女神様の絵本箱

「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作小説ブログです♪ 基本甘々ハルキョンキョンハルメインです(^▽^)/ 先ずはSSリストよりどうぞなのです

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

そして、夢見る少女は大人の階段を昇る……⑤(大人キョン君視点)

そして、夢見る少女は大人の階段を昇る……


・粗筋:そして、父は愛娘の後を追い……過去へと飛び立つのです。

*****

「続きを読む」からは ……

 大人キョン君視点⑤:
【……そう、全てはお前の奇天烈自己紹介から始まったのさ(済まんが力を貸してくれ)】


……になりまーす(^▽^)/



*****

 時空間を飛翔する。

 それは生涯において幾度も経験したいとは思わない———例えるなら、安全性を完全に無視し、スリル最優先に作られた危険極まりないジェットコースターに問答無用で乗らされた様な———凄まじい平衡感覚喪失感に襲われる事を意味する。
 何年ぶりかでそれを味わい、何時もの如く人知を超えた空間異常の前に三半規管が敗北し、その副作用とでも言える吐き気に耐えられなくなる寸前、これまた何時もの如く唐突にその地獄の様な責め苦から俺は解放された。
 心地良い開放感に包まれつつ蓄積された経験に照らし合わせた結果、「目的時間に到達した結果、時間旅行が終了した事」を俺は悟る。
 和室に座り込んで以来ずっと閉じていた目をゆっくりと開けた。
 闇が柔らかい光により駆逐され視界が開ける。
 その中に、当たり前だと言えば当たり前なのだが、日本のあちらこちらで目にする事が出来る平凡な住宅街が映し出された。
 そして、夕焼けに染まる空の色から判別するに時は日暮れ直前、季節はと言うと———耳が捉えた蝉の姦しい鳴き声から察するに———夏の真っ盛りらしい。
 昔体験した夏から冬に跳んだ時の凄まじいまでの寒暖の差を思い出し、「元居た時間軸と時候に差が無いのは助かるな」とホッと一息吐きつつ、思わず苦笑する俺。
 時を越えて過去に降り立った直後にする心配事とは到底思えず、何時の間にやら時間遡行に慣れてしまっている自分自身に呆れ返りながら、「やれやれ」と首を振り振り再度周囲の状況を確認。
 俺はどうやら人通りの無い閑静な住宅街の一角にひっそり静かに立っているらしく、チラホラと見た記憶があるっぽいマンションやら住宅やらが散見された。
 事前に断られた様に、付近に朝比奈さんの姿は見当たらない。
 此処から先は、俺1人で決断し行動しなければならない訳だ。
「…………」
 自動操作で行われた我が脳による視覚情報と記憶情報の照合の結果を鑑みるに、此処は通い慣れた北高通学路の傍だと思われ、そして、それを認識した瞬間、身震いする程に強烈な郷愁感に包み込まれる俺。
 それに促されたのだろうか、特段の意味も無く、だが、周囲を憚る事無く俺は限界一杯まで大きく息を吸い込んだ。
 断る必要があるのかどうか、胸の中に入ってくる空気は地球上の物である事は疑う余地が無い。それが十年前の空気だろうと大した違いがある筈も無い。にも係わらず、それは確かに懐かしい味わいがしたし、確実に郷愁を刺激する匂いもする。少なくとも俺の感覚器官はそう感じ取ったのだ。
 何と言うか、人の心の奥底を優しく刺激してくれる感覚で、あぁ、例えるならば、高校の同窓会に参加してだ、会場となっている貸切の店の暖簾を潜りクラスメート達の昔懐かしい顔を目にした瞬間のアノ時めきに近いかも知れん。
 それに心を包み込まれながら、再び俺はゆっくりと周囲を見渡した。 
「…………」
 当然の如く、そこには見慣れている様で、実は何処と無く違う風景が広がっている。
「何年ぶりだっけ?」
と独り言を呟き、俺は先程行われた脳内検索結果を見直した。
 十年一昔とは良く言ったもので、俺が立っているのは高校時代に通い慣れた通学路の傍なのだが、色々と差異が散見出来てだ、いやいや、この坂ってこんな感じだったか?
 高校時代は年がら年中文句の対象になっていた罰ゲームの如き長い長い坂道だった筈なのに、それすらも肯定的に捉えてしまう心情を如何様に説明したら言いのだろう?
「まぁ、過去は美化されるものだしな……」
と為たり顔で嘯きながら、———幾度も過去に飛ばされて来た俺なのだが———今回に限っては何やら感慨深い思いに包まれていた。
 ハルヒと結婚してからこっち、非日常的出来事に触れる事すらなかった俺がめがっさ久しぶりに体験する奇天烈事象であり、そして、自ら望んで過去に遡った初めての事例でもある。
 何となれば、———手段方法は皆目判らないが———「愛娘が時を遡った」と長門や朝比奈さんに真顔で告げられては、流石に笑っていられる筈も無く、「我が子ながらおきゃん過ぎる」と顰め面したくなるのを我慢しつつ、取る物も取り合えず、コハルの後を追ったと言う次第である。

 とは言え、それだけでは説明不足の謗りを免れ得ないだろうと俺自身も思うんでな、少々説明する時間を頂きたい。

*****

 その時、室内は妙な静寂に包まれていた。
 キッチンで立ち尽くし絶句している俺に気を遣っているのか、誰一人口を開かない。
 朝比奈さんも泣き腫らした目で俺を見詰めながら、必死に口元を覆っていた。
 だが、そんな微かな咳き1つ起こらない完璧なる沈黙世界の中、俺は自分の激しい鼓動をはっきりと聞き取りつつ、しかし、必死に現状把握に努める。

 そうなのだ、嘆き悲しんでいても現実は変わらないのだ。
 「現実を変えるためには、自らが率先して動かなければならない」……俺達は猪突猛進団長閣下の薫陶宜しく、そう思考する様になっていたのさ、何時の間にやらな。
 そして、最初期よりSOS団に属している俺である、その影響を最も強く受けていると言っても過言ではあるまい?

 まぁ、胸を張らせて頂くとすると、伊達にだ、傍若無人団長様の要求に答えるべく、黙々と雑用をこなしてきた訳ではないのよ、明智君。

*****

 そんな訳で必死で思考を進める俺。

 コハル。規定事項。ハルヒ。時間跳躍。SOS団。

 直近で耳にした単語や今までの記憶が混ざり合い、正直に言えば、俺の脳内はごった煮状態だったのだが、それを無視し……雑念を遮断するため目を閉じ顔を手で覆い、暫し沈思黙考。
「…………」
 そして、論理的思考の結果……嫌々ながら、渋々ながら、我が子が時間跳躍しちまったらしい事を、動かし難い事実として受け入れつつも、だが、姿勢を変える事無く、一縷の望みを託して長門に問い掛ける俺であった。
「……なぁ、長門?」
「何?」
「コハルは……その、若しかして、過去に行ったって、解釈でいいのか?」
 手で顔を覆ったまま切れ切れに尋ねる俺に対し、数秒後、長門は静かに返答を寄越してくれる。
「そう。詳細及び正確な目的時間軸は確認出来ていない。が、会話の流れから判断するに、貴方と涼宮ハルヒが喧嘩した当該時間帯を目標としているものと推定推測される」
「そうか、そうなのか……そうなんだな」
と返事にもならない呟きを返しながら、しかし、俺は心が晴れ渡る感覚を味わっていた。
 オブラートの1グラムも塗されていない———人によっては素っ気無く冷酷に聞こえるかもしれない———事実のみを告げる長門らしい反応が、反対に俺を落ち着かせてくれた。
 何故ならそれが動揺しまくっている俺に気が付かせてくれたのだ。

 今この場に誰が居るのかを。

 ……そうだ、此処には俺だけじゃない。長門や古泉や朝比奈さんが、SOS団の頼れる面々が居るじゃないか!? 

 ならば何を恐れる必要が有る?
 ならば何を悩む必要がある?

 その事実は俺の乱れ切った精神を沈静化し安定を齎してくれた。
俺は手を顔から離すや否や、己の迂闊さを叱り飛ばし、そして、気合を入れるために、離したばかりの両掌を「バチンッ」と頬に力一杯叩き付ける。
 そして、その痛みを存分に味わってから、俺はゆっくりと手を離し顔を上げ目を開けた。
 長門と視線が交わった。
 何やら物問いた気なそれを笑顔で迎え撃ちながら、俺は誰と言う訳でもなくボソリと呟く。

「ははっ、忘れてたぜ。此処にはSOS団の仲間が居るって事に。ならば難しい事なんて何も無いよな?」

 朝比奈さんや古泉に長門を順繰りに眺め、そして、視線が全員を通過した直後、俺は自然と頭を垂れていた。

「コハルを連れ戻したい。済まんが力を貸してくれ」

 そして、その一言に反対する奴が居る筈も無く、即座に「コハル時間跳躍対策会議」が設けられたのは言うまでも無い。

*****

 そして、対策会議開催に際して俺達が先ず実行したのは、落ち込んでいる朝比奈さんを慰める事、そして、酒精と親密な友好関係にあったメンバー———つまりは、主に俺と古泉の事だ———の水分補給による体内残留アルコール度数低下作戦であった。
 酔いを醒ますに最も効果的なのは、水分を大量に取りアルコール分解を助成する事であり、故に俺達は途切れる事無く水分補給を続けた。
 その際に使用している物が普通の飲み物ではなく、長門謹製のとなれば、効果の程が窺い知れようと言う物なのだが……冷蔵庫に在ったスポーツ飲料を呑み尽くす勢いで喉を鳴らしながら、しかし、既に相当量を飲み干していた俺は、テーブルの上に並べられている空のペットボトルと手に持ったそれを交互に眺め、相当恨めしげな表情だろうなとボンヤリ考えつつも、自然と愚痴が零れ落ちる。
「流石に腹に来るな、うぷっ、これだけ飲むと……」 
「清涼飲料水……僕も此処数週間は目にしたくも無いですね」
 何処と無くウンザリした口調で古泉も同調し、だが、長門さんは両手で挟み込んだスポーツ飲料inペットボトルに対し某かの情報改変を加えながら、そんな男2人の繰言を淡々バッサリ一刀両断。

「貴方はこれから時間跳躍に身を任す筈。その際アルコールは地球人類が発症する時間跳躍症候群の諸症状を極めて悪化させる。故に許容範囲内まで濃度を低下させるべき」
「古泉一樹。判断能力の低下した状態での涼宮ハルヒに対する隠蔽活動は危険を伴う。極力不確定要素は排除すべき」

「…………」
「…………」
 此方を見る事無く例の高速言語の合間に届けられた指摘は正鵠を射過ぎてだ、何処をどう解釈しても反論の余地すらなく、俺と古泉は一瞬視線を交わした後、大きく溜息を吐きつつ、覚悟を決めて一気に長門謹製スポーツ飲料を飲み干す事にした。
 長門の言に従い後悔した事は皆無だしな、胃袋発の不平に関しては黙殺する事にするさ。

*****

 ペットボトル5本程を飲み干しつつ尿意に促され幾度かトイレとキッチンを往復した後、長門さんから「アルコール濃度は規定値内。影響は微弱」と言うお墨付きを貰い、漸く昔懐かしの非日常的現象対策会議が我が家のリビングで開催された。

 職場先の担当者だと言う人物から齎されたデータを携帯端末で受け取りつつ、
「御安心を。涼宮さんと御子息は無事ホテルに宿泊しているそうです」それを端的に要約した古泉の一言がリビングに響く。
 途端、少しだけ室内から重い空気が減少した。
「そうか……懸案事項が一つ減ったな」
 状況が状況なだけに俺は心底ホッと一安心した訳だが、その理由を説明する必要が有るだろうか?

 いいか、考えてもみろ? 

 高校時代から面々と受け継がれている「ハルヒさんに非日常的現象を認知させない」と言う縛りは未だ継続中な上に、その対象者がだ、妙に勘が鋭く無意識の内に事態を把握してくれたり、ひょっこりと情報改変してくれたりするんだぜ?
 ……況してや、今回の件だ。
大切なコハルが事の発端であるとなれば、娘可愛さの余り、その人知を超えた能力を全開で開放しやがり、次の瞬間にでも、
「何だか胸騒ぎがしたから帰ってきちゃった!!」
「で、コハルは何処かしら、キョン?」
とか何とか言いながら行き成りそこの扉から突入して来て、俺達を慄然とさせる位の事は———我が妻とは言え———マジで遣りかねんからな。
 と言う訳で、今この時点でハルヒに「事件」を知られるのは、今までの苦労が泡と消えるのと同義であり、いやいや、世界がどうなるのか考えたくも無いね。
 その余りにも嬉しくない未来を避けるために、俺達は此処で額を寄せて善後策を協議している訳なのだが、まぁ、何と言うか、
「俺が過去に跳んで、おきゃん娘を連れ戻す」
以外に取り得る選択肢が無く、となれば、残りの議題は一泊二日で首都に泊まっているハルヒの動向対策となるのも必然であった。
 そして、俺を過去に連れて行けるのが朝比奈さんだけとなると、現時間軸に残留し対策を講じる事が可能なのは古泉と長門だってのも規定事項と言えるだろう。
 ってな訳で、そう長い時間話し合いをする事も無く、俺達は雑談を交わせる程度には余裕を取り戻していた。

「残念ですよ。僕も時間跳躍を体験してみたかったんですがね」
「ったく、高校時代からそればかり言ってるな、お前は。まぁ、今回は諦めてくれ。じゃないと俺は安心して過去に戻れん、お前が残ってくれるなら、大抵の事は何とかなるだろうしな」
「…………。承知しました。奥様と御子息の件、万難を排して対処させて頂きます」
 男の顔を眺め続ける趣味は無いので、何やら嬉しそうなイケメンスマイルを浮かべる古泉から態と視線を外し、俺はその傍に静かに立っている長門へと声を掛けた。
「済まんな、長門。又苦労を掛けちまう事になった」
「いい。仲間の窮地を救う事。それは私と言う固体に備わる喜の感情と密接に結びついている」
「……あぁ、頼りにしてるぞ」
 頼れる宇宙人っ娘に頷いていると、廊下のドアが「カチャリ……」と開く音。
 其処に居る人を予想しつつ、俺は其方を振り返る。
 丁度朝比奈さんがゆっくりとリビングへと入ってくる所だった。
 普段と変わらぬ立ち振る舞いと雰囲気なのを確認しつつ、
「どうやら落ち着きを取り戻されたらしい」
と判断し俺はホッと一息吐いたのだが、いやいや、それも然も在りなんと言った所で、何故に女性の涙ってのは、あれだけ男を動揺させてくれるのだろうか?

*****

 あれは俺の確認に対し、「コハルは過去へ跳んでいった」と長門が告げてくれた直後の事だった。
 まぁ、事態が事態なだけに仕方が無い事なのかもしれないが、コハルが家を飛び出す切っ掛けを作ってしまったと思い込んだ朝比奈さんは酷く取り乱し、「御免ね、キョン君」と繰り返しつつ、再び幼子の様に泣きじゃくり始め、いやぁ、泣いている女性の扱いに慣れていない俺はめがっさ狼狽えたね。
 顔を覆って啜り泣き床にへたり込んでいる朝比奈さんを、長門や古泉の手を借りてソファにそっと腰掛けさせ、  そして、2人と一緒に対応しながら状況打破のために俺は頭をフル回転。
 そして、その結果はと言うと———子ども扱いをして朝比奈さんには申し訳ないのだが———ベソを掻くコハルへの対応と同じく、その気を紛らわして誤魔化すべきだとの回答へ到達し、んな訳で、俺はそれを実践すべく(表面上は)平然と、
「これは規定事項なんですよね、朝比奈さん? なら仕方が無いと思いますよ……きっと、俺やハルヒ、そして、子供達にとって必要な事なんでしょうから」
と告げる事にする。
 我ながら淡々とした発言だと思うのだが、その何処に惹き付けられたのか、未来人さんはハッとしつつ顔を上げ、泣き腫らした目で俺を見詰めた。
「キョ、キョン君?」
 俺は朝比奈さんの泣き顔から目を逸らす事無く、微笑みすら浮かべてゆったりと語り掛ける。
「今までもそうだったじゃないですか? 七夕やバレンタイン……どれもこれも後になってみれば意味があった」
「あ……」
「だから、今回も、必要不可欠な事なんですよ、きっと」
「…………」
 何時の間にやら泣き止んでいる朝比奈さんに、俺は止めとばかりに提案する。
「で、朝比奈さん? 家の子は何処まで遊びに行ったんですかね? 早めに連れ戻したいんですが……」
 気を紛らわせる心算だったその何気無い一言、それが朝比奈さんに齎した効果は俺の予想を遥かに超えていた。
 朝比奈さんは、何か思い当たる事でもあったのか、「わたしがしっかりしないと!!」と言わんばかりにハンカチで顔中を拭い、
「ちょ、ちょっと待っててキョン君……あの、お手洗いを借ります」
と断りを入れてから、恥ずかし気に顔を赤らめながらリビングを後にしたのである。

 俺はその後姿を見送りつつ、「派手に泣いたからな、顔でも洗うんだろう」と考え、ならば深く追求する事は避け、今出来る事を遣るべきだと言う事で、アルコール濃度低下作戦完遂を目指しペットボトルを傾け続けたのだ。

*****

 そんな流れだったので、俺は視線で以って朝比奈さんに「大丈夫ですか?」と無言で問い掛け、それに答えるかの様に、朝比奈さんはニッコリと微笑を浮かべた。
「御免なさい、キョン君……取り乱しちゃいました」
 「悩みは解消済みです」と言わんばかりの晴れやかさと共に、朝比奈さんは俺達の元へと足取りも軽く歩いて来る。
 俺は朝比奈さんのニコニコ笑顔を口を開く事無く見詰めた。
 それは遣るべき事を知っている人間特有の笑顔であり、又、それに立ち向かおうと決意を固めた笑顔でもあった。
 「責任感の強い朝比奈さんの事だ、これで一安心だな……」とソレを確認した俺は密かにホッと一息吐き、そのタイミングで古泉が議長宜しく情報交換&善後策協議を提案。
 勿論、俺達に同意する以外の選択肢があろう筈も無く、時は金なりとばかりに、イソイソとソファに腰掛け直しつつ、SOS団非日常現象対策会議が追加招集される事となった。

*****

 古泉や長門に関しては既に述べた通りで、此処に残りハルヒ対策を講じて貰う事になるのだが、精神的復活を遂げた朝比奈さんはと言うと……曰く、
「上司に連絡して色々と情報を入手し、コハルの滞在時点や其処までの遡行許可を得ている」
との事で、正直に言おう、俺は全身の力が抜ける程度には安堵させられたのであった。
 ここで朝比奈さんに「遡行の許可が下りませんでした」等と言われた暁には、———先程の発言と矛盾するかも知れんが———最終手段として後先考えずハルヒに全部打ち明けるしか方法が無かったところだ。
 ……済まんが、俺にとっては世界の安寧やら普遍的常識やらよりも、コハルの存在の方が遥かに大切なんでな、我が妻に「俺がジョン・スミスだ」と切り札を囁く事に躊躇いは覚えないぜ?

*****

 互いに「幸運を」と激励を交わし、古泉からは「未確認情報ですが……」との前置きと共に、「コハルが1人ではないらしい」との情報を受け取ってから、リビングに古泉と長門を残して俺と朝比奈さんは連れ立って客用寝室として使われる事の多い和室へと向かった。
 勿論、時間遡行の瞬間を目撃されないためであり、恒例行事的行動に対し誰も異論を唱える事は無く、俺達2人は粛々と廊下を進んだ。
 そして、俺は和室に入るや否や、
「座った方がイイですよね?」
と朝比奈さんに尋ねつつ、外部から遮断するため全てのカーテンを閉めてから、室内のど真ん中に「よっこらせ」と爺臭い台詞と共に腰を落とし胡坐を掻いた。
 そして、玄関から持ち込んだスニーカーをイソイソと履いていく。
 これも以前の経験から導き出された行動であり、流石に素足で歩き回るのは勘弁して貰いたい所であった。
「……久しぶりですよね? キョン君をこうして時間遡行させるのって」
 朝比奈さんの何やら感慨深げな呟きに頷きながら、俺は「お願いしますよ、朝比奈さん」と目を閉じる。
「判りました……」
 朝比奈さんが静かに俺の背後に歩み寄る気配に続き、肩にそっと手が乗せられた。
ふわっとした甘い香りが俺の鼻腔を擽る。
 瞬間、ふっと産まれて初めて時間遡行した時の記憶が蘇った。

 高校一年の七夕。
 黄昏るハルヒ。
 夕焼けに染まる部室。
 あの時は訳も判らず過去に飛ばされたんだっけ?
 そして、その結果、中学生ハルヒと出会い、妙な作業を手伝ったんだよな……。

等と過去を懐かしく思い返していると、朝比奈さんの囁きが耳元で響いた。
 どうやら時間遡行直前の最終確認らしい。
「キョン君、さっきも言ったけど、わたしは一緒に行けません。その許可が下りなかったから」
「えぇ、朝比奈さん」
「手伝えなくて、その、御免なさい」
「気にしないで下さい。迷子の我が子を捜索するのは親の務めですからね」
 そんな感じで明るく言い放つと、何やら朝比奈さんが戸惑い口篭る気配が伝わってきた。
 俺が「朝比奈さん?」と尋ねると同時に、年上美人さんの手が俺の肩をギュッと掴む。
 そして、「……キョン君、歌です」と妙に固く小さな声で告げる朝比奈さん。
「は? 歌、ですか?」
「えぇ、歌を追い駆けて下さい……御免なさい、わたしに言えるのはここまで」
 その恐る恐ると言った体の呟きから、俺は“禁則事項”と言う単語を想像する。

 ……あぁ、朝比奈さんは指令に無い事を遣ってくれてるんだな、俺やハルヒやコハルのために。
 白雪姫……あれと同じなんだろうさ。
 いや、あれ以上かも知れん。
 何故なら、アレは色々とバージョンアップしてた朝比奈さん(大)だった訳だしな。

「俺達のために危険な橋を渡ってくれている」

 それを実感した瞬間、一気に涙腺が緩みそうになった。
 本当に俺は、俺達は友人に恵まれてる……マジでそう思う。
 だが、俺が感動に浸っていられた時間は皆無だった。
 何故なら……その直後に、俺は前置きも無くこの時間軸から跳ばされていたからである。
 朝比奈さんの意味深な呟きと共に。

「頑張ってね、キョン君……これが最後の変数入力だから」
「え?」

 その真意を確かめる暇こそあれ、俺は行き成り暴風雨に翻弄される小船の如き激しい揺れに襲われたのである。

 そして、そのショックの影響か、脳内がシェイクされるのと同時に、俺の意識はフッと掻き消えた。

関連記事
スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/08/11(日) 16:34:24|
  2.  そして、夢見る少女は大人の階段を昇る……。
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<独り言(2013/08/11) | ホーム | “好き”って魔法の言葉だと思わない???①(キョン君視点)>>

コメント

仲間って素晴らしい!

宇奈月さんー。こんにちは!

遅くながらやっとこのSSを最新から最新話を読みました。
コハルちゃんとキョン太が可愛くて愛おしくて仕方ないです。全くキョンとハルヒさんもいい子に育て上げたもんですよ。立派な親をしてて嬉しいです。

さて、第4話から突如として起こった大事件!
まさか、コハルちゃんがハルヒさん的能力を持っているとは驚きでした。いや違うか、誰かがコハルちゃんが遣りたいことをサポートする誰かが出できて、それを信頼して飛び立ったのかな。
その事案に戸惑うキョン。でもすぐ側には信頼出来る面子がいた。また逆に、キョンの事をとても信頼している3人がいた。
高校生の時より、仲間に気遣いする余裕がでているキョン。立派な大人に成長しやがって(笑)( ´_ゝ`)(´<_`  ) 流石、ハルヒさんに愛される男だよ。

果たして、コハルちゃんは誰と共に時間を遡ったのか。
キョンとハルヒさんが何故喧嘩したのか。喧嘩当時のキョンとハルヒさんは、我が娘コハルちゃんに遭遇していたのか。一体この事件はどこに繋がっているのか。
私、気になります!

続き、オリジナルハルヒさんを観ながらゆったりと待ってまーす(´∀`

あまてつ
  1. 2013/09/22(日) 09:45:09 |
  2. URL |
  3. あまてつ #KD5XUSzs
  4. [ 編集 ]

Re: 仲間って素晴らしい!

 あまてつさん、こんばんわー。

> 遅くながらやっとこのSSを最新から最新話を読みました。

 有難う御座います!! コメント多謝っさ(^▽^)/

> コハルちゃんとキョン太が可愛くて愛おしくて仕方ないです。全くキョンとハルヒさんもいい子に育て上げたもんですよ。立派な親をしてて嬉しいです。

 いえいえ、私はだんちさんの設定にタダ乗りしているだけですので、全てはだんちさんのセンスの賜物ですね!!

> さて、第4話から突如として起こった大事件!
> まさか、コハルちゃんがハルヒさん的能力を持っているとは驚きでした。いや違うか、誰かがコハルちゃんが遣りたいことをサポートする誰かが出できて、それを信頼して飛び立ったのかな。
> その事案に戸惑うキョン。でもすぐ側には信頼出来る面子がいた。また逆に、キョンの事をとても信頼している3人がいた。
> 高校生の時より、仲間に気遣いする余裕がでているキョン。立派な大人に成長しやがって(笑)( ´_ゝ`)(´<_`  ) 流石、ハルヒさんに愛される男だよ。

 いやぁ、ツイッターを始めてから気が付いたんですが、私、ハルキョンスキーでもあり、それ以上に仲良しSOS団が大好きみたいなんです(笑)
 だからでしょうね、長々と同窓会っぽい呑み会シーンが続いたのは。

> 果たして、コハルちゃんは誰と共に時間を遡ったのか。
> キョンとハルヒさんが何故喧嘩したのか。喧嘩当時のキョンとハルヒさんは、我が娘コハルちゃんに遭遇していたのか。一体この事件はどこに繋がっているのか。
> 私、気になります!
> 続き、オリジナルハルヒさんを観ながらゆったりと待ってまーす(´∀`

 ふっふっふ、実はこの事案、様々な要素が複雑に絡み合ってですね、簡単には説明出来ないんですよっ(キリッ 
 冗談はこの位にして(笑) 真面目な話、出来るだけあまてつさんをお待たせしない様に気合を入れて書く事にしますね(^▽^)/

 でわでわ

 2013/09/22 宇奈月悠里 拝
  1. 2013/09/22(日) 23:09:38 |
  2. URL |
  3. 宇奈月悠里 #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://megamisanamoehonbako.blog.fc2.com/tb.php/91-22695095
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

プロフィール

宇奈月悠里

Author:宇奈月悠里
ハルキョン&キョンハル大好き人間です!!

アイコンは敬愛するだんちさんから拝借させて頂いておりますっ。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

★★★SSリスト★★★ (2)
★★★独り言★★★ (43)
★★★短編SS(連載中)★★★ (5)
 サンタを応援すると、イイ事があるんだからねっ。 (3)
 とある副団長の平凡な一日??? (2)
★★★長編SS(連載中)★★★ (72)
 死が二人を別つまで……。 (9)
 ねこねこふぁんたじあ (14)
 It’s A “わんderful” World (8)
 もてる男は、ふっ、辛いぜ……(ノ_-。) (8)
 女神様と卓上遊戯 (4)
 “好き”って魔法の言葉だと思わない??? (8)
 みくるちゃん In らぶりーらびっと!! (8)
 そして、夢見る少女は大人の階段を昇る……。 (13)
★★★短編SS(完結)★★★ (19)
 嬉し恥ずかし初デート!? (5)
 探し物は何ですか? 見付け難いモノですか? (5)
 ラブコメって美味しいの??? (5)
 素直なのは良い事です!! (2)
 地球人類危機一髪!? (1)
★★★長編SS(完結)★★★ (35)
 SOS団は狙われてるんだからね!! (17)
 うんうん、笑顔って重要だよね!! (18)
★★★エッチィSS★★★ (1)

FC2拍手ランキング

かうんたー

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。