思ったあたしは、エアガンをこれ見よがしに動かし「あんたに逃げ道は無いんだから」と暗に示す。
 でも、キョンってば「……時と場合と相手と状況によるな」とか、何気に人の神経を逆撫でする事を呟き、突然、あたし達の左側にあった男子トイレに飛び込んだの。
 状況が判らず、「……え?」ってあたしが呟いたのは、当然だと思わない?
 この期に及んで、トイレが我慢出来なかったとか言い出すんじゃないでしょうね!? と苛々しながら待ってたんだけど、キョンがトイレから出てくる気配は皆無だった。
 そして、今までのキョンの言動を思い返し、あたしはハッと気が付く。

 ……まさか、試合終了まで、そこに篭ってる心算なの!?

「…………」
 あたしはギリリと奥歯を噛み締め、キョンが飛び込んだ男子トイレの入り口を睨み付け、そして、覚悟を決めると恐る恐る一歩を踏み出したの。

*****

 生まれて初めて入る男子トイレ。
 何とも表現し辛い感覚を身に纏ったまま、おっかなびっくり中を覗きこむ。
 何やらキョンがニヤニヤしながら鏡に向かって

「残念だったな、ハルヒ」とか「ハルヒ、惜しかったな」とか「ふふん、俺の勝ちだぜ」とか呟いている。どーやら勝利宣言の練習みたいねと気が付いたあたしは、一気に頭に血を昇らせた。

 ……何で、あたしがこんなに苦労していると思ってるのかしら、この男は!? 

と思ってると、そのキョンに声を掛けられた。

「なぁ、どれがいいと思う?」
「ふんだ、あんたが何を言っても、あたしは宣戦布告と見なすわよ?」
「そうか……いいっ!?」

と大慌てで振り返ったキョンが大声を出す。
「ちょっ待て!! ハルヒ、お前……此処は男子トイレだぞ!?」
 それと同時に指差された方をチラリと見たあたしは、一気に赤面しちゃうの。だって、見た事は無くても、何に使うのか知ってる器具が並んでるんだもん。
 自分が、男子トイレに居るって事を実感した瞬間だった。
 目茶苦茶恥ずかしいんだけど、でも、あたしは咄嗟に白を切る。

「こ、ここが何処だって……い、いいじゃない!?」
「いい訳あるかいっ。お前、恥じらいってもんをだな……」
「うううっさい、バカキョン!! あ、あんたがこんな所に逃げ込むから、あたしは仕方が無く……」

と言い掛けて、あたしは本気でどーしてこんな事をしているのかと情けなくなった。
 
 あーん、もう!! どれもこれも全―部、キョンが悪いんだから!! そ、そうよ、あたしは全然悪くないんだからねっ。

と責任の全てをキョンに押し付けた瞬間、あたしは強烈な屈辱感に苛まれた。思わず涙ぐんじゃう位スッゴイやつ。
 
 だ、大体、キョンがしっかりと勉強して成績残してれば、こんな事しなくてもいいのにさ!!
 
 何かが吹っ切れたあたしは正直に今の心境を告げた。
「ふっふっふ、こんな屈辱、産まれて初めてだわ。流石はキョンね、あたし、感心しちゃったわよ?」
「あー、ハルヒ? さっぱり褒められている気がしないんだがなぁ」
「えぇ。勿論、褒めてる心算何て、全然無いわよぉ……」
と囁きながら、あたしは無意識にエアガンを握り直した。
 団長に対する数々の不敬罪……万死に値するわ。

「ねぇ、キョン? 銃殺じゃなくて……撲殺しても、あたしの勝ちになるわよね?」
「いやぁ、それは無理があるんじゃないかなぁ?」

とキョンは硬い笑顔を浮かべ、ゆっくりと窓際に後退る。
 あたしはそれを視界に捉えながら、「病院送りは勘弁して貰いたい」とか考えているらしいキョンに、エアガンを振り下ろした。
「あははー。病院? 遠慮しないで……地獄に行って来なさい!!」
 キョンを掠めたエアガンが床のタイルを砕くのと同時に、キョンが絶句するのを感じ取るあたし。

「ま、待てっハルヒ!? あ、あと30秒程でタイムアップだぞ? ど、どうだ? 此処は両者痛み分けって事で、手打ちにしないか?」

とかキョンが提案してくるんだけど……。

 くくく、今更、話し合いが成立するとでも? 一発撃たねば、いえ、一発殴らなきゃ気が済まないわ!! 

「安心しなさい……勉強なら病院でも出来るわよ? あたしが看病共々面倒を見てあげるわ……あら? ふふっ、じゃあ頭と右手だけは勘弁してあげなきゃね……」
 あたしは目茶苦茶優しく微笑みキョンへと一歩を踏み出した。
 ソレを見たキョンは「じょ、冗談じゃない!!」と一言残し、突如振り向いたかと思うと、窓枠へ右足を掛けて身を乗り出した。
 ……やばっ、脅かし過ぎたかしら!? と反対にあたしが大慌て。
「……え? ちょ、ちょっと、キョン!? な、何遣ってるのよ!?」
 我ながら、すっごく裏返った甲高い声。
 ちょ、ちょっと、幾ら此処が2階だって言っても!! と言うあたしの心配を余所にキョンは本当に窓から飛び降りた。
「キョ、キョン!?」
 あたしは思わず目を閉じた。最悪を予想して。
 でも、絶対そうなって欲しくなくて。
 あらゆる感情がグルグルと心の中で掻き回され、立ち眩みしちゃいそうになり、あたしは窓枠に縋りつく。

*****

 どーして、キョンはそんなに勉強したがらないのよ? どーして、あたしの気持ちに気が付いてくれないのよ? 皆、いえ、あんたが一緒じゃなきゃ嫌なのに……。

 そんな事を、エンドレスで問い続けていると、あたしの耳が「やれやれ……」って呟きを捉えた。
 あたしはハッと顔を挙げ、地面へと視線を向ける。
 キョンが散乱している枝や葉っぱに囲まれて、胡坐を掻き周囲を観察していた。安堵の余り腰から力が抜けかけ、あたしの口から自然と弱々しい呟きが漏れる。

「キョ、キョン!? ……ぶ、無事なの? 怪我……してない? ま、又頭打ったりしてない?」
「あぁ、大した事は無い」

とキョンはあっさり答えを返してきたの。
 あたしは安心しながらも、無謀な事を遣らかしたキョンを苦々しく思い、そんなキョンを放っておけない自分に呆れ、更に目茶苦茶強い怒りを感じちゃったわ。
 その矛先は自分に対してか、キョンに対してか判らないまま、無意識の内に言葉が転び出る。

「な、何で……?」
「あん?」
「何で!! ……何で、あんたは其処までして、逃げ回るの? そんなに勉強したくないの?」 

 本気でキョンが抵抗する理由が判らなかった。
 飛び降りるなんて危険な事をする程嫌な理由が判らなかった。
 「あたしはあんたの事を考えて……」と言う小さな呟きも知らず、キョンは素っ気無く言った。

「一身上の都合ってヤツだ。深くは追求するな」

 その淡々とした口調にあたしが絶句していると、キョンはそのまま言葉を続けた。
「まぁ、取り敢えずはだ、時間切れってヤツだぜ、ハルヒ?」

 カッチーン……。

 人の心配も知らないで、無茶&勝手な事を遣らかすキョンの言動にあたしは怒り心頭。
 ……いいわ、あんたがその心算なら、あたしだって絶対に諦めないんだから!!
 あたしは手に握り締めていたエアガンをキョンの足元に投げ捨て、「まだよっ。まだ終わりじゃないわ!!」と叫んだ。
 そして、諦め悪く継戦宣言。
「まだ、もう少しだけ時間は有る筈よ!? 絶対にあたしはキョンの成績を上げるんだからっ」
「お前こそ、何でそこまで俺の成績に拘る? 古泉に何か言われたのか? それとも……」
 
 キョンと一緒に大学行って楽しい団活を継続したい。
 
 そんな思いを正直に言えないあたしは、ちょっぴり本音交じりでキョンの真似をする。
「古泉君も、みくるちゃんも有希も全然関係ないわよ!! あ、あたしの一身上の都合ってヤツなんだからっ」
 そして、ヨッコラセと両手で身体を支えながら窓枠に右足を乗せた。ジャラリとガンベルトが音を立てる。身長の関係でキョンの様に簡単には乗り越えられないんだけど、でも、今更後には引けないわ。
「あんたに出来た事が、あたしに出来ない筈は無いわ!!」
と自分自身を鼓舞するあたし。

 ……け、結構高いわね。

 チラリと確認した地面は予想以上に遠かった。
 無謀無茶だと理性が悲鳴を上げているけど、より深くに存在する何でも知っているあたしが、「大丈夫。きっとキョンなら……」と太鼓判を押してくれた。
 そんな事で安心しちゃうあたしは、どーかしていると正直思うの。
 でも、不思議な事にそれだけで、不安が何処かに行っちゃったのも事実だった。
 覚悟を決めて飛び降りようとした矢先、「ま、待て!! ハルヒッ、危な過ぎ……」って目茶苦茶焦っているキョンの叫び声が聞こえ、でも、それは途中で唐突に途切れたわ。
「???」
 あたしは窓枠に片脚を掛けた体勢のまま、呆気に取られているキョンの表情を見詰めた。
 
 キョンの喉がゴクリと鳴り小さく何かを呟く。

 その瞬間、理由も無くキョンの視線の先にあるモノを悟ったあたしは、強烈な羞恥心に全身を蝕まれた。
 
 好きな男の子に下着を見られてる!! 
 あんな目で見られてる!!
 
 目の前が真っ赤に染まり意識は何処かに吹っ飛んだ。
 条件反射でスカートを両手で押さえキョンに猛抗議。
「!? ……ちょっ、バ、なっ、ど、何処見てるのよ!? こここのエロキョ……え?」
 呂律が回らない中、必死に文句を叩き付けていたあたしの視界が、グラリと揺れた。
 状況を把握する前に、余り体験したくない浮遊感が全身を包み込み、視線の先に地面が、そして、校舎の外壁が……。

*****

 脳裏を過去の記憶が高速で再生されていく。
 その映像内から生存本能が助かるための手立てを捜す中、あたしはぼんやりと「あぁ、これが走馬灯ってやつね……」と納得しながら、でも、動かし方を忘れたのかしら?って位に全然身体が動かないの。
 頭が地面へと向き血液が重力に従い脳天へと集中した。

「!?」
 キョンの「間に合え!!」って叫び声が頭の中で響いた瞬間、行き成りガクンと身体が引っ張られる感覚があたしを包み込んだ。
 ガンベルトが何かに引っかかったらしいと何処かで誰かが教えてくれる。
 一瞬だけ落下速度が消滅し、あたしは中空にブラブラと浮かぶ形になった。
 咄嗟に窓枠をって両手を伸ばしたけど……でも、ガンベルトはあたしの体重を支えきれなかったみたい、ブチッって嫌な音が聞こえたかと思うと、あたしの身体は落下する事を再開した。
 再び無重力状態に包まれながら、あたしは一言「キョン」と呟いて目を閉じた。
 痛いのかしら? 
 苦しいのかしら? 
 辛いのかしら? 
……と思いながら。

*****

 それからの事は全然記憶に無いの。
 徐々に意識が覚醒していく中、先ず気が付いたのは、目の前にアップで迫るキョンの顔だった。
 心配そうな表情であたしの顔を覗き込み、次の瞬間、痛みに耐える様に顔を顰め、でも、優しく問い掛けてくる。
「いてて……お、おい、ハルヒ!? だ、大丈夫か!?」
 痛みや吐き気といった不快な感覚は感じないけど、立ち眩み直後の様に視界が薄暗い。
 身体も瘧に罹った様に細かく震えていた。それでも、あたしはキョンをぼんやりと見詰める。
 「大丈夫か?」「痛い所無いか?」「気分は悪くないか?」と、次から次へと飛んでくるキョンの質問に、あたしは小さく頷く事で返事をするの。
 時間が経つにつれて、自分が無事だった事を実感するあたし。
 チョッピリ危ない事をしたかしら?と内心考えていると、キョンは大きく安堵の溜息を吐きながら渋い顔であたしに小言を言う。
「なぁ、ハルヒ? 今回は幾等なんでも危な過ぎだ。奇跡的に怪我をしていないみたいだが……」
   そんなキョンの小言が、あたしの中の負けん気を刺激した。

 ……あたしがこんな危ない橋を渡ったの、誰のせいだと思ってるのかしら? そうよ? あんたが心配ばかり掛けるからじゃない!?

 心配と言う単語が脳裏に浮かんだ瞬間、あたしは勝負の最中である事を思い出した。無意識の内にキョンへと手を伸ばしその肩を掴む。その感触があたしを満足させた。
 序に勝利宣言。
「キョン……掴まえた。これで……あたしの勝ちよ? さぁ、約束通り、あたしの言う事を聞きなさい」
「……お前な、今はそんな事はどうでもいいだろうが!?」
 その呆れ果てたってキョンの台詞があたしに火を点けた。あたしは射抜く様な鋭い視線と激しい言葉をキョンに叩き付ける。
「よ、良くは無いわよ!? 今のあたしにとって、一番重要なのはソコなんだから!!」
 ソレを受け止めたキョンは、何やら思う所があるのか、真面目な声で問い掛けてくるの。
「1つだけ、教えてくれるか? 本当に……何で其処まで俺の成績に拘る? 俺にはさっぱり理由が判らん。判らんから反抗しているみたいな感じなんだが?」
「な、何で、そんな簡単な事が判らないのよ!? って言うか、気が付かない振りしてるんじゃないでしょうね!?」
 その心底訳が判らんって表情が思いっきりムカツク。
 気が付けば、痛みも恐れも不安も何処かに消し飛んじゃったわよ。
 暫し考え込んでいたキョンは——ホントに判らなかったらしい——「済まん、やはり皆目見当が付かんぞ」とかあっさり降参。その態度が更にあたしをヒートアップさせた。
「し、信じらんないわっ。このバカキョン!! SOS団危急存亡の秋なのに、それを気が付いてないの!?」
 ホントにこのバカキョンは!!って思いがあたしを地団駄させる。
「あぁ、そう言えば秘密結社がどうとか言ってたな。それか……だが、それに関しては、こんな……防衛訓練だったな、それを遣って対策を講じてるんだろ?」
「ひ、秘密結社なんて幼稚な事はどーでもいいの!!」
「は?」
「そんな想像上の脅威よりも、もっと現実的で切実な事があるでしょうが!?」
「???」
 大学受験や内申書等々、高校生にとって無視出来ない単語を駆使してヒントを出してあげるんだけど、返って来たのは「お前は俺のお袋か」って呆れ返った呟きだった。

「だ、誰が、あんたのお母さんよ!?」
「いや、2年になってから、散々お袋に聞かされていた話、そっくりだったんでな」
「だったら、もっと頑張りなさいよっ、このバカキョン!!」

とプンスカ怒りつつホントにこの男は……とあたしはソッポを向いた。
 そんなあたしにキョンは、「お前、俺の質問に答えてないぞ?」と素っ気無く促す。
 それに釣られてあたしは「……あんた、SOS団の事、どーする心算なの?」と呟いた。
 虚を突かれたのか、キョンは「は?」と間抜けな声を出し、
「あぁ、成績が悪くて予備校通いでもさせられたら、団活時間が削られるとか、そう言う心配か?」
とか的外れ……でもないんだけど、兎に角、ノンビリした返答を返す。
「ち、違うわよ!? だ、だってこのままじゃ……高校卒業と同時に、SOS団の解散が確定しちゃいそうで、あたし、そんなの嫌だもん」
「??? 卒業しても続けりゃいいだけじゃないのか?」
ってキョンの返事があたしをすっごく刺激した。

 あたしが何で悩んでいるのか、本気で判ってないのね、この男は!?

「つ、続ければいいってもんじゃないでしょ!? 皆でみくるちゃんの後を追い掛けて、一緒の大学で再結成しなきゃ意味無いじゃないの!? い、今のままじゃ、あ、あんたが、あんただけが……」
「…………」
 あたしの主張を聞いて、キョンは渋い顔をしたまま色々と口にするんだけど、それは言を左右に誤魔化そうとしている風にしかあたしには捉えられなかったわ。
 
 適当な事を自信無さ気に、でも、断言するキョン。

 あたしは本気で頭にきた。心の奥底から湧き上がる激情が、あたしを興奮させる。涙が出てくるのを我慢する事無く、あたしは目の前のキョンへ向かって絶叫する。

「ど、どーして判ってくれないのよ!? 有希やみくるちゃんや古泉君がいたって……あ、あんたが居ないSOS団なんてっ」
「ハルヒ……」
「SOS団はあたしとキョンで作ったのよ? それを忘れたの!?」
「…………」

 静かにあたしの絶叫を聞いているキョンが、一体何を考えているのか判らない。でも、きっとあたしの言葉は届いている筈と信じた瞬間、キョンの奥歯がギリリとなるのをあたしは聞いた。
 自分に怒り自分を責めているその表情に促されツンでもデレでもない素直なあたしが顔を出す。
 言う心算の無かった言葉が飛び出ていった。

「あ、あたし、あたしっ、キョンが一緒じゃなきゃ、キョンが傍に居なきゃ、絶対に……イヤ」

 あたしは涙をポロポロ流してキョンに訴える。
 今のままじゃ絶対にSOS団は解散しちゃうの……キョンとお別れしちゃうの。
 そんな切実な思いが届いたのかキョンは空を見上げて溜息1つ。そして、態と顔を顰めてボソボソとあたしに語り掛ける。

「確かに、俺を除け者にして愉しもう何ざ不届き千万だな。そんな面白くない未来をぶち壊すためにだ、どうだ、ハルヒ? 俺に勉強を教えてくれないか?」
「え? ……いいの? あんた、あんなに嫌がってたのに?」
「まぁ、何だ、勝負に負けたんだろ、俺は? 敗者は敗者らしく、勝者の命令を聞く事にするってのでどうだ? それにだ、順番や方法がどうであれ、目的に到達すればいいって事さ。……勝てば官軍って事で納得してくれ」

ってキョンは照れつつ言うんだけど、どーゆー意味なんだろ?
 その意図を読み取ろうとした瞬間、それを邪魔するが如く、キョンはあたしの身体を乱暴に揺すったの。
 そして一言。
「んで、団長様は、何時までこの格好で居る心算だ?」
 あたしは周囲の状況を見回し、キョンにお姫様抱っこされているって現実を認識した。全身の血液が一気に顔面に集中。目茶苦茶動揺するあたし。
 慌てて、その腕の中から転がり落ち、その勢いのまま地面に座り込むや否や、あたしはキョンに指を突き付け糾弾する。
「あ、あんた、人が大人しくしている隙に、な、何て厭らしい事してるのよ、このエロキョン!!」
「…………」
 何やら苦笑しているキョンに向け、赤面したまま「不敬罪」「死刑」「私刑」と単語を速射砲の様に叩き付けていると、何やら手を振り振りキョンはボソリと呟いた。
「お前、見た目以上に重いんだな……」
「…………。……なっ、何て事を言うの、あんたは!? 普通、女の子にそーゆー事言う!? 言っとくけど、あたしの体重は全国平均以下なんだからねっ、みくるちゃんよりも軽いんだから!!」
 信じらんない!! このデリカシーの無さ、この無神経さ、キョンってば、あたしに喧嘩でも売ってるんじゃないのかしら!? 若しそーなら、あんたの言い値で買ってあげるわよ……。
とムカムカしているとそのムカつきで重要な事を思い出した。
「あっ、誤魔化されるところだった!! キョンッ、あんた、何で勉強を見て貰いたくなかった訳?」
 キョンは押し黙ったままソッポを向く。
 でも、あたしは見逃してあげない。
「正直に答えなさい。そーすれば、今までの団長に対する不敬罪は、不問にしてあげなくも無いわよ?」
 キョンは眉を顰め、そんな表情のままで何事かを考え込んでるんだけど、
「あ、あたし、しょ、正直に言ったわよ? だから、キョンも……」
って誤魔化されたくなかったあたしは、とっても小さな声で呟くの。
 その呟きをどう聞いたのか、キョンは「やれやれ」と溜息を漏らし、言い辛そうに口を開いた。
 ……そんなに言い難い事なのかしら?
「あー、まぁ、何だ……男の意地とでも言うべき事象でだな」
 又、キョンってば、誤魔化そうとしている!!と悟ったあたしは、ジト目で睨み付ける。
 その視線の先でキョンが立ち上がりながら、
「大学行くにしてもだ、先ずは合格発表って儀式があるよな? 何処かで待ち合わせて、一緒に確認してだ……歓びを分かち合いつつ、その勢いで理由を説明するってので、どうだ?」
とあたしに提案。
 ……一瞬、その意味意図が判らなかったあたしは眉を顰め、必死で解読するの。
 そして、その意味をあたしなりに解釈した瞬間、自然と笑みが零れた。
 念のため、キョンに確認する事も忘れない。

「……それは勉強頑張って、あたしと一緒の大学に行くぞって、所信表明と言う事でいいのよね!? って言うか、あたしはそー解釈したからねっ、今更、取り消しするとか言っても、許さないんだから!!」
 「団長様のご随意に……」とあたしの言葉を受け流し、キョンがあたしの傍まで歩いて来た。
 そして、柔らかい笑みを浮かべそっと手を伸ばす。
 「お嬢さん? 1曲、僕と踊ってくれませんか?」って誘われてるみたいで、ドキドキしながら、でも、あたしは不機嫌なフリをして剥れてその手を握る。
 そのドキドキ感を悟られたくなくて、「キョン、さっきの話なんだけどさ……」とあたしは考えも無く適当な事を口走った。
 「あん? まだ、何かあるのか?」と、キョンはあたしを引っ張り上げ立たせてくれる。その顔を眺めつつ、キョンの決意をもう1度確かめたくなったあたし。
 
 もう1度はっきりと言葉にして聞かせて頂戴、キョン。

「部室に帰ったら、もう1度皆の前で宣誓しなさい。同じ大学を目指しますって。あたしを家庭教師にして勉強を見て貰いますって。そんで、大学行ってから重大発表をしますって」
「はぁ!? な、なんの罰ゲームだ、そりゃ!? そんな恥ずかしい事が……」
「キョンは、追い込まれないと実力を発揮出来ないタイプなんでしょ? だったら、そーゆー状況に追い詰めてあげるからっ、あたしってば、優しいわね!!」

とあたしは満面の笑みを浮かべ自画自賛。
 勿論、これはキョンのためでもあるんだから!!とエッヘン状態だったあたしは突然フワリとした浮遊感に包まれた。
「……え?」
 全然状況を認識出来なかったあたしは、でも、キョンが歩き出した瞬間、全てを悟る。キョンが人の許可も取らずに行き成りお姫様抱っこであたしを抱き抱えているって事を。
 あたしは呆然としつつ、お空をバックにしたキョンの顔を下から眺める。
 何となく、悪戯が成功したぜって感じの得意満面にあたしは大慌て。

「ちょ、ちょっと!? ま、待ちなさいよ、キョン!? ……ま、まさか、このまま部室まで、い、行く心算じゃないでしょうね!?」

 あたしは恥ずかしさの余り全身で大暴れするんだけど、やっぱりキョンも男の子。
 力じゃ敵いっこないの……。
 平然と歩を進めるキョンに向かって、「何考えてるのよっ、バカキョンの馬鹿ぁ!!」とあたしは猛抗議するんだけど、何故かキョンは素っ気無く、

「俺を追い込むんだろ? だったら、徹底的に追い込まないとな……死なば諸共。そうさ、半端は無しだぜ、ハルヒ?」

と物騒な事を言い出した。
「あ、あたしを巻き込まないでよっ」
って切実な懇願を又々キョンは無視して、ニヤリと笑うと行き成り猛ダッシュ。
 身体が目茶苦茶揺れて今にも落っこちちゃいそうになったあたしは、慌ててキョンの首っ玉に縋りついた。
 ちょっと、キョン!? あんた、団長を運んでるのよ? もっと、こう、精巧繊細なガラス細工を運んでるみたいに、優しく扱いなさいよ!!って不満を込め、「ちょ、ちょっと揺らすな、バカキョン!!」と叫ぶあたし。
 それでもキョンの速度は緩まない。そんなに早く部室に辿り着きたいのかしら?
「お、覚えてなさいっ、キョン!! この恨み、家庭教師の時に晴らしてあげるんだから、みっちりスパルタ教育でビシビシ行くからね!!」
と半分以上本気でキョンを脅したんだけど、
「あぁ、そうしてくれ。さっきも言ったろ? 半端な無しでってな」
って何故かキョンに嬉しそうに同意されあたしは絶句する。
 その間もキョンは勢いを緩める事無く部室棟目指して突進し続けた。

「…………」
 キョンの激しい呼吸音を聞きながら、規則正しく上下に揺さぶられながら、あたしは何だか嬉しくなってくるの。
 
 あたしが何か一言言うと、最低二言は撃ち返してくるキョンとの遣り取りは、打てば響く掛け合い漫才みたいでメチャ愉しい。
 
 今はまだ気を置けない友人って感じだけど、何時かは……。って考えた瞬間、あたしってば何を考えているのかしら!?と赤面し、それを悟られない様にギュギュっとキョンの首っ玉にしがみ付く。
 あ、あたしってば、何を期待してるのかしら? ば、馬鹿馬鹿しい!! と頭に浮かんだ願望を即座に否定しながら、でも、あたしは思い出す。
 
 色褪せて灰色だったこの世界を、フルカラーに塗り直してくれたのが誰だったのかを。
 髪型の隠された意味に気が付いてくれたのはキョンが最初だった。
 あの時の驚きと嬉しさは生涯忘れない……。
 勿論、キョンの存在何て極々チッポケなモノだって断言しちゃうけど、でも、そのキョンが居なくなったら、絶対あの詰らない日常に逆戻りしちゃうって確信しているあたし。
 キョンが居るからあたしは笑顔で過ごせるの。

「ねぇ、キョン?」
「何だ? ……俺は、この状態を、維持するので、手一杯なんだが?」
「あんた、今、愉しい?」

 あたしの質問の意図をどー捉えたのか、キョンは「……まぁ、詰らなくは無いが?」とらしい答えを返す。
 そんな返答を微笑ましく感じながら、あたしは受け取ったボールを投げ返した。

「知ってた? 雑用にはね、団長を楽しませる義務があるのよ? だから、もっと努力しなさい。色々とね」
「やれやれ……気のせいか、何気にハードルが高過ぎやしないか?」
「何言ってるのよ? これでも、滅茶苦茶低くしてあげてるんだから。いい事? 優しいあたしに感謝して、あたしが十分満足するまで、ずっと一緒に居なきゃいけないんだからね!!」


【Das Ende……】
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  1. 2000/01/01(土) 00:00:00|
  2.  SOS団は狙われてるんだからね!!
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